Re.蒼碧の艦隊3199 〜黒の剣士よ永遠に〜   作:短号司令官

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西暦2201年
UWより転移してきた桐ヶ谷和人は日本宇宙海軍への入隊を決意した。
しかしそれは、彼の過酷な人生の幕開けに過ぎなかった。



第二話 樹海に消えるのは誰か 前編

 

西暦2202年 11月30日

 

富士宇宙港からは珍しく多数の艦艇が発進していた。

それは近く行われる『ガミラス第8浮遊大陸奪還作戦』の為のものであった。

日本からはヤマト・ムサシ・シナノ・キイ・オワリ等のヤマト型及び超ヤマト型戦艦に長門型・金剛型といった主力艦の一部が参加する流れになっていた。

 

大石「初っ端からヤマトを送り出すとはな……」

 

長官室から出撃する艦隊を見送りながら大石は言う。

 

原「紺碧会での見解が正しければ、カラクルム級が一隻逃れるという事態になると見越し…それを防ぐ為の手立てでもあると思います」

 

大石「だとしても少々過剰な気もしなくはないが……」

 

なんとも言えない気持ちであるが、作戦が間近に迫っているとあっては変更はできない。

 

大石「ところで桐ヶ谷君は?」

 

原「彼なら訓練場ですよ。またいつもの()()をやってます」

 

大石「ほぉ…懲りんな彼も」

 

それを聞いた大石はキリトのいる訓練場へと足を運ぶ。

 

 

訓練場

 

訓練場に着くと直ぐにその光景場目に入った。

7〜8人程度のトルーパーがキリトを円状に取り囲み、彼に向かってスタンビームを次々に放ち彼はそれらを『夜空の剣』『ダークセイバー』の二刀流で捌き、時には躱す。

 

この訓練はレックスが提案したもので、彼が仕えていたある人物に対してやっていたものであるらしい。その人物も二刀流でキリト自身も二刀流ということが始まりで、最初の内は捌く事はできていたが躱すことはできずよくスタンビームに当たってダウンしてしまうこともあった。

 

しかし現在では大石に剣道や柔道、空手に柔術や合気道、果てはテコンドーやムエタイまで仕込まれたせいもあってか10回に1回当たるかどうかという確率にまで仕上がっている。

 

その様子を大石は満足そうに見ていた。

 

原「自分なら初撃を躱すこともできそうにありません…」

 

大石「彼が如何に熾烈な道を歩んで来たかよく分かるよ」

 

無駄の無い洗練された動きで躱すが彼がレックスに背中を向けたその瞬間、レックスは瞬時にホルスターからDC-17を引き抜きビームを放つ。

一瞬反応が遅れたかに見えたが身体を回転させながら二つの刃でそれを見事に四散させた。

 

レックス「状況終了」

 

彼がそう言い終えるとキリトはその場に座り込んだ。

 

キリト「あ〜〜疲れた……レックス、これ何セット目だっけ…?」

 

レックス「丁度5セット目だ」

 

キリト「そっか……じゃあ今日の分はやった訳か……」

 

レックス「あぁお疲れさん」

 

キリト「おつかれ…最後の脇がつるかと思った……」

 

頃合いを見て大石は二人の元に歩み寄る。

 

大石「ご苦労キャップ、それに桐ヶ谷君」

 

レックス「お疲れ様です。提督」

 

キリト「あ、どうも大石さん」

 

大石「日々の鍛錬を怠らず、よく続けてる。感心したよ」

 

キリト「別に、大したことじゃありませんよ。逆に鈍っていくのは嫌なんです」

 

大石「それもそうだな」

 

トレーニングを終えた後、身支度を軽く済ませてキリトは要件を聞く。

 

キリト「それで何か?」

 

大石「うむ、技術局からの返答だ。"流石"だと」

 

キリト「それって……」

 

原「君の提案した"ハイパーチャージャー"についてだよ」

 

大石「真田技師長も唸っておったよ。現に時間断層内で研究が既に進められている」

 

キリト「えぇ⁉︎マ…マジですか……」

 

彼は前世に於いて現実ではエンジニアを目指しており、それに関する物も幾つか開発している。

そんな彼がこの世界の中枢とも言うべき波動エネルギーに関する技術に興味を抱かない訳がない。流石に分野も若干異なる為それ相応の知識は身につけたが、一年近くでその殆どを理解したと言っても過言ではない。

 

キリト(ほんの出来心で出力したアレが実用化されるなんて……)

 

本人も内心この驚きようである。

 

大石「実戦配備はまだ先になるだろうが、時間断層があるなら来年…遅くても再来年には可能だと」

 

キリト「でも…本当にそれが必要な時が来るんですか…?」

 

大石「……」

 

レックス「来るさ…」

 

大石の代わりに言葉を繋いだのはレックスだった。

 

レックス「敵は俺たちの意見なんざお構い無しに来るさ、相手がなんであれな……」

 

大石「…キャプテンの言う通りだな……我々がどう考えようと、それが敵の耳に届くなんてことは余程の事がない限りはない…世界とは、そう酷いものさ……」

 

キリト「……」

 

軍人としての道を歩むと決めたからにはそんな事は分かっているつもりだった。だが先のような思い通りにいかないことばかりである事を彼も改めて理解したのだった。

 

 


 

 

青木ヶ原

 

宇宙港からそう遠くない場所に位置するここは過去も現在も変わらず観光地として有名であるが、このような噂も経っている。

 

樹海から抜け出せない

 

神隠しに合う

 

幽霊が出る

 

など典型的で当たり障りのない噂ばかりだが、最近だがこんな噂も立っている。

 

異世界と繋がっている

 

という噂も度々……

 

 

12月1日 午後8時

 

大石「これがそうだというのか?」

 

レックス「はい、ホークが言うには」

 

大石とレックスは軍港内の施設にて、先日近辺を飛行中だったパイロットのホークが捉えた飛行写真を見ていた。

そこに写っていたのは過去にキリトがこの世界へとやってきた時と同じ黒い渦であった。

 

レックス「周辺で観測された磁気の乱れ等もキリトがやって来た時のものと非常によく似ています」

 

大石「むぅ……」

 

大石は画面を見ながら顎に手を当てて考える。

 

レックス「提督、もしかしたらキリトと同じようなヤツが周辺にいるかもしれません」

 

コーディ「だがもし彼の敵が来ていたら?」

 

レックス「だとしても、放っておくわけには……」

 

大石「コマンダーの言うことにも一理あるが、キャップの言い分も分かる。手取り早く確かめる必要がある、直ちに部隊を編成。ゴースト中隊及び332中隊の出撃を命ずる!」

 

「「サーイエッサー!」」

 

大石「それとキャップ、念の為だ。桐ヶ谷君も連れて行きたまえ」

 

レックス「初めからそのつもりですよ。言われなくとも」

 

大石「結構。だが万一ということもある、ハンター軍曹らにもこのことを伝えろ。彼らにも出てもらう」

 

コーディ「了解しました」

 

それから訳一時間後の午後9時、二個中隊を乗せたガンシップ10機が離陸し青木ヶ原樹海を目指す。

 

コーディ「いいか、今回の我々の目的は転移してきた人間の有無の確認だ。相手によっては戦闘も予想される、だが場所が場所だからな」

 

グレガー「つまりはキツい戦闘になる。重火器の携行は許可するが使い所を考えるように、自然環境の回復は容易じゃない。発砲の際は充分気をつけるよう心掛けてくれ」

 

「「サーイエッサー!」」

 

着陸と同時にハッチが開くと武装したトルーパー達が飛び出し、闇に包まれた樹海へと躊躇することなく入っていった。

 

捜索は分散して行われ、キリトはレックス・コーディと共に行動していた。

 

キリト「……」

 

到着直後からなんともいえないような表情で歩みを進めるキリトに対し二人が話しかける。

 

レックス「どうしたキリト、浮かない顔して」

 

キリト「……いやさ……状況が俺の来た時と似てるから、もしかしたら俺の仲間が来てたりしないかって思うけど……」

 

コーディ「……けど?」

 

キリト「違う奴が来てるかもしれないからさ……」

 

「「……」」

 

確かにここ一年、彼はこの世界での新たな関係を築くことはあったがその人物らが元いた世界のメンバーに成り替わるかと言ったらそうではない。来ていて欲しいと思う半面、そんな都合良くいく訳がないと半ば諦めているというわけであった。

 

コーディ「まぁ……そう思うのは自然だ。でもちょっとぐらい期待したっていいんだ」

 

レックス「もしかしたらお前が帰れる手掛かりがあるかもしれないしな」

 

キリト「……ありがとう、二人共」

 

励まされて表情も少し明るくなり、それを見て安心した二人は捜索を続ける。

しばらく捜索を続けていると例の渦が発生したポイントの近くにまで来た。

 

コーディ「場所としてはこの辺りだな」

 

キリト「ということはそろそろ何か出てきてもおかしくないってわけだな」

 

レックス「そうだな」

 

レックスはホルスターからブラスターを抜き、コーディは構える。

その直後、近くで声が聞こえてくる為3人は顔を見合わせてその声のする方へと向かう。

 

現場近くに到着すると、ファインダーを下げてレックスが様子を見る。

 

キリト「どうなってる?」

 

レックス「えぇと、待て……見えた、紅い鎧を着込んだ奴らが十数人と紫黒色の鎧を着たやつ数名が女を取り囲んでる」

 

キリト「⁉︎」

 

それを聞いたキリトはハッとしたような表情を見せた。

 

キリト「取り囲まれてる女性の特徴は………⁉︎」

 

レックス「あ?あーえっと…… 栗色の長髪と榛色の瞳で、白い髪飾りと真珠色のドレスとブレストプレートをつけてるってとこか」

 

それらを聞いたキリトは目を見開いて言葉を失っていた。

何故ならその特徴に合致する人物は彼が知る上ではたった一人だけ……

 

キリト「アスナ……」

 

すると彼は徐に立ち上がると背中の鞘から『夜空の剣』を抜き、左手に持った『ダークセイバー』を機動させる

 

コーディ「お、おいキリト?」

 

レックス「どうした急に……?」

 

キリト「………悪い、二人共」

 

そう言ったキリトは勢いをつけてその場から彼女の元へ目掛けて飛び出してしまった。

 

レックス「ちょ…おい⁉︎」

 

コーディ「どうしたんだ急に⁉︎」

 

レックス「もしかしたら、あの女がアイツに関係ある奴なのかもしれん。俺たちも行くぞ!」

 

 


 

 

アスナ(おかしい……どうなってるの……?)

 

彼女は先程から続く戦闘の中である違和感を感じていた。

敵一体一体は大したことないが、数が多いので《無制限地形操作》を使おうとしたがそれがうんともすんとも言わない。何度やってもだ。

 

その影響で相手側に反撃の猶予を与えてしまい彼女は若干追い詰められていた。

 

アスナ(どうしよう……このままじゃ……)

 

ジリジリと詰め寄られ彼女の心には焦りが生まれる。

 

アスナ(どうしよう……どうしたら………キリトくん……!)

 

一ヶ月前に消息不明となった彼の名前を思い浮かべて目を瞑ったせいで隙がうまれ、背後から襲い掛かろうとした暗黒騎士の攻撃に彼女は反応が遅れた。

 

アスナ「しまった…!」

 

もうダメだと思ったその瞬間だった。襲い掛かろうとした敵が突然、頭から真っ二つに切り裂かれてしまった。

 

アスナ「⁉︎」

 

一瞬何が起こったか分からなかったが、視線を上げた先に答えがあった。

 

アスナ「っ………‼︎」

 

そこにいたのは二度と会えないと思った彼の姿があった。

 

キリト「大丈夫か、アスナ」

 

アスナ「……キリトくん…!」

 

思わず手に持っていた神器を落としてその場に座り込んで涙ながらに彼の名前を呼ぶ。

それに呼応するように彼の目にも光るものが見えた。

 

しかしそんな二人の再会を知る由もない敵はキリトに襲い掛かろと背後から飛びかかるもその脳天を青白い光弾が撃ち抜く。

 

アスナ「⁈」

 

キリト「よっ」

 

レックス「自分から飛び出してて何が"よっ"だ」

 

コーディ「人の身にもなってみろ」

 

突然現れた白いアーマーに身を包んだ装甲服の二人を見てアスナは困惑した表情を浮かべる。

 

キリト「アスナ、悪いけど説明は後で。レックス!」

 

レックス「なんだ?」

 

キリト「俺が突っ込むから、後ろは頼む」

 

レックス「なんか今日はえらく酷使するな、まぁいいぜ。俺達も久しぶりにひと暴れできそうだしな」

 

コーディ「お嬢さんは俺に任せな」

 

キリト「頼む!」

 

DC-17を構えたレックスを背後に、キリトは二刀流で臨戦態勢に入る。

 

キリト「準備は?」

 

レックス「とっくに出来てるよ」

 

キリト「フッ上等…!」

 

キリトが先陣を切って勢いよく駆け出すとレックスもそれに遅れて続く。出遅れた相手側は数で押し切ろうとするも程よい距離が取れたレックスがブラスターを放ち次々に倒し、そこへ勢いよく切り込んだキリトであったが、二刀流のソードスキルも去ることながら『ダークセイバー』の圧倒的な切断性は敵の鎧をも切り裂き、切断面を焼き焦がす。

 

更にこの一年で彼の反射神経は以前の三倍以上にも強化されている為、ほぼ先読みのような感じで敵の攻撃を躱したり受け流すなどして圧倒的な実力差を見せつけていた。

 

アスナ「す……凄い………」

 

以前にも増して凄まじい戦いぶりを見せる彼にアスナも感嘆の声を漏らす一方で…

 

コーディ「………」

 

コーディは敵中で戦うキリトの様子を見てある人物の影が重なって見えた。

 

その人物とは自身もそれなりに関わりがあった為覚えている。破天荒な性格は自分の仕えた人を悩ませることもあったが、却ってそれがプラスな面に働くこともあった。

前線でレックスと行動を常としておりその実力も指折であった、二刀流ではなかったが彼もかなり強かった。

 

コーディ「スカイウォーカー将軍……」

 

 

程なくして一人残らず駆逐し終えた二人が戻ってくる。

戻ってくるキリトに対してアスナは涙を流しながら彼の胸へと飛び込んだ。

 

アスナ「本当に……本当にキリトくんなんだね……?」

 

キリト「……俺じゃなかったら誰だって言うんだよ、アスナ…」

 

アスナ「……また会えたね……キリトくん…!」

 

キリト「あぁ……」

 

二人は互いを確かめ合うかのように熱い抱擁を交わす。

一方で……

 

レックス「あぁー……」

 

コーディ「これは……なんとも……」

 

この場合どうした良いか知る由もない両者は対応に困っていた。

するとそこでカップルは気づいたようで二人に視線を向ける。

 

アスナ「えっと……キリトくん、あの人達は…?」

 

キリト「あぁゴメン。二人共、ちょっとこっち来てくれ」

 

呼ばれた両者は一度顔を見合わせて頷くとキリトの元へと歩み寄る。

 

キリト「紹介するよ。彼女はアスナ、俺の大事なパートナーだ。アスナ、レックスとコーディだ」

 

レックス「どうも、お嬢さん」

 

コーディ「コマンダーコーディです。自分のことはコーディで結構です」

 

アスナ「ど…どうも」

 

レックス「早速だが、キリト。このお嬢さんはお前の仲間ってことでいいんだな?」

 

キリト「あぁその通りだ。色々聞きたいだろうけど、アスナ」

 

アスナ「何?」

 

キリト「なんでここに…?」

 

アスナ「…あんまり長く話せないけど、掻い摘んでキリトくんがいなくなった後から話すね。キリトくんがガブリエルの能力で行方不明になった後、私達はなんとか倒すことが出来たの。それで異界戦争も収束出来たと思ったんだけど……」

 

キリト「けど…?」

 

アスナ「まだ講和に納得してない人達も居て、それが人界やダークテリトリーにいたの。だからここ一ヶ月私達はその処理に追われてたの、そんな時に残党の一部が不審な動きをしてるって話を聞いてアリスさんやユージオくん、他の皆と対応に来たら」

 

コーディ「敵の能力でここに飛ばされて来た…と?」

 

アスナ「はい」

 

キリト「…アスナ、さっき()()()って言ったか?」

 

アスナ「え?うん、どうかしたの…?」

 

それを聞いた三人は顔を見合わせて言う。

 

レックス「お嬢さん、キリトがこの世界にやって来たのは一年前のことだ」

 

アスナ「…え⁉︎」

 

コーディ「これは憶測だが…恐らくお嬢さんやキリトのいた世界とこの世界の時間の進み方はどうも異なるらしい…」

 

アスナ「そんな……」

 

なんと返したらいいか分からず困惑するアスナを落ち着かせようとキリトが話題を変える。

 

キリト「あぁえっと、それでこの世界には他に誰がいるんだ?」

 

アスナ「…えっあ、うん。私としののんとリーファちゃん、シリカちゃんにリズにユウキ、アリスさんとユージオくん、それにロニエさんにティーゼさん、あとユイちゃんとセルカちゃんも!」

 

レックス「お嬢さん込みで12人か……」

 

コーディ「大分大所帯で来なすったな……」

 

アスナ「でも皆バラバラの場所に落ちたみたいだから何処にいるか分からなくて……」

 

心配そうな表情を浮かべるアスナに対してキリトが声をかける。

 

キリト「大丈夫だよアスナ。皆、見つかるよ。それに俺達以外にも大勢来てる」

 

アスナ「でも、今みたいに敵も…」

 

そう言う彼女の肩にコーディが手を置く。

 

コーディ「心配御無用、今くらいの相手なら我々は余裕で対処できます」

 

レックス「うちのクローン達舐めんなよ?」

 

アスナ「は……はぁ…」

 

それを聞いたキリトは笑みを浮かべて二の句を続ける。

 

キリト「そう言う事だ。俺達も行こう」

 

アスナ「…うん!」

 

レックス「おぅ!」

 

コーディ「あぁ!」

 

アスナを加えた四人は再び夜の樹海へと再び飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

 





〜次回予告〜

仲間達の存在が明らかとなり、捜索を急ぐキリト。
一方その仲間達にはそれぞれ窮地に陥っていた、彼らの危機を救うのは誰か……⁈


次回:樹海に消えるのは誰か 後編
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