英雄《ヒーロー 》が如く 龍を継ぐもの 作:0101シュート
ここは鉄哲のために用意された個室部屋。彼はそこでじっと施設に夜が訪れるのをじっと待っていた。
(もうすぐ動く時間やな。狼山と一緒に色んな場所を回ったおかげでこの施設の地理はある程度で
把握できた。監視カメラや看守をうまく躱して色々調査させてもらうで)
鉄哲は本格的な調査を始めようとしていたのだった。
しばらくすると施設全体が暗くなっていき皆が寝静まっていく。頃合いだと汲んだ彼は
静かに自身の部屋から出て行った。そして彼はグラウンドを突っ走り施設内を横断していく。
すると彼の前の前にとある建物が。
「ここが教官棟か…………」
教官棟。パワーエデンの教官たちが集まる仕事場である。おそらく学校で言う職員室の様な
ものだろう。彼はその建物の前に来たのだ。
(ここに忍び込んで資料を見れば何か情報がわかるかもな。じゃあ早速行こうか)
鉄哲は静かに決意を固めながら建物に入ろうとした。
「鉄哲さん。何してるんですか?」
「ッ!?」
突然の自身を呼ぶ声に彼の心臓がビクンと跳ね上がる。すぐさま後ろ向いて確認するとそこには
神妙な面をした狼山がいた。彼はバクバクと鳴る心臓の鼓動をしずめられないまま口を開いた。
「狼山……!?どうしてここに」
「それはこっちのセリフですよ。あなたこそこんな夜中に何をしてるんですか?」
「…………別に。ただの散歩や」
「そうですか……………実は俺鉄哲さんにようがあって探してたんですよ」
「俺に用?」
「はい。ちょっとついてきてくれませんか?」
「わ、わかった」
ここで断って怪しまれるわけにはいかない。鉄哲は素直に従い彼についていったのだった。
しばらくして二人はとうある体育館の裏に来た。周りのライトに光があまりとどかない
食らうジメジメした場所。
「ここなら人目に付かないでしょう」
「お、おう。それで俺に何の用や?」
「…………単刀直入に聞きます。鉄哲さんあなた…………どこかのスパイじゃないですか?」
「く…………」
最悪の質問だった。ここら嘘を貫けるほど鉄哲はそんな器用な男ではない。彼の顔に汗がにじみ出る。
(どうする!?一旦気絶してもらうか!?それとも話し合いで………)
彼が必死に頭を回す。しかし狼山が次に放った言葉は意外なものだった。
「鉄哲さん、俺が敵か味方か。これからお話することを聞いてから判断してくれませんか?」
「なに?」
話を聞いてほしい。それが彼の要求だった。
「鉄哲さん。僕はこのゴットエデンに来る前、父親と二人で暮らしていました。父はどうやらヒーローとは
違うヴィラン犯罪に対処する公的機関で働いていたそうです。ですが父は………何者かに殺されました」
「ほう」
「僕は父の真相を確かめるため父の知り合いを調べながら片っ端から話を聞きました。
そんなある日、葬式の日。父の知人から偶然盗み聞いたことがあるんです」
『狼山…………貴重な人材を失ったな』
『ええ。あの人は例の左翼の過激派組織の秘密施設に繋がるあの人物を調査している所でした。ですので恐らく……』
『消されたか…………情報源であるそいつも一緒に。こちらも用心しておかないとな』
「”例の左翼の過激派組織”そして”秘密施設”。僕はこの二つのキーワードを手掛かりに小学校にも行かずにそれらの手がかりを探し続けました。そして異能解放軍の存在を知り僕はこの組織に入るように動きました。
そしてここ……ゴットエデンの存在を知りました。もしかしたらここが父の捜査していた場所かもしれない。
何の確証もありませんでしたが俺はここに入ることにしたんです。けどここに入って7年ほどたちますが……
俺は何も手がかりを掴めませんでした。そんな日々にあなたは俺の目の前に現れたんです」
「…………」
「あなたは様々な人たちに世話を焼きつつも、なんか動きが変だったんですよ。そして俺思ったんです。
もしかしたらこの人も俺と同じかもしれないって……話してる時でも、鉄哲さんは必ず“部屋の出口”と“カメラの位置”を見る。普通の候補生は注意しませんよ、そんなの」
「なるほどな。バレバレやったわけかいな」
「はい。あなたは俺の知らない情報を知ってるかもって思ったんです。だからお願いです!!
貴方のスパイ活動をお手伝いするので、あなたの情報を教えてくれませんか!?」
そう言って狼山は頭を下げた。まるで何かにすがるように声を荒げる。
それを見た鉄哲はゆっくりと口を開いた。
「………………事情はわかった。けどな、会話だけじゃまだ信用は出来へんわ」
「え?」
「あいにく俺は相手の本気具合を拳で確かめたくなる性分なんや」
そして鉄哲は上の服を脱ぎ捨てる。それを見た狼山はわけがわからずポカーンと鉄哲を見つめた。
「半端な覚悟を持った奴を協力者にするわけにはいかへん。もし俺に協力したいんやったら
俺を力で納得させる。それがが条件や。どうや?この喧嘩受けるか?」
「お、俺が鉄哲さんと……?」
鉄哲との喧嘩。その言葉に狼山はゴクリと息を飲む。しかし彼の答えは既に決まっていた。
彼も上の服を勢いよく脱ぎ捨てる。そして自身の個性である狼化を発動させ牙と爪を出現させる。
「わかりました。どこまで行けるかはわかりませんがその喧嘩受けさせてください!」
「よし!!じゃあいくで狼山!!」
「うおー!!」
狼山が雄たけびを上げながら鉄哲に向かって突っ込んで行きその爪を振るう。
しかし鉄哲は身軽にそれを躱しカウンターの膝蹴りを彼の腹に叩き込む。
「ごお!?」
更に怯んだ彼に大振りの拳を叩き込んだ。
「おら!!」
「ぐわ!?」
殴り飛ばされた彼は宙を舞いながら放物線を描くように地面に仰向けに落下する。しかし
彼はすぐに飛び上がり再び鉄哲に向かって突っ込んで行く。しかし鉄哲は容赦なく彼を返り討ちに
するのだった。
「おら!おら!おりゃー!!」
「うわー!?く、くそ…………!」
狼山は何度も倒されても諦めずに鉄哲に向かって行く。例え体中が痛んでも、骨がきしんでも
痣だらけになっても彼は鉄哲に向かって。そのがむしゃらな姿を見た鉄哲はだんだん憤りを感じる。
「ただ単純に突っ込んでくるなボケ!!ナメとるんか!?」
「え………?」
「気合だけで勝てるほど喧嘩や戦闘は甘くないんや!!一旦頭冷やせ!そして自身の
ポテンシャルを活かすんや!!」
「俺のポテンシャル……?」
「そうや!ただ気合れて突っ込んで行くのがお前の長所ちゃう!!それを踏まえた上で………
もう一回来い!!」
「俺の長所………長所…………」
彼はその言葉を反復すると一旦肩の力を抜き大きく深呼吸を始める。
「ハアー…………フウー…………わかりました。ではも一回行かせていただきます」
その時狼山は腰を深く下ろし四足歩行の体勢に入る。そしてじっと鉄哲を睨みつける。そして
一気にその体勢のまま鉄哲に突っ込んで行った。先ほどと違い鋭く洗礼されたスピード。
鉄哲は迎撃のため懐に入って来た彼を蹴り上げるため足を上げる。しかし狼山は緊急停止し
横へと高速移動。
「!?」
「ここだ!!」
そして横から鉄哲の頬にストレートパンチ一閃!更に自身の爪を大きく振るい鉄哲を切りつけた。
しかしその程度の攻撃では鉄哲はびくともしない。
「フン!」
「お!?」
鉄哲が狼山の首を掴む。そして彼は豪快に地面に叩きつけた。
「グハ!?」
△極
「おっら!!」
「グべ!?」
鉄哲が地面に仰向けに倒れた狼山の顔面に容赦なく全体重をかけた拳を叩き込む。
するとあまりに衝撃に狼山は体力を失うのだった。
追い打ちの極み
「ハア………ハア………くそ。もっとやれると思ったんだけどな」
「狼山。お前は初めて会った時から思っていたがいつも焦りすぎや。多分お前の親父さんの
真相を知れないことに苛立ちを感じすぎて戦闘スタイルや私生活にも影響を及ぼしてたんやろ。
最初に会った時にしてた喧嘩やってお前が冷静に対処してればきっと勝てたはずや。例えあの人数でもな」
「…………」
「狼山。俺はこれから強大な敵と戦っていくことになる。焦りは致命的なミスを作る要因となる
だから……………」
「く………」
「これから冷静に俺についてこれるか?狼山」
「え?」
きっと断れられる。そう思っていた狼山に予想外の言葉が送られた。
「な、なんで?」
「お前の気合自体はさっきの会話からちゃんと伝わってた。けどな冷静に戦闘を行えるのか
を確かめたかったんや。今のちゃんとわかったやろ?お前は冷静に動けば相当な強さを発揮できる。
で?どうや。俺と組むか?狼山」
そう言って哲鉄は彼に手を差し伸べた。彼は少し戸惑いながらもすぐさま鉄哲を握った。
「く、組ませてください!」
「おう!じゃあ俺はこれから共犯者。言わば兄弟や。よろしくなキバちゃん」
「き、キバちゃんって…………まあいいやこれからよろしくお願いします。鉄哲の兄貴」
【"相棒"に狼山牙丸が設定されました】
その後、二人は一旦鉄哲の自室に戻る。そして鉄哲は自身のここに来た理由を彼に話した。
「なるほど………兄貴はその雄英爆破事件の真相の手がかりを求めてここに来たんすね。
それでその事件の重要参考人の女の子がここにいた可能性があると…………」
「ああ。雄英では宮野友里って名前で雄英にいたらしいが、これは確実に偽名や。
さっき教官棟に忍び込もうとしたのは候補生のリストを覗いて何か情報を得ようと思ったからなんや」
「その女の子の写真とか今持ってないんすか?あれば周りに聞いて回ったりできると思うんですけど」
「いや………ここに来る前にそう言ったものはスマホと一緒に町に隠してきた。妙なものを
持ってて怪しまれたらと思ってのう」
そうですかと狼山は頭を抱える。写真などがあれば自分の記憶を探ることもできるが
言葉だけの人物像では限界がある。やはり教官棟などに忍び込んで候補者の記録が
載っているリストなどをこっそり見るしかないのだろうか。
(これしか方法がないやろうな。けど記録は膨大やろうか見つかる可能性はかなり低い。
けどやるしか………)
「あ」
狼山何か思いついたのかうーんと唸っていた状態から一変軽くハッとする。
「なんやキバちゃん?」
「写真の件なんでなんですけど。もしかたら何とかなるかもしれません」
「ほんまか!?」
「はい、兄貴。ここの図書館には過去の写真を含めた候補生自主製作のアルバムが大量に
保管されているんです。しかも最近の写真を掲載したアルバムも最近置かれるようになった聞きます。
もしその女の子がここにいた期間があるとしたらもしかして………」
「なるほどな。それなら教官棟に忍び込む必要もないかもしれんな。よし!明日早速図書館に
いくで!」
「はい!」
次の日。2人は図書館が開いたタイミングですぐさま中に入っていった。そしてすぐさまアルバムが
保管されている本棚がある場所に向かう。そしてその本棚のエリアを見た瞬間二人の顔がゆがむ。
「こ、これは………」
アルバムコーナーと記されたサイン看板。その奥にずらりとアルバムが詰まっている本棚が
多く並んでいる。
「こ、こんなに多いなんて知りませんでした。時間が結構かかっちゃいますね…………」
「………でもやるしかあらへんわ」
その後鉄哲は何冊もあるアルバムを何冊も閲覧し続けていた。あまりにも膨大な量の為
まだ数冊程度しか終わっていない。時おり目頭を抑え体を伸ばしならながらも閲覧を続ける。
(クソ………精神がすり減るな)
心の中で愚痴をこぼす鉄哲。膨大な情報量を読み込んだ彼の頭はもうパンク寸前だった。
しかも本当に彼女はこの施設にいたのかと不安に感じ始める。今やってることも実は
無駄なんじゃないかという考えが彼の頭を駆け巡った。しかし彼は自身の頬を両手でパンと
叩きながら作業を再開していった。
それから数時間後。
「あ、兄貴。そろそろ休憩しましょう。流石にこのペースじゃあすぐに疲れちゃいます」
「んん?あ……………そうやな」
鉄哲がアルバムのページを捲りながら狼山に返事を返す。最後にこのページだけ確認しようと
目を向ける。だが例に少女の写真などどこにもない。彼はため息をつきながらページを閉じようとした。
しかしその手が一瞬止まる。彼の目に一枚の写真が目に入った。
「ん?なんやこの写真」
目的の写真ではない。しかし鉄哲はとある一枚の写真に注目した。じっと観察すると
彼はその違和感に気が付く。
「こ、これは!?」
「あ、兄貴どうかしたんすか!?」
狼山が鉄哲の反応に少し驚きながら彼の元へと赴く。そして鉄哲が見ている写真を覗いた。
そこに映っていたのは学生服を来た4人の若者。見たところ何の変哲もない写真だ。
「どうしたんです?もしかして兄貴この人たちを知ってるんすか?」
「キバちゃん。こいつらが来ている制服をみてみ」
狼山は言われた通り制服を見てみるがあまりピンとこない。しかし鉄哲の発した言葉が
その空気を変える。
「この4人が来ている制服…………これは雄英高校の学生服や」
「え!?」
そう。見間違えるはずがない。自分が普段来ていた制服と待った同じなのだ。白いブレザーに
赤いネクタイ。何年も同じモデルが使われている雄英伝統の制服だ。しかも鉄哲は写真に写っている
4人中3人に見覚えがあった。
「この3人…………!まさか…………いや多分間違いあらへん。この写真は結構昔の写真みたいやな」
「どういうことですか?」
「見てみ。この水色髪の男の隣に並んでいる3人。この人たちを俺は良く知っておる」
「だ、誰なんすか?」
「………………ミッドナイト先生、プレゼントマイク先生、相澤先生。今雄英高校で教師をしているヒーローや」
「え!?」
(確かマイク先生が授業中の雑談で話しておった。相澤先生とタメで雄英出身だということそしてミッドナイト先生は二人の先輩やったらしい。だから間違いあらへん)
そう。この写真はおそらく先生たちが雄英高校の学生だった頃の写真。故に鉄哲はこの写真を
古いものだと確信したのだ。しかし最後の一人の男の名前が分からない。恐らく先生たちと同学年か。
「三人と一緒に写っているこの男は誰や?ん?裏に何か書いてるな」
鉄哲は写真の裏に誰かの名前が書いてあることに気が付いた。その時狼山が説明する。
「それ多分撮影者の名前ですよ。一旦分類する際見分けがつくようにしたんだと思います。ほら他の写真にも名前が書いています」
「なるほどな。それにしてもこの写真よく見たらこの男がカメラに向かって手を伸ばして途切れてる。恐らくこれは自撮り写真。ってことはこいつの名前は裏に書いてる撮影者ってわけや」
二人は再び写真の裏に書いてある名前を見る。そこに描かれていた名前は………………
白雲朧だった。
「白雲。兄貴この名前知らないんすか?」
「いや。俺はこの名前は知らん。先生たちなら何か知っとるかもしれんが今は連絡を取る方法が
あらへんな」
「そうすか………でもなんでこんな写真が。制服着てるってことはここにいたとは思えない。
なんで雄英高校の写真がこんな所に…………」
「ああ。ちょっとこれはきな臭くなってきたな。白雲朧……………」
白雲朧。この名前がしばらく鉄哲の頭を支配した。一体何者か。その疑問がぬぐえない。
「白雲朧。調べてみる価値があるかもな」
「ほッほほ。そんなにアルバムを真剣に見ているなんて珍しい子たちだね」
2人がアルバムを調査している中二人に声をかける者がいた。
「ん?」
2人がそちらを向くとそこには腰の曲がった老婆がいた。
「あ。司書さん」
狼山がそう呟くと鉄哲はフーンと声を漏らす。そして柔らかい声で司書に話しかけた。
「すんまへんな司書さん。俺たちの声少しうるさかったですかね?」
「ほっほっほ。別に注意しに来たわけじゃないよ。そんなにアルバムを何時間も真剣に見てたもの
だから気になって声をかけに来ただけ。それにしても…………やっぱり懐かしいね。そのアルバムさ……」
すると司書はアルバムに関する思い出を語り始めた。
「毎年ね、この図書館のテーブルを借りて……ここを出る予定の子たちと、その後輩たちが一緒になって写真を詰めていくんだよ。フフフ……作業しながら泣いちゃう子もいたりしてねぇ。ほら、寂しくなるからさ」
懐かしそうに楽しそうに話す司書。2人もへーと相槌をうちながら彼女の話を聞いていた。
すると鉄哲の頭にひとつの考えが浮かび上がる。
(少しこの写真知ってるか聞いて見るか)
「司書さん。この写真に写っているもんに覚えはありまへんか?」
「ん~どれどれ」
司書は鉄哲から写真を受け取りじっと見つめる。やはり老眼故か彼女は少し長い間じっと写真を見つめていた。
そしてしばらくして司書はああ、と声を上げながら何かを思い出したのだった。
「この子はカスミちゃんのお兄さんじゃないか。いやー懐かしいねぇ」
「カスミ?」
鉄哲が聞き返すと司書うーんとねと上を見上げる。
「もう、10年以上前になるかな……
ここによく来てた、小さな女の子がいたんだよ。白雲 霞っていうの。
本が大好きでねぇ……図書館に住んでるんじゃないかってくらい、ずっと椅子に座ってたよ」
その口調は優しい。
だがその奥に、わずかな寂しさが混ざっていた。
「この子の家はね、ちょっと複雑でね。
お母さんが病気で亡くなって、お父さんも仕事で手一杯。
だからしばらくってことで、このパワーエデンで預かることになったんだよ。
孤児院に寄せられた子と、あまり変わりはしなかったね」
狼山が小さく息を呑む。
「お兄ちゃん。写真に写ってるこの子ね。
たまにお父さんと一緒に来て、カスミちゃんに会いにきてた。
その時のカスミちゃんの笑顔といったら……そりゃあもう、花が咲いたみたいだったよ」
司書の目尻がわずかに下がる。
「でもね……お父さんが、ある日突然亡くなってしまってね。
理由は、私も詳しくは聞かされなかったよ。
ただ……カスミちゃんは私の胸の中で泣きながら『お父さんは帰ってこない』と、ひたすら繰り返した」
司書は少し寂しそうな顔になりながらも続ける。
「それから、お兄ちゃんも……一度ここへ来てカスミちゃんを抱きしめてね。
『必ず迎えに来る』、そう言っていたよ。
……ところが、それっきり。ぱったり来なくなった。連絡も、つかなくなってねぇ」
司書は写真の中の白雲朧の笑顔をしばらく見つめ、静かに息をついた。
「そして兄との再会も果たせないまま、カスミちゃんは大人になって施設を旅立っていったよ。
その後あの子がお兄ちゃんと再会できたかはしれないわ」
狼山が眉を寄せる。
「……そうでしたか。でも、なんでその白雲さんの写真が、ここに?」
司書は少し首を傾げ、柔らかく笑った。
「きっとね、これはカスミちゃんが“お兄ちゃんから渡されたもの”なんじゃないかな。
最後にここへ来たとき、白雲くんは色んなものを妹に手渡していたんだよ。
お父さんとお母さんの形見の指輪とか、家族写真とか……この写真も、その中の一つだったんだろうね。……まあ、なんでこのアルバムの中に紛れ込んでいたのかは、私にも分からないけれどね」
そう言って、司書は小さく笑いながら肩をすくめる。
「おっと、長話が過ぎたね。年を取るとねぇ……どうも昔話が止まらなくて。
ほっほっほ。ごめんよ、こんな話に付き合ってもらって」
「いや、貴重な話を聞かせてもらったわ。おおきに」
「そうかい。じゃあ、私は仕事に戻るよ……またおいでね」
司書は優しい微笑みを残して、本棚の奥へゆっくりと歩き去っていった。
その後二人は図書館にあったコピー機で写真をコピーし持ち帰った。自室への帰り道、鉄哲は
じっとその写真を見つめていた。
「白雲朧か………」
「そんなに気になるんすか?兄貴」
「ああ。とりあえず俺の自室に戻る。そこでちょっと情報をまとめるで」
「わかりました!」
自室に戻った鉄哲はすぐさま部屋にあった鉛筆とノートを取り出す。そしてコピーした写真をノートに貼りその下にずらりと情報を記載していく。
「白雲朧…………恐らく雄英高校にいた生徒。相澤先生たちと同学年であることがこの
写真からわかる。相澤先生はは多分今30代くらいだから………これは10年と数年ほど前の写真。それで白雲朧の妹のカスミはこの施設にいた………。親が解放戦士だったからか?とすると何故解放戦士の息子である白雲朧が雄英高校にいたんや。、まさか…!?」
「ス、スパイだったとか?じゃあ!兄貴が言っていた得体の知れない生徒を入学させた裏切者って……」
「いやそれはない。さっきも言ったが俺はこの白雲って男を雄英で見たことも聞いたこともあらへん。
少なくともその件に関わっていたとは思えんわ。だが…………」
どうしても何かしらの因縁を感じざる負えない。鉄哲はこの男をどうにか調べられないかと考え始めた。
「キバちゃん。この施設ってネット使える場所が確か図書館にあったよな?」
「あ、ありますけど。兄貴それは少しリスクが高い行為かもしれません」
「ん?どういうことや?」
すると狼山は図書館にある共同パソコンのシステムについて話始める。
「あのパソコンエリアには監視カメラが置いてあり入るには必ず使用者の顔と名前を登録する必要があります。更にその使用者の使用履歴や使用用途の情報はすべて教官たちに共有されます。ですから………」
「なるほどな…………」
そう。教官たちも馬鹿ではない。いきなり外からここに入って来た鉄哲がそんなことを
調べたら多少その行動を怪しむだろう。しかし鉄哲はそれでもこのことを調べれる価値があると考えていた。
「キバちゃん。図書館にもう一度行こう。この男の情報が少しでも得るんや」
「…………兄貴がそう言うなら…………わかりました!」
二人は再び図書館へと赴くのだった。
そして二人は図書館の端の部屋に作られたパソコン室の前に立つ。2人は扉の前につけられた認証カメラの顔を向けスキャンさせる。するとシステムが二人の入室を許可し扉を開放する。二人はパソコン室へと入っていった。
中には数人ほどパソコンで作業している者たちがいた二人は彼らの邪魔にならないよう静かに移動し空いているパソコンが置いてあるデスクへと向かった。パソコンを起動させ検索エンジンを立ち上げる。そして鉄哲はすぐさま白雲朧の名前を打ち込んだ。すると意外にもその情報がすぐにでで来たのだ。
【ニュース記事】
雄英高校インターン生死亡――ビル崩壊事故で若きヒーロー志望が犠牲に
現場から“正体不明の遺体”も発見
昨日午後、都内の老朽化ビルで発生した崩壊事故により、
雄英高校ヒーロー科のインターン生 白雲朧(17) が死亡したと発表されました。
警察およびヒーロー公安委員会によると、
白雲氏は指導ヒーローの監督のもと、
某ヒーロー事務所の実地活動に参加していました。
白雲氏は単独でビル内部に潜伏していたヴィランと交戦。
ヴィランが放ったと思われる高威力の攻撃によって建物が崩落。
白雲氏は瓦礫に押し潰され死亡したとみられています。
一方、現場検証を進める中で、
瓦礫の奥から “身元不明の遺体が1体” 発見されました。
遺体は激しく損傷しており、
年齢・性別・個性の特定は不可能な状態だったため、
公安は「崩落に巻き込まれた一般人、もしくは共犯者の可能性」とコメント。
現在も身元の調査が続けられています。
交戦していたとされるヴィランは崩落直前に逃走。
現場には爆破痕が複数残されており、
公安は引き続き行方を追っています。
「なんや。故人やったんか…………」
「もう死んでいたんですね。このことをあの霞とかいう妹さんは知ってるんでしょうか?」
「こんな大々的に世間に報じられてるんや。施設でた段階か………いやそれよりもっと前に
知ってたかもしれん。司書さんは知らなそうとは言ってたけどな」
「………………」
「ん?どうしたんやキバちゃん」
「ああ………すいません。ちょっとこの記事の日にちを見て思い出しちゃって。
実はこの日だったんですよ。父が死んだって俺に連絡が来たのが………」
「そうやったんか…………辛いな…………ん?」
その時。鉄哲の脳内に一つのヴィジョンが見えた。とある情報と今の情報が少し結びつきとある
荒唐無稽な考えが浮かび上がる。
「な、なあキバちゃん。少し不謹慎かもやけど少しお前の父親について聞いてええか?」
「え?まあ別にいいですけど」
「葬式の時。お前の親父さんは……………どんな感じやった」
「ど、どんな感じって…………」
「遺体や、遺体…………どんな感じやった。体の全体とかちゃんと見なかったか?」
「え………えっと。そんなの多分見てませんよ。もうすでに棺桶に蓋がされてて顔しかみれない
状態で………あ」
「どうした」
「そういえば父さん、普段から無精ひげで……肌も荒れてて……ほんとに“普通のオッサンの顔”だったんですけど……
その時だけ、異様に白くて……粉を厚く塗ったみたいに綺麗で……まるで女性みたいな、
不自然な化粧が施されてました」
「それはもしかして………大量についた怪我の傷を隠すための化粧やないか?それともうすでに顔しか見せれなかったのはもう体全体は化粧程度じゃ隠せないほどの規模だったから………」
「は?」
その時狼山は鉄哲の言いたいことをだんだん理解しはじめた。
(白雲朧の“死亡日”……父さんの“死亡日”……正体不明の遺体……
そして遺体を見せなかった葬式……)
「え…………?ッ!?ちょっと兄貴!あなたもしかして………」
「ああ。この身元不明の死体の正体もしかたらお前の親父さんちゃうか?」
そう鉄哲はこの記事に書いてある正体不明の死体を狼山の父親ではないかと推理したのだ。
しかし狼山はそれにはまだ確証が足りないのではないかと考えた。
「確かに共通点はあるかもですけど…………だからって俺の父と同一人物ってのは………」
「狼山。お前親父さんはヒーローではないヴィラン犯罪に対抗するための公的組織に
所属していたって言ってったな。そしてお前が盗み聞いたっていう親父さんの知人の会話
思い出してみ」
「え………?」
『狼山…………貴重な人材を失ったな』
『ええ。あの人は例の左翼の過激派組織の秘密施設に繋がるあの人物を調査している所でした。ですので恐らく……』
『消されたか…………情報源であるそいつも一緒に。こちらも用心しておかないとな』
「ああ………ああ……!?」
狼山が驚きのあまり口を抑える。
「そうや。過激派組織の秘密施設につながる人物って………白雲朧のことやないか?」
「た、確かに!彼は自身の父親と共によくこの施設に来ていた司書さんが言っていた!
じゃあ一緒に消されたっていうのは…………このビル倒壊事件で………」
「この事件。もしかして何か裏があるかもしれんな」
次回、事件の真相を明らかにするために鉄哲たちが動き出す!
「白雲霞と接触するためやらなきゃアカンかもな。脱獄!!」
そんな二人に施設長、亀山が接触!?
「君たちの力試させてもらいますよ」
二人の運命はいかに!?