失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています   作:瓜生史郎

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26話

 早朝、冷えた空気を吸い込むと、気合を入れるように軽く体を伸ばした。スポーツウェアに身を包み、靴紐をきっちり結ぶ。

 

「よし、やるか……」

 

 気合を入れて、俺は軽く走り出した。

 

 体力づくり――自分を鍛え直すための第一歩だ。だが、初めてのランニングは思った以上にきつかった。息が上がり、脚は鉛のように重くなる。それでもなんとか家まで戻ると、玄関先でそのまま倒れ込んだ。

 

 「はぁ……はぁ……。死ぬ……。ちょっと走っただけなのに……」

 

 汗だくで息も絶え絶え。運動不足を痛感しながら、これからの道のりの厳しさを思い知らされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校に着いたころには、既に体力はゼロ。

 

 今までサボっていたツケがここで来てしまうとは……。

 

 自分の机に突っ伏していると、目の前に冷たいジュースが差し出された。

 

「大丈夫か? 和也ー。これでも飲めよ」

 

 差し出してきたのは啓介だった。笑いを堪えているのか、口元がやけに引きつっている。

 

「ちょっと朝から走ってきたんだけだよ」

「急にどうしたんだ? 朝から走り込むなんて」

「……まあ、ちょっと体力つけようかなって思って」

 

 曖昧に答える俺を啓介をじっと見つめていた。

 

「おひいさまのため、だろ?」

 

 ニヤニヤと笑いながら啓介は小さな声で耳打ちする。

 

「……うるさい」

 

 図星過ぎて、何も言い返せず、俺は顔を赤くしてそっぽを向く。

 

 確かに、凛華にふさわしい男となるためにと決意して始めた事ではあるが、いざ口にすると何とも言えない恥ずかしさがこみ上げてくる。

 

 本当にこんな事でなれるのかなぁ?

 

「それにしてもお前、マジでおひいさまと付き合えるとはなぁ……」

「いやまだ、俺と凛華はそこまで行ってないぞ」

 

 感心したように笑う啓介に、ツッコむが全く聞く耳を持っていないようだった。

 

「でもさ、運動だけじゃダメだろ。おひいさまと釣り合うには、学力も必要なんじゃないか?」

「学力……」

「もうすぐ期末テストだしさ。そこで上位に食い込めば、周りも認めざるを得ないんじゃないか?」

 

 啓介の提案に、俺は確かにそうだと思った。上位に載った事のない俺が急に上位に載れば皆驚くだろうし、凛華の隣にいる事を皆が認めてくれるだろう。

 

 だが、現実はそうもいかない。俺は勉強が苦手で全教科万年赤点ギリギリだ。そんな俺が期末テストで本当に上位にいけるのか?

 

 いや。いけるかじゃない。俺は凛華にふさわしい男になると決めたのだから、やるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、静けさ広がる図書館の中で俺は1人、参考書と睨み合っていた。

 

 ダメだ。全く分からない。頭を抱えるばかりだ。

 

「……なんだよこれ……意味がわからない……」

 

 ため息をつきながらページをめくると、不意に視界に白い手が差し込まれる。

 

「何してるの?和也君」

 

 顔を上げると、そこには凛華が立っていた。彼女はいつもの上品な雰囲気をまといながら、俺の隣に座った。

 

「もしかして、期末テストの勉強?」

「あ、ああ……まあ、そんなとこ」

「ふふ、それじゃあ私が教えてあげる」

 

 そう周りに聞こえないように呟くと、彼女は俺の参考書を手に取り、スラスラと解説を始めた。彼女の言葉は驚くほどわかりやすく、いつの間にか夢中でメモを取っていた。

 

「ここはこう考えるの。ほら、簡単でしょ?」

「……なるほど、そういうことか。じゃあここはどうするの?」

「ここはね……」

 

 流石学年主席の凛華だ。あらゆる質問に的確に答え、丁寧に教えてくれた。夢中で聞いていると気づけば図書館の閉館時間が迫っていた。

 

「もうこんな時間……」

「時間を忘れるくらい、集中してたね」

 

 彼女は微笑みながらも、どこか呆れたように俺を見た。

 

「でも和也君、今まで本当に勉強してこなかったんだね。これからはもっと真剣に取り組んだ方がいいよ?」

 

 少しお説教されたけれど、その言葉には優しさがあった。彼女の支えがなければ、俺はこの先も勉強の意味すらわからなかっただろう。

 

「……ありがとう、凛華」

「どういたしまして。でも、もっと頑張ってね?」

 

 その笑顔に、俺はまた心が動かされるのを感じた。

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