見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
「はぁ!!」
「ぐっ……!」
なのはちゃん達の活躍により、自らのトラウマを完全に払拭して本来の力を取り戻してヤマト。そんな彼からの頼みでもう一度戦っている俺であるが、先ほどの戦いが嘘のように俺は苦戦を強いられていた。
「チィ……! さっきよりも攻撃が速いし重い……」
「さっきまでの余裕は無さそうだな!」
「ハッ! 調子に乗ってんなよっ!!」
魔力刃の横薙ぎでオリ主を追い払い距離を取るが、いつの間にやら抜いていた銃で追撃を仕掛けてきたため、咄嗟にIロッドを振り回して奴の弾丸を打ち落とす。
クソ、手が痺れる。魔力弾の威力も今までとは段違いだな……。
「ハァ……一年ぶりだけど、相変わらずズルすぎるだろお前の力……」
「あぁ、これがオレのチート、言霊だ!」
言霊。
それこそがこのオリ主が邪神から貰ったチートにして、理不尽の権化と呼んでいるクソヤバなレアスキルだ。
何せこの言霊、口に出した内容を実現させるという恐ろしい能力を持っており、飛んでいった風船に降りてこいと言えば、浮力に逆らって降りてくるし、意識の回復及び身体の完全回復と口に出せば、どんな死の淵にいる人間だろうがたちまち元気になる。
そして貫けと口に出しながら砲撃を撃つと、凄まじい貫通力でシールドごと人の腹を貫くことも出来るのだ。
「最初と違って余裕が無さそうだな!」
「チッ、言霊を使えるようになって、すっかり調子に乗りやがって……」
「あぁ、この調子でお前を超えてやる!」
そう言って脚に力を入れたかと思うと、一瞬で俺の懐に現れたヤマト。
どうやら神速を使ったみたいだな。……だが!
「甘いっ!」
「な……!?」
俺の腹に一閃を叩き込もうとしていたヤマトの腕を掴むと、合気の要領で奴の攻撃の勢いを利用し、そのまま投げ飛ばしてやった。
俺の使ってるデバイスは近接を想定したものが多い。故にそれを充分に使いこなす為にいろんな武道について学んでいるのだ。文武両道舐めんな。
「マキシマムブラストッ!」
「させるか!
「あー、うん知ってた! 返されるよなそりゃ!!」
投げ飛ばして体勢を整えてる隙に砲撃を撃つが、プロテクションに言霊を付与することで銀色の光線を180度反射させてきやがった。
俺に襲いかかる銀色の光線に対してNワンドを突き出すと、銀色の光線は魔力に分解されて俺の身体に還元される。
自分の攻撃を利用された際の対策はバッチリしてるんですわ。
「くっ……」
「おや?」
自らの攻撃に対処しながらヤマトの方を見ていると、優勢な筈のヤマトは脂汗を流しながら息を荒げていた。
「これはこれは……久しぶりに言霊使った反動が出てんじゃないか?」
「……あぁ、流石にいきなりはキツかったみたいだな」
言霊は便利な反面三つの大きな弱点を持っている。
一つ目は具体的な内容を口にしなければ、俺の腹をぶち破ったときのように予想外な事象が発生してしまうことがあること。
二つ目は言霊を発動する為にはあらかじめ魔力を溜める必要があること。
溜めている間は無防備になってしまうが、最もこれはさっきの魔法反射のように、簡単な命令の言霊なら対して溜め時間も短くなるためあまり問題ではない。
そして三つ目は言霊は消費魔力が非常に多いと言うこと。ヤマトは俺ほどではないとはいえ大量の魔力を持っているため、これは問題ないように見えるが、いくら保有魔力が多くても一度に大量の魔力を消費したら目眩や激しい脱力感に襲われるのだ。
ヤマトも定期的に言霊を使ってたならある程度は副作用も少なかっただろうが、アイツは今まで言霊を使って来なかった。つまり今はその悪影響をもろに受けていると言うことだ。
「こりゃあ、反撃のチャンスが巡って「ないぞ」……おっと」
言霊の副作用で苦しんでいるうちに近接攻撃を仕掛けようと思った俺だったが、気がつくと俺の足首に黒い拘束……バインドが仕掛けられていた。
どうやらいつの間にやらバインドを設置していたようだ。バインドは苦手なくせして張り切ってんなぁ。
「今度こそオレの最大火力を叩き込む。本気の防御魔法で守ってみろ」
「本来ならばまともに防御なんてせずに、刀と銃を合体させて必殺技に備えている隙に脱出してそもそも撃たせないのが俺のやり方だが……今回は特別に受けてやろうじゃないか。いくぞアスカ!!」
『え〜、これ100%敗北フラグじゃないですか〜。原作に入ってからの私の初めての役目がオリ主君のやられ役なんて嫌ですよ。Nワンドでやってくださいよ〜』
「うん、お前はそういう奴だよ。後で高山質店で売っぱらってやる。……悪いけどウチのデバイスがやる気ないから今回はアルティメットプロテクションでやらせて貰うぜ!!」
「そ、そうか……まぁいいや。行くぞレオ!
パリィンッ!!
……うん、知ってた。そりゃあ言霊でバリアを貫けと言ったら、いくらどんなに丈夫なプロテクションでも意味はないわな。
よし、それじゃ俺の敗北も確定したし潔く散りますか。
「ぎょわぁああああああああああっ!!!!」
フッ、我ながら醜い断末魔だことで……グフッ
◇
「あぁ、レオ君が負けちゃったの!」
「結局レオは一番強いデバイスを使ってないんだよね? なら負けても仕方ないと思うな」
「以前は光線がお腹を貫いちゃったけど、大丈夫かなぁ……?」
「お〜い、レオ生きてるか〜。……あれ、お、おいレオ……?」
「急にレオの背中に耳なんか当ててどうしたのよ?」
「し、死んでる……」
「え……、ちょ、ど、どう言う事なの……ヤマト君?」
「き、きっとレオは自分の死を悟ってたんだ。でも……それを分かっててなおオレを勇気付ける為に……ちくしょお……ちくしょお……!」
「そんな……れお君! れお君!!」
「ひなや……レオの婆ちゃんに……なんて言えばいいんだ「勝手に殺すな馬鹿野郎っ!!」あ、起きた」
「うわぁ、死んじゃった筈のレオが生き返った……!!」
「だから死んでねぇって! 良い一撃もらって気絶してただけだよ!!」
「いやー、すまんすまん。レオがサイバイマンの自爆に巻き込まれたヤムチャと同じ体勢で倒れてたからついつい「ヤマト君!」ど、どうしたんだひな、そんなに頬を膨らませて……?」
「いくらなんでもそれは笑えないよ! ヤマト君のおバカーっ!!」
「そうだね。ちょっと悪質すぎるかな」
「少し向こうで頭冷やそっか?」
「ヤマト、ちょっと向こうでO☆HA☆NA☆SHIしよう?」
「え、ちょ……」
「拒否権はなしよ。いいから来なさい」
「なんか取り込み中っぽいし、俺喉乾いたから飲み物買ってくるね?」
◇
「それじゃ、改めてわたし達も模擬戦やっちゃおっか?」
「そうだね、負けないよなのは」
その後、巫山戯るべきでないタイミングでふざけたヤマトは女子組に連行され、今度は自分自身がヤムチャポーズで気絶する事になってしまった。
馬鹿なやつだ。ふざけなければ今頃本来の力を取り戻せるようになったのをみんなで喜び合えてた筈なのにな。
結局、オリ主抜きで改めて模擬戦が始まる事になったのだった。
「あ、そう言えばヤマト気絶してるから、アタシ対戦相手いないわ……」
「俺は最初の戦いを無かった事にした上で負けたから脱落だしねぇ……。ヤマトが起きるまで待つ?」
「それじゃあ日が暮れちゃうわ。こうなったらヤマトを無理やり起こして……いやいや、流石にそれは可哀想よね……」
自業自得のアホンダラを気にしなくていいと思うけど……。
そんなことを考えていると、俺らのやり取りを見てたひなちゃんがこちらに駆け寄ってきた。
「それじゃあリサちゃんはすずちゃんと組んでひなと戦う?」
「え、ダメだよひなちゃん! 流石に二対一は……」
「大丈夫だよ。ひな強いもん!」
ひなちゃんはこう見えても5歳の頃から魔法を学んでいる為めっちゃ強い。この子ならアリサちゃんとすずかちゃんの二人がかりでも大丈夫だろう。
それじゃ、俺も敗北者らしくヒロインズ達の戦いっぷりを見物させていただきますかね。
……そう言えばなのはちゃんとフェイトちゃんって原作じゃ主人公とライバルキャラだった筈だよな。そんな二人が戦ってる姿なんて貴重だし、かつてのリリカルなのはファンとして今回は二人の戦いを目に焼き付けておきますか。
「行くよ! フォトンランサー!!」
「負けないの! ディバインシューター!!」
俺がなのはちゃん達が戦ってるエリアへと移動すると、二人ははそれぞれ桜色と金色のスフィアを呼び出して撃ち合いを始めていた。
流石は主人公と言うべきか、なのはちゃんは天才だ。
魔法を使い始めてまだ一月も経っていないと言うのに、いくらリニスという優秀な先生に教えてもらってるとはいえ既に一般の魔導師くらいなら余裕で倒せるほどの技量を身につけている。
だがフェイトちゃんも才能という面ではなのはちゃんに負けていない上に、こっちはなのはちゃんより魔導師歴が長く戦い慣れをしている。
この勝負は経験的にも技量的にもフェイトちゃんに分があった。
「アークセイバー!」
「しまっ!?」
金色のスフィアでなのはちゃんのスフィアを撃ち落とすと同時に、凄まじい速さでなのはちゃんの懐へ潜り込んだフェイトちゃん。咄嗟にレイジングハートで大鎌に変形したバルディッシュの一撃を防御しようとするが、速度の乗った一撃をなのはちゃんの華奢な腕で防げる筈もなく、レイジングハートを弾き飛ばされてしまった。
「少し動かないで」
「ば、バインド……ビリビリするの……」
「大丈夫? 怪我はしないようにするから……ごめんね。フォトンランサー・マルチショット!」
「にゃぁあああああああ!!」
レイジングハートを弾き飛ばし隙だらけになったなのはちゃんの手足にバインドを拘束すると、フェイトちゃんは申し訳なさそうにしながら砲撃モードのバルディッシュをなのはちゃんの鳩尾で構える。
デバイスを失ったなのはちゃんではもはやどうする事も出来ず、フェイトちゃんの金色の光線になのはちゃんは呑まれたのだった。
「にゃぁあああ〜……」
「おっと……大丈夫、なのは?」
「……う、うん。大丈夫なの」
撃墜したなのはちゃんが地面に叩きつけられる前に華麗に抱き止めたフェイトちゃん。その姿はまるで王子様みたいで……
「カッコよ。前世じゃ俺は多分フェイトちゃん推しだったかもしれん」
「……レオ何を言ってるの?」
「さぁ? でもよからぬ事を考えてそうなの」
おっと、踏み台の不埒な視線なんてヒロインからしたら気持ちのいいものではないだろ。ジト目で睨まれてるし俺は撤退させていただくか。
「なのは、今回はわたしの勝ちだよね? だからえっと……」
「にゃはは、分かってるよ。レイジングハートお願い」
『分かりました。Pull out』
なのはちゃんは悔しそうな、でも清々しい顔でレイジングハートにお願いしてジュエルシードを取り出してもらう。
念願のジュエルシードを前にしたフェイトちゃんは「ありがとう、なのは」と言いながら丁寧にそれをバルディッシュに取り込ませようとして…………
「お、いいもん持ってんなフェイト! ちょっとこれ借りるぜ!!」
「……え? あ……か、返して!!」
どこからともなく現れた金髪に奪われてしまったのだった。
……よし、処すか。