失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています   作:瓜生史郎

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12話

 ゲームを全クリした後、俺達はソファーに倒れこむ。

 

「やっと終わったぁ……」

「きつすぎでしょ……最終ステージのギミック……」

 

 そう言いながら、俺達は時計に目をやると、かなり遅い時間になっていること気付く。

 

「もうこんな時間!そろそろ帰らなきゃ……」

 

 慌てて凛華は、ソファから立ち上がり帰る準備を始める。

 

「あ、駅まで送るよ」

 

 凛華の申し出にそう返し、二人で部屋を出て、駅に向かって歩き始めた。

 

 夜風が心地よく吹く中、俺たちはさっきのゲームの話をしながら、自然なペースで歩いていく。ふと、駅に近づいたところで俺は足を止め、凛華に向き直る。

 

「あのさ……今日の晩ご飯、本当に美味しかった。ありがとう」

「どういたしまして。また作りに来てあげるから、そのときは楽しみにしててね」

 

 凛華がにこりと微笑む。その笑顔が、何だかいつもより柔らかく見えて、俺は少し胸が熱くなるのを感じた。

 

 あの味がこの先ずっと食べられるなんて、こんな幸せなことがあっていいのだろうか?

 

「私が来るまでに、絶対カップ麺とか、コンビニお弁当食べないでね?」

「わ、わかってるよ!」

「もし、食べてたってわかったら、どうなるか……わかってるよね?」

 

 怖い!怖い!

 

 目に輝きをなくしながら言う姿に俺は、震えあがってしまう。

 

「わ、わかったよ。ぜ、絶対に食べないから」

「あははは、冗談なのに和也君、震えすぎー」

 

 いやいや、絶対冗談じゃなかったよ?さっきの目は……。

 

 おそらく、先ほどの目のおかげでもう俺は二度とカップ麺やコンビニ弁当を食べられない体になってしまっただろう。おそるべしおひいさま……。

 

 その後、駅の改札前に着くと、凛華は俺の方を振り向く。

 

 「また、学校でね」

 「うん。またな」

 

 凛華が改札を通り抜け、振り返って軽く手を振る。その姿を見送りながら、俺は次に会うときのことを自然と期待している自分に気づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛華視点

 

 自宅のドアを閉め、靴を脱いだ瞬間、体中の力が抜けるようにほっとした。

 

 「ふぅ……」

 

 大きくため息をつきながら、胸に手を当てる。男の子の家に行くなんて、私にとって初めての経験だった。だから緊張しっぱなしだったし、今もまだ胸がドキドキしてる。

 

 リビングのソファに腰を下ろして、少し落ち着こうと目を閉じる。すると、今日の出来事が頭の中で鮮明に思い出される。

 

 和也君の優しい言葉。おいしいって言いながら私の料理を食べてくれる姿。

 

 そして、あのハプニング。勢い余って私を押し倒してしまったとき、彼が真っ赤な顔で必死に謝ってきたこと。

 

 「ほんと、あのときの和也君……可愛かったな」

 

 つい口に出してしまって、慌てて自分の頬を軽く叩いた。何を考えてるのよ、私。

 

 けれど、その1つ1つの出来事が頭に浮かぶたび、心がじんわりと温かくなる。

 

 「リアルでもゲームと同じくらい……優しいのね」

 

 そう呟いたとき、和也君の人柄を改めて再確認していた。彼はゲームの中だけじゃない。本当の彼も、とても素敵だって。

 

 和也君と過ごした時間、本当に楽しかった。

 

「また一緒に遊びたいな」

 

 ベッドへ横になりながら、自然と口にしてしまう。

 

 だけど……この気持ちは、ただの友情なの?

 

 そう思った瞬間、胸がちくりとした。

 

 和也君と次に会うのが待ち遠しい。この気持ちは、今まで誰にも抱いたことがない。

 

 でも、それが何なのかをはっきりと言葉にする勇気はまだない。

 

 ……とにかく、次に会ったときも楽しければ、それでいいよね。

 

 そう自分に言い聞かせて、私は目を閉じる。

 

 幸せな余韻に包まれながら、心の中で膨らんでいくこの感情の正体を考えつつ、眠りに落ちた。

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