見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
本編ではデバイスの会話は英語でしたが、日本語訳になっております。
ご了承ください。
「…………」
『あ、あのマスター?
流石に今回は私のメンテナンスを行わなくて大丈夫ですよ。
私は自己修復機能で完全に元通りですし、なんならこっちで次元震対策も行ったんで「集中シテルカラ後ニシテ」ア、ハイ』
余計なことをしやがった金髪のせいで、私以外のデバイスが破損して早二日。
マスターは寝ることも休むこともせずにデバイスの修理を続けていた。
ジュエルシード二つ分の次元震を受けたデバイスは私以外みんな大破し、もはや修復は困難という状況。
それをたった二日で9割方修理してみせたマスターにはほんと脱帽ですね。
そんなことを考えていると、マスターは私を含めたデバイスを丁寧に試験管に入れてしばらくキーボードを打つと大きく息を吐く。
「ヨシ、後ハ必要ナデータヲ自動入力シテ修理完了……後ハ一日待ツダケ……」
『お疲れ様でしたマスター。
……もう充分ですので休んで下さい。目が虚ろな上にヨダレまで垂らして、これでは人前に出ていけませんよ?』
「ソノ前ニ糖分補給シナイト……ケーキ…………翠屋ノケーキ……」
『あ、マスター!』
相当脳を酷使したのだろう。すっかりやつれたマスターはケーキを求めてフラフラと部屋を出て行ってしまった。
我が家にケーキは無かったはずだけど、まさかあの状態で買いに行ったりしないですよね……?
『あの、アスカロン。
マイスターレオは大丈夫なんでしょうか……?』
『あんなになるほど無茶した事は今までないんで……ゾーンを二日も維持するだなんてまた死にたいんでしょうかあのマスターは……。
……ですがあれでこそ私が認めたマスターってもんです』
我が創造主に踏み台のサポートをしろと言われた際は、産まれて早々ハズレを掴まされたと思った。
その上私はデバイスとしての身体は与えられず、何故かと思えば踏み台はデバイスの才能を欲したからだと。
マジふざけんなってキレかけましたね。
そんなんだったから当時はマスターを適当にあしらう程度で接しようと考えていた。
しかしマスターは踏み台のくせして人一倍……いや、明らかに尋常ではない努力で魔導師としても、デバイスマイスターとしても技術を高め続け、ついにはグラディウスやミラクルホープをも超えるデバイスに私を作り替えてみせた。
デバイスの知識なんて完全なるハズレ特典だというのに、彼はそれを努力でカバーして本物のチートに昇華してみせたのだ。
こんなの認めるなって言う方が無理ありますよ。
『……ほんと、私は最高のマスターに巡り逢えましたね』
『それは本人に言ってあげたほうが良いのではないですか?
マイスターも喜びますよ』
『勘弁してくださいグラディウス、そんな事言ったら彼調子に乗りますよ。
……そ、それに恥ずかしいですし…………』
『普段は嫌な奴の癖して実はツンデレですよね。
あと最高のマスターはひなちゃんです。今すぐ訂正してください』
『は? 何ふざけた事言ってんですかミラクルホープ。
最高なのは我がマスターですが?』
『いえひなちゃんです。
なんて言ったってあの子は純粋でとても優しい子ですからね。
創造主があの子に与えた天使の翼や癒しの力も誰かを助けるために使っています。
あんな優しい子のデバイスとなれて私は幸せですよ』
『……まぁ、ひなちゃんが優しい子なのは認めましょう。
しかしあの子は私から言わせれば未熟ですよ』
『確かにまだ発展途上ではありますが、だからこそ成長を見守ることができる上にサポートのし甲斐があるってもんです。
宮坂レオの実力は認めます。思ったほど悪い人でない……いい人であると言う事も認めます!
しかし彼は成熟しているため成長の楽しみはない上に、大概のことは自分でなんとかするので仕え甲斐がないじゃないですか!』
『それを言ったらひなちゃんは事あるごとにマスターに泣きつくじゃないですか。
貴女ではなく! マスターに!
仕え甲斐にこだわるならば、まずは自分の役割をこなしてからにして欲しいもんですねぇ!!』
『なんですって!?』
『やるってんですか!?』
『コラ、二機とも。
マスターが大好きなのは十分ですが、だからと言って喧嘩はダメです。
良いじゃありませんか。それぞれが最高のマスターという事で』
『『う……』』
グラディウスに止められてホープとの喧嘩を止める。
彼女はオリ主君のデバイスですが、ホープと違い私と同レベルで気が効く上にマスターやひなちゃんを尊重する余裕すらある。
故にどうしても彼女にだけは頭が上がらない。
グラディウスに叱られてなんも言い返せずにいると、レイジングハートが点灯する。
『私もマスターが一番だと考えているのでグラディウスに賛成です。
マスターは私を入手してから、私を使いこなすために尋常ではない努力をしています。
その上彼女は空間把握能力が非常に高く、私の性能を余すことなく発揮してくれる。
この調子で頑張っていただければ、いつかは立派な空戦魔導師になれるでしょう。
良い機会です。今のうちにマスターを更にステップアップさせる為のトレーニング内容を新たに作成しておきましょう』
『それを言ったらアリサだってそうだ!
オレがマイスターの魔力で動いてた頃から暇を見つけて魔道士の練習をしてたんだ。
それに昔からなのはの家の道場で剣道もやってるみたいだから、純粋な剣術に関しても申し分ない……いや、これからもっと伸びるだろう!
努力し続けるあの熱血ぶりには我がマスターながら鼻が高いぜ!!』
『すずかの自慢もさせて下さいまし。
彼女は魔道士としての練習だけでなく、どの様にすれば効率良く周りの役に立てるかの戦略を立てたりもしているんですの。
それだけではありません。彼女は
すずかにメンテナンスをしてもらえる日が楽しみですわ』
『……グラディウスの言う通り、どいつもこいつも自分のマスターが一番みたいですね。
そう言えばグラディウスは自慢とかないんですか?
この際ですし聞いてやりますよ』
『聞いてくださるのですか? ならお言葉に甘えて…………
我がマスターヤマトはハッキリ言ってまだまだ未熟だと考えています。
魔導師としても、一人の人間としても。
純粋な魔導師としての技術はまだ発展途上ということで除外し、彼の待つレアスキルの話からしましょう。
マスターは過去のトラウマの影響で言霊の利用に大きなブランクが空いていたということもあり、自らの力を完全に活かせていない。
もし言霊を完全に我がものとしたならば、ジュエルシードを二つも取り込み暴走した龍帝院竜弥をたった一人で、何もさせずに完封させることが出来たでしょう。…………なんならアスカロンには申し訳ないですが、マイスターレオにすら勝つことが出来るでしょうね。
発言するのは心苦しいですが敢えて言わせていただきます。アレでは宝の持ち腐れです。
……まぁ、トラウマを克服して頂いたので、こちらは時間が解決してくれるでしょう。
となると一番の問題は生活力でしょうか。
親がおらず一人暮らしではありますが、高町家の皆様方やはやて様、マイスターレオに食事に関して依存してしまっている節が見えます。
もっともマスターは料理が出来ないお方なので仕方ないのですが、それでも食事の支援を行っている方達がみんな余裕のない時に何も考えずに出前を取るのは考えものです。
栄養バランスが偏ってしまいます。
また、なのは様達からの好意に鈍感すぎるのも考えもので────』
『おぉう、メチャクチャ語りますねぇ。
と言うかそれ自慢ではなくオリ主君への愚痴じゃないですか』
『実はグラディウスはヤマトの事嫌いなんですか?
私と一緒にひなちゃんに仕えます?』
『いえいえ、私はマスターヤマトの事はとても大切に思っています。
……しかし大切に思っているからこそ、立派になっていただきたいと言う親心……いえ、デバイス心もあるのです。
また先ほどは散々言いましたが良いところも勿論ありますよ。
彼は困っている人を放っておけない人で、救う為なら自らのトラウマにすら踏み込む根性があります。それはそう簡単にできることではないので、とても誇らしく思っています。
また、彼は常にこの世界に生を受けた意味を探し続けており、ただ漠然と生きるのではなくこの世界での自らの役割を果たそうとする姿勢にも好感が持てます。
まだマスターの肉体年齢は9歳、成長の機会はまだまだ沢山あります。成長と共に自立し立派になっていくのが楽しみですね』
な、なるほど……。
ただ良いところを探すのではなく、悪い所もしっかり見ていると言う事ですか。
言われてみればウチのマスターにも悪い所はありますし、それを直して欲しいとは思っている……。
流石はグラディウス、敵いませんねぇ。
『…………』
『そういえばさっきから無口ですが、バルディッシュは参加しないんですか?
あ、もしかして妹弟子であるひなちゃんの方が上と暗に認めているとか……』
『何を馬鹿な。自分もサーが一番に決まってる』
ミラクルホープの煽りにすぐさま反応したバルディッシュ。
彼はしばらく間を開けると、静かに点滅を始める。
『自分を創ってすぐマイスターリニスは居なくなってしまった。
サーはマイスターリニスにとても懐いていたらしく当初はとても落ち込んでいたが、リニスに心配をかけない様にと、母の為に力になりたいからと努力し大人顔負けの力を手に入れた。
とても周りには真似できない凄いことだ。
……しかしあくまで自分と言う機械知性の一意見にすぎないが、マイスターリニスと再会した今、サーにはしがらみなく幸せになって欲しいと考えている』
『なるほど、フェイトは訳アリみたいだからなぁ』
『バルディッシュとしては心配ですわよねぇ……』
『……あくまでも自分と言う機械知性の一意見だ』
フェイトちゃんは私達のマスターとは違い、異世界人な上に下手したら管理局に逮捕される様なことをしてしまっている。
流石のバルディッシュも大切なマスターにいつまでもそんな事をして欲しくないのだろう。
しみじみとそんな事を思っていると、レイジングハートが点滅する。
『心配ありません。
全てのジュエルシードが集まった後、恐らくフェイトは最後の戦いの相手にマスターを指名するでしょう。
一度は私もマスターも貴方達に敗れてしまいましたが、二度も敗れるつもりはありません。
フェイトと貴方に勝利したうえで、きっと我がマスターや他の皆さんがフェイトをしがらみから解放するでしょう』
『……そうである事を望む。
しかし自分もマイスターリニスの最高傑作、そう簡単に負けるつもりはない』
瞬間、レイジングハートとバルディッシュの間にバチッと電気が走った様な気がした。
どうやらこの瞬間、レイジングハートとバルディッシュなライバルの様な関係になってしまった様だ。……最も、そこまで険悪な雰囲気ではないですし、そこまで心配する必要はないでしょう。
私もフェイトちゃんに関しては可哀想だと思ってはいるので、救われる事を内心祈っています。
────それはそうと…………
『最高傑作という言葉、聞き捨てなりませんねぇバルディッシュ?
この中の最高傑作はマスターの叡智と血と涙の結晶である、ロストロギアとも肩を並べられる私です!!』
『前から思ってたんですが、その自信は一体どこから来るんですかアスカロン!
最高傑作っていうなら創造主によって生み出された私に決まってるでしょう!?』
『それを言ったら私も最高傑作ということになりますが…………スペックに関してはアスカロンに劣っている自覚があるので、私は最高傑作議論からは降りさせていただきます』
『いやぁ、ほんとグラディウスには敵いませんね。私、貴女のこと大好きですよ。
ミラクルホープは彼女の爪の垢……修理の際に出たフレームの削りカスを煎じて飲んだらいかがですか?』
『こいつ〜〜〜!!!!』
『待ってくれ! それを言ったらオレだってマイスターレオに作られたんだ!!
だからオレも最高傑作議論に参戦する!!』
『
最高傑作の称号を得てすずかに自慢するんですの!!』
『最高傑作であるという事はその分マスターを支えることができるという事……。
もはや誰に創られたのかも覚えてはいませんが、私も参加させていただきましょう』
『たかが次元震程度で大破した方々が何か言ってますね〜。ぷぷぷ〜』
『『『『この……!!』』』』
『みんな楽しそうでなによりです。……所でバルディッシュは参加しないのですか?』
『……自分は機体の完全回復に集中させてもらう』
マスターが帰宅するまでの間、どのデバイスが最高傑作かで熾烈な戦いが繰り広げられたのだった。
〜数時間後〜
「ただいま〜。は〜、お腹いっぱい、すっかり生き返った」
『マスター! このデバイスの中だと私が一番の最高傑作ですよね!?
なにせマスターが年単位で作成した機体ですし!!』
『いや、ひなちゃんのサポートをする為に創られたのか私ですよね!?』
『いやいやオレだよな!?』
『もちろん
『私でしょう!?』
『『『『『マスター(マイスター)!!!!』』』』』
「え、グラディウスだけど? 総合的(性格も含む)に見て」
『『『『『!!??』』』』』
この作品に登場するデバイスの性格
アスカロン:かなりの毒舌家にしていじめっ子。ツンデレ
ミラクルホープ:ひなちゃん教の狂信者。ポンコツ
グラディウス:包容力のあるみんなのお姉さん。しっかり者
レイジングハート:負けず嫌い。無茶を厭わない。
バルディッシュ:寡黙。フェイトを心配している。
フレイムアイズ:熱血兄貴分。うるさい
スノーホワイト:お嬢様。子供らしい一面もあり。