見た目だけは踏み台だけど、普通に生きさせていただきます! 作:蒼天 極
俺と同じ転生者であるひなちゃんと友達になってから数日。あれ以来ひなちゃんと一緒に魔法の練習をするようになった。
『ひなちゃんって良い子ですよね。教えた事を次々と吸収して、分からない事は質問してくれて……それに何より練習の後はありがとうって言ってくれるんですよ? あんな子がマスターに欲しかった……』
「可愛げのないマスターで悪うござんした。……でも気持ちは分かる。魔法教えるたびに楽しそうに使ってくれるから教えがいがあるんだよねぇ」
しかも流石はオリヒロインと言うべきか、踏み台の俺なんかよりも才能に満ち溢れてるから俺を追い抜く日も近いかもしれない……いや、ひなちゃんの先輩として負けたくないな。
また、ひなちゃんにとっては初めて友達ができたのがよっぽど嬉しかった様で、練習が始まる前も終わった後も、練習が休みの日にも俺に会いに我が家に遊びにくるようになった。
俺を慕って毎日の様に会いに来てくれるひなちゃんはとても可愛く、最近ではひなちゃんが一人で出歩いていると心配になってしまう。
「ハッ! これが父性と言うやつか。子供がいたらこんな気持ちになるんだろうなぁ……」
『いえ、それは単純にマスターがロリコ嘘ですごめんなさい。謝りますので私を握らないでください。あ、メキッて言いましたよ、私の身体メキッて言いました! 嫁入り前の身体になんてことするんですか!』
「デバイスに嫁もクソもないだろうが。つか、ロリコンはマジでやめろよ。俺だって言われなき誹謗中傷で嫌な気持ちになるんだぞ」
◇
その後ピーピー文句を言うアスカを無造作にポケットに突っ込んで自宅を出る。
今日の訓練は休みだがひなちゃんと一緒に遊ぶ約束をしているのだ。訓練以外でちゃんと遊ぶのは何気に初めてだから少し緊張してる俺であります。
ひなちゃんの家は駅前の商店街の中にあるらしいので商店街前で待ち合わせしているが、今の時間帯ならば約束の時間の10分前には到着するだろう。
「うぇえええええん!!」
商店街の入り口に差し掛かったとき、近くでひなちゃんの泣き声が聞こえた。
もしかして転んじゃったのかな……いや、なんだか嫌な予感がする。早急にひなちゃんを助けに行かないと!!
「行くぞアスカ!!」
『はいはい……。すっかりマスターもひなちゃん信者になっちゃって……』
アスカの呆れる様な声を完全無視して泣き声のした方に向かうと、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる金髪と泣きじゃくるひなちゃん。そして、そんな金髪からひなちゃんを守ろうと間に立っている栗毛の女の子……なのはちゃんがいた。
「やめてよりゅうや君! この子嫌がってるの!!」
「おぉ、なのは! 嫉妬しなくても良いんだぜ? 俺はお前ら全員の婿なんだからな。ほら、遊びに行こうぜ、翠屋で好きなもの食わせてやるよ!!」
「翠屋はなのはのお父さんのお店なの!」
「いいからいいから、ほら行こうぜ!!」
「ちょ、放してよぉ!!」
「うぇえええええん! あぁああああああん!!」
…………。
なーるほどぉ、ひなちゃんを泣かせたのはコイツかぁ……。
今すぐにでも八つ裂きにしてやりたいところだけど落ち着け……。確かあいつ無限の剣製を持ってたよな? 一年前はアスカに止められたけど、今の俺の実力なら勝てるかな?
「アスカ、今の俺、アイツ、倒せる?」
『カタコトにならないでくれません? ……そうですねぇ、あの金髪の筋肉のつき方的に一年前からなんも発展してないっぽいですし、今のマスターなら余裕で捻る事できるんじゃないですか?』
「よし、ならひなちゃんにナンパした事を後悔させて「またお前か龍帝院」およ?」
ひなちゃんに手を出したならタダで済ませる訳には行かないと言う事で、今度こそ金髪のゴールデンボールを蹴り壊そうと軽いストレッチをしてから金髪の背後に回ろうとしていると、金髪となのはちゃんの間に黒髪のイケメン……オリ主君が割って入る。
それを見た金髪は一年前のあのときよりも顔を歪めてオリ主君の胸ぐらを掴み上げる。
「またお前かモブゥ!! テメェこの間はよくもアリサとの時間を邪魔してくれたなぁ!!」
「アリサとの時間? それにしてはアリサは嫌がってる様に見えたがな。いつもいつも女の子たちに嫌がらせばっかりして……。恥ずかしくないのかお前は?」
「うるせぇ! アリサのあれはツンデレだよ。分からねぇくせに首を突っ込むんじゃねえよ!!」
…………。
一年前の様に無言で背後に回ると、オリ主君となのはちゃんが気がつく。だが以前と全く同じ状況と言う事で二人は俺の事をいないものとして金髪と向き直る。
え、ひなちゃん? 涙で前見えてないと思うよ。
「原作始まる前にお前消してのんびり三人を……いや、そこのオリヒロインを含めた四人を攻略してやるよぉ!」
「攻略だと? お前はなのは達をなんだと思ってるんだ」
「俺の攻略対象、嫁だよ! くらえ、アンリミテッドブレ「地獄への入り口じゃボケェエエエエエエッ!!」おっごぉおおおお!!?!??!」
ひなちゃんに手を出したと言う事で前回よりも数倍の力を入れて跳ね上げた俺のつま先が、こんな街中で能力を使おうとする金髪の股間に突き刺さる。
「……うん、だと思った」
「前も見たけどりゅうや君痛そうなの……うぅん、でもこの子にひどいことしたしいんがおーほーってやつなの」
「お、なのは難しい言葉知ってるな」
「おにーちゃんが教えてくれたの」
えっへんと胸を張るなのはちゃんと感心するオリ主君をよそに、生まれたての子鹿の様にガクガクと震える金髪に回し蹴りを叩き込んで近くにあったゴミ箱にホールインワンさせる。
このままごみ収集車に回収されちまえ。
「ひなちゃん!」
「……れおくん? ……れ"お"ぐ〜ん!!」
「うわっと!?」
そして大泣きしてるひなちゃんに駆け寄ると、ようやく俺の存在に気がついたかと思うと俺に抱きついて大泣きを始めた。
「うぇええええん!! あぁあああああああん!!」
「大丈夫だよひなちゃん! 悪者は滅したからね。だから泣き止んで…………チッ、ひなちゃんをこんなに泣かせるとは金髪め……もう無量大数発くらいアイツのゴールデンボールにつま先めり込ませたろか……!!」
「いや、流石にそれは龍帝院死ぬだろ……」
「と言うか一生終わらないの……」
「えぇえええええん!! あぁああああああん!!」
……ダメだ、ひなちゃん全然泣き止んでくれない。
こ、こうなったら……!
ギャン泣きするひなちゃんを優しく優しく割れ物を扱うかの様に丁寧に俺から剥がすと、彼女をなのはちゃんに預ける。
「そこのオリ主君となのはちゃん! ちょっとこの子見ててくれる!?」
「え、あ、あぁ。分かった」
「う、うん。分かったの! ……あれ? なんであの子なのはの名前知ってるの?」
頭にハテナマークを浮かべるなのはちゃんを完全無視して俺は商店街に入ってすぐの駄菓子屋に駆け込むと、ひなちゃんの大好きなチュッパチャプスの購入してひなちゃんの元へ帰還。
「ひなちゃん! ほら、飴ちゃんあるよ。だから機嫌直して?」
「…………あむ」
包装紙を剥がしてひなちゃんに飴を差し出すと、それに気がついたひなちゃんはパクりと飴を咥える。
目の端に涙を浮かべながらも飴を口の中で転がしていたが、やがて段々と機嫌が良くなったのか笑顔で飴に夢中になり始めた。
「ん〜♪」
「すぐに機嫌治しちゃったの!!」
「マジか。オレ達が慰めても全然泣き止まなかったのに……」
クククッ、ひなちゃんは食い意地張ってるからね。お菓子をあげればすぐに機嫌治してくれるんだよ。
「涙止まった?」
「ん」
「それじゃあ気を取り直して遊びに行こっか?」
「うん!」
「「あ、ちょっと待って!」」
気を取り直してひなちゃんと遊びに行こうとした俺だが、オリ主君となのはちゃんに呼び止められて彼らの方を向く。
と言うか何気に息ぴったりだったね君達。
「どうしたの? これからこの子と遊びに行く予定なんだけど…………なるほど、そう言うことか」
「え?」
「さてはテメェ、踏み台から解放するって体でひなちゃん連れて行くつもりだな!? いくらテメェがオリ主でもひなちゃんは渡さねぇぞ!!」
「…………は?」
「えぇ、ヤマト君そうだったの!? この子が気になるの!?」
「え、なんの話? マジでなんの話?」
頭にハテナマークをつけてとぼけてやがるが俺は騙されんぞ!!
ひなちゃんには第二の人生を健やかに幸せに育ってほしいのに、何が悲しくてオリ主君のハーレムメンバーに加えさせなければいけないんだ。
もしひなちゃんを狙ってるなら、踏み台としてテメェの前に立ち塞がるまでよ……!!
「踏み台の俺がオリ主に勝てるだなんて思い上がってはないが、例え差し違えてでもテメェのゴールデンボール蹴り潰してやるかんな!!」
「待て待て待て待て! なんでそうなる!?」
「やかましい! 死ねぇええええええ!!」
「有無を言わさずかよ……!? クソ、やるしかないか……!!」
「ちょ、れお君喧嘩はダメだよ〜!!」
心優しいひなちゃんが俺を止めるが、ひなちゃんを穢させないためにも今回ばかりは止まる訳には行かねぇ!!
オリ主君のゴールデンボールを蹴り潰そうと命を賭けて彼に襲いかかった!!
三秒でぶっ飛ばされました、無念……。
〜おまけ〜
レオが駄菓子屋に行ってる間、ひなちゃんの面倒を見ることになったオリ主君達は……
「うぇええええん!!」
「もう大丈夫なの。だから泣き止んで?」
「あぁ、諸悪の根源は銀髪がやっつけたから……な?」
「あぁあああああん!!」
「ほ、ほら! いないいない……バ〜!!」
「あっぷっぷ〜!」
「えぇえええええん!!」
「……にゃ〜、泣き止まないよぉ。これどうすれば良いのぉ!!」
「びぇええええええん!!」
「う、うぅ……うぇえええええん!!」
「あぁ、なのはまで……早く戻って来てくれ銀髪ぅううううう!!」