見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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管理局をとるか、フェイトちゃんをとるか……どっちつかずで

 アースラにカチコミをかけた羽鳥さんは、大事な愛娘を見つけるや否や凄まじい速度で彼女を抱擁する。

 

「ひな! もう、急に反応が途絶えるから心配したのよ!

 知らない人にはついて行っては行けませんって言ってるじゃない!!」

 

「あうぅ、ごめんなさぁい……。

 でもどうしてひながここにいるって分かったの?」

 

「ひなのミラクルホープにGPSを入れてるからよ」

 

「じーぴーえす?」

 

 実はひなちゃんのミラクルホープの位置情報は常に羽鳥さんの薙刀型デバイス、エスペシャリーホープに送られる仕様になっており、ひなちゃんが勝手に海鳴市から出た場合などはすぐに分かるようになっているのだ。

 また、それ以外にもミラクルホープが自宅にない時に持ち主との距離が一キロ以上離れた場合や、持ち主に命の危険が迫っている場合なども緊急事態として、羽鳥さんに通報が入る仕様。

 実際次元震が起きた際もあの後すぐにひなちゃんの元に駆けつけてたし、まさに子供が安心安全に魔法を使う為の見守りシステムが搭載されているのだ。

 

 ……え、どうして知ってるかって?

 羽鳥さんの依頼でこのシステム作ったのは俺だからだよ。

 

「……とりあえずお説教は後にしましょ。

 まずは人様の娘を誘拐しようとした利権まみれのゴミ組織のお掃除からね。

 レオ君、この船沈めるからみんなやひなを連れて帰ってて「ハトリ!」……!!」

 

 薙刀型デバイスを構えてそんな物騒な事を宣う羽鳥さんだったが、リンディさんの叫び声で動きが止まる。

 リンディさんはつかつかと羽鳥さんの元へと歩み寄ると、手のひらを振りかぶり彼女の頬へと振り下ろす……!

 

「……リンディだったのね。ウチの娘をここに連れて来たのは。

 久しぶり。11年ぶりだけど、随分偉くなったじゃない?

 それにクロ助君もすっかり大きくなっちゃって……」

 

「久しぶり……じゃないわよ! 何も言わずに急にいなくなったりして!!

 グレアム提督も安否すら教えてくれなかったし…………。

 まずは一発殴らせなさい!!」

 

「痛いのは嫌いだからやだ」

 

 リンディさんのビンタを手のひらで止めた羽鳥さんと、それでもなお叩こうとするリンディさん。

 そんな二人の押し問答を見たなのはちゃんは驚愕と言った顔でひなちゃんの肩を掴む。

 

「ね、ねぇひなちゃん!

 羽鳥さんってリンディさんの知り合いなの?

 ……と言うかなんで羽鳥さん魔法の事を知ってるの!?」

 

「ひなあのおばちゃんに会ったの今日が初めてだから分かんない。

 あと魔法についてだけど、ひなに魔法の基礎を教えてくれたのはママなんだよ?」

 

「そうだったの!? 羽鳥さんって一体何者……?」

 

「……俺も羽鳥さんの過去はあまり聞いてないんだけど、魔法の事についてやけに詳しいし、なによりリンディさんと関わりがあることから考えて、元管理局員って考えるのが普通だろうね」

 

 と言うかそれしかないだろう。

 それにしては先ほどは管理局に対してかなり殺意が高かったけど、なんらかのトラブルで辞めたとかなら元職場に良いイメージは残らないだろうし……。

 そんな事を考察していると、「ハトリ……ハトリ……」と呟いていたクロノ君が思い出したかの様に顔を上げる。

 

「もしかして彼女、ハトリ・グレアムか!!」

 

「違うよ。ママのお名前、桃崎羽鳥だよ!」

 

「結婚する前の名前じゃないか?

 クロノ……だったよな。ひなのお母さんって有名人なのか?」

 

「あぁ。管理局の歴戦の勇士、ギル・グレアムの一人娘にして次元航空部隊の若き英雄。

 当時の魔導師ランクは条件抜きでSSオーバー。

 11年前に突如失踪するまで、次元航空部隊最強の魔導師として名を馳せていた」

 

「さ、最強!? ひなのお母さんって凄かったんだな…………」

 

「うん、ママすっごく強いよ! だってれお君でも勝てないもん」

 

「嘘でしょ!? ひな、流石にそれは盛ったでしょ」

 

「…………悔しいですが事実です。ハイ」

 

 と言うのも過去に少し太ったから運動したいと、魔法の練習に参加したことがあった。

 その際に彼女と戦う機会があったのだが、ひなちゃんは手も足も出ず、リニスも一撃掠らせるのがやっと。

 そして俺もアスカロンとカートリッジまで使ったと言うのに引き分けてしまったのだ。

 

「あれで鈍ったっていうんだから、全盛期は一体どれほど強かったのやら……」

 

「エンジェルウィングというレアスキルと爆破魔法による広範囲の一斉爆撃により近づくのは困難。

 また、近づけたとしても達人クラスの薙刀術と蹴り技が待っている。

 その類稀なる殲滅力から彼女は管理局の爆げ──」

 

「ちょっとクロ助君!?

 あんまり娘とその友達に黒歴史を公開しないで欲しいな!!」

 

「あら、カッコいいじゃないの。元、管理局の爆撃機さん?」

 

「ちょ、リンディ!?」

 

「そう言えばさっきのジュエルシードの封印の時にひなさんもエンジェルウィング使ってたけど、羽を爆発させる方法は教えなかったの?

 教えてあげたら彼女、すっごく強くなるんじゃないかしら?」

 

「やめて! 11年も生存報告寄越さなかった件は謝るからもうやめて!!」

 

「……なんかあの二人、随分と仲いいな」

 

「ハトリ・グレアムと母さ……艦長は幼馴染らしいからな」

 

「おばちゃん、ママを虐めちゃめー!!」

 

 なるほど、旧友だったならそりゃあこんなにも距離が近くなるはずだ。

 

 ……まぁそれは良いとして、ジュエルシードとの戦い見てた件について、後で詳しく教えてもらおう。

 漁夫の利を狙ってたとかなら、この船沈めてやる。

 

 

 ◇

 

 

 羽鳥さんとリンディさんが感動の再会(?)を果たした後、長かった休憩が終了しようやく本題に入る事となった。

 

「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持ちます。

 ……しかし今回の事件、フェイト・テスタロッサの裏にいる存在や次元震を引き起こした張本人でもある龍帝院竜弥の存在など、私達の想像以上に事件は複雑化しています。

 そこで、あなた達には私達に協力して貰いたいの」

 

「っ!? ちょ、ちょっと待ってください母さ……艦長!!

 これは次元干渉に関係する事件です。それに民間人を関わらせるのは…………!

 それに彼らはフェイト・テスタロッサと関わりがあります。とてもじゃないですが信用できません!!」

 

「そんな……!」

 

 ……まぁ、クロノ君の言う事も一理ある。

 もはや俺らにとってフェイトちゃんは友人と言っても過言ではない。だからこそ情に流されて、ここぞと言う場面で管理局を裏切るリスクが存在するのだ。

 そして何より……民間人を鉄火場に行かせたなんて管理世界の世論にバレたら、管理局の信用問題に発展する可能性もある。

 俺がリンディさんと同じ立場なら確実に魔法を捨てて日常に帰れって言う。

 

 だが当のリンディさんは緑茶に砂糖を入れて一啜り、そして一息吐くと続ける。

 

「フェイトさんと関わりがあるからこそよ。

 彼女と深い関わりを持ってしまったからこそ、この一件から手を引けと言われても納得できないでしょう?」

 

「そうですね。少なくともオレは納得しません」

 

「わたしもです! フェイトちゃんとの約束は絶対に守らなきゃ!!」

 

「無論アタシもよ、すずか達もそうよね!?」

 

「もちろんだよ!」

 

「ひなも中途半端はイヤ!」

 

「……まぁ、ここまで関わったんだし、最後まで付き合いたいよな」

 

「とまぁこの様に、納得できない子を無理に日常に帰してもきっと、勝手に行動する様になってしまう。

 ならば私達に協力してもらった方がいいと思わない?」

 

 なるほど。

 勝手に行動されて余計ややこしくなるくらいなら、手綱を握っておこうと考えた訳だ。

 確かにその方が理に適っている。

 

「そ、それならデバイスを没収すれば……」

 

「……は?」

 

 お茶請けの羊羹を食べてしまったひなちゃんに俺の羊羹の皿をずらしていると、なんか聞き捨てならない言葉が聞こえた件について。

 

「できると思う?

 先ほどの戦いを見させてもらったけれど、この子達かなり強いわよ。

 特にヤマトさん、レオさん、ひなさんに関してはクロノでも勝てるかどうか……。

 連携されたらアースラの全戦力を投入してもキツイかもしれない」

 

「すみません、俺AMF(アンチ・マギリング・フィールド)使えるんで、対策してない魔導師は一人で完封できます。

 ……所でクロノ君、デバイスを……俺の三徹の結晶を没収しようと考えた件についてO☆HA☆NA☆SHIしようじゃないか。ちょっと甲板出ろやコラ」

 

「ちょ、肉体言語で対話しようとしてないか!?」

 

「レオ、ステイ」

 

「ユーノ君、えーえむえふって何?」

 

「魔法を使えなくする空間を展開するAAAランクの高位防御魔法だよ」

 

「あれズルいんだよ。どんな魔法も使えなくなっちゃうんだもん!」

 

 拳を鳴らしながらクロノ君に詰め寄っていた俺であるが、ヤマトに止められちまったざんす。無念。

 まぁ、何はともあれ流石のクロノ君も俺らが勝手に行動するリスクがあること、デバイス没収は俺のブチギレ案件であることが分かり、納得するしかなくなってしまったようだ。

 

「それで、みんなは協力してくれるかしら?」

 

「すみませんがオレはやはりフェイトの事がありますし…………」

 

「そうね、ならこうしましょう。

 これからは管理局もジュエルシードの捜索を行いますが、その間は……いえ、ジュエルシードを賭けた決闘が終わるまでの間はフェイトさんには干渉しません。

 また、全てのジュエルシードが集まった際に、フェイトさんと決闘を行うことも許可します」

 

「本当ですか!?」

 

「えぇ。手続きに手こずって迷惑をかけてしまったのも事実だし、これが私達にできる最大限の譲歩です」

 

「……一応言っておくけど、娘に借りを作ったとしても、この子は管理局にはあげないわよ?」

 

「はいはい、分かったからあなたは少し黙ってて。

 見ないうちにすっかり親バカになっちゃって…………」

 

 ……確かに一見するとこちらに圧倒的有利な協力関係だ。

 しかしあくまでフェイトちゃんにちょっかいをかけないだけで捜査は進めるだろうし、決闘に関しても勝ったならばその場で逮捕。負けてもジュエルシードを持ち帰る際に黒幕の座標を逆探知して一気に制圧ができる。

 そう考えると管理局側にもメリットがある訳か……。

 

「まぁ、急にこんな事を言われてもあなた達も混乱しちゃうだろうし、取り敢えず一日考えてみて?」

 

 

 ◇

 

 

 その後クロノ君に案内されてアースラから海鳴市へと帰還した俺達。

 唯一羽鳥さんはアースラに残ったけど、幼馴染との再会で色々積もる話もあるだろうし、仮にカチコミの件で逮捕されそうになったとしても、彼女なら船を沈めて帰ってくるだろうから心配しなくていいだろう。

 

「……管理局と協力する件。どう思う?」

 

「わたしは協力してもいいと思うな」

 

「僕も賛成だ。管理局は大きな組織だし、一緒に戦ってくれるなら心強いよ」

 

「ん〜……よく分かんないけど、あのおばちゃんママとお友達みたいだしいいと思う」

 

「……でも少し都合が良すぎるんじゃないかしら?」

 

「うん。あそこまで譲歩されちゃうと、裏があるんじゃって勘繰っちゃうよね……」

 

 かなり高待遇な条件であるが故になのはちゃんとひなちゃん、ユーノ君は賛成の様だが、お嬢様コンビはどこか否定的。

 どうやら管理局があまりに譲歩しすぎて、一周回って怪しく感じてしまっているらしい。

 

「そうだな。オレもアリサとすずかと同じ意見だ。

 管理局が治安を守る組織だと言うなら、普通罪を犯している人間は絶対に認めない。

 なのにフェイトに干渉しないだなんて……一体何を考えているんだ……?」

 

「……そこまで心配しなくていいと思うよ。フェイトちゃんを見逃すメリットはちゃんとあるし。

 それに管理局としても、下手に俺らを敵に回して三つ巴……金髪含めて四つ巴になる展開は避けたかったんだろ」

 

「確かにそう言う考え方もあるな。う〜ん……」

 

 更に難しい表情を浮かべるヤマト。

 確かに俺はなんとなく意図を察してしまったとはいえ、確実にそう考えてたって保証は出来ないもんなぁ。

 

 しばらく思案していたヤマトだったが、やがて決心した様な表情を浮かべる。

 

「決めた。これからオレはフェイトと一緒に行動する」

 

「「「え!?」」」

 

「はいそこ、流石に今は過剰反応しない!

 ……一応理由を聞いておこうか?」

 

「仮に管理局がなんらかの罠を貼っているなら、フェイトを守らなきゃだろ?

 それなら実力的にオレかレオが護衛につくのがいいと思ったんだが、フェイトはお前のこと怖がってるからさ」

 

「そう言うことか」

 

 フェイトちゃんとしても管理局が来た以上一緒に行動しづらくなるのは目に見えてる。

 かと言ってかつての様にアルフと二人というのも心細いだろう。

 ならヤマトが明確な味方としてついててやった方が彼女も安心するんじゃないだろうか。

 

「あとは……ひな、悪いんだが当分の間リニスをフェイトに貸してあげてくれないか?」

 

「やだ!」

 

「え……?」

 

 かつての先生もいた方が安心すると思ったのだろう。

 ヤマトがひなちゃんにリニスの貸与を頼んだが、それに対するひなちゃんのアンサーはまさかの拒絶。

 一体どうしたものかと考えていると、ひなちゃんは頬を膨らませる。

 

「ヤマト君、リニスは物じゃないんだよ!

 ひなじゃなくてリニスにお願いしなくっちゃ!!」

 

「……そうだな。悪い、オレが悪かった。

 リニス、少しの間オレとフェイトの護衛をしてくれないか?」

 

「……私はひなの使い魔です。

 あの子がかつての教子とは言え、ひなから離れる訳には……」

 

「ひなは大丈夫だよ。それにリニスもフェイちゃんのこと心配なんでしょ?

 ひなの事は良いからリニスがしたい事をしていいよ」

 

「ひな……」

 

 ひなちゃんの使い魔という事で渋るリニスだったが、アースラで一言も言葉を発さずモニターに映ったフェイトちゃんを見つめていた事から、フェイトちゃんを心配しているのは明白。

 ひなちゃんの許可を得たリニスは、嬉しそうな表情を浮かべた。

 

「ありがとうございます。少しの間、行ってきますね」

 

「うん、行ってらっしゃい!」

 

 ……当分はヤマトとリニスがフェイトちゃん係か。

 なら残った俺達が管理局と連絡を取り合いながら行動して…………

 

 いや、待てよ。

 

「……よくよく考えたら、俺は管理局と付かず離れずで行動した方がいいかもしれないな」

 

「どういう事よ?」

 

 ついさっきのアースラでの取り調べで、この面子の中で俺が一番警戒されているはずだ。なにせジュエルシード所持の特例でグレーゾーン紛いな事をしてた訳だし。

 言ってしまえば信用がないのだ。

 あまり近づきすぎたら監視される可能性もあるし、かといって敵対行為なんかはもっての外。

 

「申し訳ないけど俺は管理局にもフェイトちゃんにも接触せずに独自行動させてもらう。

 あ、心配しなくても敵になる訳じゃないからな?」

 

「れお君が別行動するなら、ひなも一緒行く!!」

 

「なら残った私達が管理局でクロノさん達と協力かな?」

 

「正直まだちょっと気は進まないけど……常に警戒をしておくわ。

 なのは、アンタ一番騙されやすいんだから注意するのよ?」

 

「う、うん。分かったの。

 ……ってアリサちゃんはわたしをなんだと思ってるのかな?」

 

 何はともあれ今後の管理局に対する方針は決まったな。

 なのはちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんの三人が管理局に協力。

 ヤマトとリニスの二人がフェイトちゃんの護衛。

 そして俺とひなちゃんがどっちつかずで独自行動。

 

 …………よし

 

「方針決まったよな? てことはもう解散だよな?

 眠すぎていい加減頭痛くなってきたし、俺はそろそろマジで寝させてもらうわ。

 それじゃ、アディオース!!」

 

 全力疾走で我が家へ帰還し、夢の世界へログインした俺であった。

 独自行動って事で誰からも指示は受けないだろうし、当分ジュエルシード捜索もデバイス製作もサボったろ。

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