見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます!   作:蒼天 極

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蘇生手段は整った。あとは……え、ちょっとこっちに来い?

 ジュエルシードとの最後の戦いの翌日、俺は家にこもってフェニックスウィングの研究を進めていた。

 

「む〜、やっぱりシアちゃんのお母さん、許せないよ……」

 

『昨日の件に関してはあたしもどうかと思う。もう優しかった頃のママには戻ってくれないのかな……?』

 

 締めた魚を常に解析にかけ続けてみた結果、徐々になんらかのエネルギーが体外に放出されている……?

 これは魔力とも違う……どちらかと言うと今のアリシアちゃんを構成してるエネルギーに似てるな。

 よし、ここでは生体エネルギーと言う名称で取り扱うとしよう。

 

『……あーもう! いつまでも凹んでられないし話題変えよ!!

 そう言えば昨日の名乗りの時になんたらエレメンツって言ってたね。あれって名前の由来ってあるの?』

 

「U&Mエレメンツだよ。

 チーム名あったらいいねって、なのちゃん達と決めたんだ」

 

 ……おや、死後約24時間経過した時点で生体エネルギーとはまた違うエネルギー体の放出が検出されたな。

 ……アリシアちゃんを構成してるエネルギーと全く同じだ。もしかして死後24時間は魂は肉体に残留するのか?

 でも仮にフェニックスウィングでの蘇生条件が肉体に魂が残っている場合に限ると仮定した場合、フェニックスウィングの死後12時間の制約と辻褄が合わなくなる……。

 となるとやはり生体エネルギーに着目すべきか……?

 

「まずU&Mって言うのは、ひな達が海鳴市の魔導師が由来なんだ」

 

『なるほど、Uが海鳴でMがマジカルって意味なんだね?』

 

「うん! それでね、エレメンツって言うのはひな達が小学生って言うのと、空の飛ぶ姿が精霊みたいだからなんだ!!」

 

『へぇ、結構しっかり考えてるんだねぇ。

 それにエレメンツって事は属性っていう意味もあるし、属性持ちの魔導師が大半のひな達にはピッタリかも!!』

 

 一度魚を蘇生する瞬間を見直して、生体エネルギーの動きを着目してみるか。

 

 ……ふむふむ、生体エネルギーがひなちゃんの魔力に反応するから、あの尋常じゃない回復力に繋がるってわけか。

 だとすると肉体に一定以上の生体エネルギーが残ってないと、フェニックスウィングの力を発揮できないと仮説を立てれば、死後12時間の制約についての辻褄も合う。

 

『ねぇねぇ、次名乗る時はあたしも参加していーい?

 前回はイケメン君と被っちゃったし』

 

「いいよ〜。それなら最後の子が名乗り終わったときに少し時間を……

 …………あれ?」

 

『どったの。ひな?』

 

「……リニス?」

 

『そう言えばひなはあの子の新しいマスターだったっけ

 リニスがどうしたの?』

 

「なんか嫌な予感がするの……」

 

 魂が身体から抜け出たのと同時に生体エネルギーの放出をやめた件を考えると、生体エネルギーは魂と肉体を紐づける接着剤のような役割を果たしているんじゃ…………。

 

 ふむふむ、なーるほど。魂の仕組みについてある程度把握できたぞ。

 なら蘇生させたい亡骸に魂と生体エネルギーをひゅーっとやってひょいってすれば、理論上蘇生は可能なはず。

 ……よし、それならこの仮説が正しいかどうか、確かめてみるとするか。

 

「二人とも〜。お喋りは後にして少し手伝って〜」

 

「…………」

 

「ひなちゃん?」

 

気のせいだよね……? 

 うん、分かった〜」

 

『二人ともってことはあたしも? あたしって手伝えることあるの?』

 

「もちのろん。そこに魚の魂らしき何かがあるでしょ?

 それって掴めたりする?」

 

『えっと……これのこと?

 ……うん、掴めるよ』

 

「これをこの魚の中に押し込んで外に出ないようにしてて」

 

『オッケー』

 

 大半の魚の魂が天に登っていく中、唯一フワフワと家の中を残留していた魚の魂をアリシアちゃんに捕ませると、本来宿っていた肉体に押し込ませる。

 予想通り、同じ霊体同士なら掴む事ができたようだ。

 

 次にこいつに俺の生体エネルギーを移植する……。

 どんな風に生体エネルギーが放出されるかは分かったし、魔力に混ぜながら少量ずつ取り出せれば……ゔ。

 

「ぐっ……」

 

「ちょ、れお君! 大丈夫!?」

 

「うん、なんとか……」

 

 生きてる人から生体エネルギーを取り出す事には成功したけど、流石は命に関係するエネルギー。

 少量抜いただけで一気に身体は冷えるしかなりの倦怠感があるな……。

 

「……む、魚に生体エネルギーが入らないな……」

 

『もしかして失敗?』

 

「想定の範囲内だから問題ないよ」

 

 ふむ……もしかしたら人の遺伝子情報と同じで生体エネルギーにも個体差があるのか?

 だとしたら魚の遺伝子情報から生体エネルギーの構成式を逆算して、俺の生体エネルギーを書き換えれば……よし、これでエネルギーを注入出来るようになった!!

 

「……こ、こんくらいかね……?

 ひ、ひなちゃん……この魚にフェニックスウィングを!」

 

「う、うん!」

 

 ある程度生体エネルギーを注入したタイミングで、ひなちゃんにフェニックスウィングを使わせる。

 しばらくひなちゃんの癒しの炎が魚の身を焼かれていた魚だったが、ビクンッと大きく痙攣し……

 まるで釣った直後のようにピチピチと跳ね出した。

 

「わぁ……生き返ったよ!」

 

『これって昨日締めちゃったお魚さんだよね?

 それが生き返ったって事は……!!』

 

「フハハハハハハハ! あぁ、成功だ!!

 アリシアちゃんの蘇生方法が判明したっ!!」

 

 やった……やってやった……!

 まだあと少し微調整は必要だろうが、死んで12時間以上経過した生物を蘇生する事が出来た以上、アリシアちゃんを蘇生する事だって出来るはずだ!!

 

『そっか……あたし、生き返れるんだ……フェイトとお話しする事ができるんだ……!!』

 

「すごいよれお君、すごいすごい!!」

 

「フッ、もっと褒めてくれたまえ!

 なにせ死者蘇生の方法を確立だなんて、誰にも成し遂げられなかった偉業を成し遂げたのだから!!」

 

『うっわ、すごく調子に乗ってますねこの踏み台。

 そもそも蘇生に関しては、ひなちゃんのチートありきだと言うのに……』

 

 確かにひなちゃんの能力を使う前提の研究だったけど、フェニックスウィングでも手が届かない所に脚立をかけたのは紛れもなく俺なんだからいいんです〜。

 

 ……そういえば蘇生した魚はどうしようか。

 タダでさえ二回も締めてるのに、三回も殺すってのも可哀想だし…………。

 

「よし、こいつは海へ還してやろう。さぁ、お帰り」

 

「あ、帰してあげるんだね。もう釣られちゃダメだよ〜」

 

『ひな、レオ!!』

 

「おっと」

 

「ほぇ!? リサちゃん……!?」

 

 研究に大きく貢献してくれたこの魚を転移魔法で海へとリリースしていると、直後脳内にアリサちゃんの声が響き渡った。

 

 ちょ、べ、別に念話でここまで大きな声出さなくても伝わるって…………。

 

『あうぅ……そんなに大きな声出したらびっくりしちゃうよぉ……』

 

『そう言えばお三方はリンディさんから帰宅許可出てたっけ?

 ……大方ヤマトを遊びに誘ったのに、フェイトちゃんを優先されたんだろうけど、悔しいからって何も念話で大声出さんでもええやん』

 

『ちっがうわよ!! そもそもヤマトは昨日別れてから連絡取れなくて、ついさっき……いや、説明してる時間がないわ!!

 悪いけどアタシの家に来て頂戴! 今すぐ!! 大急ぎで!!』

 

 そう言って何が起きたかも言わずに一方的に念話を切ったアリサちゃん。

 なんらかの緊急事態が起きたのは想像出来るけど、俺らの力が必要……?

 

「リサちゃん達大変なんだ!

 れお君、すぐに向かお!!」

 

「うん。……あ、コラ!

 急いでるからって変身しようとしない! ご近所さんに見られたらどうするの!?」

 

『でも急がないとダメなんでしょ?』

 

「急がば回れ。バスで行くよ」

 

 

 ◇

 

 

 近くのバス停へ駆け込み、揺られること約20分。

 アリサちゃん家最寄りのバス停へ到着すると、そこにはすずかちゃんが待っていた。

 

「ひなちゃん! レオ君!」

 

「すずちゃん何かあったの?」

 

「うん、でも説明してる時間がないんだ!

 ひなちゃん、乗って!!」

 

 そう言って腰を落としおんぶの体勢をとるすずかちゃん。

 どうやらお目当てはひなちゃんだったようだ。てことは誰か怪我したのか?

 

「んしょっと、乗ったよ!」

 

「それじゃあアリサちゃん家に向かうね。

 ごめんだけどレオ君は……」

 

「分かってるって。

 わざわざすずかちゃんがおんぶして連れて行こうだなんて、よっぽど急いでるんでしょ。あとで合流な」

 

「うん! ひなちゃん、舌噛まないように気をつけて!」

 

「きゃぁあああああ! はっや〜い!!」

 

 ひなちゃんを乗せたアリサ邸行き、すずか号は新幹線にも引けを取らない速度で動き出したかと思うと、あっという間にアリサちゃんのやしきの方角へ消えてしまった。

 

『……あの子速すぎない? 魔法使ったのかな?』

 

「……アレを素のフィジカルでやるのがすずかちゃんの恐ろしい所でございます」

 

『と言うかあれ転んだらひな危なくない?』

 

「…………」

 

 ……ま、まぁ、すずかちゃんの体幹はかなり良いし、ひなちゃんも特別身体丈夫だし、最悪フェニックスウィングあるから大丈夫だろ。

 …………多分。

 

 

 ◇

 

 

 遅れながらもアリサちゃん邸に到着すると、アリサちゃん専属執事の鮫島さんに案内されて、アリサちゃんの自室へと通される。

 ……オリ主でもない俺がここに来るのは場違い感が凄いけど、呼んだのは他でもないアリサちゃんだし別に良いよね?

 

「待たせたなぁ、我が嫁たちよ! 真のオリ主様のお出ましだぁっ!!」

 

『レオ、悪いけどそれやめて。あのリュウヤって子を思い出すから』

 

「こんにちわレオ君。それやめてっていつも言ってるよね。

 また頭を冷やさせられたいのかな?」

 

 踏み台ムーブでその場に参上し、周りからの冷たい視線を浴びながらひなちゃんを探すと、ズタボロなオレンジ色の狼を抱きしめるひなちゃんの姿が……。

 

 …………。

 

「見たことない種の狼だな。

 動物園とか研究機関に突き出したらいくら貰えんだろ「なんてこと言いやがるアホ」アウチ!」

 

 思った事を素直に口に出した直後、頭に衝撃。

 咄嗟に犯人を向くと、そこには連絡が取れなくなっていたというヤマトが呆れたような表情を向けていた。

 

「いつつ……なんだ、いたのかよ。いないと思って踏み台ムーブで登場したのに。

 ……待て、お前今ひなちゃんの治療受けてたな?」

 

「あぁ、ちょっと下手を打ってしまった」

 

「ていうかなんで一目見ただけで、治療をしてたか分かるんだよ……」

 

 オレンジ色の狼がそう呟き……ってなんだ、こいつアルフの動物形態か。

 普段人の姿しか見せないから分かんなかったよ。

 

「ひなちゃんの魔力は完全に理解してるから、ヤマトからひなちゃんの魔力が残留してるのなんて一目見たら分かる。

 なんなら大気の魔力の流れでどんな魔法を使ったかを特定することもできるZE☆」

 

「え、キモ……」

 

「アルフ、後でニコポナデポな。

 ……それにしても言霊でも回復は出来るだろうに、わざわざひなちゃんが治療しないといけないってよっぽどの事態だな? 何があった?」

 

「アタシが説明するわ」

 

 アリサちゃん曰く、ヤマトにフラれたアースラ組はアリサちゃんの飼い犬たちを散歩させていたようだが、散歩の途中、道の脇でボロボロになって倒れた使い魔達とヤマトを見つけたとのこと。

 

『そっか。お家にいるときひながリニスの心配をしたのは、リニスが怪我をしたからだったんだね』

 

「あれはそういう事だったんだ……ごめんねリニス。

 嫌な予感がしたならすぐに行動すればよかった」

 

「謝らないでください。これは私のミスです。

 プレシアの狂気をあまりに軽く見過ぎていた……」

 

「プレシア……フェイトちゃんのお母さんだよね?

 そういえば昨日雷が鳴った時にフェイトちゃんがお母さんって……」

 

「凄い威力だったよね。私でも防げたかどうか……」

 

「お陰様でNワンドが壊れちまったよクソッタレ。

 金欠なせいで修理できないし……」

 

 まぁ、あれは舐めプ用のデバイスだから無くてもそこまで困らないんだが。

 でも舐めプ用デバイスが壊れたって事は、もう舐めプは出来ないなぁ……本気で戦うしかないなぁ……覚悟してろよプレシアァ。

 

 閑話休題

 

「ただ話を聞いた感じ、プレシアに喧嘩を売って返り討ちにあったって所だよな。

 でもなんで喧嘩なんてしたんだよ。フェイトちゃんに買っていったプリンでも食われたか?」

 

「プリン食べられた……!?

 それは絶対に許されないことだよ! ちゃんとごめんなさいさせないと!!」

 

「んなわけないでしょ」

 

「そんなかわいい理由だったならどんなに良かったか。実は……」

 

 

 ◇

 

 

 パァンッ! パァンッ!!

 

 時の庭園内に乾いた音が響き渡る。

 音の発生場所には、腕を拘束されて吊るされたフェイトと、そんな彼女を血走った目で睨みつけるプレシアの姿。

 

「あっ! ぐっ……うぅ……」

 

「ジュエルシードを一度に6つ集められる絶好の機会……あれだけの好機を前にしてなんで回収しなかったの……!!」

 

「うぅ……や、約束したから……なのはと……戦うって……。

 戦うまでは……ジュエルシードは……半分こって……」

 

 パァンッ!!

 

「あぁっ!!」

 

「約束……そんな下らないものの為にジュエルシードを3個も管理局に渡したの……?

 あなたは母さんよりも約束のほうが大事なの……?」

 

「それは……」

 

「酷いわフェイト……あなたはそんなに母さんを悲しませたいのね……!!」

 

 ヒュッ!

 

「っ!!」

 

 フェイトは咄嗟に目を閉じたが、いつまで経っても身体に痛みは生じない。

 恐る恐る目を開けると、恩師であり友人の使い魔になっていたリニスがプレシアの鞭を鷲掴みにしていた。

 

「……一体何をしているのですか。プレシア!!」

 

「……リニス。役目の終わった使い魔が今更いったい何の用?」

 

「リニスだけじゃないよ!」

 

「いくらあなたが母親だとしても、これ以上は傷つけさせない!!」

 

「リニス、アルフ……それにヤマトも……」カクリ

 

 リニスの登場を皮切りに、アルフとヤマトもフェイトとプレシアの間に割って入る。

 その頼もしい姿を見て安堵したのか、フェイトの身体から力が抜けそのまま意識を手放してしまった。

 

「……揃いも揃ってぞろぞろと。

 消えなさい、私は今教育をしているの」

 

「これの一体どこが教育だ! ただの虐待じゃないか!!」

 

「この子はさぁ……アンタに笑ってほしくて頑張ってんだ!!

 優しいアンタに戻らなくて良い……でもせめて笑った顔が見たいって!!

 そんな子になんでそんな事が出来るんだよぉ……!!」

 

「私はあなたの元を去る前に言いました。フェイトには辛く当たらないようにと。

 私の最後の願いすら聞き入れてはくれないのですか……?」

 

「…………目ざわりよ」

 

 三人の必死な訴えももはやプレシアには通じない。

 無情にもプレシアの杖の先端から紫色の光が輝き出し、それがヤマトらに向けられる。

 

「っ! あんた、魔法を……後ろにはフェイトもいるんだよ……!?」

 

「だからなに?

 避けたくないなら避けなければ良いじゃない」

 

「こいつ……」

 

(まずい。避けたらフェイトに……言霊も間に合わない……!)

 

「くっ! プロテクションッ!!」

 

 避けたらフェイトに当たってしまう。

 人質を取るようなやり方に、顔を歪ませながらもなんとか防御魔法でプレシアの攻撃を守ったヤマト。

 

「く……ぐぁあああっ!!」

 

 しかし防御魔法は彼の苦手とする領域。

 そんなものでプレシアの一撃を止められるわけもなく、ぶっ飛ばされてしまった。

 

「くっ……!」

 

「この程度の実力でよく私の前に立てたもの……っ!

 ゴホッ……ゲホッ……ゲホッ……っ!!」

 

「ぷ、プレシア……あんた……血が……」

 

 突如咳き込み始めたプレシア。

 やがて彼女は咳と共に血を吐き出し、気絶しているフェイト以外のその場にいる全員、本人であるプレシアすらも大きく目を見開く。

 

「プレシア……アンタ……」

 

「もう……そこまで進行していたのですね……」

 

「……時間がないのよ。

 私にも、アリシアにも……だから、こんな下らない事で邪魔されたくはないの。

 だから邪魔者は……消えなさい!」

 

「っ!?」

 

 ブツブツと呟いていたプレシアだったが、突如として先ほどとはまるで比較にならない程の魔法を一瞬で構築。

 喀血した事に気を取られたヤマト達はなす術なく、彼女の渾身の一撃を受けてしまった。

 

 

 ◇

 

 

「……それで時の庭園の外に三人仲良くぶっ飛ばされてな。

 かろうじて意識があったオレが言霊を使ってこの街まで転移したんだけど、そこで力尽きて……」

 

「それでアタシ達が発見してこの家に連れて来た」

 

「そしてひながみんなを治療したんだね?」

 

 なるほど。

 確かにフェイトちゃんが鞭で打たれてたら割って入るのも仕方ないのかもしれない。

 

 それに攻撃は回避するか魔法や剣で相殺するタイプのヤマトにとって、広範囲大火力魔法をぶっぱするタイプっぽいプレシアとの相性は最悪。

 それに加えてフェイトちゃんを人質に取るような戦い方をされたら、そりゃオリ主でも負けるわ。

 

『なるほど……ハトリが言ってた虐待を受けているという話。

 彼女を信じていなかった訳ではないけど、どうやら本当のようね』

 

 突如ここにはいない筈のリンディさんの声が……。

 盗み聞きとは、時空船の艦長は中々良い趣味をお持ちのようだ。

 

『……そっか。なのは達がいるんだ。

 そりゃあ管理局にも今の話は聞かれてたよね……』

 

『こちらは時空管理局だ。盗み聞きしてしまった事は謝罪する。

 しかしフェイト・テスタロッサ。そしてその母であり、今回の事件の黒幕であるプレシア・テスタロッサについて詳しく聞きたい。

 どうか正直に話してくれないだろうか?』

 

『…………分かったよ』

 

 もはやこうなってしまっては話す他ないと感じたのだろう。

 アルフは念話を通して管理局に、プレシアの目的などを話し始めた。

 

 さて……なら管理局についての説明はアルフにお任せして…………

 

「……なんでフェイちゃんにそんな酷いことを……許せない。絶対に許せない……」

 

『いくら時間がないからって、いくらなんでも酷いよ。酷すぎるよ。

 鞭で打つなんて……あたしがいた頃はまだやってなかったのに、なんでそんな事……

 いくらママでも許せない、絶対に許せない……』

 

「『ねぇれお君(レオ)、時の庭園におばちゃん(ママ)やっつけにいこ?』」

 

「あー……ひなちゃんもアリシアちゃんも一回落ち着いて。ステイステイ」

 

 俺はブチギレすぎてドス黒い雰囲気を纏ったひなちゃんとアリシアちゃんを宥めさせてもらおう。

 普段穏やかで天真爛漫なひなちゃんと底抜けに明るいアリシアちゃんの病んでる表情なんて見たくないんだよ。

 お願いだからご機嫌治してくださいまし。

 

「でもでも、あんな酷い事するおばちゃん絶対許せないよ!!」

 

『鞭打ちだよ! 鞭打ち!!

 いくらなんでもやって良いことと悪いことがあるよ!!』

 

「そうなの! フェイトちゃんを助けなくっちゃ!!」

 

「いつの間になのはちゃんも便乗してるし……。ほら、三人とも落ち着いて。

 ヤマト達を取り逃したプレシアは既に時の庭園の場所を移動させてるはず。

 だからそもそも時の庭園へカチコミをかけるのは難しい。

 それに仮に行けたとしても、フェイトちゃんが起きてるならプレシアを守るだろうよ」

 

「ならどうしたら……」

 

「簡単だ。フェイトちゃんとの約束を果たした上で勝てば良い。

 あの子もなのはちゃんとの約束は凄く大事にしてるから、あの子を諦めさせたいならなのはちゃんが勝つしかない」

 

「あ……!」

 

「プレシアに対しても、フェイトが諦めたなら必ずなんらかのアクションはする。

 付け入る隙が必ず生まれるはずだ」

 

「そっか。おばちゃんをやっつけるのはその時なんだね!」

 

「そう。ヤマトは相性の問題で不覚を取ったけど、俺かひなちゃんなら多分勝てる相手だ」

 

 なんてったってひなちゃんは、エンジェルウィングにより防御が堅牢。その上ダメージを受けてもフェニックスウィングで直ぐに回復するという鬼畜仕様。

 俺に関しては大魔法をグミ打ちするのなんて朝飯前だから、相手がどんなに強い魔法を使おうがゴリ押せる自信がある。

 

 最悪、予想以上に強くても連携して戦えば良い。

 数の利は生かしてなんぼだ。

 

「そしてプレシアをボコボコにした後、アリシアちゃんを蘇生して一喝してもらえばプレシアも観念するだろ。

 アリシアちゃん、文句言う準備は出来てるよね?」

 

『もちろん! 丸三日は叱れる自信があるよ!!』

 

「なら俺らがしないといけない事は二つ!

 一つ、なのはちゃんを勝たせること!!

 二つ、プレシアに勝てるように俺らも牙を磨く事!!」

 

「そっか……そうだよね!!

 これからどうするにしても、まずはフェイトちゃんに勝たないと!!」

 

「ひなもおばちゃんに勝てるように鍛えなきゃ!!」

 

 俺がビシッと指を突きつけると、メラメラと目に炎を宿したなのはちゃんとひなちゃんが立ち上がる。

 怒りとフェイトちゃんを助けたいと言う気持ちをバネにして奮起したようだ。

 

「レオ君、またなのはを鍛えてほしいの!」

 

「はいは〜い。

 ……ただしNワンドが壊れてるから、難易度はルナティックモードだ!

 せいぜいついてくるんだなぁ!!」

 

「そう言うことならアタシも付き合うわ!

 なのはの新しい戦法に関して、アタシ以上に良い訓練相手はいないでしょ?」

 

「私も手伝う! 戦う相手は多いほど応用が効くようになるよね?」

 

「僕もバインドとかシールドのコツなんかは教えられると思うから……!」

 

「リニスも、直せるところとかあったら教えてね?」

 

「分かりました。私もプレシアを止めたい……。

 どうか力を貸して下さい!」

 

『アタシも全力で応援するよ〜!

 みんな頑張れ〜!!』

 

「……オレも次こそは勝ちたいから、修行するのは賛成なんだが……一ついいか?」

 

 なのはちゃん達のやる気を前にして、この部屋にいる面子全員がやる気を出す中、ヤマトが水を刺して来た。

 なんだよ。今良いところだったのに……

 

「レオ……お前なんでアリシアについて知ってるんだ?

 それに誰もいない空間に話してたけど、誰に話してたんだ……?」

 

「あ」

 

 ……しまった。

 そういえばアリシアちゃんについてはみんなに情報の共有を行ってなかったんだった。

 

 ヤマトの言葉に「確かに……!!」となのはちゃん達からも視線を浴びる中、これはどう言い訳をしたものかと思っていると、アリシアちゃんがこちらへ来る。

 

『……この際だしあたしの事、みんなに教えていいよ』

 

「いいの?」

 

『うん。あたしからもみんなにお願いしたいから。

 フェイトを助けてあげてって』

 

「……分かった。

 ヤマト! 言霊使って、この部屋にいる全員がアリシアちゃんの幽霊を知覚できるようにしろって唱えろ!!」

 

「アリシアの幽霊……?

 ……まさかお前幽霊になったアリシアから事情を聞いて「いいからさっさとやれ! 修行の時間なくなるぞ!!」わ、分かった!!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 その後、アリシアちゃんの姿が見えるようになったみんなに、俺とアリシアちゃんが出会った経緯、そして蘇生についての全てを共有した。

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