見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
「魔力発射地点特定、空間座標……確認!!」
「転送座標セット!」
「突入部隊転送ポートから転送!
任務はプレシア・テスタロッサの身柄確保とアリシア・テスタロッサの遺体の回収です!!」
俺らがアースラに帰還するとそれはもう忙しそうなアースラの様子。
何発も魔法を撃ち込んだんだ。そりゃ攻撃地点を特定やれるわな。
「あ、あの……」
「どうしたのフェイトちゃん?」
「わ、わたしに手錠はつけないんですか?
ほ、ほらわたし逮捕されるような事してたわけですし……」
「あぁ、大丈夫大丈夫。
娘の友達を前科持ちにさせない為に裏で色々動いてたわけだし。フェイトちゃんは保護と言う扱いになるはずよ。
……てかならなかったらこの船沈めるし」
なんとも物騒な羽鳥さんである。
以前彼女に聞いたが、なんでも管理局が来た際にフェイトちゃんが虐待を受けている可能性がある為、逮捕ではなく保護をして欲しいとアースラに通報していたそうだ。
その上
普段は普通の優しい母のくせに、色々抜け目ないお人である。
「あ、みんな見て! あの人が……」
『……うん。あの人のあたしとフェイトのママだよ』
モニターを見ると管理局員数名に囲まれた紫髪の女性の姿。
あれがプレシア・テスタロッサ……原作一期の、いや、今回の事件のラスボスか。
だが、ラスボスの風格はどこへやら、彼女はゼェゼェと息を切らせており、杖で身体を支えるのがやっとのご様子。
それに杖を見ると血が垂れている。
「これってあれかな?
レオ君のカウンターがちゃんと入ったのかな?」
「だろうな。コイツかなり本気で魔法使ってたし」
「そりゃあんな殺意マシマシの攻撃されたら油断も手加減も出来ませんて。
……だからフェイトちゃん、お願いだからそんな目で僕を見ないで…………」
「よくも母さんを……で、でも先に手を出したのは母さんだし……。
うぅん、それでも……レオ、後でわたしと戦ってくれる?」
「プレシアに攻撃されて面白くないのは分かりますが、やめなさいフェイト。
実力差がありすぎて勝負になりません。
ぶっ飛ばされてニコポナデポを受けるのがオチです」
『うぅ、ちょっと内心複雑だ〜……』
予想はしていたが、良い顔はされなかったでござる。
……しかし先に手を出したのはあっちなんだ。あまり文句は言わないで頂きたい。
『……っ!
発見しました、アリシア・テスタロッサです!!』
どうフェイトちゃんのご機嫌を取るべきかと考えていると、突入した局員の声が聞こえモニターに視線を移す。
するとプレシアがいた地点の裏側に、試験管のような入れ物に入れられたアリシアちゃんの姿が……!
「見つけた……シアちゃんの身体だ!!」
『うん。あれがあればあたしは……
…………ちょっと待って、よく考えたらあたし裸じゃん!!
ちょ、コラ、レオ! ヤマト! えっと……あとユーノ……あ、あとクロも!!
見るなぁあああああああっ!!』
「わ、悪い!!」
「ご、ごめん……!!」
「す、すまない……と言うか僕はクロノなんだが!?」
「ひなちゃんが君の事クロ君って呼ぶからそれで覚えたんだと思いますぜ」
顔を真っ赤にしたアリシアちゃんが男性陣を名指しして恥ずかしそうに叫ぶが、俺は注意されるより前に目を閉じてましたぜ。
取り敢えず理不尽にヒロイン達に睨まれてるヤマトには合掌しておこう。
『私のアリシアに触らないで!!』
直後、プレシアの金切り声を聞こえ、アリシアちゃんに怒られるのを承知で目を開ける。
するとアリシアちゃんの身体を確保されそうな事に憤ったプレシアが、手負いのババアとは思えない力で突入部隊の一人の頭を掴み壁に叩きつけたかと思うと、他の局員に雷魔法を行使し、ものの数秒で殲滅してしまった。
「いけない! 局員達の送還を!!」
「りょ、了解です……!」
「くっ、流石はSSクラスの大魔導師、一筋縄じゃいかないわね……」
『忌々しい時空管理局……これほどまでに私の邪魔をして……』
苦虫を噛み潰したかのような表情のリンディさんに対し、プレシアも病気による消耗なのか辛そうな表情を浮かべながら杖を掲げる。
直後、プレシアの杖から9つのジュエルシードが放出された。
やっぱコイツが犯人だったか……。
『……もうダメね。時間がないわ……。
たった9個のジュエルシードでは、アルハザードに辿り着けるかどうか分からないけど……。
……でも、もういいわ。終わりにする。
この子を亡くしてからの時間も……この子の身代わりの人形を娘扱いするのも…………!』
「母さん……」
『聞いていて……あなたの事よフェイト。
せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えないわたしのお人形。
いいえ、役立たずなだけならまだ良いわ。
よりにもよってジュエルシードを集める敵と仲良くなって、挙げ句の果てに素直にジュエルシードを渡そうとしてしまうなんて……。
人形じゃなくてただのガラクタね』
『ガラクタ……な、なんて事を言うの! ママ!!』
大切な妹をこき下ろされたアリシアちゃんが憤るが、彼女がプレシアに見えているならそもそもこんな事件は起こっていない。
アリシアちゃんの声はプレシアには届かず、彼女はただ恍惚な表情でアリシアちゃんの身体の入った試験管を撫で続けるだけ。
「……みんなはもう聞いてると思うけど、最初の事故の時にね、プレシアは実の娘……アリシア・テスタロッサを亡くしてるの。
駆動炉の暴走事故。アリシアはそれに巻き込まれて……」
『……うん、それであたしはこんな姿になっちゃった』
「……その後プレシアの行っていた研究は使い魔を超えた人造生命の生成。
そして……死者蘇生の技術」
「記憶転写型特殊クローン技術。プロジェクトF.a.t.e」
「Fate……フェイト……それって!!」
「……うん。わたしの名前は……当時の母さんの研究につけられた開発コードなの……」
『…… あら? こそこそ何をしてるのかと思ったら、自分のことを調べていたのね。
そうよ、その通り。
だけどダメね。ちっとも上手くいかなかった……作り物の命は所詮作り物。
失ったものの代わりにはならないわ……』
そう呟いたプレシアが直後、俯いていたフェイトちゃんを睨みつける。
『アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。
アリシアはときどきワガママも言ったけど、私の言うことをよく聞いてくれた……』
「……っ!」
「フェイトちゃん……もう、やめて」
『アリシアはいつでも私に優しかった。
……フェイト、やっぱりあなたはアリシアの偽物よ。
せっかくあげたアリシアの記憶も、あなたじゃダメだった……』
「やめて……やめてよ!!」
『フェイト、聞いちゃダメ! 耳を塞いで!!』
アリシアちゃんがそうフェイトちゃんに言うが、フェイトちゃんはフルフルと首を振る。
おいおいこんなの聞いたって良いことないぞ。
また睨まれるだろうけどここは無理矢理にでも耳を塞いで……!
だが俺が動こうとした瞬間、ヤマトが俺の肩を掴む。
まるでそれは余計なことだと言わんばかりに…………
「……分かったよ。どうなっても知らねぇぞ」
「あぁ、責任はオレがとる。
なのは、お前も今はフェイトの手を握ってやってくれ」
「…………分かった」
ヤマトの言葉を受けたなのはちゃんが、フェイトちゃんの手をギュッと握りしめる。
フェイトちゃんもそれを返すかのように、なのはちゃんの手を握り返した。
そんな様子を興味がないと言うふうにプレシアは続ける。
『アリシアを甦らせるまでの間に、私が慰めに使うだけのガラクタ……。
だからあなたはもう要らないわ…………。
どこへなりと消えなさい!!』
「…………っ」
『いい事を教えてあげるわフェイト。あなたを作り出してからずっとね……私はあなたが……大嫌いだったのよ!』
「…………」
「いい加減にしなさいプレシアッ!!」
プレシアが今までのフェイトちゃんの努力を嘲笑うかのようにそう吐き捨てた直後、フェイトを支えていたリニスが叫ぶ。
彼女も元はプレシアの使い魔であり、フェイトの先生を務めていた人物。
元主人のあまりの姿にもはや見ていられなくなったのだろう。
「失った命は戻ってこない。失った時間も同じです!!
あなたにとってフェイトはもう一人の娘のはずです!!
なのになぜ……そんな事を言うのですか!!」
『あら、用済みの使い魔がよく吠えるじゃない?
それを言ったらあなただって、あのガラクタを魔導師として完成させるのに協力したでしょうに。
どの口が言ってるのかしら?』
「それは……」
「大丈夫だよ、リニス」
痛いところを突かれ押し黙ってしまったリニス。
しかしそんな彼女と入れ替わるかの様にフェイトちゃんが前に出たではないか。
「……母さん。わたしはアリシアの存在は前から知ってました」
『……へぇ、て事は分かってたんでしょう?
私が求めてるのはあなたじゃないって。
まさか、私の目的を達成させたら自分も娘に見られるとでも馬鹿な幻想に取り憑かれたのかしら?』
「……いいえ、アリシアを生き返らせてわたしはどこかへ行こうと考えてました。
わたしは偽物だから、アリシアに居場所返してあげようって」
『……ふぅん、お人形なりに身の程を弁えていたのは褒めてあげる』
「ありがとうございます。
でも、さっきアリシアに怒られちゃいました」
『……は?』
アリシアの存在を知らないプレシアが素っ頓狂な声を上げる。
「アリシアは……うぅん、お姉ちゃんはわたしは偽物じゃないって。フェイト・テスタロッサって言う一人の女の子だって言ってくれました」
『……黙りなさい』
「わたしがお姉ちゃんと入れ替わったら悲しむ人がいるって教えてくれました。
お姉ちゃんはわたしのことを受け入れてくれていて、それがとても嬉しかった……」
『黙れ!!』
突如、プレシアが耳をつんざく様な声で叫び散らす。
彼女は悪鬼とも取れるそんな恐ろしい顔をしていた。
『嘘つかないで! アリシアはここにいるわ!!
それに言うにこと書いてアリシアの妹……? 私はあなたを産んだ覚えはないわ!!』
「……気づいたらわたしには居場所が出来てました。
……でもわたしは欲張りになっちゃったみたい。全然満足できないんです。
ヤマトやなのは達の近くにいたい。でもそれと同じくらいに……母さん、あなたに笑って欲しいし、娘としてあなたに褒められたい……だから!」
叫び散らすプレシアを無視して言葉を続けていたフェイトちゃん。
彼女はまっすぐプレシアを見据えた。
「わたしがあなたを止めてみせます。
間違った事をしているあなたを正してみせます!
……そして、アリシアを生き返らせて、あなたをアリシアと言う呪いから解き放ってみせます!!」
『フェイト……』
フェイトちゃんは自らの真実を、居場所が出来ていたことを、そしてアリシアちゃんに既に受け入れられていた事を知った。
そんな彼女にとってもはやプレシアの言葉は彼女の心を追い詰めるものでは無くなっていたようだ。
チラリとヤマトの方を向くと、ヤマトは穏やかな笑みを浮かべフェイトちゃんを見ていた。
こいつは分かってたんだな。フェイトちゃんはもう折れないって。
全くなんだかんだオリ主なんだから。
『ふざけるな!!』
堂々としたフェイトちゃんの宣言を前にプレシアが顔を真っ赤にして叫ぶ。
『アリシアが呪いですって!?
ガラクタ風情がよくもそんなふざけた事を……っ!
ガハッ! ゴホッ!! ゲホッ、ゲホッ!!』
「母さん!」
突如咳き込んだかと思うと、血を吐いたプレシア。
リニスから聞いていたが彼女は不死の病を患っているらしい。
そんな体で興奮なんてしたら、そりゃ咳き込むし吐血もするわな……。
『……まぁいいわ。
どうせガラクタ風情に私は止められない。
止められるというならせいぜいやってみなさいな』
「っ! 大変大変!! ちょっと見てください!!
屋敷内に魔力反応、多数!!」
「な、なんだって……!?
り、リニス! 君は元々プレシアの使い魔だったのだろう?
何か知らないか!?」
「プレシアは時の庭園を警備する傀儡を起動させました!
どれも魔力ランクはAクラス。並の魔導師では歯が立ちません!!」
時の庭園内のモニターを見ると、そこには騎士甲冑のような機械人形どもが多数。
あぁ、これ100体以上いるなぁ。
……てか、フェイトちゃんとアルフ二人に集めさせるんじゃなくて、初めっからこれ使ってジュエルシード集めれば良かっただろうに…………。
「プレシア・テスタロッサ! 何をする気!?」
『私達の旅を邪魔されたくないのよ……。
私達は旅立つの……忘れられた都、アルハザードへ!!』
「アルハザード!?
プレシア・テスタロッサ……まさか!?」
「この力で旅立って取り戻すの……全てをっ!!!!」
直後、プレシアが持っていたジュエルシード九つが青白く輝き出す。
そしてそれと同時、アースラから緊急を知らせるアラートが鳴り響いた。
「あのババア、よりにもよって次元震を……!!」
「リュウヤが馬鹿なことしたときに発生したあれよね!?
あの時は2個で発生してだけど今回は9個……どれくらいの被害になるの!?」
「そうだな。前回の二つでも世界を滅ぼす力はあった。
それが9個ってことはもっと酷いことになるかもしれない!!」
「酷いことなんて次元じゃないな。このままじゃ次元断層が発生する」
「れ、れお君、次元断層って!?」
「一言で言うならこの世界だけじゃなくて近隣の世界が20個くらい滅びる。
宇宙規模で言うなら銀河一個分以上だなだな」
「それすっごく不味いよ! なんとか止めないと!!」
「うん、絶対に止めなきゃ……。フェイトちゃん、動けそう?」
「……うん。お願いみんな! 力を貸して!!」
「……分かりました。
クロノ執務官、ハトリ元空将! 行けますね!!」
「もちろんです!」
「任せなさい。フェイトちゃん達をしっかりアイツの元へ届けてあげる!!」
ここでプレシアを止めないとこの世界も滅びてジ エンド。
その上アリシアちゃんとの約束もあるから、なんとしても彼女からアリシアちゃんの身体を強奪しなければならない。
……ま、今さっきのプレシアの言葉で実は俺は相当ブチギレてる。
あんなあからさまにアリシアちゃんとフェイトちゃんを比べやがって……俺の地雷源をタップダンスで踏み抜きまくったこと後悔させてやらぁ!!