熱砂の巨獣   作:和ん子

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 俺は何を書いているんだ?
 本編も書かずに……
 
 何日もかけて書き上がったのがこれか?
 
 ※曇らせ注意。苦手な人はブラウザバック!
  この番外編は本編とは関係ありません。


if 〜もしバンギではなく、ヨーギの卵としてブルアカの生徒の誰かに拾われたら〜
ホシノ&ユメ


 

 

 「ホシノちゃ〜ん!!」

 「何ですかユメ先輩。というか遅刻ですよ」

 「あ、ごめんなさい……あ!そうだこれ見て!」

 ユメがリュックのチャックを開けて、ホシノへ鞄の中身を見せてくる。

 彼女の目はキラキラと期待の色で輝いており、ホシノは、また面倒事じゃと嫌な予感を感じつつ、突き出された鞄の中身を確認する、した。

 「えっと、……卵?ですか?」

 「そう!通学路から見えた砂漠の砂の上に落ちててね。近くで見たらこんなにおっきいから絶対ホシノちゃんに見せないとって思って!」

 答えを当ててもらえて喜びのあまり、鞄越しに卵を抱きしめてその場でクルクルと回る。キヴォトス人の膂力は個人差はあれど誰も彼も怪力で、つい、で卵を潰されては敵わない。

 「んで?どうするんですか?というか、何の卵なんですかね?」

 「え?……あー確かにそうだね。鳥の卵にしては大きすぎるし、アビドスの砂漠でこんな大きな卵を産む動物は見たことないもんね」

 うーんと首を傾げて考えていたユメがハッとして鞄を置いて生徒会室を出ていった。

 

 

 暫くして……。

 

 

 「保健室のシーツとかタオルで即席のお包み作ってきたよ!」

 「ああ、それで温めるんですか」

 「羽毛布団がいいかなぁって思ったんだけどなかったよ……っと、これでお包み越しに私やホシノちゃんが交代で温めれば大丈夫なんじゃないかな?」

 「私もやるんですか?」

 「勿論!生まれた子は二人で育てようね!」

 ホシノはそもそも生まれる確証はないでしょうと思ったが、ウキウキなユメを見て口を閉じる。

 返せる見込みを見出せない借金まみれで灰色の高校生活。そんな状況でも毎日何かしらの話題を見つけては唯一の後輩である自分に報告して勝手に盛り上がって。

 ホシノはアビドスに生まれ、ここの生活しか知らないが、ユメがいなければアビドスを去って行った先輩達の様に、どこかで見切りをつけて他校に転校していただろう。

 

 根明で、どうしようもないお人好しで、運動神経も頭も悪くて、すぐにサボるし、涙脆いし、頼りないけど。

 過疎化が進むアビドスに対して真摯に、直向きに向き合って、砂漠の調査も地道に続けているあの横顔は信頼できると思った。

 だからじゃないが、互いに苦手分野を補い、支え合ってこのどうしようもなく終わりに向かっているアビドスを復興させよう。

 明らかに生徒でないにしても、この卵は希望だ。

 アビドスに新しい命が誕生するのを少し楽しみにしている自分がいた。

 

 

 その日からアビドスの仲間となった謎の卵に、ユメは毎朝挨拶をして、中の音を聞いたり、今日あった事を話したりしていた。

 それを見習い、ホシノもユメがいない時にツンツンと卵の殻を指で軽く突いては「いつ生まれてくるのか」とか「早くしないと目玉焼きにして食べちゃいますよ」と待ち遠しく話しかけていた。

 

 そして、運命の日が訪れる。

 登校時間を大きく過ぎてもユメがアビドス校舎へ現れない。

 どこかで寄り道をしているのか、何度も襲撃してきたヘルメット団に人質にされたのか、はたまた砂漠で遭難してしまったのか。

 連日襲撃してきたヘルメット団や月毎に借金の利子を徴収しにくるカイザー社員に、返せる見込みすらない巨額の借金。

 ユメ主導の砂漠地帯の地質調査を行っていればいやでも現実を突き付けられ、精神をすり減らす日々。

 ホシノの中で一度芽生えた不安は、時間と共に膨らみ続け、いざ愛銃を手に先輩を探そうと生徒会室を出たところ、廊下でユメとばったり出会った。

 「どこに行ってたんですか!?心配したんですよ!ああもうどうしたらこんなに汚れるんですか!」

 「ホシノちゃん!じゃーん、見て見てー。やっと見つけたよアビドス砂祭りのポスター!」

 砂や埃で顔まで汚れているユメは怒り心頭のホシノに気付かず、大事そうに胸に抱いていたヨレヨレのポスターを広げてみせる。

 アビドス砂祭りという丸いフォントの大きな文字と、当時の風景写真が所狭しと並べられた古いポスター。

 「えへへ。すっごく素敵でしょー?あ、記念にこのポスターはホシノちゃんにあげるね!」

 「もし、何か奇跡が起こって、またこの頃みたいにたっくさんの人が集まって──」

 楽しげに、夢想を語るユメの姿に。摩耗したホシノの精神が悲鳴をあげ、何かがプッツリと切れてしまう。

 

 「奇跡なんて、起きっこないですよ。先輩」

 「そんなもの、あるわけないじゃないですか。それよりも現実を見てください!」

 一度堰を切った言葉は、ダムの放水のように後から後から止めどなく溢れてはユメの胸に突き刺さる。

 「こんな砂漠のド真ん中に、もう大勢の人なんて来るはずがないでしょう!?夢物語もいい加減にしてください!」

 だめ、止まって。本当はそんなこと思ってない。だが、もう遅い。既に理性は擦り切れて、枷は意味を成さない。

 「そうやってふわふわと、奇跡だの幸せだの何だの……」

 「もっとしっかりしてください!貴女はアビドスの生徒会長なんですよ!?」

 もう、ホシノの目にはいつもの朗らかで陽だまりのような先輩の姿は映っておらず、後輩をここまで追い詰めてしまった自分の力不足や不甲斐なさに涙を浮かべて顔を歪ませた少女の姿。

 「っ!もう少しその肩に乗った責任を自覚したらどうなんですか!!」

 掴み掛かり、ユメの手から奪った砂祭りのポスターの両端を持ち、力任せに引き裂いた。

 「──っ!!」

 衝動のままバラバラになるまでポスターを千切り、乱暴に掴んだ紙屑をユメ先輩に投げつける。

 二人の関係に明確な亀裂が走った。ユメは唯一の後輩に希望を否定された。生徒会室を飛び出したホシノは唯一の先輩を信じ切れなかった。

 

 後に残ったのは、ホシノによって紙吹雪まで千切られた無惨なポスターだった紙屑。

 「……ぅ、うぅぅぅ、ごめん、ホシノちゃん……ごべんねぇ……!」

 泣き崩れるユメは涙で歪む視界で、一枚一枚散らばったポスターの切れ端を集めていた。

 冷え切った生徒会室で、全てを見ていた謎の卵がカタカタと小さく揺れた。

 

 

 

 

 翌日。

 一晩過ぎて、やり過ぎたと頭が冷えたホシノは時間通りに登校し、入学式当日にユメ先輩から渡された校舎の鍵を挿して中へ入る。

 生徒会室へ入る前に深呼吸をして、小さくよしと気を引き締めてから扉を開いた。

 

 「おはようございます!ユメ先輩!……あれ?」

 しかしそこに先輩の姿はなく、室内も暗くて静まり返っていた。電気を付けてカーテンを開ける。

 すると、ユメの机の上に置いてあった物を見てホシノは苦虫を噛み潰したような表情になる。

 昨日、自分がバラバラに千切ったポスターが、不器用にテープで貼り直してあり、所々シミができていたりよれていたりして、ユメが悲しみの中失敗しながらも修復していたのが目に浮かんだからだ。

 「やっぱり、謝ろう」

 鞄を置く為に自分の席へ足を運ぶと、一枚のメモを見つけた。

 

 『いつもありがとうホシノちゃん。お元気でね……』

 

 

 

 「……ユメ先輩?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も……。

 

 広大なアビドス中を駆けずり回って、ユメの痕跡を辿り、見失うを繰り返すこと一ヶ月。

 ほとんど飲まず食わずで動き続けたホシノはとうの昔に限界を迎え、ユメ先輩を見付けて謝る。その希望だけを頼りに気力と体力を振り絞って、棒になった足を動かし続けた。

 

 もう、何日経っただろう。最後に水を口にしたのはいつだったか……。

 声を出すのも辛いはずだ。

 砂漠の奥まで来たのはユメと二人で砂嵐の原因を突き止めようと地質調査やオアシスになった地下水脈を探す為に来た時以来。

 ホシノの意識はもう掠れ、いつ倒れてもおかしくなかった。

 

 まだ、ユメは見つからない。

 ……ずっと考えていた。

 この広大な砂漠の中から、たった一人の人間を探し出せるのか?

 この灼熱の環境下で一ヶ月以上経過して、人間が生存できるのか?

 考えるまでもない。答えは──不可能。

 

 「気持ち悪い」

 

 何度考えても、奇跡にすら縋れない現実が叩き付けてくる。

 

 「頭の奥がズキズキする」

 

 汗が出なくなって喉の渇きも曖昧になっていく。

 

 「最後に水分補給したのは……」

 

 思考が定まらない。もう、何もかもどうでもいい。

 このまま地面に倒れ込んで……ユメ先輩、一緒に……。

 「終わらせても、いいですよね……?」

 重たい瞼をゆっくり閉じて視界がだんだん暗く闇に覆われていく。

 すると視界の端に強い光が目を差した。

 チカチカと眩く、無視できないそれに視線が吸い寄せられ、目を開くと、見覚えのある、それもこの一ヶ月間渇望していたユメの盾が、灼熱の太陽の陽射しを反射してチカチカと光っていた。

 「ああ、もう……本当に最期まで……」

 「こんな所にいたんですか、ユメ先輩……探しましたよ……」

 

 

 

 

 

 ユメの銃と盾、そして校章を手に、街を歩く。

 全てを諦めたホシノに、ここぞというタイミングで引き留め、貴女だけは生きてと伝えられたユメの激励を無視できる程、ホシノは強くなかった。

 だが、今の状態ではほんの些細な事でユメの後を追おうとするだろう。生気のない瞳や表情が抜け落ちた顔が、活力を感じない立ち姿がそれを物語っている。

 半年程の短い期間だったが、ユメと二人の思い出が詰まった別棟が見えてきた。

 最近放置していたから、グラウンドにはまた砂が入り込み、窓も幾つか割れて学校というよりは廃墟に近い。

 校門を越えれば、どこからともなく現れたヘルメットを被った集団がホシノを取り囲む。

 

 「残念だったな!ここはもう私達のもんだ!」

 「いつもいつもバカスカ撃ちまくってくれたな」

 「今のお前ならこの人数でも余裕だぜ!」

 「お前らやっちまえ!」

 幾つもの銃弾がヘルメット団から放たれ、何発もホシノの背中を襲い、小さな彼女から逸れた流れ弾が校舎の壁や窓を傷付ける。

 「あ……」

 何発もの銃弾を受けてホシノの身体は、力なく校庭の地面に倒れ込む。

 今の彼女には立ち上がる体力も、学校を脅かす不良に抗う気力もない。

 反撃を想定していた彼女達は拍子抜けな表情を浮かべつつも、警戒して恐る恐る近付く。

 何故こうも自分達ばかりが不幸になるのか、ホシノの薄れゆく意識でそんな事ばかり考えていた。

 「ごめんなさい、ユメ先輩……やっぱり、私なんかじゃ」

 「お、こいついい盾と拳銃持ってんじゃん。戦利品として貰ってこーぜ」

 襲撃者の一人が倒れた拍子に投げ出されたユメ先輩の盾に手を伸ばす。

 

 「……めろ」

 

 「……わるな」

 

 

 「それに……触るな!!!」

 

 

 ダァンダダンッ!!

 

 

 重い体や足を引き摺り、校舎へ、もぬけの殻な生徒会室へと入室する。

 だが、ホシノの目に絶望の光景が広がっていた。

 机の上に鎮座していたはずの卵が、先程の銃撃戦の流れ弾が当たったのか、粉々に床に散らばっており、ホシノが焦燥した表情で駆け寄る。

 「あ……ああ、あああ!ああああああ!!」

 口から漏れる慟哭は次第に大きくなり、必死に割れた卵の殻をかき集める。

 砂漠で衰弱死したユメ先輩の銃と盾、そして校章を持ち帰ったホシノにとって、先輩との思い出が一番詰まった卵が、二人で孵そうと約束し果たされなかった希望の卵が、自分が雑に追い払った所為で、たった一発の流れ弾で、生まれるはずだった命すら守れずに失ってしまった。

 頭ではそう理解している。だけど、ホシノはその現実を受け止められず、貼り合わせたポスターと同じく殻同士を合わせて何とか元に戻そうと震える手を無理矢理動かす。

 そんな事をしたところで無意味だというのに。

 

 

 ガタッ。

 「うへ?」

 不意に、部屋の中で物音がし、浅い息を繰り返して酸欠気味の頭を持ち上げる。その場でキョロキョロと辺りを見渡すが、積み上げられた書類の山や整頓されることがなかったガラクタ達で見通しが悪い。

 音を聞き漏らさない様、口を両手で塞いで心音まで止める気で息を潜める。

 ……ガタ。

 音はホシノの真後ろから聞こえた。飛び上がる勢いで床に投げ捨てていたショットガンを振り向き様に構える。

 もう何日も砂漠を彷徨い、気力だけで動いていたホシノの視界は霞み、照準がすぐに合わない。

 音の主を探して目を凝らせば、見えてきたのは濃い若草色の肌をした丸みのある生き物。釣り上がった目と視線がぶつかり合う。

 その生き物は細い机の脚に短い手を添えて、隠れようとしながらこちらを窺っているようだった。

 「……もしかして、お前が?」

 掠れた声を何とか絞り出して、不思議生物に訊ねる。言葉が通じるかもわからないのに、と自嘲しているとおずおずといった感じで不思議生物から少しずつだが近寄ってくる。

 驚いたが、ホシノは動かずにそのまま待つ事にした。スンスンと匂いを嗅いだり、短い手足でホシノをペチペチと叩いたり触ったり色々確認したのか、彼女の真正面に向き直り、ペロリと乾き切った目尻を舐める。

 「……慰めて、くれるんですか?」

 「……」

 偶然だろうコクリと頷く生き物はまた舐める行為を再開。ホシノは彼を抱きしめてその命の温かさを認識する。するととうの昔に枯れたはずの涙が目から溢れ、頬を伝って生き物の顔に落ちる。

 「うっ、うぅぅぅ、ううわあああああ!!」

 ユメ先輩、ユメ先輩、ユメ先輩……どうして。譫言を繰り返す少女の脳裏に浮かぶ、今は亡き喧嘩別れをしたまま二度と謝ることができない場所へ行ってしまった先輩の顔。

 その表情は天真爛漫な笑みではなく、最期に見た酷く傷付き、泣きそうな苦悶の表情。

 どうして、どうしてと懺悔する少女に抱きしめられ身動きが取れずにいる生き物は、彼女が落ち着くのを待ち、その悲しみに寄り添い、溢れ出る涙を舐めては自分に顔を埋めるその頭を優しく撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ユメ先輩。助けられなくてごめんなさい」

 「先輩の盾を見付けた日、私は全てを諦めてそこで命を絶とうとしました。貴女って人は……つくづくお人好しでしたよ」

 「あの子は私が先輩の分も責任を持って育てます。先輩が残してくれた最後の宝物ですから」

 「あ、あと。アビドスにも新入生が入ったんですよ。十六夜ノノミちゃんと砂狼シロコちゃん」

 「二人ともあの子を可愛がってくれてます。私達の子ですからね!当然です」

 「ギャウ」

 ホシノの袖を掴んで引っ張る不思議生物──ヨモギにそっと手を伸ばし、そのざらつく頭を撫でれば気持ちよさそうに目を閉じてされるがままになった。

 「……もう少しアビドスに残ります。いつか、絶対迎えに行きますから。それまで見守っててください。ユメ先輩……」

 

 

 

 遠くからホシノ達を呼ぶ声がする。

 「ホシノ先ぱーい!行きますよ〜!」

 「ん、ホシノ先輩、遅い」

 「うへ〜。おじさんに長距離の移動は厳しいよ〜」

 「ギャウ」

 「え、流石に私より小さいヨモギに背負われるのはちょっと……あ、あ〜れ〜」

 「うふふ」

 「ん、先輩だけずるい。私もおんぶするべき」

 「ギャウ!?」

 

 

 

 





 はい、という訳で約6000文字の短編です。
 すみませんでした!!サボった理由が新しいアニメを見てたとか、他の方の作品を読んでたとか、そんな自分勝手な理由なのでぐうの音も出ません。
 
 解説とか……いらなそうっすね。文才の無い自分は読者の読解力に期待するしか表現方法を確立できていないので、また行き詰まったら短編に手を出します。
 
 ではここまで読んでいただきありがとうございました。
 新たにお気に入りに入れてくれた方々、更新が遅れてすみませんでした。
 これからもよろしくお願いします。
 
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