失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています   作:瓜生史郎

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28話

 その後、凛華は本当にずっと付きっきりで勉強を教えてくれた。分からない問題があるたびに丁寧に解説してくれて、学年主席の本領を存分に発揮してくれていた。

 

 気付けば、数学の範囲をようやく1つ終わらせたところで、俺はその場に突っ伏した。

 

「つ、疲れた……。も、もう限界……」

「お疲れさま」

 

 そっと凛華が近寄り、俺の頭を優しく撫でた。その仕草に、不思議と疲れが和らいだ気がする。

 

「いや、俺もうやりたくない……。これ以上は無理……。今日はもう終わって良い?」

「え、何言ってるの? まだ1時間しか経ってないよ」

 

 呆れた表情で言われて、時計を確認すると確かに数学の勉強を始めてから1時間しか経っていなかった。

 

 マジかよ。もう体感3時間くらいやった気分なんだけど……。

 

「嘘だろ……。もう無理だよ……」

 

 弱音を吐く俺に、凛華はくすっと笑う。そして、俺の耳元で囁くように囁く。

 

「じゃあね、もし学年順位で10位以内に入っていたら……何でも言うこと聞いてあげる」

「……は?」

 

 その衝撃的な言葉に、俺は目を見開いた。

 

 皆の憧れのおひいさまに、何でも命令することが出来るだと……?

 

「な、何でもって……本当に何でも?」

「……エ……エッチなお願いはダメだからね!」

 

 凛華は顔を真っ赤にしながら、あわてて釘を刺す。それを聞いて、俺は思わず笑ってしまった。

 

 顔を真っ赤にして慌ててるところ可愛いな。

 

「な、何がおかしいの?!」

「いや、ごめん。なんでもない……」

 

 ふっと一息つくと、俺の中に新たなやる気が湧いてきた。

 

 学園一のおひいさまに、何でもしてもらえる……。

 

 そう思ったら、疲れなんて吹っ飛んだ。

 

「よし、やるぞ!」

 

 参考書を掴み取り、再び机に向かう俺を見て、凛華は満足げに微笑んだ。こうして、俺の猛勉強の日々が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲視点

 

 学校からの帰り道、私はいつものように1人で歩いていた。最近はクラスメイトが話す和也とおひいさまの噂話を聞くたびに胸がざわつく。この数日、和也の話題が出るたびに、妙に苛立ちを覚える。

 

 何よ……ただの噂でしょ? 白崎さんと和也が……そんなのあり得ない。

 

 そう自分に言い聞かせても、胸の中に広がるこの嫌な感情は消えなかった。

 

 ふと視界の端に、見慣れた後ろ姿が映る。そこには和也と凛華が並んで歩いていた。まるで付き合っているカップルみたいな距離感で……。

 

 あれ?私は思わず足を止める。

 

 白崎さんって電車通学じゃなかったけ……?何故か駅を通り過ぎても白崎さんは和也から離れない……?それどころか和也の家に向かってる……!?

 

「いやいや……そんなまさか……ね」

 

 信じられない。私は目を凝らして二人の姿を追いかけた。

 

 ただ真相を確かめるだけ……。

 

 心臓が痛いほど早く鼓動する中、私は信じられない光景を目の当たりにする。

 

 なんと白崎さんが和也と一緒にマンションの中に入っていったのだ。

 

「……っ!」

 

 何かが崩れる音が頭の中で響いた。心の奥底から湧き上がる、怒り、悲しみ、嫉妬……。名前のつけられない感情が渦を巻いて、押しつぶされそうになる。

 

 和也が……おひいさまと……? どうして……?どうしてよ……!私を入れてくれたこともないのに!

 

 私はその場から走り去った。涙が出るなんて絶対嫌だった。誰にも見られたくない。でも、どうしようもない感情の洪水が、私の中を埋め尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

橘視点

 

 昼休み、美咲と一緒に食堂で昼食を取っていた。だが、今日は美咲の様子がどうもおかしい。いつもは明るく話している彼女が、今日は心ここにあらずといった感じで、食べる手も止まりがちだ。

 

「おい、美咲。どうしたんだよ? 元気ないじゃん」

 

 そう声をかけると、美咲は驚いたように顔を上げた。そして一瞬迷うような素振りを見せたあと、ぽつりと話し始めた。

 

「……昨日、和也の家に凛華が入っていくのを見たの」

「……は?」

 

 思わず手に持っていた箸が止まった。

 

「ちょっと気になって尾行したら、二人でマンションに入っていったの。凛華が泊まるなんてこと、あるわけないよね? これって、つまりそういうことでしょ……?」

 

 美咲の言葉が耳に入るたび、頭がぐらぐらと揺れるような感覚がする。

 

 嘘だろ……?

 

「そ、そんなはずないだろ……和也が、凛華と……?」

 

 必死に否定しようとする。でも、美咲の真剣な表情を見る限り、冗談ではないのだと分かる。俺の心臓が重く沈んでいくのがわかった。

 

「……はは、どうせすぐにバレるさ」

 

 何とか気持ちを立て直そうと、苦笑いを浮かべながら呟く。

 

「おひいさまみたいな女子と、和也みたいな小心者が上手くいくわけない。他の奴らに知られたら、和也なんて問い詰められたら、すぐに耐えられなくなるに決まってる……」

 

 美咲は何も言わず、俯いたままだった。その沈黙が、妙に胸に引っかかる。

 

 俺も美咲も、誰かに笑われたり噂されたりすることに慣れている。それでも、和也と凛華が本当にそういう関係だとしたら……。そんな未来を考えると、どうしてこんなに苦しくなるんだろう。

 

 騒然とする俺たちはただ黙々と食事を続けるしかなかった。

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