失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています   作:瓜生史郎

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27話

凛華視点

 

 机に広げたノートの上にペンを置き、私は小さくため息をついた。

 

 どうしてこんなに集中できないの?

 

 普段なら、一度ペンを持てば何時間でも勉強に没頭できるのに、今日は違った。

 

 気づけばスマホに視線を落としている自分がいる。

 

 和也君は、今勉強頑張ってるかな?

 

 和也君が頑張っている姿を思い出すと、自然と頬が緩む。けれど同時に、少しだけ胸が締め付けられるような感覚もあった。

 

「寂しいな……声が聞きたいよ……」

 

 一人でそんなことを呟いている自分が恥ずかしくなり、ペンを取り直してノートに目を向けた。けれど、気持ちは全く落ち着かない。

 

 意を決してスマホに手を伸ばして、通話アプリを開こうとした瞬間、ふと動きが止まる。

 

 ううん、今和也君は一生懸命勉強しているんだから、邪魔しちゃダメ。

 

 そう自分に言い聞かせて、スマホをそっと机に置いた。けれど、心の中のざわつきは消えなかった。

 

 それにしても、和也君はなんで急に本気でテスト勉強をしようと思ったんだろう?

 

 今までの彼は、こんなふうにテスト勉強に打ち込む姿なんて想像できなかった。

 

 もしかして、私にふさわしい人になるため。とか?そんな考えが頭をよぎり、顔が熱くなる。

 

「そ、そんな訳ないじゃん……。馬鹿なこと考えないでよ!私……」

 

 自分で自分にツッコミを入れながら、頭を振る。

 

 ……けど、もしそうだったら?

 

 その可能性を否定しきれない自分に気づき、ますます心がざわつく。

 

 本当にそうなら……。

 

 考えがまとまらないまま、気づけば体が動いていた。

 

 私はクローゼットを開けて、手早く荷物を詰め始める。服に、ノートに、参考書。それから、お菓子もちょっとだけ。

 

「……仕方ない。ここは私がお世話をしてあげなくちゃ」

 

 キャリーケースの中身を整えながら、私は独り言を言う。

 

 その理由を口に出せば、きっと自分の気持ちを認めてしまうことになる。だから、私はただ準備を進める。

 

「テスト勉強期間が終わるまで……一緒にいてあげるんだから」

 

 胸の高鳴りを押し隠しながら、私は家を出る準備を整えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

和也視点

 

 自分の部屋で机に向かい、問題集を広げていたが、進まないペン先を見つめてため息をつくばかりだった。

 

「マジでわかんねぇ……」

 

 数学の公式が頭に入ってこない。いや、そもそもどれがどの公式だったかさえ怪しい。参考書を見直しても、全く意味の分からない記号の羅列にしか見えない。

 

 スマホを手に取り、通話アプリを開く。連絡先リストにある「リリィ」の名前をタップし、通話ボタンに指を伸ばす。けれど、寸前で止めた。

 

 いやいや。凛華も今はテスト勉強中だろうし邪魔をする訳にはいかない。自分のせいで成績を落とされたら困るし、何より迷惑をかけたくない。

 

 俺は、スマホを机の上に置いて、勉強を再開した。

 

「ねぇ、そこの公式は間違ってるよ」

 

 不意に耳元で聞こえた凛華の声に、俺は思わず硬直する。

 

 なんで、急に凛華の声が背後から?

 

 慌てて振り向くと、そこには私服姿の凛華が立っていた。手にはキャリーケースを持っている。

 

「り、凛華? なんでここに?」

「和也君が勉強できないのは目に見えてたから、来てあげたんだよー」

 

 まるで当然だと言わんばかりの顔をして、キャリーケースを部屋の隅に置く。

 

「てか、なんでキャリーケースなんて持っているの?」

「テスト期間中だけ、和也君の家へ泊まることにしたの。付きっきりで教えてあげるね」

「ええっ!?」

 

 驚いて立ち上がった俺に、彼女は軽く肩をすくめた。

 

「だって、一緒に勉強した方が効率的でしょ?」

「いや、でも……」

 

 そう言った瞬間、凛華の表情が曇ったので、俺は慌てて手を振る。

 

「ごめん! 俺が悪かった……」

「よろしい。許してあげるね」

 

 一応は許してもらえたらしい。

 

 危なかった……。

 

「それに、家事は全部私がやるから安心して。和也は勉強だけに集中すればいいわ」

「あ、ありがとう……」

 

 俺のためにここまでしてくれるのは本当にありがたい。

 

 これでもっと頑張れそうだ。

 

「さあ、私がいる限り、手を抜くことは許さないんだから。覚悟しておいてね?」

「はい!よろしくお願いします。凛華様」

 

 こうして、俺と凛華のテスト期間だけの共同生活が始まるのだった。

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