見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
キュートな美少女幽霊(自称)のアリシアちゃんとの出会いから半日。
アスカにはあの後アナライザーのデータなどからアリシアちゃんの存在を教え込み、さらにアスカにもアリシアちゃんの声が聞こえる様に調整を加えた事で、ようやく幻聴などと言ってこなくなった。
そしてひなちゃんと別れた俺は、フェニックスウィングの仕組みを解明する為に…………
「釣れないな〜……」
『釣れませんね〜……』
『釣れないね〜……』
海鳴公園で釣りをしていた。
ちょっと待て、釣りは関係ないじゃねぇかとツッコまれそうだが、これにはキチンと理由がある。
と言うのもフェニックスウィングの仕組みを解明する為には、他の生き物を殺して死んだ後のデータ等を採取する必要があるのだが、流石にそれは倫理的に問題がありすぎる。
金髪を駆除するついでに肉体だったものを有効活用しようかとも考えたが、アイツ管理局に逮捕されてるからそもそも襲うことすら出来ない。全く、使えないったらありゃしない。
そこで俺が着目したのは魚だ。
と言うのも俺は絶賛金欠であり、婆ちゃんを頼ろうにも仕事の関係上明後日以降じゃないと会えないらしく、今晩の食事に困っている状況。
そこで今晩の夕飯を入手するついでに、魚でデータを採取しようと思ったいうわけだ。
「研究の標本と夕飯のおかずでまさに一石二鳥!
……なんだけど、俺のために犠牲になってくれる心優しいお魚さんはいないのかな〜」
『お願いだから釣れて〜。あたしもたまにはお魚食べたい〜……』
『霊体のくせにご飯なんて食べられるんですか?』
『食べられるよ〜。っと言っても取り憑いてる子と味覚を共有するんだけど。
ひなママの作った朝ご飯、美味しかったな〜』
「……どおりで今日やけに味が薄く感じたのか」
え、アリシアちゃんが一緒の間、味の薄さに悩まされることになる訳?
地味に嫌なんですけど……。
直後、釣竿のウキが海中へと沈む。
どうやら俺達の為に命を分けてくれる心優しいお魚さんがいらっしゃったようだ。
「命に感謝! ……っ!? お、重い!」
『大物、大物なの!?』
「あぁ、こりゃこの一匹だけでフルコースが作れそうだ……!
ぜってぇ逃がさん!!」
『いけ〜、レオ〜!!』
アスカとアリシアちゃんは肉体がないせいで手伝えず、ひなちゃんも今は別行動をしてるから俺一人でこの大物を釣り上げなければならない……。
しかし俺だって腐っても転生者、身体能力には自信がある。
「この程度の引き……俺には意味ないぜ!
踏み台その2を舐めるなぁああああああ!!!!」
ザッパァアアアン!!
よっしゃ釣れた!
あぁ、なんで大きいんだ……俺の身長と同じくらいの大きだぞ!
それに魚にしては珍しい白い服でその上ツインテールで、杖なんかも持って…………。
…………。
「……なにやってんのなのはちゃん?」
「うにゃ〜……」
◇
「にゃはは……まさかレオ君に釣られちゃうなんて思わなかったの……」
「こっちのセリフ。
釣りしてたらなのはちゃんが釣れるだなんて夢にも思わんかったわ」
と言うか君含めたアースラ組は当分はアースラに泊まりこみで待機してるんじゃなかったのかい?
『ねぇ、この子ってレオのお友達?』
「後で話す」
「にゃ? レオ君なんて?」
「いや別に。……それで、どうして海中にいたんだよ。
危うく俺の今晩のおかずになるところだったぞ?」
「実は……」
詳しく事情を聞いてみると、なんでもフェイトちゃんと決闘の約束をしているなのはちゃんであるが、彼女に勝つ為には実力差を知恵と戦術でカバーしないと勝てないと思い、新たな必殺技を開発していたらしい。
『フェイトと決闘!? もしかしてこの子はあの子のライバルなのかな!?
ふぇ、フェイトには手を出させないよ! あたしと勝負しろ〜!!』
「うるさい」
「あ、ごめんなの。声量大きすぎた?」
「あ、ごめん。なのはちゃんじゃなくて、アスカが念話で叫び散らすもんだから『オイ、クソマスター?』……それで?」
「それでレイジングハートに結界張ってもらって色々試してたんだけど、力を込めすぎて暴発しちゃって海に落ちちゃって……その拍子に結界も解けて……」
「それで流されてた所を俺に釣られたと」
「お恥ずかしい……」
恥ずかしそうに顔を隠しているが、魔法の失敗は別に恥ずかしい事ではない。
俺もアスカなしでSSSの魔力を上手く操ろうと練習してる時に、爆発してアフロになたり、黒コゲになったり、吹き飛ばされたり、氷漬けになったりとそこそこ酷い目にあっている。
そんな俺の失敗に比べたら海に落っこちるくらい可愛いもんだ。
なのはちゃんの失敗にうんうんと頷いていると、「あ、そうだ!」となのはちゃんが頭に電球を浮かべる。
「レオ君、ちょっとなのはと戦って欲しいの!」
「え、急にどしたん?」
「レオ君ってフェイトちゃんよりも強いから、鍛えてもらったらフェイトちゃんとも戦えるかなって」
『ほぇ〜、レオってフェイトより強いんだ〜』
「まぁね~……」
確かに腕には自信がある。
なにせ現状この街最強の魔導師なんて言われるくらいだ。
強い魔導師がコツなんかを教えたら、それだけで経験値になるのは事実。
……しかし
「それならヤマトに教えてもらったほうがよくね?
あいつの教え方めっちゃ上手いし、なによりオリ主だし」
「まぁ、本当はヤマト君に教えて欲しいと思ってるのですが……ヤマト君フェイトちゃんと行動しちゃってるから」
「あぁ〜……」
そりゃ管理局側についたなのはちゃんじゃ、フェイトちゃん側についたヤマトとは接触できないか。
しかし、アリシアちゃんの話を聞いた以上、あのババアの思い通りになるってのも癪だ。
故になのはちゃんには勝ってもらいたいところではある。
「いいよ。そういうことならやろっか」
「ほんと? ありがとうなの!」
「んじゃ、今回俺はNワンドしか使わないから、その状態の俺に勝ってみな」
「え~……」
直後なのはちゃんが不満そうな表情を浮かべる。
舐めてるの? とかどうせなら全力出してほしい! とか思ってんだろうが、フェイトちゃん単体の実力がNワンド装備状態の俺と同じくらいなんだ。
この状態の俺に勝てないとフェイトちゃんを倒すなんて夢もまた夢だと言うことを教えてやる。
◇
ということで絶賛なのはちゃんとバトっている俺でありますが…………
「ア、アクセルシューターッ!」
「同時に5個操るのは評価点だけど、その分操作がおざなりになってるぞ!!
あ、コラ! こんなあからさまなフェイントに引っかかるな!!」
「ふぇええ……」
スフィアの撃ち合いではなのはちゃんを超える制御とフェイントで翻弄し……
「ディバインバスターッ!!」
「脳死で撃ったらカウンターを食らうと知れい! アルギュロスラッシュッ!!」
「きゃぁあああああっ!!」
なにも考えずに砲撃撃ってきたときは魔力刃で砲撃ごとなのはちゃんを一刀両断(非殺傷)にして撃墜させ……
「アルギュロスラストッ!!」
「くぅ……お願い、レイジングハート!!」
『プロテクション』
バリィインッ!!
「あぁあああああああっ!!」
「今のは避けられたでしょうが!
守る攻撃と避ける攻撃はしっかり見極めろ!!」
避けられるタイミングでプロテクションを貼った時は、プロテクションを破壊してなのはちゃんを撃墜させ……
「おっと」
「かかった! 今度こそ、ディバインバスターッ!!」
「知ってる? この手の砲撃ってシールド斜めに張ったら受け流せるんだよ」
「あぁ、守られちゃった……!!」
「後もう一個いいこと教えてあげる。
遠隔でプロテクション張って受け流した砲撃を更に何回か受け流す事で、相手の砲撃だろうが向きをある程度操作できるんだよ」
「え──うにゃああああああっ!!」
Nワンドを持った手を縛りカウンターを封じた上で砲撃を撃ってきたときは、プロテクションでの受け流しを応用してなのはちゃんの砲撃を跳ね返して撃墜させてやった。
『うっわ〜、レオ結構スパルタだ〜……』
『マスターったら相手が初心者だからって優しく教えすぎじゃないですか?
もっと心を鬼にしないと上達しませんよ。
私が過去にマスターに課していた、失敗したら失敗した魔法や戦法の反復練習500回! ……くらいはやらせないと……』
『レオ以上のスパルタがいた!?』
「はい、気が散るので少し黙って下さい」
◇
「うにゃ〜……」
数時間後、俺の足元にはグルグル目で倒れるなのはちゃん。
あらら……少しやり過ぎちゃったかな……?
と言うかもう少し苦戦すると思ったけど、割と簡単に手玉に取ることが出来た件について……。
Nワンド一本で案外動けるもんだ。
「大丈夫……?」
「だ、大丈夫……、なんとなくコツは掴めたからもう一回なの……!」
グロッキー状態から回復したなのはちゃんはフラフラと立ち上がってそう言ってのける。
流石は原作主人公……元々負けず嫌いな子ではあったけど、ここまでの根性を見せるなんて……
よっぽどフェイトちゃんに勝ちたいって伝わるな。
……て言うかもうコツ掴んだの? 勘弁してくれよ、俺の立つ背がないじゃねぇか。
それはそうと……
「嫌どす。今日はもうおしまいね」
「え〜、わたしまだ頑張れるよ?」
「あのなぁ、この一瞬を頑張れば強くなれると思ったら大間違いだよ。
強さってのは何日も練習を繰り返して積み上げていくもの。かと言って身の丈に合わない訓練で身体を壊したら今まで積み上げてきたものは一瞬で崩れ落ちる。
だから程々の訓練としっかりした休息を繰り返さないといかんのよ」
「でもそんなに悠長にしてたらフェイトちゃんには勝てないの!」
「それをカバーする為の知恵と戦術なんだろ?」
「あ……」
そもそも今回なのはちゃんに施した修行……と言うか模擬戦によるダメ出しは、魔導師としての実力を少しでもフェイトちゃんに近づける為のもの。
しかしいくらなのはちゃんが才能に満ち溢れているとはいえ、長い期間魔法に触れてきたフェイトちゃんの実力に並ぶように短期間で鍛える事なんて不可能なのだ。
だから今回俺がしたのは、なのはちゃんの知恵と戦術の成功確率を上げる為の下地作りの手伝いにすぎない。
「なのはちゃんの努力する姿勢は認める。でも努力と無茶の境界線はしっかりしないとダメだ。
何かあったときに悲しむのは、なのはちゃんの家族やヤマト達なんだからさ。
……あ、後一応俺も悲しむから。小学校入る前からの友人倒れたら普通にショックだから」
「……そうだね。ちょっとだけ強さについて勘違いしちゃってたかも」
「そうだそうだ、反省しろ。
全く、こう言うイベントはオリ主がやるべきだってのに……」
「前から思ってたけど、オリ主ってどう言う意味なの?」
オリ主については適当に誤魔化しておきました。
その後、あんまりアースラに帰還するのが遅くなるとアリサちゃん達が心配するからと、解散することにした俺となのはちゃん。
「あ、そうた。明日以降もまた鍛えてもらって良いかな?
強さってのは毎日積み上げていくものなんでしょ」
「え〜、ダル……」
「本気でダルがられてる……!?」
だってアリシアちゃん蘇生のために色々研究せなあかんし、なによりなのはちゃん寝取ったらヤマトが可哀想だ。
故にヤマトハーレムのメンバーとの付き合いは程々にしなければならない。
「……レオ君、今この上なく変な事考えなかった?」
「考えましたけどなにか。「コラッ!!」
……あぁ、そうそう。そういえばなのはちゃんってヤマトやアリサちゃん程じゃないけど、剣使えるよね?」
「うん。たまにお兄ちゃんに教えてもらってるから」
この子の家は喫茶店であるが、それと同時に御神流という古流武術の道場もしており、ヤマトとアリサちゃんはそこで剣を習っている。
本来運動が苦手ななのはちゃんであるが、ヤマトに釣られてか、金髪対策に恭也さんに教えられているのか、二人ほどの頻度ではないとはいえ、不定期で修行をつけてもらっているのだ。
そのおかげか運動音痴ななのはちゃんは、唯一剣道だけは出来るのだ。剣道だけは!!
「ねぇ、今度は失礼な事考えたよねぇ!?」
「考えましたけどなにか。「いい加減怒るよ!?」
そんな剣道だけは出来るなのはちゃんのために、レイジングハートに改良施したって教えるのを忘れててさ」
「ついに口で言ったね!? ……って、レイジングハートに改良?」
『そんな機能を追加していたのですか? マイスターレオ』
「いや、お前は自分の機体の事なんだから知っとけよ。
別に隠してた機能って訳じゃないんだから……」
いや、確かにあくまで変形機構を搭載しただけで、レイハに機能についての説明はしてないけどさ……。
「まぁ何はともあれ、一つ面白い機能を追加してるから、明日にでも使ってみて戦術に組み込んでよ。
多分フェイトちゃん戦の切り札の一つにはなるよ」
「そっか。うん、分かったの。ありがとね、レオ君
それじゃあ、わたしはそろそろ帰るの。またね〜」
「アディオ〜ス」
そろそろ良い時間という事で帰っていったなのはちゃん。
……あの子の負けず嫌いは筋金入りだ。
きっと自らで編み出した知恵と戦術とやらも、今日の訓練も、レイハの特別な機能も、全てを血肉にしてフェイトちゃんに喰らいつくだろう。
なのはちゃんがフェイトちゃんを負かす姿が、今から楽しみだ。
「……さて、日も暮れたし俺らも帰るか」
『……それは良いんだけど、結局、魚釣れなかったね』
「あ」
この日は羽鳥さんに事情を説明して、食事を恵んで貰いました。
−なのはちゃんのレオ君に対する評価−
変なこと考えたり悪ふざけするのはどうかと思うけど、とても賢いから尊敬してる。
また幼い頃からの付き合いだから、本音で話す事ができる。
異性として全然意識していない……と言うか見た目も相まって同性として認識している。