偽トリアがゆく雁夜おじさん救出劇? 作:破戒すべき全ての鬱(うつブレイカー)
た、食べきった。もう一生食べたくない…胃が
「ご、ごち…ごちそうさまでした」
言峰神父はまだ食べきってないみたいですね…頑張ってください。
「……随分と早い完食だ。コレを気に入ってくれたようだな」
「そ、そうですね。辛いのは好きなので…」
正直美味しいとは感じませんでした。
ただ残ったのは熱さと痛さだけが私の全てを支配したという事実のみですよ…愉悦神父はコレを好き好んで食べてたと思うと尊敬の念しか感じません。
今の神父は愉悦部に入ってないからか全く手が動いてませんけどね…
「……食べるか?」
善意で進めてきているであろう神父様。キツイっす…無理ですよホント。
ここで食べるか!と言いたいところですけども、神父にコレを食べさせ続けると愉悦部に特殊進化しそうなので誠に遺憾ながら頂きます。
…できるだけ笑顔で、ありがたく…苦の顔を見せたらいけない
「綺礼神父、良いのですか?では遠慮なく頂きます」
痛いし苦しいけど最初の頃よりかはマシですね…最初の辛いを耐えきったらあとは感覚麻痺して比較的美味しく食べれます。
コレを食べ続けると確かに美味しさも感じられるようになります……かね?
「……成程。流石は魔女モルガンと言うべきか」
何がですかー?何が『成程』なんです?私にも分かるように全部を言語化してから言ってください!
「ウッ…ご馳走様でした。」
口にいれるまでは全く辛くなかった…問題は別にありました。
胃に2杯分が入り、満腹感というか……胃に劇物押し当てられてる感じがして痛いです。
「会計を済ませておく。先に出ておくと良い」
「え……あ!ありがとうございます」
トゥンク……対応がイケメンすぎませんか?これがあんなアンリマユLOVEのバケモンになるんです?
これは言峰父の育て方が悪いといっても過言ではないですね……
「……今回はわざわざ付き合ってもらいありがとうございました」
「こちらこそ時間を割いてもらったことに改めて感謝を述べよう」
いやーお腹苦しい…雁夜おじさんになんて言おうかな……きっとご飯作って待ってますよね……そう考えるとお腹だけじゃなくて胸も苦しくなってくる…
「それでは私は失礼するとしよう。」
「はい…またいつかお会いしましょう」
■
サーヴァントモルガンとの接触を終え、聖堂教会へと戻った言峰綺礼はふぅと一息をついて師の時臣へと連絡を取ろうと魔術を行使する。
「師よ、モルガンとの接触は無事に終了しました。」
『――そうか、無事に終わったようで何よりだ。それでどうだった?』
「はい。確かに聖杯を望んでいるわけではありませんでした」
『――なるほど、奴のクラスは調停者、ルーラーということか…厄介なことになってきたな』
あのサーヴァントは何かに固執しているわけでも、聖杯に固執しているようにも見えなかった。ルーラーというエクストラクラスを聞き及んだ覚えはあれど、それがどういったクラスかなどは知らない。
だが師である時臣が厄介と言うのだから厄介なクラスであることは間違い無いのだろう。
「師よ、ルーラーとは一体どのようなクラスなのですか?」
『詳しいことは私も知らないが聖杯戦争という儀式を生み出した初代当主の記述によれば聖杯に何らかの歪みが見込まれる時に聖杯そのものによって呼ばれるクラスだと聞き及んでいる。』
歪み…マスターの権限を失ったはずの私に発現した令呪にもそれが関係しているのであろうか…
「……此度の聖杯戦争はイレギュラーな事態が起きていると?」
『その通りだ。歪みというのが何を指すかは私にはわからないが今回の聖杯戦争は何かがおかしいのだろう。』
……ルーラーというのはそこまで特異で忌避するようなモノなのだろうか。聖杯戦争に異常が発生しているのは承知しているがその異常というのは雨生龍之介含むキャスター陣営のことだろう。
自身に令呪が発現したのも早急に事態を収束させるためと考えれば納得できるが……
「師よ。その異常というのはキャスター陣営のことでは?それならばそこまで警戒する必要は無いと思われます」
『――…そもそもの問題になぜ連続殺人を堂々と行う魔術に触れたことないような人間が選ばれたかということだ。令呪は聖杯の意思によってマスターとなり得る人物へと譲渡される。ならばルーラーが聖杯の意思によって選ばれるのは道理にかなっていない』
「……たしかに」
……キャスター陣営が問題ではないとすればなんだ?なぜ自身に令呪が再び宿った?聖杯は私に何を行えと?
『綺礼よ…引き続き他陣営の監視を頼んだ。ルーラーに関しては優先しなくて構わない……現状の情報だけでは対策できることは限られている』
「はい。分かりました」
連絡を終えて部屋を出る。
「……ルーラーか」
……師はあの様に言っていたが最も警戒すべきはあのサーヴァントなのではないか? アーチャー、ライダーの宝具は規格外であり敵になるならば大方のサーヴァントでと勝ち目は薄いだろう。
無論キャスターも強力であり幾つかの強力な魔術を使えることは確認しており厄介な相手という評価にせざるを得ない。
…セイバーは全ての要素において優秀であり、その宝具の真価は未知数だ。
…ルーラーはどうだ?神代の魔女としての魔術の腕は計り知れないが…それ以上にアサシンとの戦いの際は白兵戦を繰り広げていた…更に特筆すべきところは宝具の一切が不明な点だ。
全てが不透明なサーヴァント……
「警戒するに越したことはない」
そう結論付けて言峰綺礼は部屋を後にする
■
間桐雁夜は不思議であった。ある夜にあった美しい少女、バーサーカー…彼女が来てから全てが良い方向に進んでいる。
愛しの人の娘、桜ちゃんは憎き臓硯から解放され、臓硯が死んだからか身体も以前よりも遥かに良く、元気になってくれた。
兄との仲も少しは改善し、息子の元へ行くと海外へと旅立ち離れ離れになってしまったが、前よりもずっと近くに感じられる。
そして……なによりも、バーサーカーが家に来てから雁夜は毎日が幸せだった。
「頂きます」
気が抜けたからか流動食しか受け付けなくなっていた身体もさっぱりとしたものなら口をつけれるようになりつつある。
…間桐の自分がこんなにも幸せになっても良いのだろうかとしばしば考えるし、この幸福の代償も近い内に支払わなければならないだろうとも考える。
…心残りなのは遠坂時臣だが今の幸せな光景が少しでも長く続くなら諦めても良いかもしれないと考える自分もいる。
自己中な人間である…それは我が物顔でここの子として育てようとし、桜ちゃんを葵さんに返そうともしないということだ。
「…僕も間桐か……」
自分勝手さに呆れて……そう呟く。
そのつぶやきに呼応するかのようにドタドタと廊下を走る音が聞こえてくる…こんな破天荒な足音を奏でるものは家の中で一人しか居ない。
「カリヤ!スゴイ発見しました!見て驚いて見て笑ってください!」
その少女は眩しいほどの笑顔で僕に駆け寄る。
「バーサーカーどうしたんだい?そんなに慌てて……」
バーサーカーとは話せば話すほど娘がいたらこんな雰囲気なのだろうかと考えることが多くなる。
桜ちゃんにとっては本当の姉のように感じているだろう。
「フゥー………いきますよ?!インビシブルエア走法、発動!」
そう言うとバーサーカーはスライド移動を開始して横に後ろに前にと自由に移動する。
「動きが気持ち悪い?!」
……つい本音が漏れてしまった。
「気持ち悪いとは何ですか!これは魔力制御の練習に練習を重ねてふと思いついてやったら出来たんです!凄くないですか?!」
……魔術……なのかコレ?いや……魔術なんだろうけど…
「凄いけど、その、なんというか」
「――?……!」
バーサーカーは何かに気づくようにこっちを見て自信満々と言わんばかりに胸を張る。
「…勿論です!これはまだ序の口!ここからが本気ですよ!」
何を勘違いしたのかバーサーカーは空気イスをして足を組んだりしながら更に素早くスライド移動を始め、オフィスチェアに座るが如く回転もしだす
「服を足先から足の付根まで魔力で固定することによって本当に座っているような状態を作り出してるんです!回転するのが大変で片足を軸に前に進む力と後ろに進む力を自分にかけることで回転できるようになりました!ちょっと近くの公園で練習したんですよ!」
…バーサーカーが桜ちゃんを送りに出てから帰ってくるまで2時間と20分程度かかっている……遅い遅いと思っていたがまさかずっとこれを練習してたのか?
2時間も練習している様子を想像すると呆れて何もいえない。バーサーカーの帰りが遅いと心配していた自分が馬鹿みたいだ…
「ねぇバーサーカー」
「はい!」
回転を止めこちらに向き直るバーサーカー…
その嬉しそうに笑う姿は普通の女の子のソレだ。英雄とは無縁などこにでもいそうな活発な少女…こんな子が過去には英雄と戦乱の世にもてはやされていたのだと思うと胸が締め付けられる…
「バーサーカーはどうして僕の側にいてくれるんだ?」
僕みたいな魔術師の要素が欠片もないような人間を何故気をかけてくれるのかが分からない…願いを叶えれるという器から最も離れている自分を選んだのかが分からない。
そんな疑問を持って言葉を投げかけたのを見透かすようにやれやれと言いたげな表情を見せてコチラの目を見据える。
「……何度も言っていますが私はしたいと思ったことをしているだけですよ。カリヤが何かを気負う必要はありません。貴方はもう少しだけプラスの矢印を自分に向けたほうが良いですよ」
…きっと返ってくる答えは分かっていた…バーサーカーは優しすぎる…見ず知らずの死に体に手をさし伸ばしてくれた。
きっと彼女に任せれば全てがうまくいくだろう…だけれどそれで良いんだろうか。きっと生前の彼女もそう生きてきたのだろう。
「………何を思ってその質問をしたのか私には分かりませんが、もしカリヤにやることがあるというならそれはきっと聖杯戦争が終わったあとにするべき事です。
今、この聖杯戦争を乗り切ることは貴方のサーヴァントである私に任せてください」
…聖杯戦争において間桐雁夜という男は魔術師としてもマスターとしても役に立たない。
魔力供給すら満足に行えず、魔術師を相手取ることもできない。バーサーカーはそんな木偶の坊を守るために現界しているようなものだ。
「…ありがとうバーサーカー。いつも迷惑をかけてすまないね」
…このまま守られるだけで良いのだろうか
「いえいえ!迷惑だなんて思ってません!私は私!カリヤはカリヤ!互いにやれることをやっているだけですよ!」
互いにやれることをする…響きだけ聞けば平等にも聞こえる言葉だ。だがその内訳はほぼ全てがバーサーカーへと負担がかかっている。
「……そう、だね……僕も、やれることを…やれるだけやってみるよ」
「そうですよ!お互いに頑張りましょう!」
…ずっと何もかもから目を逸らして逃げていただけの人生だった、もしも向き合うなら今しか無い。
魔術を基礎程度も学んでいない自分にできることはない…なら魔術を学べば良い。
幸い魔術についての書物はこの屋敷に余るほどある……きっとようやく魔術と向き合う時が来たのだ。
「ありがとうバーサーカー。もう少し頑張ってみるよ」
グダグダですまない…