クロスオーバー世界 Knockers:Arc-en-ciel   作:おろさん

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『裂目揺交叉伝』プロローグ及び第1話


裂目揺交叉伝
プロローグ:秘封倶楽部/第一話:紅い月


 忘れ去られた者達の楽園『幻想郷』。そこには、長い時を得て認識されなくなった存在が暮らす、人々の認識から遠ざけられた山奥の里。なお座標は京都のものである。

 

 

 

 この世界においては、『幻想界』と呼ばれる世界の切れ端を利用し、元の世界『物質界』の認知から遠ざけていた。

 

 

 この世界の住人、主に『妖怪は』人間の恐怖の感情を糧として生きる。そうでなければ自分の存在意義が無い。元々そう言うもの前提で、人々の思い込みから生まれた存在である故に。そのために、人間の里がある。

 

 とにかくそう言った、不自然且つ曖昧なバランスで成り立っていたその空間は、突如として崩壊を起こす事となる。

 

 

『オルタレイション・バースト』。ある日突如発生した、能力者発生現象の総称。

 

 

 あくまでも認知の外に隠されていただけの幻想郷もまた、その現象に巻き込まれる。幻想郷の人里の人間達の怪物(ノッカーズ)化、及びそれによる暴走。力を得た者達の無差別な攻撃。それが引き金となって発生したノッカーズと妖怪の争い。

 

――ありとあらゆる可能性の蓄積。あらゆるアクシデントの発生は、幻想郷の要である『博麗大結界』の崩壊を引き起こした。強大なエネルギーが引き起こした、幻想郷の存在を維持していた結界の崩壊。当然ながら、幻想郷は無事では済むわけがない。

 

 

 そして幻想郷は、『崩壊』した。建物は粉々になり施設としての機能は消え失せ、名無しの低級妖怪の大半、人里の人間のほとんどはもろに崩壊時の爆発やエネルギーやらに巻き込まれ消滅。一部の影響を受けなかった生き残りはどこか別の場所に弾かれ、名を持つ妖怪や特殊能力持ちの人間などの多くも、粒子状の物体となり何処かへと飛ばされてしまう。

 

 

 大妖怪ら賢者達や、博麗の巫女は必死に幻想郷の崩壊を防ごうとした。だが、空間関係の能力を持つ大妖怪もまた粒子状の物体となり、博麗の巫女もどこかへと弾かれ、行方が分からなくなった。防衛の要として立ち回ろうとした2人が欠けたその結果、崩壊を防ぐことは完全に不可能となってしまった。

 

 

 

 

 

 そんな事があって、幻想郷は『幻想郷』としての機能を完全に失くした。跡地となったその場所は、今でも幻想界に残され、崩壊の影響を全く受けず無事だった妖精達の大半の根城になっている。

 

 

 

 幻想郷崩壊は、多少ながらこの世界にも影響を与えた。

 

 

 

 観測が正しければ、粒子化した者達はノッカーズ化した人間と同化し、無事だった者達は物質界へ弾き出され現代社会に溶け込んでいる。

 

 また、崩壊による反動で危うく京都全域が吹っ飛びかけたが、それに関しては突如現れた謎の組織の手によって防がれたという話もある模様。

 

 

 

 

 

 

 こうして11年の時が経った現在。幻想郷崩壊の際に発生した、空間の亀裂の存在など忘れ去られた頃。元々幻想郷が或った京都の街。とある大学生の茶髪少女が、大学の廊下を歩く。

 

 

 そうして辿り着いた場所は、大学内のカフェ。そこの内1つのテーブル席で金髪の少女が、茶髪少女を待っていたかのように手を招く。

 

 

 

「5分遅刻。まあ進歩した方かしら?」

 

「4分23秒よ。そんな事よりメリー、今朝の新聞見た?興味深い話があるんだけど。」

 

「私は携帯でニュースを見る方なの。ちなみに蓮子が言いたいのが『ATEMS』の来日と、『聖スカーレット女学院』で保険医が逮捕された件だって言うのならとっくに知っているわ。」

 

 金髪の少女及び『メリー』こと『マエリベリー・ハーン』が、ため息交じりでそう言ってきた。それを聞いた茶髪少女こと『宇佐見蓮子』はふくれっ面。

 

「むぅ、何かねその物言いはメリーさん。まあ合ってるけど。」

 

「まあ、確かにこれらに関しては興味深い話よね。日本だとあまり見かけない第七波動(セブンス)能力者の、それもかなり権力を持っている人物の来訪、そして聖スカーレット女学院保険医の、違法催眠薬物の使用による逮捕……何かワケや裏がありそうな気はするもの。」

 

「でしょ?近年だと、ノッカーズ以外でも変な事件が起きてるって話が結構耳に入るし、面白そうと言えば面白そうじゃない?」

 

 

 そんな感じの会話をしている2人。……彼女たちはは同じ大学の生徒であり、同じサークルの一員。

 

 

 

 そんな2人の出会い、そしてそのサークル……

 

 

 

 

 

『秘封倶楽部』の活動記録が、此処では描かれる。

 

 

 

*****

 

 

 数か月前の事。京都のとある喫茶店で。

 

 

「ごめんごめん、遅れちゃった!」

 

 

 早歩きで店に入って来た、宇佐見蓮子。その様子を見て、彼女を待っていたメリー及びマエリベリー・ハーンはため息をついて、

 

 

「時計、持っておいた方が良いんじゃないの?」

 

 

 と言った。対し蓮子は、

 

 

「無くても『見えるもの』。」

 

 

 遠回しに『必要ない』と言うかのように、そう言った。

 

 

 

 事実を先に言うと、蓮子とメリーは多分『ノッカーズ』だった。

 

 

 蓮子は、星を見るだけで時間を測り、月を見るだけで自分のいる場所を把握するという『目』を持っている。天体を見るだけで、たとえ写真であろうと正確な時間と位置を測る事が可能なのだ。……にも関わらず、メリーとの待ち合わせ時間には(呼び出した本人なのに)遅れがちのようだが。

 

 最も、コレを超能力だと蓮子が自称しているだけなので本当かどうかは不明。どの道、宇佐見蓮子が頭が良いのは確か。

 

 

 

「いやぁ、教授が中々放してくれなくてね。もうちょっと分かりやすく説明してほしいってさ。」

 

「蓮子のは、最早レポートと言うより論文だものね。」

 

「そうかしら?どちらかと言うと、単に教員の質が落ちかけている面のせいな気もするけど」

 

「質に関しては無理もないでしょう?『オルタレイション・バースト』のせいで常識がひっくり返って、普通だと解き明かせないようなものも多くなった事もあるし。」

 

 

 コーヒーを飲みながら、蓮子と会話するメリー。

 

 

「まあ、年配の学者さんたちは頭抱えるのも当然ね。以前はフィールズ賞を取ったノッカーズが出たわけだし。確か名前は……エクエージョン(方程式)の『野島勝行』だったかしら。」

 

「……ある意味何でもありよねノッカーズって。私と蓮子が初めて出会った時も、私に絡んでたナンパ男が急に鬼みたいな姿になって、その後どう言うわけか現れた剣から出てきた戦士がそれを倒したりって言うのもあったし。

 

 

で、それはそうとして……行きましょ。今日も今日とて、秘封倶楽部の活動……法律違反『結界暴き』でしょ。」

 

 

 カップに入っていたコーヒーを飲みほしたメリーは、蓮子に対してそう言った。

 

 

 

―――――

 

 

 

 

「・・・。」

 

 

 手を繋いでいる。そうしている2人が目を開ければ……

 

 

「うん、成功ね。それでここは……」

 

 

 蓮子がそう言葉を発し、周囲を見回す。

 

 

 

 

 

 唐突な事でどういう事かと思うので説明すると、マエリベリー・ハーンは、『結界の境目』を見る目を持つノッカーズ。京都を主に発生している綻びのようなものを彼女は見ることが出来、それを利用する事で、2人は本来禁忌とされる『結界暴き』に成功する。

 

 それ故、『夢』を通して、不思議な場所へと辿り着くことが出来る。蓮子とメリーは、そうやって、秘封倶楽部の活動と称して探求をする。そう言う事をやっているのだ。

 

 

 

 今回も見つけたその結界の境目を通し、2人はまた見知らぬ場所へ転送される。という事で、今回辿り着いた場所は……

 

 

「ここって……」

 

 

 そこは、紅い館だった。大きな湖のある、紅い館。……しかし何か様子がおかしい。というか、朽ち果てているのだ。ついでに言うと雨が降っている。

 

 

 

「メリーが言ってた、前に見た事のあるっていう紅い館……だよね?今回は崩壊した後の所に来ちゃったけど」

 

 と、蓮子がメリーにそう聞き、メリーは頷く。どうやら(メリー曰く)、蓮子と関わる前に夢で見た事のある場所……だそうなのだが。

 

 

「能力者発生現象『オルタレイション・バースト』……そしてその現象の影響を受けた、大昔から存在していたとされる『幻想郷』の崩壊、か……いつ見てもとんでもないと言いますかね……」

 

 

 そんな事を言いながら蓮子は苦笑い。

 

 

『幻想郷』。それは、忘れ去られた存在が暮らす楽園。その都市伝説はオルタレイション・バースト発生以前から存在していたものだった。

 

 だが、その『オルタレイション・バースト』の影響を幻想郷は強く受け、やがて崩壊した。

 

 

 メリーの見る夢は、『時間軸』というものが無視されている。要するに、過去の幻想郷を見ることが出来るという事。

 

 それ故。蓮子とメリーが今見ているのは、11年前のオルタレイション・バーストによる異変が一旦止まった、その時の光景なのだ。

 

 

 

「咲夜!!咲夜っ、しっかりしてっ!!」

 

 

 すると。どこからか声が聞こえる。2人は互いの顔を見合わせた後頷き、その声の方向に向かう。

 

 

 

 そしてそこに辿り着き、物陰に隠れてその様子を見る2人。……その視界に映っていたのは、1人の少女が、メイドのような恰好をした少女に必死に声をかけている様子。

 

 そのメイド少女は、大けがを負っておりかなり出血していた。

 

 声をかけている少女の方は、背中にコウモリのような羽が生えていた。だが、雨に打たれているせいなのか上手く動いていない。

 

 

 

 

[ 何故、こんな事になったのだろうか。突然奇怪な現象が起き、幻想郷が崩壊し、妹も、友人も、さぼりがちな門番さえも、どこかに消えてしまった。我が家さえも、家としての機能を失っている。

 

 

 しかし自分はどうだ。自分だけ何故か、何の影響も受けていなかった。しかしどの道、『幻想郷(此処)』から切り離されるのは時間の問題なのだろう。

 

 

 雨に打たれたせいで使えない羽を引きずりながら歩き、唯一自力で見つけられた咲夜は、今まさに目の前で死にかけている。 ]

 

 

「お……嬢……様っ……」

 

 ギリギリ意識を保っていたメイドの少女が、とうとう気を失う。

 

「咲夜っ!!!……っ!!!」

 

 

 そして羽の付いた少女……もとい、『吸血鬼』の少女は、失神したメイドの少女の首筋にかみついた。

 

 

 

 

[ その瞬間だったか。再びその光が発生し、私の意識が途絶えたのは。 ]

 

 

 

―――――

 

 

「はっ!!!」

 

 

 夜、京都の某所。蓮子とメリーは目を覚ます。

 

 

「うう……今日は比較的早く終わったわね。さっきの光で弾かれたのかしら……メリー?」

 

 

 蓮子が目を擦りながらメリーの方を見る。メリーは、ちょっと複雑そうな顔をする。

 

 

「蓮子……あの2人は、無事だと思う?」

 

「無事、かぁ……メイドの人があれだったし中々難しいわね……」

 

「そう、よね……」

 

 

 メリーは、下を向く。かつて自分の夢の中で見た時は、あの吸血鬼とメイドはちょっと楽しそうにしていた様子が窺えたから。

 

 

「まあ、最近は色々噂が絶えないし、もしかしたら何処かで楽しくやってる可能性も否定できないのよね。例えば……お嬢様学校の理事長とか。」

 

「ちょっと飛躍と大雑把が過ぎないかしらソレ」

 

 蓮子の発言に軽くツッコミを入れるメリー。

 

「ツッコミを入れられるならまあ大丈夫そうね。

 

 

 

……さて、そろそろ帰るわよメリー。お巡りさんに捕まったら面倒だし」

 

 と言って、自宅の方に戻ろうとする蓮子に対して「はいはい」と呆れながらもついて行くメリー。

 

 

 

 

 これが、秘封倶楽部の活動の一端。2人はそうやって、『幻想郷』を見る。

 

 

 

 

 

 しかし、その時の2人はまだ知らなかった。これが、新たな探求の序章に過ぎない事を。『幻想郷』の先に、まだ見ぬ幻想が存在していたという事を。

 

 

 

 その名、『幻想界』というものを。

 

 

 

―――――

 

 

 11年前。

 

 

「う……」

 

 

 吸血鬼の少女は、何処か見知らぬ森で目を覚ます。森の先に、何か見慣れない建物がある。そしてここでも雨が降っている。

 

 

「そうだ、咲夜は……良かった……」

 

 

 と、下の方を見れば、自身のひざ元ですやすや眠るメイドの少女が。……何か違う点があるとすれば、すっかり出血が止まり五体満足のような体な上、吸血鬼の少女と同じ羽が生えている事だが。

 

 その様子を見て少女は安心半分だが、ちょっと申し訳ない気持ちにもなっていた。

 

 

 しかしこれからどうするか。雨に打たれたせいで力が抜けて、これ以上はロクに動けない。

 

 

 

「幻想郷崩壊による、妖物の流出、か……良くないねぇ……」

 

 

 すると謎の声が聞こえたので、その方向を振り向く。

 

 そこには、不思議な気配を漂わせる男が1人。傘をさして、此方に近づいてくる。

 

 

「何者かしら、貴方は……」

 

 何とか立ち上がろうとする少女だが、上手く立てない。

 

 

「雨に打たれ過ぎたみたいだね。……仕方ない、一旦うちの店に運んだ方が良さそうだ。

 

 

 

それにしても、君から感じる品格のようなものは中々良いね……

 

 

 

 

うん、そうだね。君にはこれから、とあるお嬢様学校の理事長になってもらおうかな。……話は、店でだけれど。」

 

 

「いや……どう……いう……」

 

 

 そして、少女の意識は再び途切れた。

 

 

 

 

―――――

 

 

次回『キノコの国で』

 

(ちょっと今回、久々に雑になってしまった事は反省である(蛇足))

 




NEXT
Writing Start:『加工所勤務のクエスト』



キャラ・用語紹介

『幻想郷』
出典:東方project
東方project作品における主な舞台で、妖怪など人々から忘れ去られた存在が暮らしている。
本作では『幻想界』なる世界の切れ端を使用していたらしい。また、オルタレイション・バーストの発生で既に崩壊しているとの事。

『宇佐見蓮子』
出典:東方project
京都の大学でオカルトサークル『秘封倶楽部』をメリーと結成している少女。天体を見るだけで時間を測る事の出来る目を持つ。本作では(多分)ノッカーズの扱いとなっている。とある超能力者との関係は如何に。

『マエリベリー・ハーン』
出典:東方project
蓮子と共に秘封倶楽部の活動をする少女。通称『メリー』。結界の境目(綻びとかそんな感じ辺り)を見る事の出来る目を持つ。本作では同じくノッカーズとなっている。が、何だか特殊な感じがある。

『秘封倶楽部』
出典:東方project
蓮子とメリーのオカルトサークル。メリーの結界を見る力を使い、夢を通して過去の幻想郷(本作だと(過去の)幻想界)に訪れている。
リアルの方だと、東方project作品の中で、蓮子とメリーが主役として取り上げられる作品の括り。
また、原作の世界観だと『東京が荒廃して首都機能が京都に移っている、自動車が旧時代の乗り物扱いとなった近未来』だが、本作では普通に東京の首都機能は健在のため本作の舞台はシンプルに『現代の日本にある京都』。

『幻想界』
出典:ナムコクロスカプコン
クロスオーバー作品『ナムコクロスカプコン』の舞台における世界の1つ。ファンタジー系の作品キャラが此処に属す。
本作では幻想郷などもそこに含まれる模様。

『野島勝行』
出典:VOID(ヒーロークロスライン)
蓮子の話に出てきた、『エクエージョン(方程式)』という、天才的な頭脳をそのものがノッカーズ能力の男。フィールズ賞を獲得した天才数学者。
なお5年後に、世界のすべてを方程式で解き明かすという偉業を成し遂げ、それを学会で発表しようとしていたが……

『結界暴き』
出典:東方project
蓮子とメリーが行っている行為。『結界省』と言う組織が均衡維持のためと言う理由で法律違反のものとなっている。『結界省』と言う組織自体にも不透明な部分は多いと言えばそんな感じな気もするが、まあざっくり言えば自分の管轄ではない何かを恐れている表れという事か。
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