見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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(ヤマト視点)フェイトの真実とこれから

「……着いたよ。ここがわたしのお家、時の庭園」

 

 リニスに促されたフェイトの転移魔法により、十数箇所を中継して目的地へと到着。

 そこはまるで廃墟と言っても過言ではない城のような建物だった。

 

「ここは、随分と殺風景だな。フェイト達はこんな所で生活してたのか?」

 

「……うん」

 

「……昔はもっと緑溢れた場所でした。

 私がいなくなった数年で変わり果ててしまいましたね……」

 

「植物の世話してたのはリニスだったから……」

 

「代わりにわたし達がお世話しようって思ったんだけど、母さんがそれよりやる事があるでしょって」

 

 城の様に大きな建物に大きな庭もあるとは言え、所詮はアースラと同じ次元船。

 植物が育つ環境でもないだろうし、キチンと管理する人がいなくなった事で枯れるしか無かったのだろう。

 

 ……それにしても

 

「リニスは本当にここの住民だったんだな。

 しかしそれならフェイトの母親に会うのって大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ではないですね。

 今回はプレシアがフェイトに秘密にしてる事を教える為に来た上に、彼女からしたら秘密を知ってる私の存在は邪魔でしかないでしょう。

 しかし、見つからなければ良いのです。

 …………プレシアの生活習慣が変わっていないなら、この時間は駆動炉のメンテナンスで部屋にはいない筈」

 

 なるほど、つまりフェイトの秘密を暴くには今じゃなきゃダメと。

 もう日が暮れてるしフェイトの心を落ち着かせる時間を作る為にも、明日でも良いのではと思っていたが、この時間を逃すわけには行かなかったのか。

 

「そっか。だから事前に母さんの魔力感知を阻害する言霊を使ってもらったんだね」

 

「そういう事です。

 さ、急がなければプレシアが戻って来てしまいます。見つかる前に移動しましょう」

 

 確かに転移魔法で時の庭園に侵入した際に、転移魔法の魔力を悟らせない様に言霊で遮断したが、それでも庭園内には複数の人型人形が監視している。

 しかし流石は元フェイトの母親の使い魔というべきか。リニスはそれらの監視網を正確に掻い潜りながら目的地へとオレらを案内する。

 

 なんでも何かあった時の際に裏をかける様にと、プレシアの監視網の穴を把握していた様だ。

 最も本人は数年経っているのに監視網のアップデートをしていない事に呆れていたが。

 

 そして移動する事十数分、オレ達は一つの扉の前へと立っていた。

 

「ここは母さんから入っちゃダメって言われてる部屋……

 ここにわたしの秘密があるの?」

 

「はい。…………真実を知る前にあなたに見て欲しいものがありました。

 フェイト、これからあなたは自らの禁断の領域に踏み込む事になる。

 きっとあなたの常識は簡単に崩れ去ってしまうでしょう」

 

「そ、そんなに重大な秘密なのか……。フェイト、アンタ覚悟は出来てるのかい?」

 

「うぅん、まだ色々と混乱しちゃってる。

 ……でも、目を背けちゃいけないんだよね?」

 

「はい。あなたが知る事を望まなくても、無理やりにでも教えなければならない」

 

「なら、聞くよ。リニスが無理やりにでも聞かせようとしないといけないなんて、よっぽど大事なものだと思うから」

 

 そう言うフェイトの手は少し震えている。強がってはいるが不安でいっぱいなのだろう。

 

 無言で彼女の手を握ると、彼女もギュッと握り返す。

 ……少しでもこれで不安が解消されると良いが…………

 

 そして意を決したフェイトが扉を開け、恐る恐る中を覗き込むと彼女は息を呑んだ。

 

「こ、これって……いや、この子は……」

 

「小ちゃい……フェイト……?

 これは……死んでるのかい?」

 

「もしかして妹か……いや、それにしては顔が似過ぎて……?」

 

 そこにいたのは人が一人入るサイズのカプセルに入れられた小さなフェイト。

 一瞬妹かと思ったが、この子とフェイトはあまりにも顔がそっくり……ほとんど同じといっても過言ではない。

 一卵性の双子からまだ分かるが、明らかに年齢の違う二人がここまで似るなんて……普通あり得るのか?

 

「この子はアリシア。あなたの……」

 

「……オリジナル?

 リュウヤが……アリシアはわたしの……オリジナルだって……」

 

「……アイツは、そこまで言ってしまっていたのですね」

 

 アリシアはフェイトのオリジナル……?

 

 直後、オレの脳は決して至ってはいけない様な残酷な解答を導き出してしまった。

 

「……なぁ、リニス。

 お前フェイトが……この子の……アリシアのクローンだなんて……言わないよな?」

 

「……言います」

 

「っ!」

 

 それを聞いたフェイトがフラリと膝をつく。

 どうやら彼女もアリシアを見て……いや、自らがクローンだと知って……全てを察してしまったのだろう。

 

「これから全てをお話しします。フェイトの正体も、プレシアの望みも全て。

 どうか気を強くもって……聞いてください」

 

 そこからリニスが話し始めたのはあまりに残酷な悲劇。

 フェイトの母親、プレシア・テスタロッサは今から26年前に娘を亡くした。

 その娘の名こそアリシア・テスタロッサ。

 彼女は大切な愛娘を失った事に嘆き、悲しんだ。

 そして再び娘と会いたいと盲信する様になった彼女は、ついに手を出してはいけない領域に手を出してしまった。

 

「……それこそクローン技術と記憶転写。

 フェイト、あなたはアリシアの細胞から作られ、アリシアの記憶を転写されて産まれた第二のアリシアなのです」

 

「わたしが……第二のアリシア……」

 

「ちょ、ちょっと待っておくれよリニス!!

 仮にそうだったとして……ならあのババアはもう望みが叶ったんじゃないか!!

 なら……なんでフェイトにあんな酷い事をするんだよ!!」

 

「……フェイトは第二のアリシアにはなれなかった……か?」

 

「……はい。

 いくら記憶を受け継いでいようが、結局は違う存在。

 プレシアもそれに気づいてしまったのでしょう」

 

 プレシアは気づいた。クローンを使った所で所詮は別人と。

 だからこそ別の手段でアリシアを生き返らせる事にした。

 記憶転写を行うのではなく、オレらの眼前にいるアリシア本体を直接蘇生させる手段に。

 

「アリシアの蘇生が……母さんの望み……」

 

「……はい。それがどの様にしてジュエルシードと繋がるのかは分かりませんが、ジュエルシードこそアリシア蘇生の鍵と、彼女は睨んだのでしょう」

 

 ユーノは言っていた。ジュエルシードは願いを歪に叶えるものだと。

 ……もしジュエルシードの歪に願いを叶える部分を解消できるとしたら? 正しく願いを叶えるロストロギアに作り替えられるとしたら……?

 ……アリシアの蘇生は不可能ではない……か。

 

「……そっか。母さんが望んでいたのはわたしじゃなくって……アリシアだったんだね……」

 

「……はい。プレシアは病気で、あまり激しく動ける体ではありません。

 だからこそフェイトにジュエルシードを集めさせていたのでしょう」

 

「……つまりあの鬼婆はフェイトを利用してたってのかい!? ジュエルシードを集める……都合の良い兵隊として!!」

 

 誰よりもフェイトの事を思っていたアルフは拳を硬い石床にヒビが入るほどの力で叩きつける。

 そして鋭い視線をリニスに向けると、彼女の胸ぐらを掴み上げる。

 

「リニス! あんた分かってたね!?

 フェイトがこうなるって……フェイトが鬼婆の兵隊になるって!!

 それを分かって……あんたはフェイトを鍛えたのか!!」

 

「……ごめんなさい」

 

「この……!!」

 

「待てアルフ! お前も分かってるだろ、リニスはプレシアの命令に逆らう事が出来なかったって!!」

 

 ひながリニスを使い魔にしてから少し気になり、使い魔について書かれた本を買って来てもらい調べた事があった。

 その際に使い魔は生み出す際や契約する際に一つ大きな契約をする事になり、そして使い魔は基本、その契約には逆らう事が出来ないと書いてあった。

 

 ひなの契約内容はリニスを家族として迎えたい……つまりは一緒に生きること。

 ……だから基本リニスは自由にできる。

 でもリニスはプレシアとの契約の時は、フェイトを一流の魔導師に育て上げる事だったとすると、リニスは嫌でもフェイトを一流の魔導師にしなければならなかったのだ。

 

「……分かってる。分かってるよぉ!

 でも、これじゃあフェイトは救われないじゃないか!!」

 

「…………」

 

 アルフはそう言って涙を流しながら地面に崩れ落ちる。普段アルフを止めるフェイトもこの時ばかりは彼女を止めず、ただ俯く事しかできなかった。

 

 コツ……コツ……

 

 直後、部屋の外から靴が地面にぶつかる音が聞こえ、それはだんだん大きくなってくる。

 ……どうやらメンテナンスを終わらせたプレシアが戻って来た様だ。

 

「リニス、今は後にしよう。早くここから脱出しないと……!」

 

「えぇ、少々時間をかけすぎました……!」

 

 同じく足音に気がついたリニスは大急ぎで魔法陣を構築し、時の庭園からフェイトの自宅のマンションへと転移した。

 

「……あら? どうやらネズミが紛れ込んでいたようね。

 あのヤマネコかしら…………」

 

 

 ◇

 

 

 危ない危ない……あと1秒でも遅かったら、プレシアに見つかってたぞ。

 いや、今はそんな事はどうでも良い。

 

「…………」

 

「…………」

 

 オレの眼前にはあまりのショックに動かなくなってしまったフェイトとアルフ。

 流石に見ていられず、何か声をかけなければと一歩踏み出したが、リニスはそれを制止。

 彼女は二人に視線を合わせた。

 

「……どんな理由があったとは言え、あなたを鍛えバルディッシュを与えた時点でプレシアと同罪です。本当にごめんなさい。

 ……だからこそ、あなたに一つの選択肢を提示します」

 

「え……?」

 

「お母さん……羽鳥さんからの伝言です。

 もう限界だって思ったらウチに来なさい。絶対に守ってあげるから」

 

「それは……!」

 

 目を大きく見開くフェイトとアルフ。

 

 ……リニスがなぜこのタイミングでフェイトに真実を明かしたのか、ようやく理解できた。

 彼女はフェイトにこれ以上戦ってほしくなかったのだ。

 

 たとえフェイトが全てのジュエルシードを集めても、プレシアはきっと褒めてくれない。

 それどころかアリシアの蘇生に成功したら彼女はお払い箱になる。

 それではあまりにもフェイトが救われない。

 だからこそリニスは、フェイトに逃げ道を用意していたのだ。

 

「お母さ……羽鳥さんは強いです。わたしですら一撃かすらせるのがやっとな程に。恐らく実力はプレシアを超えているでしょう。

 また、彼女は今回こちらへきた管理局の次元船の艦長さんの友人である上に、お父様は管理局の重鎮、きっとあなたの沙汰について口添えもしてくれる」

 

「ほ、本当かい……?

 もし、ひなのお母さんに助けを求めたら……フェイトは助かるのかい……?」

 

「えぇ。お母さんは既に、友人である艦長さんにあなた達の保護をお願いしているでしょう。

 ……フェイト、あなたはよく頑張りました。

 もう、誰かに助けを求めても良いんですよ」

 

「聞いたかいフェイト!?

 ひなのお母さんが助けてくれるって! もう戦う必要はないんだよ!!」

 

「…………うん」

 

 まだ救いがあると知ったアルフは満面の笑みを浮かべて、ぶんぶんとフェイトの肩を前後させるが当の彼女の表情はまだ曇っていた。

 

 …………。

 

「……それじゃあ納得できないって顔してるな」

 

「……ヤマト……ぉぇ」

 

「アルフ、フェイトが気持ち悪そうにしてるので、そろそろやめてあげてください」

 

「あ、ごめんよフェイト!」

 

 あまりにシェイクしすぎたせいで、気分を悪くしてしまったフェイトを少し休ませてから話を続ける。

 

「オレも、もうフェイトは頑張る必要はないんじゃないかって思ってる。

 初めから愛するつもりのない人に尽くす必要はないって。

 ……でもフェイトはそうは思ってないんだろ?」

 

「……うん」

 

「……教えてくれないか? お前の気持ちを」

 

「……わたし、悲しいんだ。

 母さんが求めていたのがわたしじゃなくて、アリシアだった事が……。

 でもね、こうも思っちゃってる。

 アリシアになれなくってごめんなさいって」

 

 フェイトは続ける。

 プレシアが今まで悲しんでいるのは、フェイトがアリシアになれなかったから。

 もしフェイトが第二のアリシアになる事が出来ていたなら、プレシアもあんなに必死になってジュエルシードを集めていなかったのではと。

 

「そ、そんなのあんたの事そのものを否定するみたいじゃないか!!」

 

「アルフ、一旦落ち着け。

 ……ならフェイトはどうしたいんだ?」

 

「……わたしはアリシアを生き返らせたい。

 アリシアが生き返ってくれれば、きっと母さんも喜んでくれる筈だから。

 だからわたし、やっぱりジュエルシードを母さんに届けたい!」

 

 フェイトは真っ直ぐ、そう言いきった。

 その言葉があまりにも予想外だったのか、使い魔二匹は目を丸くするが、オレは冷静に彼女に問いかける。

 

「……ジュエルシードを集めたらきっとフェイトは用済みになるぞ?」

 

「それでもいい。母さんがいらないって言うならわたしはどこか遠くへ行く。

 でもね、一度でいい……一度でいいから母さんの笑った所が見たいの。

 それに……なのはとの約束もちゃんと守りたいし」

 

「……自分の意思でそれを選ぶなら、もう保護はしてもらえない。

 ……逮捕される可能性だってあるんだぞ?」

 

「分かってる。

 しちゃいけない事をするんだもん。ちゃんと責任は取らなきゃ」

 

 どうやら覚悟は決めているようだ。

 ……でもこれで良かったのかもしれないな。

 

 もし、リニスが保護を提案したときにフェイトが流されて保護を選んでいたら、彼女はきっと途中で母を裏切って逃げたと言う事実を生涯後悔し続けることになっただろう。

 それなら間違っている選択であろうと、自分の意思で選んだ道を行けば良い。

 

「ヤマト、助けに来てくれてありがとう。リニス、本当の事を教えてくれてありがとう。

 わたしはもう大丈夫だよ。

 ここからはわたしの我儘だからもう……」

 

「おいおい、一緒にいるのはここまでで良いなんて言うなよ?

 言っただろ。オレはフェイトの護衛なんだ」

 

「で、でも、それじゃあヤマトも逮捕されちゃう」

 

「フェイトを焚きつけたのはオレだぞ。なら責任をとって一緒に行動しないと。

 お前の罪、オレも半分背負わせてくれよ」

 

 そう言って右手を差し出すと、フェイトは暫く悩むような表情を浮かべていたが、やがて恐る恐る手を重ねた。これでオレも共犯者だ。

 

 フェイトに酷い事をするプレシアに協力するみたいでアレだが、ジュエルシードを全部集めアリシアの蘇生に成功したら、フェイトの当初の望み通り優しい母親になるかもしれない。

 ……どう言うかアレだけフェイトを頑張らせてなお、酷い態度を取るならオレがプレシアをぶっ飛ばして管理局に突き出してやる。

 フェイトへの協力と、プレシアへの監視を兼ねているのだ。

 

 それに管理局の犯罪者への対応はガバガバだって、レオの愚痴で知ってるんだ。

 もし最終的にフェイトが捕まったならオレの言霊の能力を管理局に売り込めばなんとかなるだろう。

 

 オレとフェイトが手を握り合っていると、様子を見ていたリニスが小さくため息を吐く。

 

「……本当は、逃げてくれる事を期待したのですが」

 

「ごめんね。でもやっぱりわたしは母さんを裏切れないの」

 

「いいんですよ。私はただ選択肢を提示しただけなので。

 ……しかし私にもあなたをここまで鍛えた責任があります。せめて、最後までおつきあいしましょう」

 

「大丈夫なのか?

 お前が捕まったら、マスターのひなも逮捕されるんじゃ……」

 

「大丈夫、管理局法によると、使い魔が犯罪を犯した場合、マスターに責任が及ぶ事はないとの事。

 それに羽鳥さんが、なにかあっても昔私にした事を徹底的に管理局に追求してやるし、最悪管理局滅ぼすから、遠慮せずにやりたい事やりなさい! って言ってくれたんです」

 

「ひなのお母さん昔なにがあったんだよ……」

 

 ついさっきアースラにカチコミをかけた際も、もし艦長がリンディさんじゃなかったら十中八九アースラ沈めてただろうし…………。

 今度ひなのお母さんに管理局となにがあったのか聞こうと考えていると、アルフが「あぁああああ!!」と大きな声をあげる。

 

「分かった、分かったよ!!

 こうなったらアタシも付き合ってやろうじゃないか!!」

 

「いいの? もしついてくるのが嫌なら、アリサとでも上書き契約すれば……あの子、犬が好きみたいだし……」

 

「バッカ! なんて事を言うんだいこの子は……!!

 アタシはフェイト以外がご主人様だなんてごめんだよ! あとアタシは狼だから!!」

 

「ほ、ほへん(ごめん)……」

 

 そう言ってフェイトの頬を引っ張るアルフ。

 流石に今回ばかりはフェイトが悪いな。使い魔に対して契約破棄を仄めかすものではない。

 こいつオレ達がいるときは基本人形態だから、なんの使い魔が分からなかったけど狼だったのか……。

 

「とにかく、フェイトがやるって言うならアタシも付き合う!

 こうなったらジュエルシードを全部見つけて、なのはに勝って、ジュエルシード21個を鬼婆の顔面に叩きつけてやろうじゃないか!!」

 

「そ、そんな事したらまた次元震起こるんじゃ……でも、ありがとうアルフ」

 

 フェイトはそう言って、アルフに抱きついた。

 結局、オレ達は当初の予定通り、ジュエルシードを全部集めるのが最終目標か。

 

 しかしアリシアの蘇生……か。

 ジュエルシードの歪に願いを叶える特性を、オレの言霊で上手く矯正する事ができればオレでもできるのかな……?

 

 実験とかは流石に危なすぎるし、管理局もいるから無理だろうけど、ジュエルシードについて少し調べておこう。




フェイトは自らの真実を知った上でジュエルシードを探すようになった。

次回:レオ君、〇〇〇〇と邂逅。
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