見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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(なのは視点)みんなでケーキ作りなの

 次元震のせいでレイジングハート達が壊れちゃって早二日。

 レオ君がデバイスを修理するまでの間、なのは達はお休みをもらっていた。

 

 レオ君一人に頑張らせてわたし達は休んじゃうってのは罪悪感があるけど、魔法が使えない今わたし達に出来ることはない。

 だからこそ今はしっかり休んで、レイジングハートが直ったら今まで以上にがんばるの!!

 

 そしてなのはは今……

 

「お会計、540円です! ……はい、600円のお預かりで、60円のお返しとレシートです」

 

「はい、ありがとう。

 なのはちゃんお店のお手伝いなんて偉いねぇ」

 

「にゃはは、ありがとうございますなの!」

 

 わたしのお父さんとお母さんが経営する喫茶翠屋でお手伝いをしていた。

 

 レイジングハート達の修理を頑張ってくれているレオ君にケーキを差し入れしようと思ってるけど、普段いっぱいケーキやスイーツを作ってるお母さんに更にケーキを作ってってお願いするのは心苦しい。

 だからと言って自分で作ろうにも、材料を買うためのお小遣いが少しだけ足りないの。

 

 でもお手伝いを頑張ればご褒美にケーキが貰えるから、それを持って行ってあげようと思ったの。

 

 カランカラーン

 

 あ、喫茶店のドアの呼び鈴が鳴ったの。

 新しいお客さんかな?

 

「あ、いらっしゃいませ。何名様で──」

 

「え、なのは?」

 

「お、奇遇だねぇ」

 

「あ、フェイトちゃんにアルフさん!」

 

 お店に入って来たのはなんとフェイトちゃんとアルフさん!

 今日は会えると思っていなかったからビックリしたけど、今のわたしは店員さん。普段通り二人を窓際の日当たりの良い席へと通す。

 

「ビックリした。ここで働いてたんだね」

 

「にゃはは、働いてるってよりかはお手伝いだよ。

 ここお父さんとお母さんがやってるお店なんだ」

 

「そうなんだねぇ。フェイト、なのはの家のケーキなら期待できそうじゃないかい?」

 

「うん、ここにしようかな」

 

「二人はケーキを買いに来たの?」

 

 フェイトちゃん曰く、デバイスが直るまではジュエルシードの捜索は出来なくなり、その分回収が遅れてお母さんを悲しませてしまっているらしい。

 だから美味しいものを食べてもらって、少しでも笑顔になって欲しいんだとか。

 

「それでヤマトやアリサに美味しいものを聞いたら、このお店のケーキをおすすめされたからそれで……」

 

「そっか、お母さんも喜ぶの! それじゃあ好きなケーキを選んで「それならあなたが作ってあげたらどう?」うわっ、お母さん!?」

 

 振り向くとそこにいたのはお母さん。

 なんでもわたし達が仲良さそうに話しているから気になったんだとか。

 

「え、えっと……は、はじめまして…………」

 

「はじめまして。以前なのはが新しい友達が出来たって喜んでたけどあなたの事よね。

 これからもこの子と仲良くしてくれると嬉しいな」

 

「は、はい……! そ、それで私が作るって言うのは……?」

 

「途中からしか聞いてないんだけどお母さんにケーキを食べて欲しいのよね。

 それなら私よりも娘であるあなたが作ってあげた方が喜ぶと思ったの。

 私もなのはがケーキを焼いてくれたときはとっても嬉しかったもの」

 

「それに……」とお母さんがわたしの方を向く。

 

「なのはもケーキが欲しいみたいだしね。ヤマト君にあげるのかしら?」

 

「ば、バレちゃってたの!?

 で、でも今回はヤマト君じゃなくってレオ君に差し入れしようと思って……」

 

「あら、珍しい。

 そう言えばあの子昨日の特売に来なかったのよね。全品半額だから絶対に来ると思ったのに…………何かあったの?」

 

「えっとそれはぁ……「ひな達のデバイスが壊れちゃって、今れお君が修理してくれてるの」ひ、ひなちゃん!?」

 

 言い訳を考えようとした次の瞬間、ひょっこり現れてペラペラと話し出したひなちゃんにギョッとする。

 い、いつの間に……!?

 

「あら、いらっしゃいひなちゃん」

 

「こんにちわ、なのちゃんママ! 食パン届けに来ました!!」

 

「あら、ありがとう。フレンチトーストはやっぱり羽鳥ちゃんの所のパンじゃなきゃ。

 ……それでデバイスってなんのことかしら?」

 

「えっとねデバイスって言うのはまほ「電化製品のことなの! なのは達がうっかり壊しちゃったのをレオ君が修理してくれてるの!! ね、フェイトちゃん、アルフさん!!」モガモガ」

 

「うん! うん!」

 

「そ、そうだねぇ! 決してやましい事なんてないよ!!

 アハハハハ……」

 

「…………まぁ、追及するのは可哀想だしよしておくわ」

 

「「「ほっ……」」」

 

 隠し事が苦手なひなちゃんがうっかり全部話しそうになったが、なんとか隠しきる事が出来た。

 でもひなちゃんには後でまたお話ししとかなきゃ……。

 

「それでどうかしら?

 もうお昼時も終わったし、作るならお店の厨房を貸すわ。

 もちろん材料も私が用意します!」

 

「ほんと、お母さん!?」

 

「えぇ、お手伝い頑張ってくれたお礼」

 

「そ、それならわたし作ってみたいです!

 あ、でもケーキってどうやって作るんだろ……」

 

「大丈夫だよフェイトちゃん、作り方ならわたしが知ってるの!!」

 

「なのちゃんお菓子作り上手だもんねぇ。

 それならひなもお手伝いしていーい?」

 

「もちろんなの!

 それなら3人でフェイトちゃんのお母さんも、レオ君もあっと驚くケーキ作っちゃお!」

 

「お〜!!」

 

「が、がんばる!!」

 

 その後話し合いの結果、イチゴのショートケーキとチョコレートケーキを作る事にしたわたし達。

 2ホールもあるならケーキを手作りするって事はフェイトちゃんのお母さんやレオ君、そしてわたし達やお母さんで食べても少し余っちゃうし、余ったケーキはヤマト君に食べさせてあげようと考えてるなのははちょっとズルい子かな?

 

 

 ◇

 

 

「まず薄力粉90グラムを振るいにかけるの」

 

「薄力粉90グラム……こんくらいかね?」

 

「アルちゃん、3グラム多いよ?」

 

「あ。でもまぁ3グラムくらい良いよね」

 

「ダメなの!

 お菓子は1グラム……いや0.01グラムのミスでも全てが台無しになるの。

 絶対に絶っっ対に分量で手を抜いちゃダメなの!!」

 

「そ、そうなのかい?

 ケーキって奥が深いんだねぇ……」

 

「でも寸分の狂いもなくピッタリ90グラムってどう測ったら……」

 

「ひなに任せて! ……よし、これくらい!!」

 

「うわ、ピッタリ。ひな凄いね」

 

「えへへ〜、ママとパン作る時も分量に拘るから自信あるよ〜」

 

 

「ボールから生地が溢れない様に丁寧に丁寧に……」

 

「丁寧さも重要だけど生地は粉がダマにならない様に混ぜないとダメだよ。

 ……そうそう、そんな感じ。

 フェイトちゃん上手、混ぜるのはなのはよりも上手かも」

 

「そ、そう? えへへ……」

 

「あ、フェイトちゃん。ボールから生地が……!」

 

「あ、ご、ごめん!!」

 

「油断したときってやっちゃうよねぇ。

 ひなもそれで何度失敗しちゃったか…………」

 

 

「……よし、オーブンの予熱温度も時間も完璧。

 それじゃスポンジが焼けるまでの間にクリーム作っちゃお」

 

「あ、それならなのちゃんがオーブン行ってる間にフェイちゃんとアルちゃんとで作ったよ。ほら!!」

 

「我ながら会心の出来だよ!!」

 

「頑張った……!」

 

「え、ほんと……ってそれカスタードクリームなの!!

 ホイップクリームじゃないとダメ!!」

 

「「「え、そうなの……!?」」」

 

「フェイトちゃんやアルフさんはともかく、ひなちゃんは気づけたでしょ。もぉ……

 ……いやでもスポンジケーキを薄くスライスして、カスタードクリームを挟む様にドーム状にすれば……となるとホイップクリームクリームの砂糖の分量とかを計算し直して…………

 ひなちゃん、えんぴつと紙……あ、あと電卓持ってきて!!」

 

「はーい!」

 

「すごい、間違っちゃったのにそれを解決する案を考えてる。

 なのはカッコいい……」

 

「……でもレシピ書いてる姿、なんかレオみたいだねぇ」

 

 

「よし、最後はデコレーションしていこ!

 フェイトちゃんが思う風にイチゴ飾ってみて!!」

 

「え、わたしの思う風に……?

 えっと……このイチゴは大きいから中央で、このイチゴは小さいから外側……いや、これは縦に切ったほうが……」

 

「フェイト、ここクリーム絞らないかい?」

 

「そうだね。そうしよ」

 

「なんだかフェイちゃん達楽しそうだね」

 

「デコレーションって楽しいからね。わたしもデコレーションが一番好きなの。

 さ、わたし達もチョコケーキのデコレーションしよ!」

 

「お〜!!」

 

 

 ◇

 

 

「やった……できた!!」

 

 ケーキ作りを開始して早3時間。

 途中いくつかのトラブルがあったものの、今までの経験や知識でなんとかカバーし、無事イチゴのショートケーキとチョコレートケーキを完成させる事ができた。

 

「アルフ、わたし作れた! ケーキ作れたよ!!」

 

「フェイト、アンタ頑張ったよ!!

 それにしても美味そうだね。今すぐ食べたいよ!!」

 

 初めての挑戦が大成功で嬉しいのだろう。嬉しそうにはしゃぐフェイトちゃん。

 普段無理しちゃってるけど、本当のフェイトちゃんは年相応にはしゃいだりする女の子なんだよね。

 

「これなら母さんも喜んでくれる。

 なのはのおかげだよ、ありがとう」

 

「どういたしまして。

 でも、こうして成功したのはフェイトちゃんが頑張ったからだよ」

 

「ひなも! ひなも頑張ったよ!!」

 

「にゃはは、もちろんひなちゃんもね」

 

「フフ…………」

 

 嬉しそうに微笑んでいたフェイトちゃんだったが、突如何かを思案するような表情を浮かべる。

 そしてしばらく何かを考えたかと思うと、真剣な表情でわたしを見た。

 

「ねぇ、なのは。覚えてる?

 ジュエルシードが全部集まったら、わたしはこの街の魔導師の一人と戦うの」

 

「……うん」

 

「わたしずっと、誰と戦おうか考えてたんだ。

 ヤマトとひなはわたしより強いし、レオは少し苦手。

 すずかは……あの子には悪いけどトラウマになっちゃってるから出来れば戦いたくない。

 あ、も、もちろんあの時はわたしが悪かったけど!!」

 

「にゃはは……」

 

「だから戦うならなのはかアリサって考えてた。

 ……決めたよ。わたし、最後はあなたと戦いたい」

 

「!!」

 

 フェイトちゃんはわたしの顔を見て真っ直ぐ宣言してきた。

 21個のジュエルシードを賭けたフェイトちゃんの最後の戦いの相手はわたしだって。

 

「なのはは誰よりもわたしと向き合ってくれたよね。

 あのときだってバルディッシュを取り上げれば、もうわたしは何も出来なかったのに返してくれた。

 わたしはそんなあなたと、最後に思い切りぶつかり合いたいって思ったの」

 

「フェイトちゃん……」

 

 ……わたしは思ってた。

 フェイトちゃんと最後に戦う相手はわたしだって。

 

 だって一度負けちゃってるから。

 フェイトちゃんは絶対に勝たないといけないし、勝った事のある子と戦うのが勝率が高いからわたしを選んでも仕方ないって。

 

 でもそんな打算的な理由ではなく、純粋にわたしとぶつかり合いたいって言ってくれた。

 勝てる確率が高いからじゃなくって、向き合ってくれたからこそ戦いたいって。

 …………それならわたしも全力全開でやらないとダメだよね!!

 

「分かったよフェイトちゃん!

 わたし、高町なのははもっと腕を磨いて、もっと強くなって今度こそフェイトちゃんに勝ってみせる!!

 ユーノ君との約束を守る為にも、思い切りぶつかり合いたいって言ってくれたフェイトちゃんに応える為にも、もう絶対に負けないの!!」

 

「なのは……うん、わたしも負けない!!」

 

「お〜、なのちゃんもフェイちゃんもすっごいやる気だ……」

 

「これが青春ってやつかい。

 フェイトにこんな気持ちの良いライバルができて嬉しいよ……。

 さ、それじゃあお互いに宣戦布告も済んだ事だしできたてのケーキを食べようじゃないか」

 

 ちょ、アルフさん宣戦布告って。

 わたしもフェイトちゃんも思いをぶつけ合っただけだよ……。

 あと、ケーキはフェイトちゃんのお母さんとレオ君の分をラッピングしてからなの!!

 

 カランカラン‼︎

 

「お母さん! お父さーん! 大変、大変だよ!!」

 

 ケーキを食べようとするアルフさんを止めていると、喫茶店の扉を乱暴に開けた音が聞こえたかと思うと、慌てたようなお姉ちゃんが声が厨房にまで響く。

 

 只事ではないとわたし達も急いでホールに出てみると、白目を剥きピクピクと痙攣したレオ君を背負ったお姉ちゃんの姿が…………。

 

 …………。

 

「ァグ……ゥア…………ァェ……」ピクピク

 

「お姉ちゃん、少しO☆HA☆NA☆SHIしよっか?」

 

「美由希……あなたなんて事を……!

 リュウヤ君と違ってこの子はちゃんといい子なのに……」

 

「……これは一度厳しく鍛え直したほうがいいかな?」

 

「ちょ、なのはもお母さんもお父さんも酷い!!

 私なんもしてないよ! この子お店の近くで倒れてたの!!」

 

「え、お店の近くで?」

 

 ちゃんと考えてみればお姉ちゃんとレオ君って仲良い方だから、酷い事をする理由はないよね。

 後でお姉ちゃんに謝っておかなきゃ。

 それにレオ君って家でデバイスの修理を頑張ってくれてた筈なのに、なんでお店の前に倒れてたんだろう?

 

 レオ君が家の近くで倒れていた件で首傾げていると、ひなちゃんがレオ君の元に駆け寄りペタペタと顔を触り始める。

 しばらくの間とんでもない事になっているレオ君に触れたひなちゃんは「ふむふむ、なるほど!」っと納得した表情を浮かべた。

 

「れお君、お砂糖が切れちゃったみたい」

 

「え?」

 

「ケーキ……ケーキィ……

 ケーキ……クレェ……」

 

 

 ◇

 

 

「うめぇ……うめぇよぉ……!」

 

「ほんと? えへへ、みんなで頑張った甲斐があったよ」

 

「ありがとう……ひなちゃん、みんな……。

 砂糖が脳に……生き返る…………あぁ、もうダメかと思った……!!」

 

 ボロボロと大粒の涙を流しながらケーキを頬張るレオ君。

 なんでもひなちゃん曰く、レオ君は極限まで脳を酷使して脳の糖分が切れてしまうとさっきのような状態になってしまうのだという。

 

 つまりデバイスの修理を頑張りすぎた結果ケーキが食べたくなって、本能的に翠屋に来たけど力尽きて行き倒れてしまったのをお姉ちゃんが発見したと言うのが、今回の事件の真相。

 

「頑張らせる原因を作ったわたしが言うのも何だけど……

 レオ君、人騒がせすぎるの」

 

「いや、ほんと申し訳ない。

 少しでも集中を切らすと一気にペースが崩れるからって、糖分補給せずにぶっ通しでやっちまって……。

 やっぱ途中でチョコレート齧る時間は作るべきだった」

 

 コーラフロートを飲みながら申し訳なさそうに謝るレオ君。

 あんな状態で外で歩いたら事故に会っちゃうかもしれないし、次からはちゃんと途中で休憩を挟みながら頑張って欲しいの。

 

「そう言えばレオ、修理はどれくらい進んだの?

 ……あ、急かしてるわけじゃないよ!

 ただ、修理の進捗は聞いておきたくって……」

 

「あぁ、それについてだけど9割方完了で、今は自動修復と更新データのダウンロード中。

 あと一日待てば終了だから、明日からジュエルシード捜索を再開できるよ」

 

「ほんと!?」

 

「ほんとほんと。あぁでも──」

 

「でも?」

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんはビックリする事になるかもしれないねぇ」

 

 レオ君はニヤリと怪しい笑みを浮かべたのだった。




え、フェイトちゃんはちゃんとプレシアにケーキを渡せたのか?

……ご想像にお任せします(目逸らし)
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