「・・・つまり、セリカちゃん救出後の包囲網は君の入れ知恵なだけで、ヘルメット団とのかかわりは最低限だったから誘拐自体には関わってないってことかな?」
「ええ、ええ!そういうことですよぉ小鳥遊ホシノ。そもそもあんなリスクが高いだけの誘拐作戦なんて、手前はたてません♪」
アビドスの校門前で、対策委員会と便利屋のにらみ合いは続いていた。
どちらも銃をかまえ合った状態であり、一触即発の空気は続いている。
おそらくこのシュロとホシノのやり取りが終われば、すぐにでも戦闘が始まるだろう。
(・・・けど、誘拐などの後輩を狙う手段を今後とるかどうかは、確認しておく必要がある。私はともかく、セリカちゃん達に危険を及ぼす気なら、この戦闘で確実に拘束する必要があるしね。)
「誘拐みたいな手段をとる気はないってこと?」
「だって~、今回のように人質に発信機をつけられたり、救出された際には人質からこっちの情報がばれたりするでしょう?それなら学校外で各個撃破を狙う方がまだかしこいですよねぇ?」
この回答は見逃せない。
確かに誘拐は仕掛けてこないだろうが、学外で後輩たちが狙われることに変わりはない。
(・・・やっぱり、危険な子だね。できれば今回の戦闘で拘束しないと「ああ、でも~」???)
ホシノの思考を遮るように言われた次の発言。
「何らかの形で拘束が可能となり誘拐ができちゃった場合は、ひとついい名案がありますねぇ♪」
ゆっくりと上げられるシュロの指、その先にいるのはホシノの姿。
そこから続いた次の言葉は。
「・・・・うへ~、おじさんを誘拐するのかな?それはちょっと甘く見過ぎじゃ「脅迫するのはホシノちゃんだけにしますかね~?」・・・は?」
「『可愛い後輩を、砂漠に捨ててきちゃったよ?』ってね♪」
「・・・・・・・・・・・・ハア?」
ホシノを完全にぶち切れさせた。
「死にたいの?お前!」
アビドス対便利屋。
全面戦闘開始!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・アビドスを攻めるにあたって注意する点?」
「そうですよぉ?今のまんまじゃ100%負けます。」
倉庫街で出会ったシュロという少女は、今回のアビドス襲撃において、このままでは失敗に終わると私たちに警告してきた。
詳しく聞いていくと、アビドス自体の戦闘力に加えて注意すべき人物が2人いるらしい。
「一人はシャーレの先生ですねぇ、指揮能力がとんでもなく、攻撃は謎のバリヤーで防がれます。武器を持ってないので戦闘力こそ無いものの、指揮された生徒の能力は跳ね上がりますし、すっごく面倒ですよぉ。」
シャーレという新しい組織に、キヴォトスでは珍しい人型の大人が所属したという噂は聞いたことがあった。
・・・でも、私たちに衝撃を与えたのはもう一人の方。
「もう一人は『暁のホルス』と呼ばれていた小鳥遊ホシノ。その戦闘力はキヴォトス内でもトップレベルですぅ。・・・あなた達になら、あの空崎ヒナより強いと言えばやばさの度合いが分かるでしょう?」
「「「「!!!!」」」」
空崎ヒナとはゲヘナ最強の人物であり、彼女一人でゲヘナの治安を維持しているといってもよいほどの人物である。
それより強いとなると・・・。
「そそそ、そんなの!勝てるわけないじゃない!!」
社長が悲鳴じみた声をあげる。
そりゃそうだろう、便利屋の全員でかかっても、ヒナ相手では全滅する。
それより強い相手なんか、勝てるわけがない。
「ふふふ♪そこは大丈夫ですよぉ?手前に考えがあるので♪」
(・・・本当に、怖い人だね。)
アビドスとの戦闘を行う中で、シュロとホシノの動きを横目に観察する。
「おやおやおや、どうしましたぁ?そんなに突っ込んできて。いいんですかぁ?その位置じゃあ後輩ちゃん達のフォローに回れませんよぉ?」
「ちい!!」
怒りのままこちらに飛び込んできたホシノは、その一言で後輩たちの射線上にブロックへ入る。
「あっ、ちょっと先輩!」
「“ホシノ!指示通り動いて!そこじゃセリカの射線まで遮っちゃう!セリカ!2時方向に移動後シロコのフォローに!”」
しかしその場所では、敵だけでなく味方の射線も邪魔してしまう。
先生も、ホシノに指示を飛ばして、そういった事態を回避しようとしているのだが・・・・。
「なっさけな~い!そんなザマなのに、なんで楯なんか持ってるんですかぁ~?あなたではその楯・・・ただのゴミでしょ?死体臭いソ・レ、手放しちゃえば~?」
「お前ぇぇ!!いい加減黙れぇぇぇ!!!」
「“ホシノ!落ち着いて!!”」
そのたびにシュロが煽って、ホシノの動きを縛っていた。
(・・・えげつない)
思い出すのは、事前のやり取り。
小鳥遊ホシノの弱点。
『小鳥遊ホシノは確かにキヴォトス最強ですが・・・今は弱くなっています。』
『・・・怪我かなにか?それとも手を抜いているの??』
強者が弱くなるという事態を考えると、それくらいしか思い浮かばない。
実戦離れというのも思いついたが、治安の悪いキヴォトスでそれは考えづらい。
襲撃も定期的にされているらしいし。
『手を抜いている・・・というのが近いですが、一番は精神面と持っている楯ですね。』
聞くと、今の小鳥遊ホシノはその防御力の高さから、対策委員会のタンク役をかっているらしい。
『けど、彼女の本当の恐ろしさは、その防御力でかつ高機動な所です。矛盾した例えになりますが、鉄の硬さを持ったスーパーボールが懐に飛び込んできて、ショットガンを連発するような感じですね。』
鉄の硬さを持ったスーパーボールってなんの悪夢だ。
ショットガン持ちへの対処法は遠距離攻撃に徹することだが、そんな相手を近づけないようにすることなど不可能に近い。
『・・・なるほど、後輩のフォローには向かない戦い方を得意としていたわけか。』
『・・・それもありますが、致命的なのはあの楯ですねぇ♪彼女の体格にあっていない楯を持っている以上、戦略に関わらず機動力の低下は避けられません。』
・・・?
何故、自分の体格にあっていない楯を使用しているのだろうか?
後輩のフォローに楯を使うのは、わかるのだが・・・。
『捨てられないんですよぉ♪バカだから。なので、精神的に揺さぶってより実力を出させないようにする必要があるんです♪』
理屈は分かる。
それに、こちらの勝利には小鳥遊ホシノの封じ込めが必要不可欠なのも確かなのだが・・・・・。
(流石というかなんというか・・・ムツキと意気投合するわけだ。)
性格が悪いとも言えるだろう。
(“ホシノへの指示が通らない!他のメンバーを上手く動かして、何とか対処してるけど・・・「ムツキちゃん、ガトリング撃ってる子狙って!ハルカは前線を維持!」「!!!」めんどくさいなクソ!!”)
動きの遅いノノミをこれ見よがしに狙われて、ホシノが反応。
前線でためを作れるホシノが、相手の思惑通りに踊らされているせいで、こちらの戦線がぼろぼろだ。
(“便利屋の戦闘力が高いのもあるけど、問題なのはやっぱり。”)
「おやおやおや、ホシノちゃん♪その体制じゃノノミちゃんを守り切れないのではぁ?」
「うるさい!ダマレ!!」
ホシノを煽って楯をかまえさせて、ノノミとホシノの2人の動きを止めておく同時に、視線が遮られたタイミングでハンドサインを使用しカヨコに攻撃を指示。
カヨコの銃からとてつもない音がして、前線メンバーの聴覚を殺しにくる。
(“!!また指示を妨げるような戦い方を!こっちの嫌がることを的確にしてきやがってこのクソガキ!!”)
しばらくは声による指揮ができないだろう、可能な限りのハンドサインでシロコとセリカに指示をだす。
しかしこれでは、連携などの高度な作戦を伝えられない。
それは同時に・・・・
(“今のでハッキリした、シュロは私と同じレベルの戦術眼を持っている!性格最悪の天才戦術指揮官を相手にするとか、カンベンしてくれ!”)
キヴォトスに来てからはじめての体験。
自身と同じ視点から戦術を練り、同じフィールドで対抗してくる相手。
「“・・・でも、シッテムの箱を駆使している私の上を行くなんて・・・・きっと他にも。”」
何かしらがあるに違いない。
それを予測して上をいかないと、アビドス側に勝機はない!
(・・・・気づかれましたかねぇ?)
ホシノを煽りながらも、戦線の全体を見回していると、先生が注意深くこちらを見ていることに気が付く。
おそらく、手前がこの状況を作り出している便利屋の指揮官だと気づかれたのだろう。
それとは別に、『箱』を持っていないにも関わらず自身と同等の指揮を執る手前に、疑いの目を向けられているのも『良く見えた。』
(手前の異能が一つ『照魔の瞳』。相手の感情や意識を色と光の強さで見れる魔眼。)
感情や意識を見れるというのは、相手の攻撃や回避といった行動を予知できるということに等しい。
(いくら手前様が“箱”を用いて戦術処理を高速で行おうと、手前の方が情報量を豊富に得ているのです。そうそう負けませんよ♪)
「アル社長!シロコの足元!ドローンを打ち落としてください!!ムツキちゃん!1時から3時方向に掃射!」
「!!シロコ!指示を修正!3歩下がって!セリカは遮蔽で身を隠しながら10時方向に移動して「カヨコ!今!」「きゃ!!」!!ノノミ!セリカのカバーに!」
先生とシュロ、共に声を出してアビドスと便利屋に指示を出しているのには変わりない。
しかし、1手、いや、ほんの0・3手ほどではあるが、シュロの方が戦況を深く読んでいる。
それはほんの少しの差でしかないのだが、リアルタイムで状況が動く銃撃戦の中においては、致命的ともいえた。
(こちらのアタッカーはシロコ・セリカ・ノノミ・ホシノの4人。便利屋のアル・カヨコ・ムツキ・ハルカと同数だけど、ホシノが煽られていいように動かされてる。アヤネの支援を上手く使いたいけど、ダルマや唐傘が支援ドローンを集中的につぶしに来るから、結果的に手数が足りてない!)
こちらが防衛側なので、地形の有意差で何とか持ってはいるが、戦術面でもダメージ面でも、確実に不利となってきている。
(“ほんの数手でいい!相手の攻撃を途切れさせるなにか、こちらの手札を増やす方法を・・・・・・ああ、もう!なんで私は戦えないんだ!大人だぞ!男だぞ!!年下の少女たちだけに戦わせて、指揮もできない私になんて、何の価値が・・・・・!!”)
ふと、思いつく。
自分が前線指揮をとれている理由。
銃弾一発が致命傷となる自分が、このキヴォトスで歩くための大事な相棒。
「“・・・アロナ。ちょっと、聞いていいかな?”」
『??どうしましたか??先生。』
きっと止められるだろう、怒られるだろう。
でも、こちらの手札を増やし、同時にホシノを正気に戻せるかもしれない逆転の一手。
「“シッテムの箱のバリヤーって、1回3秒ほど張るとしたら、何回張れる?”」
『??残り電源的に15回くらいですけど・・・へ?一体何する気ですか!?』
ちょっと、大人の・・・いや、男の意地を張ることにした。
(何か、たくらんでますねぇ。)
ホシノを煽りながらも、後方で指揮を執っている先生を視界に入れる。
戦闘中は『壁に耳あり障子に目あり』をいくつかの場所に展開、俯瞰的な視点の確保や死角を無くして、常に戦況を把握できるように立ち回る。
それに加えて、自身の異能である『照魔の瞳』を併せることで、敵対者の状態を先読みできるようにもしている。
人外染みた指揮能力を持つ先生と、シッテムの箱の演算能力に対抗するために展開した、シュロのチートコンボは、先生の変化を誰よりも早く察することができた。
(先生の放つこの色は、“覚悟”“希望”・・・手前達の攻略法でも思いつきましたか、“若干の怯え”リスクが高い方法ですかね?生徒の誰かに無茶させようとしている?)
アビドス側の現状を鑑みるに、手数が足りていないのが致命的になっている。
相手が動かせる駒は全部で5人。内前線に出ている4人は全てこちらで封じていた。
(なら、サポートをしている奥空アヤネに何かをさせるんですかねぇ。ならそれを逆手にとって、妖怪達に包囲させましょうか。後方が崩れた組織は脆いですからねぇ♪一気に完封して・・・?)
前線にでてくるであろう奥空アヤネを監視するが、動く気配がない。
むしろ、全体の戦闘位置から言えば、下がっているようにすら見えて・・・
「違う、これは・・・・あの教師が上がってきてる!?一体何を??」
「“ノノミ!残りの全弾をハルカに撃って!シロコも合わせて!!”」
「?????」
訳が分からない。
今、十六夜ノノミを攻撃に集中させるのは、明らかな判断ミスのはずだ。
「ムツキちゃん!前方2時方向に爆弾放って!アル社長!そこからなら、十六夜ノノミを仕留めれるはずです!」
「!!!」
現在、アビドスの守りが崩れないのは後方からのガトリングによる掃射のせいだ。
それを1点に絞ってしまえば、こちらの攻撃が先に最前線の3人を崩す。
それを察して小鳥遊ホシノが動くが、そこからでは間に合わないし、ムツキちゃんの爆撃に巻き込ませて、ダメージも稼げるだろう。
先生の明らかな指示ミスと言える。
「手前様のことはそこそこ評価してたんですがねぇ。焦ってこんなミスするなんて・・・がっかりですよ!アビドスともども、蹂躙されやがりなさい!ゴミムシが!!」
最後の最後でがっかりである。
期待していた・・・自身の怪談への演者として。
新たな物語の主人公として。
大人というテクスチャを貼られた登場人物として!
・・・・でも、この程度の存在なのであれば。
(ここで消えてもらっていいですよ?手前の怪談に、大根役者は不要です!!)
“バアン!!”
アル社長の弾丸が発射される。
ムツキちゃんの爆弾によって、前線メンバーの対処は間に合わない。
当の本人も、ハルカに対する攻撃で防御態勢が取れていない。
アル社長の攻撃力を考慮すれば、これで十六夜ノノミは排除され、更に冷静さを失った小鳥遊ホシノは使い物にならず、アビドスは全滅するだろう。
なまじ、この戦闘を楽しんでいただけに、この決着は肩透かしであっ・・・
“ギャイィィン”
「・・・は?」
十六夜ノノミへの攻撃は防がれた。
前線メンバーは防御に間に合わない(ムツキへの指示により合流を塞いだ)
サポートのアヤネは動いていない(先生の様子が変わった段階で監視を強化した)
アル社長の一撃を防いだのは・・・・シッテムの箱を持った先生自身だった!
「あわわわ!先生?センセイ?!わ、私やっちゃった!?」
「落ち着いてくださいアル社長!防がれています!十六夜ノノミ共々、健在です!」
動揺したアル社長を落ち着かせる。
しかし、先生を除いたすべての人員が唖然として、戦局が硬直する。
それでも、既に行われた攻撃は、入るわけで。
「わきゃあ!!」
「「ハルカ!!」」
いち早く正気を取り戻したカヨコと声が重なる。
先生の乱入に動揺したハルカは、動きが硬直してもろに攻撃が通った。
前線を維持する上で、楯役の離脱は致命的である。
(はあ?はあ?!?!頭おかしいんですかあの男!!)
かく言う手前も、動揺が抑えられない。
便利屋メンバーを正気に戻して、戦線維持に努めなければならないのに、必要最低限の指示しか出せていない。
(1発でも当たれば死ぬんですよ?あのバリヤーには限度があるんですよ?そんなバリヤーに全面の信頼をおいて、超無防備に飛び込んできた?ノンストップで?)
疑問符がずっと浮かんでくる。
頭の中がグルグルする。
ゲームの指揮官ユニットが突っ込んでくる?
あのタイミングで間に合ったということは、無防備に十六夜ノノミのとこまで全力ダッシュしてきた?
(狂ってる!!そんなの!正気の人間にできることじゃない!)
黒見セリカの一件で、“箱”の防御が完璧でないことは分かっている。
当然そのことは、持ち主である先生も承知していることだろう。
にもかかわらず飛び込んできた!
生徒を昏倒させるために放った必殺の一撃に!
外の人間であるはずの先生が!
ノンストップで突っ込んできたのである!
「せ、せんせい?なんで・・・あ、あぶな、「“ホシノ!大丈夫!ゆっくりと私に目をあわせて。”」え、えっ?は、はい!」
そんな中、当の本人は、小鳥遊ホシノのフォローへと回っている。
自分の危険など、まるでなかったかのように。
頼りになる大人が、何もの問題もなく、たった今駆け付けて来たかのように。
「“ホシノに何があったのか、ほんとの意味でシュロの発言の何に腹を立てているのかを私は知らない。でも、今は皆を守ることに集中しよ?”」
「え?えっと?はい、うん。」
「“私は大丈夫。アビドスのみんなも強い。もちろんホシノもだ。だから、私とみんなならこの勝負も勝てる。でも、1人で戦うのだけはやめて欲しい。”」
「うん・・・うん、わかった。」
小鳥遊ホシノの目に、光が戻っていく。
ハルカが欠けたこともあり、こちらの勝率はぐっと下がるだろう。
「“相手の話に飲まれちゃだめだ。特にシュロはこの手のやり方に慣れてそうな「アハ」?!ホシノ!とにかく、冷静に!私の指示に従って「アハハ」!!”」
距離を詰めていく。
冷静に戦局を整理して、撤退準備すら視野に入れた指示を出さねばいけないのだが、口角が上がり笑いが込み上げる。
「アハハハハハハハハハハハ!!なんですか!なんですかぁ、今のは!!何で飛び込んでこれるんですかぁ!死んでましたよ普通ならぁ!!」
嬉しい。
この先生は、この男は普通じゃない。
「“・・・生徒の為だからね。”」
「そんなことで?そんなことでぇ!?そんなことで命をかけれるんですかぁ??」
「“私にとっては、大事なことだよ”」
嬉しい。
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい
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嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい
自身の異能を1つ切る。
拳を握って、構える2人の元に近づいていく。
「先生!危ない!!」
「!!ぐはっ!!」
「!!!」
無防備なまま先生に殴り掛かると、その拳はバリアーに塞がれて、小鳥遊ホシノの反撃を受ける。
「ごほっ、いったああああい♪私でもこんなに痛いのに♪手前様なら死んじゃうのに♪生徒の為なら飛び込めちゃうんですかぁ♪」
「“・・・・そうだよ。”」
異能を切ったことにより、小鳥遊ホシノの攻撃がもろに入る。
キヴォトス最高の神秘がこもった一撃は、ヘイロー持ちにも大きなダメージを与え、手前の口からを血が吐き出される。
「“・・・私は、先生だ。生徒を傷つけることは決してしない。だから本来であれば、シュロへの攻撃もしたくない。”」
「・・・・へえ♪本来ならですか?」
一瞬ぶん殴りそうになるが、『本来なら』という言い回しを受けて、続きを求める。
小鳥遊ホシノは、いきなり攻撃が効くようになった私が血を吐いたことで、動きを止めていた。
こっちは、期待外れだが、先生なら・・・この男なら。
「“でも、私の生徒にこれ以上手を出す気なら・・・『俺』は全身全霊で箭吹シュロを倒す。”」
「手前は生徒扱いしないんですか・・・そうですか♪」
お腹の底から、ゾクゾクとしたものが沸きあがる。
『手前』は語り手だ。
『手前』は自らの怪談を求める書き手だ。
決して登場人物ではない。
主人公に直接絡むのはご法度だ・・・・・・・でも。
「アハハ、アハハ、アハハハハハハハハハハ!!!や~めた!『私』語り手や~めた!!アハハハハハハハ!!!」
「「「「「「「「「!!!!!!!」」」」」」」」」
くだらない!
これ程の男を前にして!
これ程の演者に出会って!!
舞台を眺めているだけ何てもったいなさ過ぎる!!
「『先生』、いえ『クソ教師』。あなたは『私』の全身全霊を持ってぶち殺します!」
もう、あなたを指揮ユニットとして見ない。
物語の主人公と語り手という関係性でも見ない!
「改めて宣言しましょう!私の名前は箭吹シュロ!あなたの敵です!!」
今日この瞬間に、手前の怪談への登場人物として、私、箭吹シュロの出演が決まったのでした。