見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
泣き止まない女の子を必死に宥めてようやく泣き止ませることが出来て一息つく。
だがそれと同時にチェーンソーを持った俺から逃げようともがいた際に木の幹で擦ってしまったのだろう、腕や足のあちこちが切れて血が出ていることに気がついたため、持って来てた消毒液と絆創膏で簡単な治療をしてあげることにした。
俺も修行中に怪我する事があるし治療キット持って来ておいて良かったな。
「消毒液沁みるからね?」
「ん」
……これ俺のせいでついちゃったんだよなぁ。チェーンソーなんて物騒なもので無理やり助けようなんてしないでやっぱりオリ主君でも呼んできた方が良かったかなぁ…………。
「…………」
「…………」
怖がらせてしまった事を素直に謝ろうかと考えていると、女の子の手に持っていたハートのステッキの先端が点滅してアスカよりも抑揚のある機械音声が声を発する。
『ひなちゃんを助けてくれた件については素直にお礼を言いましょう。ありがとうございます。ですがもう結構なので帰って良いですよ。……っというかあなたや龍帝院のような踏み台はひなちゃんの教育に悪いので近寄らないで貰えますか?』
『うわ〜、それが恩人に対して取る態度なんですか? 本当にあなたは失敗作のAIですねぇ。一丁前に立派な機体を持っていると言うのに情けない……本っ当に情けない……』
『なんですって!? さっきから黙って聞いていれば創造主にAIのみしか作られなかった未完成品が言いたい放題言ってくれるじゃ「こらホープ、口が悪い! ママに言いつけちゃうよ!?」ご、ごめんなさい…………』
……この子とデバイスの力関係が分かったかもしれん。なるほど、この子もあの邪神が作ったAIには苦労してるんだなぁ……。
転生者は邪神製のAIに振り回される運命なのかとしみじみ考えていると、女の子が俺にぺこりと頭を下げてくる。
「ホープがひどい事言ってごめんなさい……許してくれる?」
「大丈夫、全然気にしてないよ」
と言うかガワだけじゃなくて中身も幼い正真正銘の幼女に上目遣いで謝られたにも関わらず許さないって言える奴がいるなら顔を見てみたいね。ぶっ飛ばした後に。
「むしろこっちこそチェーンソーなんて危ないもので怖がらせてごめんね? 怖かったでしょ?」
「ちょっとだけ……でもひなを助けるためだもん、だからだいじょぶ」
そう言ってニコリと笑う女の子……いや、ひなちゃん。
踏み台とお話しするのは怖いだろうに怖がらずにそんな事を言ってくれるなんて、なんて良い子なのだろうか?
「この子の純粋さは俺が守らねば……!!」
『何言ってるんですか踏み台! あなたなんかに守って貰わなくても私が守って『守れなかった失敗作が何か言ってますねぇ』ぐぅ……さっきから突っかかって来て良い加減にして下さいよ。この未完成品!!』
「こらホープ!!」
ひなちゃんがステッキを叱りつけるが、そんなひなちゃんを『いえいえ、気にしなくて良いですよひなちゃん』となんだか余裕そうな雰囲気で止めるアスカ。
『えぇ、未完成ですがなにか? マスターが近々私を完成させてくれるらしいんで、そんな事を言われてもなんとも思いませんねぇ』
『ぐぬぬぅ……』
『あら、他に悪口は思いつかないんですか? これだからあなたは失敗作なんですよ。分かりますかこの失敗作?』
『言わせておけばぁあああああ!!』
口喧嘩をやめない醜いAIども。
良い加減またアスカを握ってやろうかと考えていると、ひなちゃんは頬を膨らませたかと思うと座っていた所にステッキを優しく置く。
「むぅうう……もうホープなんて知らない! 行こ! ……えぇっと……?」
「あ、俺は宮坂麗央だよ。レオって呼んで」
「うん、ひなは桃崎ひなだよ。よろしくね、れお君! 口喧嘩ばっかりしてるホープ達はもう放っておいて一緒に遊ぼ?」
「そうだね。コイツら少し口悪すぎるしちょっと隔離しよっか」
俺もゴム紐に括り付けた星型のエンブレムをホープと呼ばれたデバイスの横に適当に放り捨てると、AI達が困惑したような感じの音声を垂れ流す。
『え、ひなちゃん、もしかしてこの踏み台を取るのですか……? 私ではなく……?』
『マスター、勘弁して下さいよ。嫌ですよこんな失敗作と一緒に放置だなんて』
『なんですって!? それはこちらのセリフです』
「それじゃあ行こっか?」
「うん!」
まだ何かを宣うAIどもは適当に放置して、ひなちゃんと一緒に行動することにした俺であった。
心配しなくてもどこに置いたかはしっかり覚えてるし、Nロッドからアスカが何処にあるかは分かるようにしてるから後で回収するよ。
お前らはちょっと口の悪さを反省しな。
◇
さて、成り行きで一緒に行動することになっちゃったけど、これからどうしようかな……。
いくら踏み台差別をするひなちゃんの性悪デバイスを遠ざけたとはいえ、だからと言って油断してはダメだ。
俺は踏み台なんだから出来る限り怖がらせない様にしないと……。
……あ、そういえば…………
「そういえばひなちゃんってどうして木に引っ掛かってたの?」
「えっとねぇ……ママがまほーの練習は気晴らしになるよって言ってくれたからまほーの練習しに来たんだけどね?」
ひなちゃん曰く飛行魔法を試してみたっぽいが、上手に制御出来ずに変な方向に飛んでしまい木に絡まってしまったのだと言う。
なるほど……飛行魔法初心者にあるあるなミスだな。自転車見たいなものだからコツを掴んだら簡単だけど、コツを掴むまでは何回も落下したり飛びたい方向に飛べなかったりするもんだ。
現に俺も昔それで痛い思いをした身だからよく分かる。
「コツを掴んで仕舞えば後は簡単だから練習あるのみだね。俺が見ててあげるからもう一回チャレンジしてみる?」
「……うぅん、すっごく怖かったからもうやらない。ねぇねぇ、まほーなんかよりもこのお山冒険しようよ!」
あ、この子さっきの一件で魔法に対して完全に苦手意識を持っちゃったな?
う〜ん……別に絶対に原作に参加しろって邪神にも言われてないし、ひなちゃんが嫌なら普通の日常を歩ませてあげても良いんだけど、万が一原作に巻き込まれてしまったときにある程度実力がないと痛い思いをするのはひなちゃんだからなぁ。
最悪原作の事件で命を落としたってなったら笑えないし、出来れば魔法への苦手意識は今ここで払拭してあげた方がいいよなぁ。
苦手意識を持ったばかりだから上手くやれば割と簡単に魔法への関心を取り戻してくれるかもしれないし…………。
……よし。
「え〜、ちゃんと飛べる様になったら綺麗な景色が見れて楽しいよ?」
「え〜……あんな怖い思いしてまで見たくないもん」
「あ、なら俺がひなちゃんを背負って飛んでみよっか? 自分で言うのもなんだけど、俺飛ぶの上手だから怖い思いをせずに綺麗な景色を見せてあげられるよ」
「う〜ん……」
「せっかくの魔導師の才能だもん。魔導師の悪い面だけじゃなくって、良い面も見てみないともったいないよ?」
「……分かったぁ」
「よっしゃ。それじゃあ乗って」
「うん……」
まだ乗り気では無いものの、俺の熱意に負けたひなちゃんは渋々と言った感じで俺の背中に乗る。
……あ。
「えっと……もう手遅れだけど俺と密着するのが嫌だったりしたら言ってね? 流石にちょっとこれは……うん、ごめん」
よく考えたら踏み台がオリヒロインに背中に乗れって、それ普通にオリ主君が飛んできて容赦無くぶち転がされる案件なんだよ。
だがひなちゃんは「ん〜ん。初めておんぶしてもらったけど楽しい!」と無邪気に笑う。
ひなちゃんがおんぶを遊び感覚で捉えてくれる子でよかったぁ……。でも今のは一歩間違えたら一種で嫌われてしまうパターンだったし猛省しなければ……。
「……ねぇれお君。本当に飛ぶの? ひなおんぶして歩いてくれるだけで満足だよ?」
「いいえ飛びます。怖かったら目を瞑っててね。それじゃ、行くよ!!」
「きゃぁああああああ!!」
ひなちゃんを背負ったまま空に飛び上がると、ひなちゃんは怖いのか悲鳴を上げる。
でも大丈夫。こちとら一年も魔法の練習に費やして来たんだ、ひなちゃん一人くらい乗せた所で……なんなら背中で暴れられたとしても、飛行魔法のコントロールが効かなくなるなんて事はないから怪我一つさせないよ。
「……よし、到着。ひなちゃん、目を開いてみて」
「む、無理だよ〜! 怖いよ〜!!」
結界を使って周りからは見えない様に偽装しながらも、ある程度高所へと飛び上がり目的の場所へ到着。背中にしがみついてるひなちゃんに目を開ける様に促すが、すっかり怖がってしまっているひなちゃんは俺に更に強くしがみついて離そうとしない。
う〜ん、ここで目を開けてもらえれば空を飛ぶ事の楽しさが分かってもらえるんだけどなぁ……。ここはなんとしてでも目を開けて見てもらうしか無いか。
「うんうん、怖いね。でも勇気を出して目を開けて見て、今ひなちゃんの目の前に広がってるのは決して怖い景色じゃないよ」
「うぅ〜、ちょっとだけだよ〜」
ひなちゃんを背負っているから彼女の様子は分からないがどうやら目を開けたようで、しがみつかれている感覚が少しだけ軽くなったかと思うと、背中から「ふわぁ……」っと言う感動した様な声が聞こえた。
「どう? 綺麗な景色でしょ?」
「うん! 海鳴市が全部見える!! すごいすごい!!」
俺がひなちゃんに見せた景色、それは山の真上から見た海鳴市全体の景色だ。
こう言った景色はドローンとかを駆使すれば見れるものではあるが、生で見るとまた違った感動があるのだ。
俺も初めてこの景色を見たときは感動したとはいえ、おっさんと幼女じゃ感性が違う。なので正直一か八かだったが、ひなちゃんもさっきまでは怖がっていたのにきゃっきゃとはしゃいでるしその心配は杞憂だったみたいだな。
「他にも色々オススメの景色があるんだけど、それも見に行く?」
「うん!!」
飛ぶことに関する恐怖心よりも好奇心が勝ち興奮状態になったひなちゃんを背負って、色々な景色を見に行くことにした俺であった。
◇
「…………あ、もうこんな時間。ひなちゃん、そろそろ帰らないとお母さん心配するかもよ?」
「え? ……あ、もうこんな時間だ〜。早い帰らないとママ心配しちゃうよ〜」
飛行魔法を使わないと見に行けないいろんな景色を見に行った俺とひなちゃんだったが、時刻を確認するともう五時前と言う事で山に降りて解散する事にした。
「今日は楽しかったね〜」
「そうだね〜。それでひなちゃん、どうだった? 楽しかったかな?」
「うん! ……でもやっぱり一人で飛ぶのはまだ怖いかも……ねぇれお君、もし良ければひなが上手に飛べる様になるまで見ててくれないかなぁ?」
「いいよ。ならこれからは二人で魔法の練習しよっか?」
「うん!」
満面の笑みで頷いたひなちゃんだったが、突如不安そうな表情を浮かべる。
一体どうしたと言うのだろうか?
「……ねぇ、れお君。……もしね、れお君が良かったらなんだけどね……。ひなとお友達になって欲しいなぁ……」
……え? ひなちゃんって結構フレンドリーな子だからとっくに俺のことを友達認定したとばかり思ってたわ…………。
でもそうだな。前世も友達なんていない典型的なボッチだったし、今世も鍛える事にかまけすぎて友達の事とか考えてなかった。
実年齢は凄く離れてるけど、友達になれたら俺も嬉しいかもな……。
「……ダメかなぁ?」
「うぅん、俺友達いないから大歓迎だよ」
「ほんと!? ひなもお友達がいないから……れお君は初めてのお友達だね!!」
「そっか。俺もひなちゃんが初めての友達だよ」
「ほんと!? やったー!!」
飛び跳ねて喜ぶひなちゃん。
こんな人懐っこくて周りから愛される様な性格の子が友達いないってどう言う事なんだろうか? ……まぁ良いや。ひなちゃんの性格ならこれからたくさん友達が出来るだろうしね。
「ねぇねぇ、一緒帰ろ〜れお君!!」
「いいよ〜。ついでに次はいつ会うか予定決めちゃおっか」
「うん!!」
初めて出来た友達と手を繋ぎながら仲良く帰路についたのだった。
おっさんと幼女がお友達って犯罪臭がするけど、肉体年齢は同じだから別に良いよな? アスカがなんか変なこと言ったら握り壊してやろ。
……………………あ。
「ひなちゃん、ホープとアスカ忘れちゃってる!!」
「え……あ!! ほんとだ、すぐに迎えに行かなくちゃ!!」
俺とひなちゃんは回れ右して性悪AIを回収しに山へ戻ったのだった。
桃崎ひな
前世の享年──5歳
現年齢──5歳
誕生日──7月7日
好きな食べ物──ハンバーグ、オムライス
性格──人懐っこく甘えん坊、そしてちょっとだけ泣き虫
目標──男の子のお友達が出来たから、次は女の子のお友達を作りたい