見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
ミッドで参考書を購入して本格的にデバイスの勉強を始めてから早いことでもう一年が経ちました。
俺は金髪よりも弱いと言うことでアスカにスパルタで鍛えてもらい、夜更かしをしてデバイスの参考書や応用、デバイス工学の最新技術なんかを頭に叩き込み、支給されている100万の生活費を除いた全てをデバイスの材料費に注ぎ込んで経験と技術力を鍛えた。
「……あれ、そう考えると俺ってば子供に転生したのに子供らしく遊んでないような…………」
『この一年は鍛えることに全てを注いでましたからねぇ。原作キャラの攻略についてはもうオリ主君に先越されたんじゃないでしょうか?』
「別に原作キャラ狙ってないから良いんだけど。と言うかなのはちゃん以外誰が原作キャラだったのかド忘れしてるのが実情だし」
それにしても一年も鍛えることに集中して色んなことを犠牲にしたんだなぁ。
でもお陰で今の俺は並の魔導師なら簡単に倒せるぐらいにはなったし、武装に関しても特に出来の良いものは戦闘で使うために戦略に落とし込んだりしたし……
「一年犠牲にした分は確実に力になったよな?」
『……まぁ、そうですね。これだけの力があれば、原作に入ってもよほどのことがない限りは遅れを取る事はないでしょう』
Nロッドによる基本的な立ち回りをベースにして、四属性の変換資質に対応したデバイスを一つずつ作り、ついでにSSSの膨大な魔力を余す事なく相手に撃ち込むことの出来るデバイスも作った。
状況によってデバイスを使い分けて手数で攻め、相手の苦手な立ち位置で戦うと言う卑怯な戦法を確立してやった。……これだけやってなお勝てないのはオリ主君くらいだろうと自負している。
『これだけやってもオリ主君には勝てないと思うなんて自信無さすぎますって…………。そう言えばマスター』
「どうしたアスカ?」
『あなたたくさんのデバイスを作ってますけど、そろそろ私を脳にしたインテリジェントデバイスを作っても良いんですよ? 今の実力なら作れるでしょう?』
「あぁ〜、それについてだけどさ〜」
確かにアスカを脳にしたぼくのかんがえたさいきょうのデバイスを作るのはある種の目標ではあるし忘れてるわけじゃないんだけどさ…………。アスカはあの邪神が作った超高性能AI。せっかくならばもっと知識と技術を磨いて超高性能AIに見合うほどの超高性能な機体を作りたいのだ。
一応究極のデバイス(仮)の設計図などはある程度完成させてはいるけどまだまだ改良の余地はあるし、超高性能のデバイスということで材料も必然的に高価で手に入りづらいものが必要という事で探している最中なのだ。
「ということで悪いけどもう少しだけ待ってくれない? 原作始まる前までには仕上げて見せるから」
『……私の事をそこまで考えて下さっていたのですね。ならばじっくり待とうじゃないですか。当分の間はサポートに徹しますよ』
アスカは現在俺の作った最低限のAIしか積んでいないデバイス達と同期して、そのデバイスのAIを補助してもらっているのだが、流石は超高性能AIを自称だけあってそのサポート力は俺には勿体無いレベルだ。
ならばコイツが満足出来るほどの至高のデバイスを用意してやりたいと思うのは仕方のない事だろう。
『ですが複数のデバイスの使うのならば、いつか同時に二つか三つを使うときも来るはず。はやく並列思考を習得していただきたいものですね』
「前からやってるけど、同時に二つを処理するまでで限界だわ。三つ以上になると頭追いつかないんだよなぁ」
『何を甘えたことを。最終的には聖徳太子レベルになって貰う予定ですよ』
「え"……」
十個以上の物事を同時に思考しろってか。そりゃ流石に無理ってもんだよ、人間の脳を舐めんなよ。
だがアスカは絶対出来る。出来ないなら無茶をしてでもなんとしても習得しろとの一点張りでこちらの意見を全然聞き入れてくれない。
『マスターは武装は盛ればいいと思ってますが、複数の武装を使うと言うのは適切な場所で適切な武装を使わなければならないと言う事。ならば並列思考を習得するのは必須事項なのです。と言う事で修行しに行きますよ。拒否権はないです』
「うぇえ……」
やたら押しの強いアスカに押されて今日も今日とて鍛錬に駆り出された俺であった。
武装を盛るのやめようかしら…………いや、今頑張れば後が楽できるだろうし我慢我慢…………。
◇
と言う事でいつも通り近所の山を登って鍛錬場へ向かう。
ふぅ……いくら人気のない所でやるべきだからとはいえ毎日毎日山登りっていうのはなかなかハードだな。
「あの邪神も地下室とかに専用の練習場とか作ってくれてもいいのに……。むしろそっちの方がロマンがあるって言うのに…………」
『無いものねだりしないで下さいな。地下室を用意しても家を手放すときに不動産屋にツッコまれるのが席の山ですし、山登りも足腰を鍛える訓練も兼ねているのです』
「すっげえ納得した」
確かに地球でそんな専用の訓練所作った所でいつか家を手放すときに面倒くさいことになるのは目に見えてるし、毎日山を上り下りしているおかげか足もかなり速くなったしスタミナもついている。理にかなった鍛え方だったと言うことか。
「──うぇええええん……」
「ん? アスカお前今なんか言った?」
『私は何も言ってはいませんが……山の方で女の子の泣き声が聞こえますね』
「え?」
「うぇええええん! あぁああああん!!」
耳をすませて見ると確かに今の俺と同い年くらいの女の子の泣き声が聞こえる。ここ普段誰も来ないような山の中だし探検に来て迷子になっちゃったのかな?
迷子ならばせめて下山させなければと泣き声のする方向へ向かうと、そこには桃色の髪にピンクのフリフリのドレスと言うまさにプリキュアを体現したような今の俺と同年代の女の子が上下逆さまで木に引っかかって泣いている場面に遭遇した。
「えぇえええん! ママー!!」
『大丈夫、落ち着いて下さいひなちゃん!! ほら深呼吸、浮遊魔法で身体を維持しながらゆっくりと木の幹とか蔓とかを解いて脱出しましょう!!』
「できないよぉ! ママ〜、たすけてぇええええ!!」
……………………。
「アスカ、魔導師って事はもしかしてあの子転生者なの? それにしては随分と精神年齢が幼いと言うかなんと言うか……」
『パンツ見えちゃってるからって即座に視線を逸らすなんてマスターは紳士ですねぇ。「うるせぇよ」あの子は
「なるほど、つまり年相応なんだな」
あの子が転生したときの年齢が俺と一緒ならまだ精神的には六歳くらいということ……。そりゃ幼児が木に引っかかったら、どうすればいいのか分からなくて泣きじゃくるしかなかろうて。
と言うかまだ五歳の子も転生者に選ばれるんだな。社畜だった俺はまだしも邪神のうっかりで本来との両親と引き離されてあの子も可哀想に……。
『因みにあの子の前の両親はこの子を虐待してましてね、流石に哀れんだ創造主が大切に育ててくれる親の元に転生させたんですよ』
「……あの邪神にしては中々のファインプレーをするじゃないか」
う〜ん、それにしてもどうしようかな……。
魔法の練習中に浮遊魔法に失敗して引っかかったんだろうけど、流石にこのまま放置するのは可哀想だし助けるのはやぶさかではない。
…………でも。
「俺踏み台だからなぁ。オリ主君探し出して連れて来た方がいいんじゃ無いかな?」
『あの金髪君が好き放題暴れてるせいでマスターにも皺寄せきてますからねぇ』
あの金髪が街の中で傍若無人に振る舞うものだから、同じオッドアイの俺も怖がられてるんだよなぁ……。それにニコポナデポのせいかは知らないけど、何故か女の子には異様に怖がられちゃうし……。
怖がらせるくらいならあの子には悪いけど、オリ主君を連れてくるまで少し我慢してもらって彼に助けてもらって安心させた方がいいかもしれん。
「一年前のあの一件以降会ってないけど探せばあるだろうし、ダッシュでオリ主君を連れて来て────」
「うぇえええん! ママ〜!!」
「…………」
回れ右して大急ぎで山を駆け降りようとしたが、あの子の泣き声を聞いてオリ主君に頼ろうと言う気は失せた。
頭が逆さになってるから頭に血が昇って取り返しのつかないことになるかもしれない。そんな絶対絶命な子を踏み台だからって助けないのは流石にダメだろ、人として。
それに……なんだかあの子ほっとけないんだよな……。
「うぇええええん!!」
「大丈夫? すぐに助けるから動かないでね?」
「ぁ……ひっ!?」
『っ!? ま、まさかこんなときに踏み台転生者が現れるなんて……ひなちゃんをどうするつもりです!! とっととどっかに行きなさいこの穢らわしい踏み台が!!』
『あらあら、インテリジェントデバイスの癖にマスターのピンチも満足に助けられない失敗作が何かほざいてますねぇ……』
『なんですって!?』
『マスター、この失敗作の事は気にせず作業していいですよ。どうせ何もできないですし』
「うん。怒ってくれてるのはありがたいけど、誰から構わず喧嘩売るのやめようぜ?」
まぁせっかく助けるために来たのにあんな言い方されてムカつかなかったわけじゃ無いからスカッとしたけど。
それじゃ、オリヒロインの子もすっかり怖がっちゃってるしさっさと終わらせてさっさと撤収しようかね。
「やぁ! やぁああ!! 来ないでぇ! やめてよぉ!!」
「あ、コラ。そんなに暴れたら解けないよ! ……ダメだすっごく怖がってる。クソッ、この子もあの金髪に散々ちょっかい出されたせいでオッドアイに忌避感を持ってるんだな……。あの金髪めぇ!!」
『いや、マスター……。この子が怖がってるのは
「あ」
確かに言われてみればそりゃそうだ。
でも仕方ないじゃん。木の幹とか蔓とか複雑に絡まってて素手じゃ解けなそうだし、俺の手持ちでこれを解けるのってチェーンソー型のデバイスしかないんだもん。
だがやはり幼女にとっては怖いものは怖いらしく、わんわん泣きながら必死に逃げようともがいている。
…………仕方がない。
「よしよし、大丈夫だよ」
「……ぁ」
『きゃぁあああああ!! ひなちゃんが踏み台のニコポナデポの餌食に『うるさいですよ、この失敗作。文句があるならあなた一人でこの子を助けるんですねぇ』ぐぅ……』
俺がやったのは泣きじゃくる女の子の頭を優しく撫でてあげる事。
ニコポナデポのある身でやった所で余計泣かせてしまうだけかもと思ったが、女の子は目の端に涙を浮かべながらも落ち着きを取り戻してくれたようで、目の端に涙を浮かべながらも俺をジーッと見つめる。
「君に絡まった木の幹を切るだけで、これで君を傷つけようなんて思ってないんだ。でも君が暴れてると怪我させちゃうかも……。ね、怖いのは分かるけどちょっとだけ……ほんのちょっとだけ我慢してくれないかな? 絶対に助けてあげるから…………ね?」
「…………ん」
女の子は小さく頷くと、もがくのをやめて目をギュッと瞑ってくれる。
聞き分けの良い子でよかった、これならさっさと作業を進めることが出来そうだ。
その後チェーンソーで女の子に絡みついた木の幹や蔓を女の子を傷つけないように一本ずつ丁寧に切って、女の子を支えながら最後の一本を切るとゆっくりと女の子を地上に降ろしてあげる。
「はい、おしまい!」
「……ぁ」
……あ、やべ。この子また目の端に涙を浮かべてる。
やっぱり怖かったんだなぁ……仕方ない、これ以上怖がらせる前に俺は撤退しよう。
「次から魔法の練習をするときはお母さんと一緒にやろうね? それじゃあ俺はもう行くから「……」……え? ちょ、君?」
そう言って足早にその場を後にしようとすると、女の子は俺のバリアジャケットの裾を掴んで俺を止める。
一体どうしたのかと思い女の子の方を向くと、大粒の涙をボロボロと流し始める。
「う、うぅ……。うぅうううううううう!!!!」
「うわっ、ちょ……キミ!?」
「うぇええええん! あ"り"がど〜!!」
女の子は俺の胸に顔を埋めて再び大泣きを始めてしまい、前世で子供のいなかった俺はなんとか彼女を宥めようと四苦八苦するのだった。
オリヒロインとの出会いを少し改変させていただきました。