Fate/make heroes   作:志樹

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00.除幕-プロローグ-

 幾多にもわたり交差する剣閃。

 衝突の度に大気震わす二本の槍。

 玉響に撃ち合われたそれですら、既に数えきれるものではない。

 

 ――否、人の目に捉えられないものを如何様にして数えようというのか。

 

 常人であれば、恐怖に震えるだろう。

 常識人であれば、こんなもの現実ではないと拒絶する。

 一般人であれば、関わるべきでないと忌避すべき光景だ。

 

 眼前にいる二人の槍兵。

 青鎧を身に着け赤い槍を振るう英雄と、地面に届くほどの長髪で武骨で古めかしい槍を振るう少年。

 

 一閃。

 眼にも留まらぬ速度で振るわれた赤槍は、紛れもない必殺の一撃。その一撃は、達人をもってしても放つことは不可能な一閃。しかし不思議なこと等何もない。全ての攻撃が必殺にして最速なればこそ、彼は槍兵の英霊と成り得たのだ。

 

 しかし――。

 

長髪の少年は、同じく常人では不可能な速度を持ってその一撃を逸らし、そのまま攻撃に転じる。槍兵に相対する彼は、いかなる理由であの場に立ち続けられるというのか。同じ槍使いである英霊を前にして怖気づくことなく、怯むこともなく、唯前を見据えて戦い続けられる彼は、如何様なる理由であの場所に在り続けられるというのか。

 

 理解のできない状況。

 理屈のつけられぬ現象。

 

 しかし、そこには確かに英霊と渡り合う少年の姿が存在した。

 

 ――閃――

 

 何合目かの攻防。一瞬にして永遠を錯覚させる攻防の内に、けれど英霊と少年には明確な差異が生まれ始める。

 押され始める少年は、次第に防戦一方となっていく。辛うじて攻撃を逸らし、避け続けるも、明らかに傷が増え始めていた。

 

 もとより少年のそれは対人を想定したものでなく、其れ故の不利もあることだろう。しかし、それよりもなによりも、彼はまだ子供なのだ。それに対して相対する英霊は大人。しかも生前の全盛期の姿である。身体的な差異も、体力的な差異も、改めて考えるまでもないくらいに大きなものだ。

 

 それでも、彼は決して引かない。

 身体が傷つこうと、骨が折れようと、例え、己が信念を否定されようとも。

 必ず立ち上がり、正面を向き、笑う。

 

 ――何のために?

 

 他の何ものでもない。唯、己が決意した想いがために。

 

 ――何のために?

 

 他の何ものでもない。唯、己が貫き通す信念がために。

 

 ――何のために?

 

 他の何ものでもない。唯、己が笑わせたいと思った人がために。

 

 故に、練達した強靭な槍を前にして、未熟な一本の槍はされど折れることはなく――。

 

 翳りないその瞳は、闇照らす太陽を想起させた。

 

 




うしおととらは旅してるときに関西に行ってない気がするけど気にしない。
旅してる途中設定だけど原作終盤くらいの強さを想定。
獣の槍は現存する宝具的扱い。
とらは今を生きる幻想種的扱い。
とらはサーヴァントと同等の強さ。ただし化物退治の逸話持ちの相手が苦手。
うしおはサーヴァントには劣る、ただし化物系には有利、UBW士郎には勝てる。
くらいを想定してるけど、うしおは士郎並みの主人公補正持ち。

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