箭吹シュロ怪聞録   作:イッセ

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陸話

 

 

「な、なにものなの?・・・・あなた。」

 

 

合流予定だった傭兵は、1人残らず倒されている。

 

このキヴォトスにおいて、傭兵は荒事専門の生徒で構成されており、その戦闘力は決して低くない。

 

ましてやこの人数、便利屋としても今回の出費は安くなく、その分腕利きを雇った・・・はずである。

 

 

(そ、それが!たった1人に全滅!?)

 

 

にもかかわらず、目の前のシュロと名乗る少女1人にやられたというのは・・・・

 

 

(ヒナ並みの化け物じゃないの!?)

 

 

ゲヘナ最強並みの、化け物ということに他ならない!!

 

 

 

「いえいえいえ、そんなに警戒しないでくださいぃ♪手前はただ、皆さんがアビドスに用があるという噂を聞きつけて、お・う・え・ん・に!来ただけですよぉ?」

 

 

応援!?雇い主からの追加要因なのだろうか?

 

いや!それなら雇った傭兵を倒す意味が分からない!!

 

 

「・・・こっちが雇った傭兵を全滅させといて、応援?おかしなことを言う。・・・何が目的なの!」

 

 

カヨコが前に出て交渉する。

 

こういう時は本当に頼りになる課長だが、そんなカヨコも自身のハンドガンを構えて警戒している。

 

 

「おおコワイコワイwwそんなに警戒しないでくださいよぉ、手前はただ、無駄な出費を抑えるのと、手前の有用性を見せにきただけなのですから♪こんな有象無象を揃えたところで、アビドス相手では意味がないという、とっても親切な警告を・・・ね?『鬼方カヨコ』さん?」

 

 

「・・・・こっちのことは調査済みってことか。」

 

 

課長であるカヨコのことが知られていることもだが、今回のターゲットがアビドスであることまで知られている。

 

私もハルカも、更に警戒を強めていった。

 

 

「それは勿論♪事前の調査は怠っていませんよぉ?・・・・便利屋68・・・社長の『陸八魔アル』。再前衛の平社員『伊草ハルカ』。便利屋の頭脳である課長の『鬼方カヨコ』。高火力の殲滅力をもつ室長の『浅黄ム・・・・・・・・・。」

 

 

楽しそうに1人ずつ視線を向けて、順々に名前を呼んでいた少女が、ムツキに視線を向けたとたん、その動きを止めた。

 

 

・・・・そういえば、ムツキもさっきから反応がない?

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

“スッ”

“ススッ”

 

 

視線を合わせたまま固まり、無言の両者。

 

しばらくお互い見つめ合っていたのだが、ほぼ同時に動き出した。

 

 

“トコトコトコ”

“トコトコトコ”

 

「ム、ムツキ室長??・・・え?ムツキ??どうしたの!!」

 

「え?え?え?」

 

「ちょっ、ちょっと???」

 

 

お互いを見つめたまま、歩み寄っていく2人。

 

あまりの事態に、私やハルカ・・・・あのカヨコすら困惑をしている。

 

 

“トコトコトコ”

“トコトコトコ”

 

“スッ”

“スッ”

 

 

互いの間合いにまで近づくと、両者ともに右手をあげる。

 

まさか殴り合いでも始めるのかと、ハラハラしてみていると・・・・・。

 

 

“”がしぃ!!“”

 

 

((腕を組んだぁ!?!?!?!)))

 

 

まさかの腕組みをしてお互いに満面の笑みを浮かべていた・・・・・・・・(゚Д゚;)

 

 

「初めまして!箭吹シュロです!突然ですがムツキちゃんとお呼びしてもいいですか!!」

 

「クフフ♪全然OKだよ!私もシュロちゃんって呼んでいい?」

 

「!!クフフ♪是非!ムツキちゃんとはとっても仲良くなれそうですねぇ!!」

 

 

(((いっしゅんで意気投合したああああああ!!!)))

 

 

意味がわからない!?

 

さっきまでの雰囲気は?警戒は??あっちでまだ傭兵たちが気絶してるんだけど・・・・・この状況は何なの????

 

 

「・・・・・・あ、あの、ムツキ。その子は知り合いなの???」

 

「ううん!!初対面!!でも親友になった!!多分心配いらないよ!!!」

 

「・・・・えっと、シュロって言ったっけ?うちの室長とは・・・・」

 

「初対面ですが、親友・・・いえ!姉妹(キョウダイ)です!」

 

「(◎_◎;)」

 

 

初対面なのに親友!?姉妹!?!?

 

訳が分からない。

 

カヨコも意味が分からなそうだし、ハルカに関しては呆然として動かなくなってしまった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

場所は変ってアビドスにて

 

「校舎より南15km付近で兵力を確認!・・・これは・・・なんですか??」

 

「?どうしたのアヤネ?いつものヘルメット団じゃないの??」

 

 

アビドスの対策委員会部室にて、アヤネの監視網に引っかかった兵力がいた。

 

他のメンバーは、カタカタヘルメット団の残存兵かと思っていたのだが・・・。

 

 

「???わかりません。正直見たことない兵力?で・・・というかコレ、何なんでしょうか??」

 

 

そう言ってこちらに向けたパソコン画面には、傘とダルマのお化け達がこちらに向かってきていた。

 

 

急ぎ武装を整えて、校門まで集まる。

 

今回は先生も前線まで出ており、後方から指揮をとる形のようだ。

 

 

『前方に謎の兵力を率いている集団を確認!』

 

 

傘にダルマとわけのわからない兵力の中に、5人だけ人間の姿があった。

 

 

「あれ・・・ラーメン屋さんの・・・?」

 

「誰かと思えばあんた達だったのね!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」

 

 

・・・まあ、もともと疑っていたが、やはり紫関ラーメンで仲良くなった、ゲヘナの子達のようだ。

 

 

「ぐ、ぐぐ。」

 

「あははは、その件はありがと。でもそれはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ。」

 

「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす。」

 

 

「・・・なるほど、その仕事が便利屋だったんだ。」

 

 

おかしいとは思っていた。

 

言ってはなんだが、ゲヘナの学生がわざわざアビドスに来る目的など限られている。

 

紫関ラーメンは確かに美味しい有名店だが、彼女たちは来店の際1番安い料理を聞いていた。

 

セリカは勘違いしていたが、ラーメンを食べにきたのは偶然であり、別の目的があったのだろう。

 

 

・・・・・・ただ。

 

 

「“君がいるのは、予想外だったよ。シュロ”」

 

「クフフ♪言ったでしょう手前様?手前は怪談家。先生の敵だと♪」

 

 

以前にシャーレで出会った、百鬼夜行の少女『箭吹シュロ』。

 

敵対宣言を受けてすぐ、彼女について色々と調査を進めたのだが・・・・・

 

 

「“君が言っていた花鳥風月部という部活は、百鬼夜行学園にはなかった。ただ、都市伝説として百鬼夜行に不吉を届ける組織だという噂があっただけだ。”」

 

「ふふふ♪最初は『噂』で十分ですよぉ?その噂がやがて伝聞として広がり、都市伝説として伝承化して、少しずつ少しずつこのキヴォトスで形作られて、『怪談』となる。」

 

 

・・・彼女が何者なのか?・・・ということを聞きたかったのだが、煙に巻かれている。

 

便利屋と共に行動しているあたり、彼女もメンバーなのだろうか?

 

 

「・・・ああ、便利屋68の皆様には、一時的に協力しているだけですよぉ?手前様の手腕は確認させていただいたので、有象無象では役不足とおもいましてねぇ。」

 

 

まるでこちらの心を読んだかのように、答えてくる。

 

 

・・・手腕を確認していた?

 

なるほど、ヘルメット団との一戦も見られていたわけだ・・・・・・ということは。

 

 

「“・・・なるほどね。つまり・・・・・セリカの誘拐も君の指示かな?”」

 

 

空気が変わる。

 

対策委員会の皆も、アル達からこちらへ意識を向けて、シュロに怒りのこもった目を向ける。

 

 

『先生!それはどういうことですか!!』

 

「セリカの誘拐はヘルメット団の犯行じゃなかったの?」

 

 

通信からアヤネと隣からシロコが、疑問を投げかけてくる。

 

 

「“前回のセリカ救出作戦。ずっと気になってたんだよね。今までろくに戦術が取れてなかったヘルメット団が、何故あそこまでの連携が取れるようになったのか。”」

 

 

セリカ救出時の戦闘は、あの包囲網だけでなく、戦術面においても格段に厄介だった。

 

つまり、何者かの後方指揮があったと考えられる。

 

 

「“彼女たちに指示を出せる立場にあったのなら・・・・自然とセリカ誘拐の指示を出したのもその人物と考えるのが自然だ。”」

 

「フフフッ。」

 

 

眼前の少女をにらみつける。

 

このキヴォトスにきて、外の世界との常識の差には悩まされたものだが、あの一件はキヴォトス基準でも、許せるものではない。

 

 

「“私が目的ならば、いつでも相手になるけど・・・アビドスの皆を狙うのは見逃せない。どういうつもりか・・・素直に喋ってもらおうか?”」

 

「おお、コワイコワイ♪」

 

 

緊迫した空気の中、それでもひょうひょうとした態度を崩さないシュロ。

 

目配らせをして、アビドスの皆でシュロを包囲するようにジリジリと移動する。

 

 

「はいはいはい、正直に話しますよぉ?手前は語り手ですからねぇ、お話にネタバラシ、どちらも大好きですぅ♪」

 

 

どうやら話してくれるようだが、いきなり襲ってくる可能性もある。

 

何時でも拘束できるようにだけ、準備しておく。

 

 

「手前様の見事な推理!全く感嘆を隠せません!只々手前がここで姿を見せただけでそこまで考えが及ぶとは!本当に感服しましたよぉ♪」

 

 

・・・やはりか、ということはセリカの一件は私の責任でもあるわけで、この戦闘が終わったら、アビドスの皆には謝罪しないと・・・・

 

 

「まあ、結論を言うと、くっっっそハズレてるんですけどねぇ(-_-;)『セリカの誘拐も君の指示かな?(ドやあ)』ですって!はっっっず!!(≧∇≦)」

 

 

空気が・・・・・凍った。

 

 

 

 

「いや、誘拐して脅迫するなんて七面倒な作戦を、手前が考えるわけないでしょう?正真正銘、あれはヘルメット団の仕業ですよ♪」

 

 

メッチャ嬉しそうに説明してくる。

 

やめて・・・やめて・・・・。

 

 

「『その人物と考えるのが自然だ!(ドやあ)』『アビドスの皆を狙うのは見逃せない!(ドやあああ)』・・・・・ブフウ!!はっず!・・・はっっっっず!!どこで買えるんですかその自信!あのドヤ顔、写真に撮りたいんで、もっかいしてもらえません~?」

 

 

・・・コロシテ・・・コロシテ。

 

 

「ああっ!恥ずかしい!恥ずかしすぎますよ手前様!!渾身のご指摘が素っ頓狂なんて!!共感性羞恥で手前まで赤くなっちゃいます!『あ、あのう。その辺にしてもらえないでしょうか・・・。』?ああ、アビドスの。良かったですねぇ手前様?大事な生徒さんがフォローしてくれるようですよ?」

 

 

アヤネのフォローが逆にイタイ!!

 

シュロを除いたほぼ全員が、こちらをいたわしそうに見ている!

 

 

「もちろん!謝罪は結構です!!本当!ほwんwとwうwに、大爆笑させて頂きましたし!か・わ・い・そ・う・に、なってきましたからwwww」

 

「“いえ、あの、えっと、大変申し訳なく・・・(´;ω;`)”」

 

 

(ひ、酷い)

(先生が泣いちゃいました!)

(人の心とかないの?あの子)

(うへ~、しばらく先生にはやさしくしてあげよう)

(ん、容赦ない)

 

 

皆が優しい目を向けてくる。

 

やめて、優しくしないで。シロコ、肩ポンポンしないで。便利屋のみんなも、いたわしそうにしないで、敵でしょ一応!

 

 

「ま、救出時の包囲網は手前の入れ知恵なんですがね」

 

「“一部あってるじゃねえか!!大声でしゃべらんかい!!”」

 

 

口調が乱れたのは許してほしい。

 

このクソガキには、一切の配慮をしないと決めた。今決めた!!

 

 

先生が生徒に、子供にいうセリフではないと思うが・・・・・・・このガキは泣かす!!

 




書き溜めしてたのはここまでです。
もう一つの小説と合わせて、ちょっとずつ連載していきます。
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