見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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法律の穴をついてグレーな事してはいけませんという法律はありませんしぃ?

 クロノ君の展開した転移魔法で時空管理局の次元船アースラへとやって来た俺達。

 魔法に触れてはいたけれど、管理局について一切接点を持たなかったヤマトやなのはちゃん達は、不安そうな表情でキョロキョロと辺りを見回す。

 

「すっご〜い! うわ〜、キレ〜。

 あ、あれなんだろ?」

 

「こら、君!

 迷子になるから走り回るんじゃない。こっちに来るんだ!!」

 

 …………いや、ひなちゃんだけは子供ながらの好奇心で目をキラキラさせてた。

 あとクロノ君、テメェひなちゃんに対して些か口調が強いんじゃないか?

 この子が泣いた日には楽には死なさんからな?

 

「や、ヤマト君、ここって……」

 

「オレも分からない。

 ……ユーノは何か知らないか?」

 

「時空管理局の航空船の中だね。

 えっと……簡単に言うといくつもある次元世界を自由に移動することの出来る船」

 

「ごめん、全然分からないわ」

 

「えぇっと……つまり私達が生きてる地球以外にも人が暮らしてる世界があるって事かな?

 時空管理局は警察みたいな組織ってレオ君言ってたし、たくさんの世界を守ってる組織って言うのが時空管理局?」

 

「そうそう。流石すずか、頭いいね」

 

「もっとも実態は利権とかお金とかでドロドロの組織だけど」

 

「……なんか言ったか?」

 

「言いましたけどなにか?」

 

「レオ、喧嘩を売るな」

 

 簡単に時空管理局について話をしながらアースラの次元船の中を歩いていると、「あぁ……」思い出したかの様にクロノ君がこちらを振り返る。

 

「君達、このままじゃ窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは解除して構わないよ」

 

「そうですね。それじゃあ……」

 

 フェイトちゃんを匿っていた立場的にバリアジャケットを解除するのは危険かもしれないが、俺個人は管理局に知り合いもいるし、敵対を望んでいるわけではないから解除しておくか。

 ……おいヤマト、大丈夫だからデバイス解除しろ。

 

 アスカロンを待機状態に戻して髪を縛っているゴム紐に括り付けていると、クロノ君がユーノ君の方を向く。

 

「君も、元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」

 

「あ、そっか。いつもこの姿でいるから忘れてた」

 

「え?」

 

 直後フェレットのユーノ君は光を放ち始めたかと思うと、フェレットの姿から人の形へと変化し、やがて中性的な顔立ちの少年へと姿を変えた。

 

「ふぅ……。アリサ達にはともかく、なのはにこの姿を見せるのは久しぶりだね」

 

「……え?」

 

「? なのは?」

 

「え? え? え? え?

 …………ふぇええええええ!!??」

 

 なのはちゃんの困惑したような絶叫がアースラに轟いた。

 

「ユーノ君ってユーノ君ってえ? え?

 えぇえええええ!!??」

 

「うん、なのはちゃん。ビックリしたって充分伝わったから落ち着こう?

 ちょっと耳痛いわ」

 

「だ、だって……だって!

 ユーノ君、人間だったの〜!?」

 

「え、う、うん。

 だって初めて会った時はこの姿だったでしょ?」

 

「うぅん、違うよ!

 フェレットの姿だったの!!」

 

「そうだっけ。

 でもヤマト達は僕が人間だって知ってただろう?」

 

「変身魔法で魔力の回復に努めてたのは一目見て分かったからな。

 それにオレは昨日ユーノとゲームしてた時に人になったの見たし」

 

「ん〜、ひなはなんとなく。

 リニスと違って使い魔じゃなさそうだし、もしかして変身してるのかな〜って」

 

「動物に変身して体力とか魔力とかを温存するのなんて、スクライア族ぐらいしかやらない手段だからねぇ〜。

 ……ところでヤマト。俺が必死こいてデバイスの修理してる間遊んでやがった件について、後で話そうな?」

 

「アタシ達は正体が分かった後教えてもらったわよね」

 

「うん。それにフェイトちゃんも変身魔法使ってるって察してたみたいだよ」

 

「と言う事は知らないのなのはだけ!?

 今まで一番一緒にいたのに!!」

 

「なんと言うか……ごめん、なのは」

 

「本当だよ、も〜!!」

 

「……どうやらお互いに認識のすれ違いがあった様だが、後にしてもらってもいいだろうか?

 艦長を待たせているから早く向かおう」

 

 

 ◇

 

 

「艦長、連れて来ました」

 

「ありがと、クロノ」

 

 ユーノ君が実は人間だった事とヤマトと二人で修理中に呑気にゲームしてた件に関する追及は一旦後にし、クロノ君の案内で艦長室までやって来た。

 そのままなにも考えずに艦長室へと入ると、艦長室の姿に動きを停止する。

 

 盆栽に鹿おどしに和風の傘…………まるで日本をよく知らない外国人が、取り敢えず和風っぽく装飾したと言った感じの部屋だった。

 

「初めまして。私はリンディ・ハラオウン。時空管理局の巡航船アースラの艦長をしているわ。

 どうぞ、楽に座って頂戴?」

 

「は、はい。しかし一つよろしいですか?」

 

「なにかしら?」

 

 ニコニコと笑いながら自己紹介をしてくれた緑髪の女性、リンディさんにヤマトが声をかける。

 そんな彼の顔は心なしか憤っている様にも見えて…………

 

「まず鹿おどしは室内ではなく屋外に配置するものです。

 故に船に配置するなら甲板に置かなければならない。見るものではなく音を楽しむものだ。

 ここを間違えちゃいけない。

 それに盆栽に関しても、空調の風が直接当たる所に置くなんてもっての他です。

 また果たしてこの環境で太陽の光を浴びせる事が出来るのか…………」

 

「ちょ、ヤマト落ち着きなさい!

 一体どうしちゃったのよ!!」

 

「ヤマト君、お兄ちゃんの趣味(盆栽)の影響受けちゃって、最近は盆栽育ててるから……」

 

「その上コイツ自分の家の一室を和風に染めて庭も魔改造してる有様だからな」

 

 ……って、コイツの盆栽趣味はどうでもいいのだよ。

 いい加減話を進めてもらわないと俺の寝る時間が無くなるし、とっとと取り調べでもなんでも始めてもらおう。

 

「盆栽についての正しい育て方については後でヤマトさんに色々教えてもらうとして…………。

 まずは……そうね。

 現地に住んでいた魔導師であるヤマトさん達はともかく、なぜこの世界の生まれではないユーノ・スクライアさんがジュエルシードの捜索に力を貸してくれているのかを聞いても?」

 

「はい、分かりました。実は……」

 

 どうやら管理局はジュエルシードがどの様に発見されたかを把握していなかったらしい。

 故にこの世界の生まれでないユーノ君が日本にいた理由を側に思っていた様だが、彼から事情を説明されたことで納得した表情を浮かべる。

 

「……そう、ジュエルシードはあなたが発掘したものだったんですね?」

 

「はい。それで僕が回収しようと……」

 

「立派だわ」

 

「だけど、同時に無謀でもある!」

 

「ちょっと、どういうことよ!

 ユーノは責任を感じたから、一人でこの世界に探しに来たって言うのに!!」

 

「だとしてもだ!

 正規の訓練を積んでいない素人が単身でロストロギアを封印するなんて危険すぎる!!

 いったいなぜそんな無茶をしたのか……!!」

 

「やめなさいクロノ。

 私達、管理局が動くまでの間にジュエルシードがこの世界に迷惑をかけるのを避けたかった。

 …………そうよね?」

 

「はい……」

 

 ……チッ、先手を打たれてしまったか。

 もしあの場でリンディさんがなにも言わなければ、管理局が動くの遅いからって言ってやるつもりだったのに…………。

 

「…………」ニコ

 

「!」

 

 この女、今一瞬俺見て笑った! やっぱり確信犯だったか…………!!

 

「ユーノさんについては分かりました。無茶する事はいけない事ですが、責任を感じての行動ですので軽い注意程度にしておきましょう。

 次の質問ですが、あなた達は斧型のデバイスを持った子と行動を共にしていましたね?

 …………彼女はどうして逃げたのかしら?」

 

 ん〜、やっぱり来たかこの質問!

 そりゃああの場では機転を効かせて逃したけど、一緒に行動してるのはバッチリ見られてたしね!!

 

「それはオレから説明します」

 

 ここで違法収集者とは知らなかった〜などと嘘を吐くと、管理局からの信用が無くなりあらぬ疑いをかけられるリスクがある。

 故に馬鹿正直に話し始めたヤマトを止めずに様子を見守ることにした。

 ……フェイトちゃんと手を組んでいたと知ったクロノ君の顔のなんと面白いこと。

 

「な、何を考えてるんだ君達は!?

 まさか、ロストロギアの違法収集者と手を組むなんて……下手したら君達もフェイト・テスタロッサの、所属する組織の関係者として扱われる……。

 次元法違反で逮捕される可能性すらあるんだぞ!!」

 

「で、でもリニス……ひなの使い魔の大切な子だし、フェイちゃん悪い子じゃないもん!」

 

「フェイトが良い子かは関係ない!

 彼女が所属している組織と君達が繋がっている疑いがあることが問題なんだ!!」

 

「あうぅ……」

 

 おい、なにひなちゃんを涙目にしてんだ執務官? ……おっと、ここで敵意を見せるのは悪手だな。

 ここは感情的にじゃなくて理性的に立ち回らなければ。

 

「確かにフェイトちゃんの組織と繋がりがあると指摘されたらなんとも言えません。

 ただ、俺達はフェイトちゃんと敵対することによる、ジュエルシードの奪い合いの果てに、ジュエルシードを刺激して重大な事故に繋がる事を懸念しました。

 現に味方に引き入れられなかった金髪……龍帝院の暴走の結果、ジュエルシード二個による次元震が発生しましたし。

 だからこそ先にジュエルシードを集めて、最後にそれを賭けて戦うことにした。

 フェイトちゃんと敵対してジュエルシードの捜索が危険且つ困難になるか、一旦協力してジュエルシードの捜索を安全に且つ迅速に済ませるか、リスク回避のためにこの上ない選択をしたと思いますけどねぇ?」

 

「へ、屁理屈だ!!」

 

 確かに屁理屈である。どんな理由があろうとも次元犯罪者と手を組むだなんて正気の沙汰とは思えないだろう。

 あと金髪に関しては味方に引き入れられなかったではなく、そもそも味方にしようとしなかったが……まぁそこはなんでも良いか。

 どの道うまく味方に引き入れてもデメリットしかなさそうだし。

 

「例えどんな理由があったとしても違法収集者と手を組むのは認められない!

 この際フェイト・テスタロッサは良いとしても、彼女の裏にいる存在が世界を滅ぼそうとしてる可能性だってゼロじゃないんだぞ」

 

「仮にそうだとして果たして彼らを逮捕できるんですか?

 この子達は正真正銘この世界の住民。

 確か管理局法に管理外世界の住民への逮捕権は持たないって条文があったはずですが……管理外世界で誘拐として騒がれるのを防ぐためでしたよね?」

 

「ぐっ……」

 

 俺の理論武装に何も言い返せないクロノ君。

 そりゃそうだろう。なにせフェイトちゃんと手を組んでから、いつでも管理局に突っ込まれても良いように、言い訳を二万通りくらい用意してたんだ。

 

「……確かに私達に彼らを逮捕する権利はありません。

 ですがあなたはどうかしら?」

 

 そう言って、悔しそうな顔でこちらを睨みつけるクロノ君を手で制したリンディさん。

 どうやら選手交代の様だ。

 

「あなた、確かジュエルシードの所持に関する特例措置の手続きを行なっていたわね?」

 

「はい。管理世界と一切の関わりがないこの子達はともかく、俺はちょくちょくミッドチルダに行く上に、管理世界の特別資格なんかも取得している為管理局法適応されますし。

 あなた達が来た瞬間に違法所持でしょっぴかれたくないので取得してました」

 

「正しい判断だわ。

 ……でもロストロギアの所持を特別許可する場合、あなたはロストロギアを回収した際に速やかに管理局に提出する義務がある。

 あなた一つも管理局に提出してないわよね?」

 

「はい」

 

「フェイトさんとの約束を果たすためとは言え、提出の義務を怠ったのはいけないわね。

 義務を果たしていない以上、特例は取り下げなくてはならなくなり、あなたはジュエルシードの違法所持者として扱われる可能性があります。

 それだけではありません。下手したら管理局を欺いたとして詐欺罪が適用される場合もある」

 

「そんな……!!」

 

「お前……なんでそれをもっと早く言わなかった!!」

 

「れお君捕まっちゃうの? そんなのヤダ!!」

 

 ひなちゃん達が悲痛な表情でそう叫ぶが、それに対して俺は涼しい顔。

 だって捕まらないって確信してるんだもん。

 さっきも言ったが、言い訳は二万通り用意してるんだ。

 

 そろそろひなちゃん達を安心させてやろうとリンディさんに対してニヤリと笑い言い訳を投下しようとした直後、すずかちゃんが「あれ……?」と口を開く。

 

「……あの、レオ君の特例の条件ってレオ君がジュエルシードを回収した場合は即座に管理局に届ける事でしたよね?」

 

「えぇ、そうね。

 レオさんの回収したジュエルシードは私達に渡さなければならないわ」

 

「……!

 ねぇレオ。あんた、今までジュエルシードを封印した事はあったけど、回収した事無かったわよね!?」

 

「うん」

 

「やっぱり!

 ならレオ君は管理局への提出は怠ってないよ!

 だってそもそも()()()()()()()()()んだもん!!」

 

「そういう事か!!」

 

「「?」」

 

 そう。実は俺はジュエルシードを一つも回収してなかったりする。

 俺が封印した際は必ずなのはちゃんや、ひなちゃんに回収を頼んでおり、なのはちゃん達が塾で対応できず一人でジュエルシードと戦っていたときも、その場では封印せずになのはちゃん達が来るまで粘っていた。

 

 ……と言うかこれ俺が言いたかったんだけど。すずかちゃん賢すぎるって……。

 

「なるほど。ロストロギアの提出という義務を怠ったわけではなく、そもそも一つも回収できず義務が発生しなかったと……」

 

「はい、回収は必ず特例を取得した人でないといけませんって法律はなかったんで、他の人にやってもらってました」

 

「そ、それはグレーゾーンじゃないか!」

 

「でも法律の穴をついてグレーな事してはいけませんという法律はありませんしぃ?」

 

「そうね。困った事に今回の場合は罪にはならないわ。

 はぁ、どれだけ危険な事をしていたかってお説教をするつもりだったのだけど……」

 

 困った様にため息を吐くリンディさん。

 どうやら彼女は俺らが管理局法に抵触していた場合は、それがどれだけ不味い事だったかを教えておきたかっただけで、逮捕するつもりは微塵もなかったようだ。

 

「ですが分かりました。

 何故ジュエルシードをあなた達が集めていたのかも、フェイトさんと手を組んでいたのかも。

 一人グレーな子がいたけど、あなた達は大丈夫でしょう。

 それじゃあ、みんなが問題なしと分かったところで…………」

 

「本題……ですね」

 

「ここらでちょっと休憩しましょ」

 

 突如そんな事を言い出したリンディさんに俺達一同ズッコケた。

 いや休憩かい!

 

 ……でも本当に眠いし、休憩するなら少しの間仮眠でも取らせてもらうか?

 

「ヤマト、悪いけど少し休むから起こし「休憩中の間、ひなさんに聞きたい事があるのだけど」ごめん目が覚めたわ」

 

「お前な……」

 

 話題がひなちゃんになって完全に目が冴えた。

 この子はなのはちゃん達以上の魔力量を誇る上に、エンジェルウィングやフェニックスウィングといった管理局が喉から手が出るほどのレアスキルを持つ。

 こんな幼い子を労働環境的にブラックな組織に入れる訳にはいかない。

 スカウトならば絶対に止める!!

 

「聞きたいことってなぁに?」

 

「ひなさん、あなたのお母さんの名前を教えてもらっても良いかしら?」

 

「ママ? 羽鳥ママだよ」

 

「ハトリ……お母さんの旧姓を聞いても?」

 

「旧姓?」

 

「お母さんの昔の姓のこと。この場合お母さんの方のお爺ちゃんの姓……ファミリーネームを言えば良いよ」

 

「お爺ちゃんのファミリーネームはグレアムだよ」

 

「…………最後に。

 あなたのお母さんはイギリス出身……そうよね?」

 

「うん! ひなはイギリス人の日本人のハーフなのだ!!

 …………あれ? なんでママの生まれた所知ってるの?」

 

「……そう。やっぱりあなた、あの子の娘だったのね」

 

 そう言って懐かしむ様な……と言うかなんか泣きそうな表情を浮かべるリンディさん。

 ……てっきりひなちゃんをスカウトするものだとばかり思っていたけど違う様だ。

 

 ……そう言えば羽鳥さんって自分用のデバイス持ってたよな?

 以前俺に修理お願いしに来た事あるし。

 …………まさか

 

 直後、船内にアラームが響き渡る。なんらかのトラブルが発生した様だ。

 

『艦長、大変です! アースラに何者かが侵入しました!!

 ……あぁ、迎撃に出た局員がすごい勢いで薙ぎ倒されています!!』

 

「分かりました。クロノ、迎撃準備! あなた達も戦闘体制に入って頂戴!!

 それで、侵入者の特徴は!?」

 

『桃髪の女性で薙刀型のデバイスを装備しています!!』

 

「薙刀型……もしかしてひなさんを…………警戒態勢を解除して、彼女を艦長室までお通ししてあげて」

 

『え、で、ですが危険では……?』

 

「大丈夫、彼女の目的は察しているわ……」

 

 その直後、バンと乱暴に艦長室のドアが蹴破られる。

 横開きのドアがひしゃげてやがる。どんな力で蹴ったんだ…………?

 ……と言うか桃髪で薙刀デバイスって、これもう確定だろ。

 

「今更どの面下げてウチの娘を連れ込んだのかしら!?

 大至急、ひなを返してもらうわよ!!」

 

「あ、ママ!!」

 

 予想通りと言うべきか……。

 侵入者とはひなちゃんの母親、羽鳥さんだった。

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