Re.蒼碧の艦隊3199 〜黒の剣士よ永遠に〜 作:短号司令官
開けましておめでとう御座います。
本年度も皆様どうぞ宜しくお願いします。
プロローグ
西暦2201年 日本
富士演習場 深夜
静寂に包まれた演習場、明日ここではクローン兵団による大規模な模擬戦が予定されている。
突然、空に稲妻が走ったかと思うと黒い小さな渦が現れ、そこから一人の青年が落下してきた。
気を失っていたのか彼は目を開いて自分が置かれた状況を慌てたように理解して受け身の態勢を取る。
高さはそうでも無かったからか地面に落下しても重症を負うようなことは無かったが衝撃で弾み転がった。
「うっ……」
痛みで朦朧とする意識の中、一緒に落ちた黒色の剣を握って立とうとするも上手く力が入らない。
「……アス……ナ……」
そこで力尽きたのか彼は再び意識を閉ざす。
翌日
青空の下繰り広げられる模擬戦はまさに実戦さながらであった。
ATTEが地面を踏み締め前進し、その周囲を純白のアーマーに身を包んだトルーパー達が我先にと駆け出していく。
一方で防衛側もキャノン砲や迫撃砲などで突撃兵を返り討ちにするが、ATTEの砲撃で陣地ごと逆に吹っ飛ばされた。
レックス「怯むな!前進するぞ‼︎」
部隊の先頭に立ってそう声を荒げて言うのは第501軍団指揮官のキャプテン・レックスであった。
レックス「おい、アポー!まだ突破できないのか⁉︎」
彼は同隊のメンバーであるアポーに聞く。
アポー「防衛陣が隙間なく配置されてるからな、幾らウォーカーがあるとはいえ簡単には行きそうにない!」
レックス「となると…こっちもそれ相応の被害は覚悟か……流石だコーディ…!」
レックスは対する防衛側の第7空挺兵団の指揮官であり親友のコーディのことを思い浮かべる。
ジェシー「コマンダー、このままここで攻勢のまま行きますか⁉︎」
レックス「……いや、332中隊を集めてくれ。回り込んで一気にカタをつける!」
ジェシー「イエッサー!」
ここでレックスは本隊を囮にここに留め、一個中隊で背後から奇襲を仕掛けようと動いた。
部隊を集めると相手側に悟られぬよう細心の注意をはらいながら動く。
後方まで回り込むと、さらにそこから分隊毎に分けて更に接近を試みる。
叢を掻き分けて進むレックス一同はいずれも曲者揃いだった。
ハードケース「まさかコマンダーコーディも、自分らの背後から奇襲を受けるなんて思ってもないでしょうね」
ファイヴス「集中しろハードケース。コマンダー達ならもう気づいてるかもしれないぞ」
タップ「まさか…」
レックス「あぁ、コーディならあり得るな。だが今回は流石に俺の勝ちだ」
しばらく叢の中を進んで開けた場所に出ると人が倒れているのを発見した。
レックス「あれは……⁉︎」
急いで駆け寄ってその人物を抱き起こして声をかける。
ファイヴス「おい、おい坊主、大丈夫か⁉︎」
声を掛けても起きる様子は無い。
同伴していたキックスが脈を測って生存の有無を確認する。
キックス「大丈夫です、どうやら彼は意識を失っているだけのようです」
レックス「そうか、よかった…」
タップ「だとしてもなんでこんなところに人が…?」
ハードケース「それにこの格好……コスプレってやつか?」
見てみると黒を基調としつつ所々白や金色の装飾が施されたコート・ズボンを見に纏っており、右手には剣を握っていた。
やや童顔じみていおり、細いような気もするが体格はしっかりとしている為直ぐに男性だと分かった。
ファイヴス「どうしますか?」
目の前のレックスに問いかける。
レックス「……模擬戦は中止、この坊主を保護する」
程なくして模擬戦は中止となり、身元不明の青年は富士宇宙軍港内の病院へと搬送された。
富士宇宙軍港
日本宇宙海軍の保有する軍港の中で最も有名な三大軍港の一つである、『富士宇宙軍港』。
艦艇の設計・開発から建造までもが可能で、隣接する時間断層工廠の影響もあり日々活況を呈している。
施設内には様々な施設がある。兵舎や司令施設はもちろん、専門の商業施設や娯楽施設、隊員らの親族らが住む住宅まで設けられている。
そんな中でもこの『富士軍港病院』は軍民問わず診察・治療を受けることが可能だが、この病院にはもう一つの秘密がある。
それはかつてここに存在した『ウルトラ警備隊基地』が地下にあると言う点であり、宇宙から帰還した際に対応不可能な症状にもここの地下でなら対応可能というわけである。
また未知の物質などの解析や調査ということも容易だ。
「おかしい?」
そうぎもを投げかけたのは旭日艦隊司令の大石蔵良であった。
レックス「はい」
大石「というとどうおかしいんだキャップ?」
レックス「提督もご存知のように我々は当初彼を演習場に無断侵入したバカだと思ってました。ですが彼の所持品を調べてみるとあり得ない結果が……」
通路の先にある分析室に入ると、ガラス越しから例の青年が持っていた剣が台座に置かれて、幾つかの配線が接続された状態にあった。
大石「おかしいというのは、この剣がか?」
レックス「はい、普通なら剣は何かしらの金属で精錬・加工されているのが当たり前なのですが……」
大石「が……どうした?」
すると彼は徐にタッチパネルを操作して調べられた剣についてのデータを表示した。
大石「これは……成分分析図か?」
レックス「はい、ここをよくご覧下さい」
指指した部分を見て大石はある疑問を抱いた。
大石「セルロースに……リグリン…?」
レックス「本来なら検出されるはずのない成分なのです…」
大石「……木刀……ということは?」
レックス「そう思って実験に用いたのですが、悉く切断しました…」
ここに来てようやく大石も事の異常性を感じた。
大石「ではつまり……この剣は、かなりの技術で制作された……ということか?」
レックス「我々の住む地球上何処を探しても、このような技術は存在しません……」
視線を再び剣へとやった大石の胸中には言い知れぬ何かが蠢いていた。
彼は懐かしい夢を見ていた。
自身が愛し、愛してくれた家族 背中を預けた相棒 苦楽を共にした仲間達 唯一無二の親友と幼馴染
彼らと共に自身は強大ない闇に戦いを挑もうとしていた。
戦いは終始拮抗していたが、時間が経つにつれて体力を奪われていく。
そして次の瞬間、闇は漆黒の渦を作り出した。
皆を守ろうとして彼は本能的に走り出し一太刀を浴びせようとしたが、術中に嵌った彼はその渦に飲み込まれていく。
飲み込まれる中、彼女が名前を呼んだ。
キリトくん‼︎
そして自身を彼女の名前を呼んで手を伸ばす
アスナ‼︎
互いに手を伸ばして一度は掴んだ。しかし飲み込みは止まらず彼はそのまま手を離してしまった。
そこからは闇に飲まれたように目の前が暗くなっていった。
「アス……ナ……」
そう呟いて目を開ける。
しかし目の前には見知らぬ天井が見えていた。
「……ここ……は……?」
青年:桐ヶ谷 和人は再び目を開いた。