失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています   作:瓜生史郎

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22話

凛華視点

 

 目を覚ました時、隣にあるはずのぬくもりが消えていることに気づいた。

 

「……和也君?」

 

 名前を呼んでみたけど、返事はない。薄い朝の光がカーテンの隙間から差し込んでいて、すでに朝だということを知らせてくれる。枕元の時計を確認すると、まだ早朝の時間だった。

 

「帰っちゃったんだ……」

 

 そう思い至ると同時に、昨日の出来事が一気に蘇ってきた。

 

 和也と一緒のベッドに入った自分。雷の音に怯えて、無意識に彼を抱きしめたこと。そして、彼の驚いた声と、渋々ながらも受け入れてくれたその温かさ……。

 

「~~っっ!」

 

 枕に顔を埋めて、心の中で絶叫する。思い出すだけで顔が熱くなる。

 

 な、なにやってるの、私……!

 

 布団を蹴り飛ばしながらベッドの上をゴロゴロ転がる。誰にも見られていないとはいえ、自分の行動が恥ずかしすぎて、どうにかなりそうだった。

 

 でも、和也君も……いやいや! 考えるな!

 

 思考を振り払おうとするけど、彼の困ったような顔や、優しく接してくれた声が頭から離れない。

 

 ようやく落ち着きを取り戻し、ベッドから起き上がる。鏡を見ると、顔が真っ赤に染まっていた。

 

「……学校でどうやって話しかけたらいいの……?」

 

 和也はどう思っているんだろう。昨日のことを覚えてるのか。それとも、何事もなかったかのように振る舞うのか。

 

 顔を両手で覆い、しばらくその場で悶える。だが、時間は待ってくれない。深呼吸をして心を落ち着けようとするが、どうしても胸の高鳴りが収まらない。

 

「と、とりあえず、学校行ってから考えよう……」

 

 そう自分に言い聞かせて、ゆっくりと準備を始める。だけど、胸の奥にある不安と期待が絡み合って、なんだか奇妙な気分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 朝の光が眩しい中、制服に着替えて家を出る。

 

 眠すぎる……。大きなあくびをひとつして、眠気を振り払いつつ学校へと向かった。

 

 学校に着くと、また生徒たちからの視線がいつもより鋭いことに気付く。昨日も少し感じていたけど、今日は特にその視線が刺さるようだ。

 

 心の中で疑問を抱えながら昇降口にたどり着く。靴を履き替えようと下駄箱を開けたその時、目の前に1人の男子生徒が現れる。

 

「おい、宮原!」

 

 呼び止められた俺は、驚いて顔を上げる。見ると、彼は明らかに怒りを露わにしていて、眉間に深い皺を寄せていた。

 

「な、なんだよ……いきなり……」

「お前、昨日おひいさまと一緒にデパートにいたって、本当なのか!」

「え……?」

 

 突然の男子生徒からの問いに、眠気が吹き飛んでしまう。

 

 マジか……。また見られてしまっていたのか……。

 

「しかも仲良さそうにデートしてたって噂、朝から広まってるんだぞ! お前みたいな奴がなんでおひいさまと!」

 

 男子生徒は激昂しながら詰め寄ってくる。

 

 くそ……。2回目だから流石に言い訳できないぞ……?どうする?

 

 そんな事を思っていると、何も言い返せない俺を助けるように、タイミングよく啓介が間に入ってきた。

 

「おいおい、落ち着けって!」

 

 啓介が素早く男子生徒の肩に手を置き、そのままぐっと引き寄せる。和也の前に立ちはだかるように間に入ると、低い声で続けた。

 

「こんな朝から騒いでたら、先生が飛んでくるぞ。それにさ、おひいさまが誰と一緒にいるかなんて、お前が気にしても仕方ないだろ? 和也だってお前に迷惑かけるようなことしてないし、まずは深呼吸でもして落ち着いてみろよ」

 

 その柔らかな声色と、相手を諭すような啓介の口調に、男子生徒はしばらく息を荒げていたものの、次第に肩の力を抜き、短く舌打ちをして「わかったよ」と小声で呟くと、そのまま足早に去っていった。

 

 流石、啓介。昔から口巧者と言われるだけはある。

 

「ったく、朝からなんだよ……」

「ありがとう、啓介……。助かったよ……」

 

 ほっと一息をつきながら、啓介にお礼を言う。

 

「とりあえず、助けたお礼として昨日おひいさまと何してたかたっぷり聞かせてもらおうじゃないの」

「わ、わかったよ……」

 

 俺達は、人気のない体育館裏に向かうと、昨日の出来事を一通り説明する。凛華の家に行って、PCの修理をして、その後にデパートで買い物をしたこと。そして、大雨で凛華の家に泊まったこと。もちろんベッドでの件は省いたけど。

 

「へぇ~、ついにお前にも春が来たか! おめでてぇ!!」

 

 そう言いながら、啓介は手を叩いて俺を祝福する。

 

「いや、違うって。まだ付き合ってもないし……だいたい、俺みたいな地味な陰キャ男子が、あんな完璧なおひいさまと釣り合うわけないだろ?」

 

 自分を卑下するように言うと、啓介は呆れたようにため息をついた。

 

「お前なぁ、自分のこと低く見すぎだろ。おひいさまが家に招いたり、デートに誘ったりする時点で、完全にお前に惚れてる証拠だろ。」

「……そんなことないって。」

「あるって! それに、お前ら普通にお似合いだぞ。おひいさまもお前といると楽しそうだしさ……」

 

 啓介の言葉に、俺はどう返していいか分からず、俯いた。

 

 確かに共通の趣味もあるし、お似合いかもしれないが、おひいさまとしての凛華しか見たことのない奴らにはそうは思われないんだよな……。

 

「ま、これからどうなるかはお前次第だな!」

 

 からかうように肩を叩かれたところで、ホームルームの予鈴が鳴り響いた。

 

「やべぇ! 急がないと!」

「お、おう!」

 

 啓介が走り出し、それに続く形で俺も急いで教室へと向かった。俺の頭の中は、啓介の言葉と昨日の出来事でぐるぐるしていて、今日も落ち着かない一日になりそうな予感がしていた。

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