見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
さて先日の釣りの成果は結局
このままではアリシアちゃん蘇生のための研究が進まない上に、何より羽鳥さんに申し訳なさすぎる。
と言う事で今日こそはと再び海へとやって来た俺でありますが…………。
「やった〜! また釣れた〜!!」
『おぉ、ひなすごい! これで10匹目だよ!!』
「えへへ〜、釣りって楽しいね」
『む〜、あたしも身体あったら釣りできるんだけど……。
ひなとレオには頑張ってもらわないとな〜』
「任せといて! ね、れお君!!」
「……そうですね」
一緒に来たひなちゃんはめっちゃ釣れてるのに、こちらは一向に釣れる気配がない件について。
おかしい……同じ釣り場な上に並んで釣竿垂らしてるんだから、ひなちゃんがあんなにも大漁なら俺も釣れて良いはずだと言うのに……。
ハッ、ま、まさかあれか……?
この釣り場の魚はみんなメスで、ニコポナデポを持ってる俺を警戒してるとかそんなオチなのか……!?
おのれ……こうなればこっちも釣れるまで粘ってやる……。
俺の忍耐力を甘く見るなよ、徹夜はもちろん、一週間くらいはこの場から動かず待ち続けて……っていやいや!!
俺の本来の目的は生きた魚を入手することで、俺自身が魚を釣ることではない。
ひなちゃんが釣ってくれたおかげで目的は達成してるんだから、これ以上時間を消費すべきではないだろう。
「……ここまで釣れたら十分だろうし、そろそろ引き上げよっか」
『レオ全然釣れないからね〜』
「……アリシアちゃん、あまり俺を怒らせない方がいい。
なにせこっちはニコポナデポって言う異性を怖がらせる特殊能力持ってんだからな」
『うっわ、なにそれ。それじゃあモテないじゃん可哀想……。
ハッ、この釣り場のお魚がみんなメスだったと考えると…………?
……だから釣れないんだね。うん、ドンマイ!』
「良い度胸だ。俺を怒らせたことを後悔するんだな」ニッコリ
俺の逆鱗に触れたおバカな幽霊に全力の作り笑いを浮かべる。
フハハハハ、怖かろう? 怖かろう!?
なにせこの笑みは仲の良いなのはちゃん達ですら怖がるほどだ、出会って日も浅いアリシアちゃんでは絶対に耐えられずに泣き叫ぶだろうよ!!
しかし等のアリシアちゃん、なんと俺の笑みを見た直後、真っ赤に染めてボフンと顔面から蒸気を発生させ始めたではないか。
『あ……アハハ! あたしは幽霊だから効かないみたいだね!!
レオのにこぽなでぽ? 敗れたり!!
……び、ビックリした〜。急にドキッてしちゃうんだもん……////』
「…………ゑ?」
……なにこの反応。
ニコポナデポの効かないひなちゃん以外の女子は、大体顔を青くするなり、距離を取ったり、酷い女子なんかは笑うなとほざいて来やがると言うのに……。
何故アリシアちゃんは顔を真っ赤にして照れていらっしゃるのですかね……?
「? 二人ともぼーっとしてるけどどうしたの?
疲れちゃったならひながお片づけしちゃおっか?」
「あ、あぁ、ごめん。多分気のせいだから大丈夫!
片付けは俺がやるから気にしなくて良いよ」
……多分アリシアちゃんは死んでなおこの世に存在する……言わば、この世の摂理に逆らってる存在、だからニコポナデポの効果も真逆に働いて、本来の言葉の意味である惚れさせる効果が出たのだろう。
大丈夫、キチンと蘇生させてあげれば、ニコポナデポで怖がるようになってくれるはずだ!!
…………多分。
アリシアちゃんにニコポナデポが正しく聞くのは少々疑問だが、今は彼女の蘇生が急務なのでそれは一旦放置し、手早く釣竿や釣った魚を入れているクーラーボックスなんかの整理を行う。
「れお君、このお魚さん達でひなのフェニックスウィングを色々試すんだよね?」
「うん。魚を締めた直後と締めてから12時間放置したものに、ひなちゃんの魔法を使ってもらって、どう違いが出るのかを調べるの。
……魚を二回も殺す事になる件についての批判は受け付けてるよ」
殺して生き返らせてもう一度殺すって言うのが非人道的なのは認める。
しかし出来る限り罪悪感の少ない生き物でやる上に、最後は料理して美味しく食べるのだから文句はひなちゃん以外受け付ける気はない。
だが当のひなちゃんはフルフルと首を振る。
「……うぅん。可哀想だけど、ひなもシアちゃんに生き返って欲しいって考えてるかられお君だけ怒れないよ。
叱られるならひなも一緒に叱られる。えっと……こう言うのをコウサイって言うんだよね?」
『それを言うなら同罪じゃない?
……でも二人が気に病む必要はないよ。批判ならあたしが受けるから。
なにせあたしは幽霊時代含めれば大体30歳の大人のレディだから、歳下二人に無茶させちゃった責任は取らないと!!』
「それを言ったら俺は前世含めて37歳だから。30歳のガキンチョは素直に大人に守られとけ」
『またまた〜、レオも冗談上手いんだから〜。
……ねぇ、なんでニヤニヤ笑ってるの? そこはバレたか〜って言うところだよね……?』
「れお君もシアちゃんも30より上って、二人とも大人だ〜……」
『レオ、少しいいか?』
「おっと?」
俺にしては珍しく前世について言及しながら歳上マウントを取っていると、突如ひなちゃんでもアリシアちゃんでもない声が脳裏に響きわたった。
ヤマトからの念話だ。
『ヤマトじゃん。どったの?』
『オレとフェイトは今日動く』
『ちょい待て、もっと分かりやすく説明せんと伝わらんわアホ』
『おっと悪い……いくら管理局が中立でいてくれてるとはいえ、それがいつまでも続くかは分からないから、少し強引なやり方でジュエルシードを集めようと思ってな』
どうやら管理局が来た以上いくら管理局が中立を示しているとしても早急にジュエルシードを集めるべきだと考えているらしく、かと言って無闇矢鱈に探し回っても埒が明かないため、今まで敢えてやらなかった危険な手段で集めようと考えているようだ。
『……町中に魔力を流してジュエルシードの暴走を誘発するんだな?
だけどそれで街にどれくらい被害が出るか……それが分からないほどお前もバカじゃないだろ?』
『当たり前だ。……恐らくここまで探しても見つからないって事は、もう街に落ちたジュエルシードは回収し尽くしたんだと思う。
そしてこの街は海に隣接してるから、残りのジュエルシードは海にあるはずだ』
なるほど、確かに管理局が来たなら自慢のレーダー機能とかで見つける事が出来てもおかしくは無いはずなのに、未だ見つけられないというのもおかしな話だ。
だとするとヤマトの仮説は間違っていないだろう。
それに海ならばジュエルシードが起動したとしても、街に被害が出る前に食い止められる。
それならば暴走の誘発という一見無茶苦茶な手段を用いるとしてもリスクは少ない。
『海にどれだけあるかは分からないが、最悪6個分のジュエルシードの位相体と戦うことになる。協力してくれ』
『OK、いくら龍帝院がいなくなって多少安全になったとはいえ、お前とフェイトちゃん、使い魔だけじゃ不安だからな。
何時から決行する予定だ?』
『今日の夕方5時からだ』
『分かった。ひなちゃんにも伝えとく』
「? れお君、誰から念話が来たの?」
「ヤマトから。今日の夕方5時に海の底にあるジュエルシードをまとめて起動させるから封印手伝ってって」
『えぇ!? そ、それっていくら何でも無茶すぎない!?
フェイト死んじゃうよ!!』
「大丈夫だよシアちゃん、ひな達強いから!!
……あ、でもなのちゃん達にも来てもらった方がもっと安心かなぁ?」
「呼びたいのは山々だけど管理局が止める可能性があるから……」
ジュエルシードの位相対6個と戦うというのは、いくらオリ主だろうがそこそこの無茶をしなければならない。
つまりフェイトちゃんとその護衛であるヤマトを消耗させる絶好のチャンスなのだ。
…………ふむ。
『あ、もしもし、こちら宮坂麗央。
そちらクロ助・ハラオウンの念話で間違いないでしょうか?』
『クロノ・ハラオウンだ!
クロ助というのはロッテとアリア……グレアム提督の使い魔達が勝手につけた僕のあだ名だ!!』
『申し訳ない。羽鳥さんがあんまりクロ助君クロ助君いうもんだから、そっちで覚えてしまってましたわ。
……豊田大和から、今日海底に沈んだジュエルシードを一斉に起動させるという連絡がありました』
『それは本当か!?』
『本当本当。そこでアースラの魔導師……いや、高町なのは、アリサ・バニングス、月村すずかに協力を要請したいんですが…………この場合漁夫の利を得る為に様子見しますよね?』
なにせ管理局はフェイトちゃんとの決着がつくまで不干渉……つまりこの戦いの参加を干渉行為とみなし、出撃しない口実にする事が出来る。
その上、ここで出来る限りフェイトちゃんを消耗させれば、最後の決闘でなのはちゃんが有利に戦う事が出来る。
……こんな絶好のチャンス、見逃す理由はないだろう。
『……そうだな。豊田大和がフェイト・テスタロッサの護衛についている以上、フェイト・テスタロッサがジュエルシードに敗れる事はないだろう。
しかしそれでも苦戦を強いられるだろうし、出来る限り彼女の体力を消耗させるのが正解だ』
『それは早計じゃないかしら?』
『母さ……艦長?』
おっと、念話にリンディさんが入って来なすったぞ。
俺的にはリンディさんよりクロノ君の方が誘導する方が簡単だから、敢えて彼に連絡を取ったけど会話を共有されていたみたいだ。
『ヤマトさんは強化魔法などを得意とする魔導師、恐らくは疲労回復などの魔法も使えるでしょう。
ならば傍観するメリットよりも、ヤマトさん……いえ、この街の魔導師達からの信用をなくして本格的に敵に回してしまうデメリットの方が大きいと思うわ。
分かりました。なのはさん達にはこちらから伝えておきましょう』
『ご理解いただけて恐縮です』
どうやら言霊についてはまだ分かっていないらしいが、ヤマトの可能性についてはある程度察していたらしいリンディさん。
お陰で傍観するのはメリットよりもデメリットが大きいと考えてくれたようだ。
よかったよかった。説得と言う名の脅迫行為をせずにすんだよ。
「ひなちゃん、リンディさんがなのはちゃん達も出撃させてくれるって」
『ほんと? それならフェイトも安心だね!』
「うんうん! それに久しぶりにみんな一緒だよ!!
……あ、そういえばママが今日フレンチトースト焼いてくれるから、レオ君も食べにおいでって」
「そう? 昨日に続いてご馳走になるのも悪いけど、好意を無碍にするのもなんだしご馳走になろうかな」
『あたしフレンチトーストなんて食べた事ないから楽しみ〜!』
「えへへ、それじゃあお魚さんをレオ君の家の冷凍庫に入れたらひなの家に行こっか?」
「いや、行く前に一度締めて蘇生させた場合のデータ取らないと。
サッと締めるから二人は目瞑ってて」
「う、うん。お魚さん、ごめんね〜!」
『せめて今夜美味しくいただくから〜!!』
◇
その後、蘇生した際のデータを手早く取得した後、ひなちゃん家でおやつを食べてから戦闘に備えて身体を休めていたのだが…………
「スピー……スピー……」
『ひな〜、そろそろ起きて〜!』
「スピー……スピー……」
『ほら、起きないとジュエルシードとの戦い終わっちゃうぞ〜!!
あたしもそろそろ最愛の妹に会いたいよ〜!!』
「スピ〜……えへへ〜、フレンチトーストいっぱい……食べ切れるかなぁ……」
『ダメだ起きない……』
「困ったわね〜、この子無理に起こそうとすると不機嫌になっちゃうし……」
絶賛アリシアちゃんが無理やり起こそうと耳元で叫んでるけど、今日に限っていつもよりも深く熟睡してしまっている。
さては昨日夜更かししてたな?
「……可哀想だけど置いていきましょうかね。
羽鳥さん的にも、ひなちゃんには危険な事して欲しくないでしょうし……」
「それはレオ君にも言える事なんだけどね。
……でもこの子の力を狙う奴が出てきたときに、自分の身くらい守れるようになって欲しいし、何より遅刻しちゃって悲しむのもひなだからね。
仕方ない……ひな!! 今すぐ起きないと遅刻するわよ!!!!」
「ハッ! え、いま何時!?
……むぅううう! ママ、夕方は学校終わってるから遅刻しないでしょ!!」
「今日はこれからフェイトちゃんを助けに行くって言う用事があるんでしょ!?
寝過ごして悲しい思いするのはひななのよ!?」
「え? ……あ、そうだった!!」
「ほら、分かったら怒ってないでさっさと出かける準備する!!」
「う、うん!」
『すごい、あれだけ叫んでも起きなかったひなが一発で…………』
「母は強し……」
流石は親という存在そのものが嫌いな俺が認めた数少ないちゃんとした母親であった。
◇
その後ひなちゃんが寝てたのが原因で遅刻しそうになった為、大急ぎで現場に向かうと海中から吹き出す6つの光。
どうやらヤマトの読み通り、海の中にジュエルシードがあったようだ。
「あ、レオ、ひな!」
『フェイト〜! やっと追いついたよ〜!!』
「ごめんね! ちょっと遅刻しちゃった!!」
「あらひな、寝癖が立ってますよ。動かないで」
「ありがとリニス」
「遅刻した件は申し訳ないけど、いいタイミングだったみたいだな!」
「あぁ、運がいいのか悪いのか……残りのジュエルシードは全部ここにあったみたいだ!!」
俺達が回収したジュエルシードは合計15個、つまりここにある全てのジュエルシードを回収すれば、当初の目的であるジュエルシードの全回収は完了だ。
泣いても笑ってもこれが最後のジュエルシードとの戦いになるだろう。
「……ねぇ、フェイト。
ジュエルシード2つでも苦戦したってのに、本当に大丈夫なのかい?」
「そもそもあれは金髪の魔力が悪影響を与えてたから、金髪がいない今楽に倒せると思うよ」
「うん、リュウヤがいないなら大丈夫」
『うんうん、大丈夫大丈夫! なにせフェイトにはお姉ちゃんがついてるんだから!!』
いつの間にやら俺からフェイトちゃんの元へ移動していたアリシアちゃん。
そりゃあ知り合って間もない俺よりも、肉親の……それも一ヶ月ぶりの再会であるフェイトちゃんの元へ戻るよな。
……え、俺とも離れたくないから出来る限り近寄ってくれ?
やだよ、フェイトちゃん怖がるだろうし。
「……!」
「どうしたフェイト?」
「なんでだろ? なんだか急に凄く安心しちゃって……。
まるで無くした大切な何かが戻ってきたような……そんな感じ」
「? それは一体どういう「おーいフェイトちゃーん! ヤマトくーん!!」え、なのは!?」
「なのはだけじゃ無いわよ〜!!」
「みんな久しぶり〜!!」
「手伝いに来たよ〜!」
アリシアちゃんが戻って来たからだろうか、胸に手を当て安心したような表情を浮かべるフェイトちゃん。
そんな彼女にヤマトが首を傾げていると、上空からなのはちゃん達が降りてくる。
「なのは……アリサ、すずか、それにユーノも……一体どうして?」
「決まってるでしょ。フェイトちゃんをほっとけないから!!」
「あんたがお尋ね者だとしてもアタシ達は友達……でしょ?」
「だから友達を助けに来たの!」
「なのは……みんな…………」
「……とカッコつけてるけど、実際は俺がアースラに情報回してなのはちゃん達に協力を要請したのが真相「空気読みなさい!」あで!!」
アリサちゃんに拳骨を貰いました。事実を言っただけなのに横暴すぎる…………
「……ま、何はともあれ結局全員集合か。
でもこれがジュエルシードとの最後の戦いなんだし丁度いいのかもな」
「にゃはは、そうだね。
それにリュウヤ君もアースラに捕まっちゃったから安心して戦えるの!!」
「これが最後のジュエルシード……みんな、手伝って!!」
ユーノ君がそう言った直後、起動したジュエルシード6個は海水を取り込んだらしく、水で構成された6つ首の龍へと姿を変える。
あと首が二つあれば八岐大蛇だったから惜しいとはいえ、ラスボスが龍ってのも乙なもんだ。
よっしゃ、踏み台その2の力、見せてやるz「あ、みんな待って!!」おっと!?
突如みんなを制止したひなちゃんを一体どうしたのかと向くと、彼女は満面の笑みを浮かべて口を開く。
「せっかく最後みんな集まったんだから……名乗りやっちゃおうよ!!」
……え、このタイミングで!?