英雄《ヒーロー 》が如く 龍を継ぐもの 作:0101シュート
バトルトーナメント第二回戦。一回戦を勝ち抜いた者たちの戦いが今始まろうとしていた。
そして今まさに二回戦第一試合。切島鋭児郎VS緑谷出久の試合が始まる。
二人は既に舞台の上に立っていた。
「..........」
「..........」
二人は声をださない。闘志の溢れた目線を互いに向けあう。
切島は正直何か話しかけて来るんじゃないかと思ってたが緑谷は
一言も喋らない。しかし間もなく試合開始の合図来る少し前のタイミングで
緑谷は口を開いた。
「切島君」
「なんだ?」
「君に僕の技がどれだけ通用するか試させてもらう。だから全力で掛かってきてくれ!!」
「…………最初からそのつもりだ!」
二人は拳を構えて試合開始の合図を待った。
『試合開始!!』
「行くぞ!!緑谷ー!!」
切島が地面を激しく蹴りながらものすごい気迫で緑谷に向かって走っていく。
その気迫は並みの者なら怖気づいてしまうものだ。しかし緑谷の表情は変わらない。
冷静に走ってくる切島を見つめる。ものすごい勢いで走った切島はそのまま助走を
付けて拳を振るう。その時緑谷が見せたのは「捌き」。切島の体は後ろに流される。
しかし彼の鍛え抜かれた肉体は強靭な大幹を発揮する。なんとその場で踏ん張り体を回転させて
肘打ちを放った。緑谷はそれに反応できずにもろに腹に貰ってしまう。
「う!?あ..........」
あまりの痛みに意識が一瞬飛んでしまう。
△極
切島が意識の飛んだ緑谷の胸ぐらを素早くつかむ。そして体ひねり背負い投げのように
彼の体を後ろへと投げ飛ばした。
「うわ!?う……!!」
緑谷は受け身を取れず地面に叩きつけられてしまう。
壊し屋の極み・気絶ぶん投げ(表)
「痛ってー。フ、切島君に相手にうまくいくわけないか」
緑谷は痛みで意識がはっきりとしたのか素早く立ち上がり再び拳を
構える。その顔には不敵な笑みがこぼれていた。
(さてどう攻略する?捌きはちょっと危険?なら掴みにいくしかないか!)
次に動き出したのは緑谷。彼は素早いダッシュで切島の懐へと入っていく。
そんな彼に切島は容赦なく拳を振るう。重いダウンブロウ、破壊力のある
アッパー。広範囲の回転蹴りを放っていく。緑谷はそれを「捌き」で
受け流そうとするがあまりの力強さにうまくいかない。じわじわと
緑谷の体に命中し体力が削られていく。
「そろそろ決めるぜ!!」
切島が彼にトドメを刺そうと渾身の右ストレートを放つ。緑谷は
それを狙っていた。一瞬で個性を発動させ身体を強化する。
「ここだ!!」
「!?」
その刹那切島の伸ばした腕に緑谷が飛びつく。そして右手を両手両足を
絡ませに行く。そう飛び十字固めを極めに来たのだ。しかし切島は倒れない
腕を張り、踏ん張ることでその体勢を維持する。しかし緑谷もあきらめない。
切島の体勢を崩すべく腕を極めるために力を必死に込める。これで膠着状態となった。
〇 連打しろ!!
「おら!?」
「うわ!?」
切島はなんと体を半回転させながら地面に思いっきり飛んで地面に倒れる。それと同時に右手に絡まっていた
緑谷を地面に叩きつけた。顔面から地面に叩きつけられた緑谷の鼻から鼻血が吹き出る。
しかしも鼻を叩きつけれた衝撃で軽く意識が飛んでしまったのだ。
「あ..........」
「おら!!」
切島は気絶した緑谷を無理矢理立たせる。そして胸ぐらを掴んだ。
△極
切島が緑谷の後ろ首にチョークスリーパーをかけながら自身の横に寄せる。
そして体勢を低くした切島はその体勢のまま右足を後ろに大きく上げる。
そしてその足を大きく逆方向に振るうと二人の体はくるりと回転。緑谷の体は
首を中心に宙を舞い硬い地面に背中を叩きつけられた。
巴巻きの極み
「グハ!?」
それは緑谷の体力をすべて削りきった。
『な、なんてことだ!!本来なら一発で腕を持っていかれる技を
耐え抜き気合とそのパワーで押し返し勝利した!!恐るべし切島鋭児郎!!
準決勝進出決定だ!!』
プレゼントマイクの言葉に観客たちは大盛り上がりその歓声に切島は静かに腕を上げるのだった。
そして倒れた緑谷の方へと歩く。
「緑谷大丈夫か?」
「…………うん。大丈夫」
何とか上の体を起こし切島の方を見た。少し眉をひそめながら悔しい思いを
顔に出した。しかししばらくし彼はフッと笑う。
「やっぱり今の僕じゃあ超えられなかった……君を……君と言うの龍を」
「緑谷..........」
「でも僕はあきらめないよ。もっともっと技を磨いて新しい技術を覚えて、
また君に挑戦する。なんせ僕はまだ発展途上なんだからね」
「フッ。そうか。緑谷お前初めて会った時とは見違えるほど強くなったな。身も心も技もな」
「君に会えたおかげかな!」
切島の差し伸べた手を握り立ち上がる緑谷。彼の成長はまだまだ始まったばかりである。
ここは観客席。舞台から一番離れた列にある席で神室町担当の刑事
伊達 真とサングラスをかけた黒いスーツが今の試合を見ていた。
「フフフ、おい見ろよ。あいつ準決勝まで行っちまったぜ。なんだよ
あの戦い方、ほとんどお前のみたいじゃねぇか。なあ?」
「ああ……まったくどうやって覚えたんだか?」
困ったように首を横に振る男。しかしその仕草には若干の照れくささが
隠れていた。
「そりゃあお前………多分あいつが小さいころにでも沖縄で喧嘩でもしたんだろ?
それでも見て覚えたんじゃねぇか?」
「沖縄では喧嘩はして…いや…したか……何回か」
「ハハ、じゃあそれのせいじゃねぇか」
「子供たちの前では喧嘩は控えてたつもりなんだがな……」
自身の過去を省みてため息をつきながら頭をおさえる男。伊達はそれ見て
クスクスと笑っていた。そんな二人の後ろに大きな影が。
「ん?あ、あんたは……!?」
伊達がその影に気が付き後ろを振り向く。そこにいた人物に伊達は驚愕した。
しかし男は振り向かずともそこにいる人物のことを理解した。小さなため息をつきながら
男は口を開く。
「ハア........形式上の休暇で俺はここにいるんだが。何か用か轟さん」
「おい。公共の場ではエンデヴァーと呼べ。エージェント・浄龍
いや........俺も桐生一馬とでも呼ぼうか?」
「…………」
二人の前に現れたのはオールマイトに次ぐナンバー2ヒーローエンデヴァーだった。
バトルトーナメント二回戦第二試合。轟焦凍VS爆豪勝己の試合が始まった。
轟は初っ端から一回戦で見せた大氷山を放ち爆豪を捉えようとした。
しかし爆豪は渾身の爆破を放ち大氷山を粉砕。更に特訓で強化した
爆速ターボで轟に近づいていく。轟が氷結を繰り出すが爆豪はそれすらも
破壊し一気に轟に爆破を直接食らわせた。
「う!?」
吹き飛ばさ舞台から落ちそうになる轟。しかし後ろに氷結の壁を出して
転落を阻止した。
「おら半分野郎!!テメーが本気を出してねぇのは知ってる!!
ささっと本気をだせや!!」
「ああ?うるせぇな........俺は左は使わない」
「ふざけんな!!」
爆豪が更に爆破を放っていく。それに対して轟が出来たのは氷結の壁を作り
自身を守ることのみ。その攻防の連続に轟の体がどんどん冷えていく。次第に
氷結の精度も下がっていく。それに気が付いた爆豪の血管は隆起した。
「ふざけんな!!お前俺を舐めてやがるのか!?」
「あ..........?」
「本気じゃないお前叩きのめしても意味がねぇんだよ!!完璧な一位が欲しいんだよ俺は!!
だからさっさと本気を……」
「うるせぇな!そんなの勝手にやってろよ!!俺には関係ない!」
「ハ.........?」
「俺には死んでも認めたくないものがあるんだ!アイツを否定するために俺は……」
「ふざけんな........ふざけんな!!このゴミカスが!!」
「は!?う……」
その時爆破が見せたのは爆破ではなく怒りを込めた拳。その拳を轟の頬に叩き込んだ。
予想外の行動に。そして自身の体が震えていたこともあり反応できずにもろに食らってしまう。
すると轟は殴り飛ばされ場外に出てしまう。
『轟場外。爆豪準決勝進出……』
「ぶっ殺してやるこのゴミカス!!」
『あ!お、おい爆豪!!』
場外に出され地面に倒れた轟に覆いかぶされる爆豪。そしてその胸ぐらを両手で掴む。
「言ったろうが!!こんな勝ち意味ねぇだよ!!お前のせいで完璧な一位がとれなくなった
じゃねぇか!!ふざけるなよ!!死ね!!死んで償え!!」
爆豪が拳を轟の顔面に打ち込もうとしたその瞬間ミッドナイト先生の眠りのミストが
漂う。そして爆豪は意識を失った。
それからしばらくして、A組の観客席では先ほどの騒動の話題で持ち切りになっていた。
「ね、ねえ。爆豪なんであんな怒ってたんだろう?」
「さあ........でもすごい形相だったね。本当に殺しそうだった」
「ケロ。普段よりもすごい怒っていたわね」
女子たちは先ほどの騒動で爆豪が見せた表情に恐怖していた。
男子たちの間にもなんとも言えない沈黙が続いている。その時控室に
忘れ物を取りに行っていた瀬呂が目の上にたんこぶを作って現れた。
「だ、誰かすぐに控室に来てくれ!!」
「どうした!?」
切島たちが席を立ち瀬呂の方を見た。瀬呂の表情にはだいぶ焦りが含まれている。
「ば、爆豪が控室に乗り込んで休んでいた轟に襲い掛かっちまったんだ。偶然のその場にいた
俺と飯田が二人の間に入ったんだけど........あいつなりふり構わず暴れ続けて................
今は飯田が抑えてくれてるけど危ないかもしれねぇ!だから誰か救援に.......」
「俺が行く!」
切島は急ぎ足で控室に向かう。
「待て!俺も行くぜ!!」
「ぼ、僕も!!」
上鳴と緑谷も切島と共に控室に向かった。
その頃控室では爆豪の怒声が鳴り響いていた。机や椅子が散乱している。
そんな控室で飯田が爆豪は羽交い絞めにしていた。そんな二人の前に壁に寄りかかっている
轟がいた。
「ば、爆豪君!!いい加減にしたまえ!!」
「うるせぇ!!放しやがれ!!」
「うお!?」
爆豪が飯田を強引に振りほどく。乱暴に暴れた爆豪により飯田は尻もちをついてその場に倒れた。
そして解放された爆豪は轟の胸ぐらを掴む。
「飯田!!大丈夫か!?」
その時切島、上鳴、緑谷が控室に入った。
「おい爆豪お前何やってんだ!?」
「か、カっちゃん!とりあえず落ち着いて!」
「うるせぇ!!部外者は引っ込んでろや!!」
怒声と共に爆豪は轟を殺意のこもった瞳で見つめた。しかし轟は
大した反応もせずに無表情のままである。
「テメー.......!!なんでテメー見てぇなゴミクズが俺と同じ
雄英にいやがるんだ!?ああん!?」
「…………」
「なんとか言えやゴミカス!!この俺の勝負に泥塗りやがって!
俺のオールマイトを超えるっていう野望の道筋を傷つけやがって!
わかってんのか!?」
「ッ!!知れねぇよそんなこと!俺には俺の事情があるんだ!!」
ついにしびれを切らした轟も怒鳴り始める。
「ああん!?」
「俺はあいつの血を否定しなきゃいけねぇ!そのために右の力だけで戦わないといけねぇんだ!
テメーの野望を俺に押し付けんな!勝手にやってろよ!!」
「んだと……!?」
爆豪の体が怒りでプルプルと震えはじめる。
「このゴミカスがーーー!!!!」
そして怒りで震えた拳を大きく振りかぶり殴ろうとした。しかし
後ろから爆豪の腕を掴む者がいた。そう切島である。
「く!!邪魔すんな切島!!今回ばかりは……」
「違う。そうじゃない」
「あん?」
切島は爆豪の腕をおさえたまま轟の方に目線を送る。その眼には
爆豪とは違う静かな怒りが込められていた。
「今こいつに一番ムカついているのは………この俺だ爆豪」
次の瞬間。鈍い大きな音とロッカーが激しくきしむ音が控室に響き渡った。
そしてその場には頬を赤くした轟がへこんだロッカーに寄りかかっている。
轟は頬を抑えながら驚いた表情で切島のことを見つめていた。そう切島が
轟を殴り飛ばしたのである。その光景に上鳴たちは声も出ないほどに驚き唖然とした。
「轟。もしお前が本気でヒーロー目指そうって気なら自分の全存在を
賭けてこの大会を戦い抜いたはずだ。だが今のお前はなんだ?父親がそんなにも
憎いからか?その血を自分も引いてるかか?そんな下らねぇもんに惑わされてんじゃねえ!!」
「く、くだらないだと.......?」
「自分が誰の血を、個性を引いてるかで生き方を決めるな。
誰の個性を受け継いでるかで人を判断するな。それができねえようじゃ、
お前も結局その憎い父と何も変わらないぞ!」
「あ、あのクソ親父と変わらない.......?俺が?」
「俺は……いや俺たちは自分の全存在を賭けてこの学び舎でヒーローを目指す。
もしお前がその状態でヒーロー目指すんなら好きにすればいい。だが.......そん時は
もう二度と俺はお前を同じヒーローを志す仲間として認めない.......!」
そう言い残すと切島は静かに控室から出て行った。そして爆豪は唖然と
頬を抑えてる轟を見る。その目は冷めきっていた。
「たくよ……俺以上にやることやりやがって……もう殴る気失せたはクソが」
爆豪も控室から出て行ったのだった。
次回、鉄哲徹鐵VS常闇踏影。そして切島鋭児郎VS爆豪勝己