見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

57 / 68
(リンディ視点)海鳴市の魔導師達

「……それで、話って何かしら?

 もう日も暮れてるしご飯作らないといけないから、同窓会とかはまた別の機会に設けて欲しいんだけど」

 

 緑茶を砂糖もミルクも入れずに飲みながら、悪びれもなくそう宣うハトリ。

 彼女と私は幼馴染。今日出会ったなのはさん達と同じくらいの背のときに知り合い仲良くなった。

 そして一緒に管理局に入局し、お互いにキャリアを積んで、優秀だった彼女は管理局の若き英雄と呼ばれるまでになった。

 

 ……11年前の事件で大怪我をし、失踪に近い形で姿を消すまでは。

 

「もしかしたらって思ってたけど、この世界に戻っていたのね」

 

「まぁね。あんなところ(管理世界)にいるのはもう嫌になっちゃって。

 だから魔法も立場も何もかもを捨てて、第二の人生を謳歌させてもらっているわ」

 

「……の割にはひなさんを魔導師として育てているみたいだけどね?」

 

 そう言ってチラリとモニターに視線を移す。

 レオ君のアスカロンが戦闘の様子を動画として収めていた様で、それを共有してもらっていたのだ。

 

 その動画を見ると翼を展開して縦横無尽に空を駆け回り、ジュエルシードの位相対に連続で攻撃を叩き込むひなさんの姿があった。

 

「うわぁひなちゃんの背中から生えてる翼可愛いな〜。まるで天使さんみたい!」

 

「そうでしょう? ひなは可愛いの!

 いつもは甘えん坊で可愛いんだけど、戦いになったらこんな立派な顔して戦うの!!

 ほら、最後はひなが封印した! 流石はうちの子!!」

 

「落ち着きなさい」

 

 オペレーターのエイミィさんの感想に便乗して娘自慢を始めたハトリ。

 まさかこんなに子煩悩になるとは、11年前の彼女が見たらビックリするに違いない。

 

 話を戻すが、エンジェルウィングはかつてハトリが使っていたレアスキルだった。

 硬化して防御に使用することも、羽を飛ばす事で攻撃に転用することも、なんなら飛行制御に使ってより速く移動する事すら出来る。

 攻撃、防御、移動、全てに隙のない能力だった。

 

「エンジェルウィング……ひなさんも使えるのね」

 

「娘だもの、使えてもおかしくはないでしょう?」

 

「いいえ、そもそもあなたに娘がいる事自体おかしいのよ。

 だってあなた…………」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……かしら?」

 

「……えぇ」

 

 11年前の事件は本当に悲惨だった。

 あの事件でハトリは数ヶ月生死の境を彷徨い、なんとか生還してくれたものの全身に重い障害が残った。

 それこそ子供を作ったら身体が耐えられず、母子ともに死亡するほどの。

 

「……単刀直入に聞くわ。ひなさんはあなたのクローン……人造魔導師なのかしら?

 それならあれだけ強いのにも説明がつく」

 

「な……それって……!?」

 

 おそらくどこかの違法施設で造られたひなさんをグレアム提督が保護、そして娘であるハトリに預けたのだろう。

 だが当のハトリは心外と言った表情を浮かべる。

 

「な訳ないでしょ。仮にそうだとしても、あの子と昔の私似てないじゃない」

 

「瓜二つよ」

 

「あの子の方が何万倍もキュートよ!!

 ……あの子は正真正銘、私がお腹を痛めて産んだ子。なんなら出産記録残ってるし提出してもいいわよ」

 

「でもそれじゃああなたの身体が耐えられる筈……!」

 

「一つ言えるのは……あの子が()()()()()()()()()()()()()ってこと」

 

「……そう言うことにしておくわ」

 

 この場で彼女が嘘をつくとは思えないし、怪我の後遺症で動くのもやっとだったハトリが、いくら11年経過したとはいえ、アースラにカチコミをかける元気があるとも思えない。

 恐らくは、ひなさんを産む前に管理局が把握していない様な特別な治療を受けたのだろう。

 

 しかし仮にそうだというなら結構な事ではないか。

 今にも死にそうな身体で失踪した親友が実は生きていて、子宝にも恵まれて人並みの幸せを手に入れていた。

 それに娘も大切に育てている様だし、あの子も周囲から愛されて育った子だと言うことも見てとれる。

 ならばこれ以上何か言う方が野暮ってものだ。

 

「これ以上あの子の出生に関しては何も言わないわ。……でもそれならあの子の強さは一体なんなのかしら?

 うちのクロノといい勝負するわよ」

 

「これ、結構ヤバいんじゃないの、クロノ君?」

 

「うるさい」

 

 茶化すエイミィを睨みつけたクロノ。

 そんな二人のやり取りを見たハトリはくすりと笑うと続ける。

 

「あの子は私以上に天才だし、それに魔法を教えてくれる人にも恵まれたから」

 

「あなたを超える天才って凄いわねぇ……って、あなたが教えたんじゃないの?」

 

「まっさか〜。私は空の飛び方を教えただけ。

 あの子に本格的な魔法を教えたのは、親友のレオ君よ」

 

 その言葉にモニターのレオ君に視線を移す。

 

「……あれ、彼は確か杖を用いた後方担当だったはず。

 なのになぜチェンソー型のデバイスで前に出ているんだ?」

 

「あ、今籠手型のデバイスに持ち替えた!

 ……もしかして複数のデバイスを使い分けてるのかも!!」

 

 エイミィの言う通り、レオ君はその後も棒状のデバイス、ブーメラン型のデバイス、粒子砲型のデバイスと次々にデバイスを持ち変えている。

 また、魔力量も相当なものだ。恐らく魔力だけでS……いや、SS以上は有しているだろう。

 だが、驚くべき所はそこだけではない。

 

「あの子、変換資質を持っているわね」

 

「えっと……確認しただけでも炎熱と氷結、電気に突風の変換資質を持っています。こんなにたくさんの変換資質、見たことありませんよ!!」

 

 なるほど、変換資質を最大限に活かすためにデバイスを変えているのね。それにこの戦い方なら手数によって相手を翻弄する事もできる。

 かと言って詰め込みすぎて器用貧乏になる訳ではなく、一つ一つの動きはとても洗練されていて、これは武術に対する鍛錬も相当積んでいるのだろう。

 

「彼は自分の才能を余す事なく発揮するために、相当の努力をしているのね。

 それに法律の穴をつける程の狡猾さ……いえ、賢さもある。

 なるほど、彼が教えたのならひなさんがあれだけ強くなるのも納得だわ。ほんとウチに欲しい人材だわ」

 

「うわぁ……艦長がうっとりしてる。……かなりの逸材だったみたいだね」

 

「言っとくけど、あの子は将来の息子候補なんだから勧誘はさせないわよ!!」

 

「彼女にそれはまだ早いんじゃ……?」

 

 親バカを発揮したハトリはともかく、聞くところによるとどうやらレオ君は管理局の重鎮の孫でもあるらしい。

 なら近い将来管理局に入局する可能性は高いだろうし、私から勧誘するのはやめておきましょう。

 …………ところで重鎮って所で誰の孫なのか詳しく言わなかったのは何故かしら?

 

 なんだか意味深にニヤニヤと笑うハトリを怪しみながらも、今度はヤマト君へと視線を移す。

 彼は近接は剣、遠距離は銃と使い分けている上、何かを唱えた途端に動きの精度が一気に向上。

 なんらかの強化魔法を持っている様だ。

 

「ヤマト君も凄いねぇ。純粋な近接ならレオ君より強いんじゃないかな?」

 

「あぁ、戦い方はレオよりもシンプルだが、その分彼よりも精度は高い。

 ……っ! 今のは瞬間移動か!?」

 

 モニター上のヤマト君は突如その場から消えたかと思うと、既にジュエルシードの位相体の懐を侵食して斬り込んでいた。

 彼もまたレアスキルを持っていたのかと思ったが、動画を見る限り魔法を使った形跡はない。

 一体どうなっているのだろうか?

 

「あぁ、あれは神速っていう御神流って流派の技ね。

 身体能力や知覚能力を一時的に極限まで上げて、私達が認識できない速度で動くことができるの。

 よく桃子ちゃんと商品の取り合いをするけど、あれ使われたら私でも負けちゃうわ」

 

「そんな技が……凄い流派ね……」

 

「そんなデタラメな流派……一体どこで学んだんだ?」

 

「なのはちゃんの家の道場でよ。あの子の家、道場あるから……」

 

 それを聞いてモニター上のなのはさんを見てみると、彼女はアリサさんやすずかさん……そしてフェイトさんと連携しながら位相体と戦っていた。

 あら、なのはさんは剣を使わないのね。

 

 ハトリ曰く、なのはさんはたまに参加する程度であり、御神流を本格的に習ってるのはヤマト君とアリサさんの二人の様だ。

 

「それにしてもなのはちゃんもアリサちゃんもすずかちゃんもいい動きをしますねぇ」

 

「……それとフェイト・テスタロッサもな」

 

「アリサさんが近距離攻撃で牽制して、なのはさんが後ろから砲撃、フェイトさんが遊撃で前衛や中衛を動き回り、すずかさんがみんなの援護……理想の連携ね。

 本当になのはさん達三人は最近魔法を使える様になったばかりなの?」

 

「そうみたいよ。私もこうしてこの子達の戦いを見るのは初めてだけど、この歳でこれだけできるなら言う事はないわね」

 

 御神流云々はともかく、彼女達は初心者ながらとても良い動きをしている。

 きっとこのまま鍛え続ければ、大人になる頃までにはひなさん達に追いつくだろう。

 しかし、惜しむらくは…………

 

「フェイトさんが違法収集者でなければ、一番良かったのだけど……」

 

 フェイトさんはやはり魔法のキャリアが長いだけあり、なのはさん達よりも動きが洗練されている。それに今回は連携で戦っているが、遠距離も近距離も対応できるだろうし、単騎でもかなり強いだろう。

 ヤマト君達と仲が良く、彼らも彼女を捕らえるのは本意ではない以上、本格的に逮捕に動くとなるとクロノをぶつけなければならない。

 しかしそうなると彼女の裏にある存在にこちらの手札がバレてしまうだろうし……。

 

「……それについて、リンディにお願いがあるんだけど良いかしら?」

 

「お願い?」

 

 どうしたものかと考えていると、真剣な表情を浮かべたハトリが声をかけてくる。

 

「あの子、以前娘がご飯に連れてきたことがあったの。

 そのときにフェイトちゃんをみたら、すごい痩せてたし服の下には鞭で打たれたような傷があったわ」

 

「……虐待されてるって言いたいのね?」

 

「えぇ。きっと親に大切にされていないのね。

 でもあの子は母親の望みを叶える為にジュエルシードを揃えようとしている……」

 

「母親……あなた、あの子の事情を知ってるの?」

 

「あいにく、母親の命令で動いてるって事しか聞いてないわ。

 ……私も一児の母だからなんとなく分かる。あの子は親を喜ばせたくてやってるって」

 

「だからと言って、ジュエルシードを集めるのは……!」

 

「クロ助君、キミねぇ……あの子はまだ9歳なのよ?

 悪い事だからしちゃいけないって割り切れる様な歳じゃないの。本当はまだ親が守らないといけない歳なの。

 ……でもそんなあの子の心をあの子のお母さんは利用している」

 

「……マインドコントロールね」

 

 恐らくフェイトさんはジュエルシードを集めればもう虐待をされなくなる……いや、優しい母親に戻ってくれるという一種の強迫観念で動いているのだろう。

 それを彼女の母親が利用しているというのなら、それは一種の洗脳。

 つまりフェイトさんはロストロギアを違法収集する犯罪者ではなく、洗脳されて戦わされてるだけの被害者という事になる。

 

「なるほど……つまりフェイトさんを逮捕ではなく保護して欲しいって言いたいのね」

 

「えぇ。あなたもかつては親バカだったんだし、私の気持ちは分かるでしょ?」

 

「え、艦長そうだったんですか!?」

 

「……まだクロノが3歳くらいの話よ」

 

 ……確かにそう考えるとフェイトさんは可哀想な子ではある。

 それにせっかく才能に恵まれているのだから、それを良い事に使ってほしくもあるわね。

 

「……分かりました。これからアースラはフェイトさんは逮捕ではなく保護する方針で動きましょう」

 

「ありがと。最悪私があの子の保護責任者になるから」

 

「あら、心配しなくても私がなるわよ。あなたはひなさん一人で手一杯だろうし、急に子供連れて帰ったら旦那さんビックリするわよ?」

 

「んな訳ないでしょ。ひなに妹かお姉ちゃん欲しいってせがまれた事あったし、あの子の願いを叶える絶好のチャンスでもあるわ!!

 ……あ、もちろんフェイトちゃんがウチに来るなら、うちの子と同じくらい可愛がるから!!」

 

「あなたは逆に可愛がりすぎて堕落させそうだわ。やっぱり私が保護責任者になる」

 

「そういうリンディはあの子を管理局で働かせたいだけでしょうが!!」

 

「そんなわけないでしょ。望まないなら無理に入局させませんし、キチンと責任を持って育てます!!」

 

「クロノ君良かったね! もしかしたら妹できるかもよ!!」

 

「……これは素直に喜んで良いものだろうか?

 ……あ、母さ……艦長、少しモニターを見てください!」

 

 フェイトさんを保護した場合どちらが親になるかを奪い合っていたが、クロノの叫び声でモニターを向く。

 

 するとモニターには金髪オッドアイの少年の姿。どうやらヤマト君達が戦っている所に乱入した様だ。

 彼の攻撃手段はレアスキルで剣を作り出して射出するだけ。たまに作り出した剣を振るう事もあるが素人に毛が生えた程度。

 いや、それだけならまだ良い。この年齢でそれならば鍛えればいいのだから。

 しかし彼はよく狙わずに無差別に剣を射出するせいで、なのはさん達に当たりそうになっており、見方を変えるとヤマト君達を妨害している様にも見える。

 

「な、何をやってるんだ彼は!? ヤマトを見るなり彼に襲いかかって、完全に陣形が崩れてしまったぞ!!」

 

「……一応レオ君が背後から不意打ちをかけて撃墜させてから陣形を組み直したけど、これは危ないね」

 

「……彼は、龍帝院竜弥君よね?」

 

「えぇ、うちの娘を嫁とか宣いやがるクソ野郎よ。いつもいつも迷惑かけてきて、ほんと参ってるの」

 

 聞くところによると彼は本当に問題児も問題児らしく、ひなさん達へのセクハラはもちろん魔法を知らない人たちの前でも魔法を使うこともあるのだとか。

 そして何より、彼が以前発生した次元震を引き起こした元凶でもあるらしい、

 

「なるほど……レオ君が急に攻撃を加えるから何をやっているのかと思ったけど、撃墜させないと危ないのね」

 

「えぇ。彼が乱入してきたら必ず状況が悪化するってひなもふくれちゃってて……」

 

「そう……。これはロストロギアの封印における立派な妨害行為に当たります。

 下手したら私達にも攻撃してくる可能性もありますし、彼はジュエルシードが全て集まるまで隔離しておいた方がいいでしょう」

 

 当初彼が来た瞬間にレオ君が撃墜させたから……いや、さらに追い討ちで魔法を連発したからその件に関してレオ君に注意する予定だった。

 しかし彼に関してのレオ君の明確な怒りや、本来止めるべき立場のヤマト君達も何もしなかった件から何か理由があると思っていたのだが、想像の数倍は酷かった。

 これはレオ君が来た瞬間に撃墜させたのも納得というものだ。

 

 そんな事を考えているとエイミィが「あぁ……!?」と悲鳴に近い叫び声をあげる。

 

「どうしたの?」

 

「フェイトちゃんとリュウヤ君が接触しました!!

 フェイトちゃんは嫌がってるみたいですけど、彼そんなのお構いなしです! 気持ち悪いです!!」

 

「……クロノ執務官、大至急龍帝院竜弥を確保して来て下さい! フェイトさんはヤマト君達との約束があるので見逃して構いません。

 まずは彼の確保が最優先です!!」

 

「わ、分かりました!」

 

「一応レオ君にも連絡してみるわ! 三徹でさらに働かせるのは悪いけど、彼ならあいつの行動に完璧に対処できるから!!

 あの子まだ寝てなければいいけど……」

 

 ……この事件、こんなに複雑化しちゃってるけど、無事に解決できるわよね……?




Q:なぜ羽鳥さんはレオ君と引き分けるくらいには強いのに、ジュエルシード捜索に力貸さないんですか?

建前:娘にはこの程度の問題、軽々と乗り越えてもらいたいから。

本音:パン屋の仕事が忙しいから。お休みなら手伝えるんだけど、ぐぬぬ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。