Re.蒼碧の艦隊3199 〜黒の剣士よ永遠に〜 作:短号司令官
しかしその余波は確実に地球側にも及ぼうとしていた。
episode.1 第8艦隊事件
地球連合の勢力はガルマン帝国の活躍によって変わってくると言っても過言ではない。
幾ら強大な帝国といえど、その力には限界がある。その為持て余している植民惑星の幾つかは地球側に譲渡するケースも存在し、それを地球側は自分らの領土として植民活動・鉱物資源の採取に努めていた。
以前のようであれば護衛が無くとも安全に資源の輸送ができていたが、近頃はボラー連邦の活動範囲も広がっているとのことから地球連合も一介を案じて護衛をつけるようにした。
西暦2208年
銀河系 中心部 スカラゲック海峡星雲
米輸送船団30隻を護衛していたのはモルガン提督麾下の第8艦隊であった。
編成は
モンタナ級戦艦:ネブラスカ
スペリオール級戦闘空母:サクラメント・オースチン
護衛戦闘空母:ジャクソンビル
重巡3隻
軽巡3隻
駆逐艦12隻
その他補助艦艇多数
ネブラスカ
モルガン「全く…何故我々がこうも銀河系の中心部にまで出張って護衛などせねばならんのだ…」
「しかし 提督、輸送船団の護衛もれっきとした任務では…」
モルガン「そんなことは分かっておるわい‼︎」
自身は防衛の任務の方が性に合っているとモルガンは思っているが、確かに資源輸送の護衛も重要である。ただどうしても気に食わないのだ。
護衛であれば一個機動艦隊を出す必要もないだろうと思っていたが、つい先月に『機動艦隊による護衛が欲しい』と要望を受け、合衆国政府は第8艦隊を派遣したのだ。
今のところ大したことは起きていないが、モルガン自身も用心しており、
ここまで到達するのに通常なら2日のところを、4日半もかけてスカラゲック海峡に差し掛かっていた。
提督の用心深さは軍人としては一種の美徳のようなものであったが、この場合では最悪のケースを産む事になる。
群がる小惑星群の中から、芋虫のような形状で有名なボラー連邦の艦隊がモルガン艦隊を見張っていた。
「ハーキンス司令、地球軍の艦隊です」
レーダー員の報告を聞いた艦隊司令のレル・ハーキンス中将は命令を出す
ハーキンス「予定通りだ。全艦攻撃開始!」
クロトガ型・アマンガ型の船体から隠顕式陽電子砲が展開、照準を第8艦隊に合わせると、砲口から薄緑色の光線が発射される。
攻撃を受けたのは船団の左舷に展開していた味方駆逐艦隊であり、突然の奇襲に何の対処もできず あっという間に3隻が撃沈された。
モルガン「な 何事だ⁉︎」
前方で爆発する駆逐艦を見てモルガンは唸り声を上げる。
「駆逐艦隊から入電!ボラー連邦艦隊と思われる敵からの奇襲です‼︎」
モルガン「ボ…ボラー連邦だとぉ⁉︎」
一番起きて欲しくない事態が起きた事にモルガンは絶句するが、気を持ち直す。
モルガン「敵の数は⁉︎」
「ひゃ……120隻…⁉︎」
「なんだとッ⁉︎」
領土がガルマン帝国の1.5倍あるだけはあるのか、流石の物量である。
モルガン「お…応戦だ!各艦、各個に撃ち方始め‼︎輸送船団は長距離ワープに入れ!ここからなら太陽系にまで充分届くはずだ‼︎」
遅れながらも艦隊は進路をボラー連邦艦隊に向けて応戦を開始、その隙に命令を受けた船団は数隻が被弾しながらも1隻の欠落も無く全艦がワープに入る事に成功した。
だがモルガン艦隊は行動に出たのが遅すぎた。
幾ら強力な兵装を搭載したモンタナ級やスペリオール級といえども、120隻の艦隊の前には多勢に無勢であったようで、応戦命令下令から訳1時間半後、モルガン提督座乗のネブラスカ・サクラメント・オースチン等の主力艦は壊滅、戦線離脱に成功したのは被弾した護衛空母ジャクソンビルと駆逐艦4隻だけであった。
地球圏 月面米宇宙海軍基地
「……以上が報告になります」
ウィルター・ニミッツ太陽系艦隊司令長官は、帰還したジャクソンビルの艦長からの報告を受けていた。
ニミッツ「…そうか、ご苦労だった。艦と乗組員そして君の傷をゆっくりと癒すと言い」
「はッ…!ありがとうございます…」
部屋に一人となったニミッツは腕を組んで考え込む。
しばらくしてデスクの電話をとって幕僚らを集めた。
ニミッツ「先の第8艦隊壊滅の報についてだが、何か分かったか?」
「はい、昨日周辺を航行中だった。独戦艦ビスマルク二世が残骸とネブラスカのフライトレコーダーを回収。残骸からはボラー連邦の兵器に使われるボラーニウムが検出されました」
「フライトレコーダーに記録されたレーダーの履歴を見てもボラー連邦で間違いありません」
ニミッツ「……これでボラー連邦が我が地球連合に敵対的であるのは分かった。だが政治的な面も大きい。すぐに大統領に伝えるんだ」
「「ハッ‼︎」」
報告を受けた合衆国大統領トルーマン大統領は、すぐに他国に発信し後日連合総会にて議題として取り上げられた。
ボラー連邦自体から明確な言及はなかったものの、ガルマン帝国を通じて裏が取れたこともあり「ボラー連邦による利敵行為」であると結論が下され、事務総長である大高弥三郎は直ちに対策を各国で取るように命令した。
日本 東京都
首相官邸
大高「やはり避けられぬ運命のようでしたな…」
自室にて、大高は毎度のように高野五十六と面を向かって話していた。
高野「以前から領海侵犯自体は頻繁に起こっておりましたが、何故このような思い切った行動に出たのでしょうか?」
大高「私の推測だがな総長。ガルマン帝国の領土はマゼラン方面にもあるでしょう?」
高野「ガミラス帝国時代の植民惑星があの辺りにはまだ残っておりますな」
大高「私が見るに、ボラー連邦はそのマゼラン方面の領土から産出された資源がここ太陽系を経由してガルマン帝国に運びこまれていると考え、本格的な攻勢を我々に対して行う前に」
高野「我々の実力を図る為、米第8艦隊を血祭りに上げた……と」
大高「…まぁ私の推測にすぎんがな」
高野「いえ、充分にあり得ます」
大高「それでだ総長、我々はどのような対策を講じるつもりなので?」
高野「私としては、主力艦隊による護衛・航路の頻繁な変更。この二つでいこうかと考えております」
大高「具体的にはどうするのかね?」
高野「艦隊護衛はまだ詳細を詰める必要がありますが、航路については、最低でも一週間毎に航路を変更、一度使用した航路の使用は原則禁止とし、やむを得ない場合はガルマン帝国領内もしくはガルマン艦隊が行動している付近を航行すること……と」
大高「なるほど、万一の場合はデスラー総統の力を借りる必要がある訳だな。分かった、私の方からホットラインを入れておこう」
高野「頼みます」
遂にボラー連邦の魔の手が忍び寄る。
果たして地球はどうなっていくのか……?
次回 episode.2 冥王星沖海戦