Re.蒼碧の艦隊3199 〜黒の剣士よ永遠に〜 作:短号司令官
西暦2202年
地球を飛び立った日本武尊は秘匿艦隊『紺碧艦隊』との合流を果たし、ヤマトが待つ惑星シュトラバーゼへと向かうのだった。
日本武尊は敵の妨害や攻撃を受けることなく無事に溶岩惑星シュトラバーゼへと到着していた。
その異質過ぎる見た目に一同は目を疑っていた。
リーファ「なんなんです、あの星は…」
シノン「結晶が生えてる……というか、刺さってる?」
大石「サイズは地球とほぼ同等、大気も地球と同じレベルだ。宇宙服無しでも呼吸ができるし有害物質もない」
シリカ「有害物質もない?…あんなマグマだらけの星に降りたら黒焦げになりますよ…!」
シリカが疑問をそのまま口にするとキリトが説明する。
キリト「あの惑星はおかしな事に、大気圏内の熱量とあの結晶の質量を隣接次元に保存している」
ユージオ「つまり、どういう事……?」
今の説明で理解できなかったユージオが問うと、キリトは何と説明するべきかと少し頭を悩ませる、そこへテクがより噛み砕いた言葉で説明した。
テク「あの惑星の大気圏内に放出される熱量も、そしてあの巨大な結晶の質量も、絶えずこの次元とは違う別の次元に飛ばされているという事だ。だから大気圏内も大して熱くはないし、あの結晶だって自重で折れることはない」
リズ「じゃあ つまりはこういうこと?目には見えるけど実際は存在していない……って感じ?」
キリト「まぁそんなところだな」
大石「ともかくシュトラバーゼへと降下するぞ」
大石の指示で加速した日本武尊は大気圏へと突入し、ヤマトが避難民の受け渡しを行なっている場所へと向かった。
避難民の受け渡しに現れたのは地球に向かう定期便のデストリア級が3隻であった。
ヤマト一隻に乗せられる避難民の数はたかが知れている。
前回の第七艦隊は乗せきれなかったり、被害の及ばなかった地域に居た住民の収容に当たっていたのだ。
話を戻してヤマトにはガミラス人・地球人双方の避難が民多数乗っている。彼らを地球へと送るにはヤマト一隻では荷が重い為この他で定期便に預けようという話になったのだ。
日本武尊はその護衛にあたっていた。
大石「結城君、付近に何か異常はないか…?」
アスナ「いえ、今のところは……何か?」
大石「いや……」
大石は先程から何かが胸中を蠢いているような気がしてならず、内心不安感に苛まれていた。
大石(何か嫌な予感が……)
そういう場合に限って事態というのは起こる。
アスナ「…レーダーに感!敵です‼︎」
「「⁉︎」」
キリト「なんだって……⁈」
大石「ちぃ…!」(やはりな!)
舌打ちして悔しさを出すが大石はすぐに動いた。
大石「参謀長、避難民の収容は⁉︎」
原「ヤマトからの報告によりますと、まだ六割程度にしか。ですがヤマトからは全員降りたと!」
大石「結城君!敵の数は⁉︎」
アスナ「でもまだ種類が…」
大石「かまわん‼︎」
普段の温厚な性格とはまるで違う彼の様子に驚きながらもアスナは報告する。
アスナ「は はい、およそ22隻……!」
アリス「22…⁈こちらは私達だけでは……」
ユージオ「キリト!ヤマトは⁉︎」
彼は俯きかげんで首を振って答えた。
キリト「ヤマトはまだ主機に火が入っていない…戦闘に参加はできるだろうが直ぐには無理だ…」
リズ「嘘でしょ……」
1対22という圧倒的に不利な戦況にさしものアスナ達もショックを受けたが大石は怯むどころか寧ろ
大石「問題ない……纏めて叩きのめす…‼︎」
気合い充分といった様子であった。
アスナ「⁉︎」
シノン「ちょ…⁈」
キリト「……やりますか、大石さん!」
大石「もちろんさ…!」
彼女達より大石の気性をよく知るキリトにとっては珍しい光景では無かった。戦いの時に見せる大石の鬼神のような雰囲気は彼も感じた事のないものであり、頼もしくも少し怖くなる程であった。
ともかく日本武尊は増速して上昇、敵は八割方がカラクルム級で残りは
ククルカン級・ナスカ級であった。
上昇中 ヤマトから通信が入りメインパネルに古代の姿が映る。
古代『大石長官!』
大石「おぉ古代君か、ヤマトはどうだ?」
古代『もうしばらくで発進できます。発進後は直ちにそちらの援護に…』
大石「ならん」
古代『えっ⁉︎』
大石「ヤマトは発進後、避難民の防衛に回ってくれ」
古代『ですが…!』
古代が続けようとしたところでキリトが会話に入ってきた。
キリト「古代さん、ここは俺達に任せてください!」
古代『和人君……!』
キリト「古代さんは俺達に任せられないんですか?」
わざとらしく聞いてきた事に古代も動揺した様子で口を開く。
古代『いっいや まさか!』
キリト「なら尚更任せてもらいたいです」
自信のある返事に古代もどう答えて良いか分からずにいたが、不安な様子ながらも託す事にした。
古代『すまないが…頼むよ。和人君』
キリト「任せてください!」
交信を終えて視線を前方に向ければ降下中の敵艦をが多数見えた。
敵はどうやらまだこちらを捕捉している様子ではないようだ。
大石「やるなら今か……朝田君」
シノン「了解」
計器を操作して主砲と連動した三つの照準用の画面内二つが、それぞれ別の艦を捕捉した。
敵はやっと気づいたのか回転砲塔・艦橋砲を起動させて攻撃を仕掛けてくるが照準は大体が出鱈目であった。
シノン「そんなのじゃ私達は墜とせないわよ」
彼女がそう言って瞬間主砲の照準が合致して発射可能と画面に表示された。
シノン「いけるわ!」
大石「撃ち方始めぇい!」
キリト「てぇー!」
前部甲板に搭載された2基6門の51cm三連装陽電子衝撃波砲塔から空間へと突き入れられるように鋭く飛翔した6つの閃光が、微かに捩れながらもガトランティス艦隊へと伸びていく。
不退転の意思の塊とも言うべきガトランティス人は伸びてくる閃光を避けようともせず正面からモロに直撃、船体を真っ二つに折って瞬く間に数隻が轟沈した。
原「敵戦艦に命中、いずれも轟沈のようです」
大石「主砲の威力と朝田君の腕によるものか…」
アスナ「しののん凄い!」
キリト「流石だぜシノン」
賞賛の声を浴びて彼女も嬉しいのか口角を上げて得意げに応える。
シノン「まぁこのくらい朝飯前よ」
ユージオ「また来る!」
爆炎の中からククルカン級やカラクルム級が彼方此方に緑色の光線を撒き散らしながら突進してくる様子か目の前に広がっていた。
アリス「仲間が目の前でやられたというのに…⁉︎」
リズ「アイツらどうかしてるわ……」
更にその周囲には無数の『甲殻攻撃機デスバテーター』が飛び出していた。
キリト「くっ!艦首魚雷発射ぁ!」
指示に合わせて艦首に備えられた八門の魚雷発射管から連続して魚雷が発射されていく。発射された魚雷はデスバテーターとすれ違い後方のククルカン級・カラクルム級に命中し爆ぜた。
キリト「シノン!主砲三式弾!合図でいけるか⁉︎」
シノン「任せてちょうだい、私を誰だと思ってるの」
前部二基の砲塔内では弾火薬庫から揚弾された三式弾が装填され、艦橋のシノンの元では目視で照準を合わせていた。
キリト「今だ‼︎」
シノン「堕ちなさいっ‼︎」
合図と共に撃ち出された三式弾はデスバテーター群の目の前で炸裂すると爆心部にいた敵機は光の津波に飲み込まれ、後方に居た敵には破片が炸裂し次々に撃破してみせた。
大石「お見事た、桐ヶ谷君」
キリト「…いえ、咄嗟の判断ですよ……」
内心嬉しいものなのだが敢えて照れ臭い様子でキリトは応えた。
周囲をスタンドグラスのような壁に囲まれ、部屋の中央に聳える柱に一人の男が立っていた。男の肌はガトランティス人特有の緑色をしており、髪は老人のように白髪であったが肉体はそれに反して筋肉質、黒を気色としたスーツと黒マント(内側は赤)、白の靴、白の手袋を着用していた。
男は何かを察したのか突然目を開いた。
「……ほぅ」
キリト「あれ……?」
気がつくと彼は見覚えのない場所に居た。
自分は先程まで日本武尊の艦橋で戦闘に参加していた筈が、いつのまにかそことはまるで違う別の場所に居た。
足元は灰色で周囲は上に行けば行くほど黒へと移り変わるようにグラデーションになっているが、それ以外は何もない空間だった。
キリト「ここは……?」
辺りを見回していると背後にから突然声がした。
「生まれ行く星も有れば、死んでゆく星もある。そうだ、宇宙は生きているのだ……生きて……生きて。だから……愛が必要なのだ」
キリト「⁉︎」
振り返った先にはガトランティス人と思われる男が1人立っていた。
キリト「お前は……何者だ……?」
「…… 我が名はズォーダー。愛を知る者だ。この宇宙の誰よりも深く、愛を。」
キリト「愛を知る者……?」
ズォーダー「そうだ……」
ズォーダーはそのまま彼に語り続ける。
ズォーダー「かつて私の父はこう言った。”愛が必要だ”、と」
キリト「…?」
ズォーダー「破壊、革命、戦争。どの文明も必ずこうなる。そしてこの無益な繰り返しの末に、決定的な過ちを犯して自滅する。笑うしかあるまい。国のため、家族のため、信念のため。愛ゆえに奪い合い、殺し合う人間たちの無残は見るに耐えない。我らの真実の愛に包まれてこそ、人間は真の幸福と安寧を得られる」
キリト「……つまりお前は、“愛"が全てを破壊する……そう言いたいのか…?」
ズォーダー「そうだ。この宇宙から根こそぎ苦痛を取り除く、大いなる愛が。そうは思わんか小僧?」
キリト「さぁな…だが俺は愛する人を失う悲しみを知っている。確かに愛が歪んだ正義を生む事もあるかもしれない…」
ズォーダー「……」
キリト「だが愛は力にもなる」
ズォーダー「……本当にそうか…?」
キリト「っ⁉︎」
ズォーダー「人間… オスとメスが愛を育まねば繁殖もできない不合理な生き物。奪い、憎み、殺し合う。この宇宙の調和を乱す、ヒトという混沌」
キリト「……そういうお前は違うってのか…?」
ズォーダー「我らはガトランティス。作られし命。戦いのために作られた人の似姿。もっとも、我らを創造した文明は既にない。ガトランティスと我らを呼び、蔑んだ者たちは一人残らず死に絶えた」
キリト「なっ⁉︎」
ズォーダー「我らはいち個体としては生殖能力を持たない。故に愛というしがらみから自由でいられる。ガトランティスこそが、この宇宙に真実の調和をもたらす。我が意のままに」
キリト「…そんなの自分勝手な…‼︎」
ズォーダー「自分勝手?哀れな。感情と言う毒に侵され、道に迷いし者。愛の何たるかも知らず」
キリト「確かに何を持って愛かって言うのを定義するのはできないな……だがお前のそれはエゴだ!」
ズォーダー「…果たしてそうかな?」
彼はそう言うと自身の背後にある人物の顔を浮かび上がらせた。
キリト「古代さん……⁈」
ズォーダー「愛ゆえに人は死に、星は壊れ、宇宙は滅びる。そう。この男の艦もしてきたことだ。古代進。この男はこれまでに多くの大事なものを失ってきた。だから人一倍恐れている。愛する者が、死にゆくことを」
キリト「⁉︎ どういうことだ‼︎」
ズォーダー「地球の避難民を乗せたガミラスの艦、その全てに、屍より作りし蘇生体を潜り込ませた。この体も蘇生体。ガトランティスの兵士と同様、自らを炎に変えることができる」
キリト「⁉︎」
ズォーダー「一隻だけ助けてやる。その一隻奴が選ぶ。選ばねば、三隻とも機関を失い、惑星の崩壊と運命を共にする事になる。あの男の信じる愛に従ってな」
キリト「っ‼︎」
ズォーダー「っくくくハーッハハハw」
悔しがるキリトを目の前にズォーダーは高笑いしながらその場から消えていく。
そして気がつけば彼はいつもの艦橋の席に座っており、さっきの場所に来る前の様子だった。
キリト「さっきのは…?」
唖然とするキリトを見て隣で舵を取るユージオが声をかける。
ユージオ「……キリト?」
キリト「…え…あっ!なんだ、ユージオ?」
ユージオ「どうしたんだい、ぼーっとして」
キリト「あいや、考え事を……」
ユージオ「頼むよ?」
いつも通りに振る舞おうとするが、彼の頭の中はズォーダーの言った事で頭がいっぱいだった。
キリト(奴の言う通りなら……古代さんは……)
それからしばらくして戦闘が終わり、避難民を収容したデストリア級が飛び立つ。
それと同時にシュトラバーゼが重力崩壊を起こし始めた事が判明する。
大石「各艦直ちに離脱!」
アスナ「…あれは⁉︎」
大石が命じたのと同時にアスナが何か見つけたようにメインパネルに映し出す。
そこにはデストリア級を追尾する百式艦偵が映し出され、コックピットには古代の姿があった。
富森「古代戦術長⁉︎」
原「何をしているんだ⁈」
キリト「古代さんっ!」
古代の乗る百式艦偵が一隻に近づいていく様子に一同が訝しむ中真相を知るキリトは焦っていた。
キリト(駄目だ……駄目だ古代さん!)
次の瞬間、不安視する彼や一同の予想を遥かに超える事態が起こる。
キリトはふと古代が近づいていくデストリア級に目をやると甲板上に人影を見つける。
キリト「人が⁉︎……アスナ!」
アスナ「うん!」
彼女も同時に見つけたのかその部分を拡大投影する。
シリカ「女の人⁉︎」
原「あれは……」
大石「森船務長…⁈」
ユージオ「さっきから一体何が…⁈」
すると何かを悟ったような表情の彼女が甲板から飛び降りた。
「「⁉︎」」
古代「雪ぃぃぃぃぃ‼︎」
目の前で飛び降りた彼女を追いかけて古代はシュトラバーゼへと急降下していった。
キリト「古代さん‼︎」
思わず立ち上がってしまったキリトは彼らを目で追って探した。
大石(何がどうなってるかわからんが……このままでは…!)
惑星の崩壊が迫る中、大石はある決断を下す。
大石「桐ヶ谷君、波動砲を使うぞ」
キリト「‼︎」
アスナ「波動…砲?」
キリト「でも大石さん、まだ古代さん達が!」
大石「問題ない、もし真田技師長の説明通り惑星自体が隣接次元へと引きずり込まれるように転移しているなら、波動砲で膨大な質量を投入して、転移の許容値を超えさせることで質量転移を止める」
キリト「…そうか!」
シリカ「えっと……つまりどういうことですか?」
富森「説明している暇はありません。ともかく今はシュトラバーゼの崩壊を止める事が最優先です!」
日本武尊は反転して艦首を崩壊しようとしているシュトラバーゼへと向ける。
リーファ「あの…波動砲って?」
原「地球軍の艦の艦首に穴があるだろう?それが波動砲の発射口、そしてそこから放たれる波動エネルギーは通常の天体なら丸ごと消し飛ばす事ができる代物さ」
アリス「星を…丸ごと⁉︎」
大石「波動砲発射準備!ユージオ君、操艦を桐ヶ谷君に」
ユージオ「は、はい!渡すよキリト」
キリト「あぁ受け取った!」
大石「波動砲への回路開け」
富森「回路開きます。非常弁全閉鎖、強制注入機作動!」
大石「安全装置解除」
キリト「安全装置解除、強制注入機作動を確認、最終セーフティ解除」
艦首発射室内にある最終安全装置が解除され準備が整う。
キリト「ターゲットスコープ、オープン」
窓際の台の中から持ち上げるように展開してスコープが表示される。
原「朝田君」
シノン「あっはい!タキオン粒子圧力上昇、薬室内圧力一杯。86…97…100……エネルギー充填120%!」
キリト「波動砲発射用意!総員耐ショック・耐閃光防御!」
一同は事前に渡されたゴーグルを付けて座席ベルトが締めれているを確認する。
キリト「電影クロスゲージ明度20!」
大石「発射10秒前。10…9…8…7…6…5…4…3…2…1!」
キリト「波動砲…発射ぁぁ‼︎」
トリガーを引いて放たれた閃光がシュトラバーゼのコアへと直撃し、転移していた星のエネルギーに変わり波動エネルギーが流れ込んだ事により星の崩壊は免れた。
シュトラバーゼから経った一同はキリトから事の顛末を聞く。
それを受けて大石はヤマトを3隻の護衛に回す代わりに日本武尊がテレザートへと向かう事を提案した。
古代「長官が自ら…⁉︎」
大石「不服か?」
古代「いえ…ですが、この任は本来自分達の役目です。それを長官にやっていただくのは……」
キリト「古代さん。気持ちは分からなくはありませんけど、俺からもお願いできませんか?」
古代「和人君……」
後輩からの一言に古代も迷ったが直ぐに返答した。
古代「……分かりました。ではテレザートの方はお願いします」
大石「任された」
古代「…実は、テレザートには和人君は絶対に行かなきゃだめな気がするんです…」
キリト「?」
大石「どういうことかね?」
古代「自分にもよく分かりません……ですが、そんな気がするんです」
古代の謎めいたこの一言は果たして何に繋がるのか……
シュトラバーゼでの危機を脱し、ヤマトの代わりにテレザートへと向かった大石・キリト一行。
その他で待つテレサが言うことは一体?
次回:第4話 天命・導かれし者達