失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています 作:瓜生史郎
家に帰り、凛華と一緒にテスト勉強をしているリビングは、今やすっかり見慣れた光景になっていた。
凛華が泊まり始めてからというもの、ここで一緒に過ごす時間が自然と増えている。今日も彼女は、俺の隣に腰を下ろして問題集を広げ、真剣な表情で解説してくれていた。
そういえば、あの件まだ聞いてなかったな……。
「そういえば、今日なんで啓介の前で鍵を渡してきたんだ?」
思い切って聞いてみると、凛華は手元の問題集から視線を上げ、少し不思議そうな顔をした。
「西園寺君なら別に大丈夫だろうと思ったからだよ。西園寺君ってそういうの誰かに広めたりしないでしょ?」
さらっと言う彼女に、俺は言葉を詰まらせる。たしかに、啓介はそういう性格ではないけど、問題はそこじゃないんだよ。
「でも、普通に見られたら誤解されるっていうか……」
もごもごと答える俺を見て、凛華は少しだけ口角を上げ、柔らかく微笑んだ。
「じゃあ、新妻みたいだって言われたとき、なんで素直にそうだよって答えなかったの?」
いきなり鋭い質問を投げかけられて、俺の体がビクリと反応する。
「え、それは……!」
「どうして?」
どうしてって、そんなの恥ずかしいからに決まってるじゃないか! だけど、そう簡単に言葉にできなくて、あたふたしていると、凛華がじっとこちらを見つめてくる。
「……恥ずかしかったからだよ」
しどろもどろになりながら、ようやくそれだけを口にすると、彼女は驚いたような顔をして、次の瞬間にはぷくっと頬を膨らませた。
「いくじなし」
ぽつりと一言、そう言いながら、凛華はそっぽを向いてしまった。その仕草があまりに子どもっぽくて、俺は思わず苦笑してしまう。
「悪かったってば。ほら、拗ねないで」
慌ててフォローするが、彼女は頑なに俺のほうを見ようとしない。
「悪かったって思うなら、誠意を見せて」
誠意ってどうすればいいんだよ……。
俺はどうすれば、凛華の機嫌を直せるか頭の中で考えていると、少し前の事を思い出した。
あぁ、あれがあったか。
「じゃあ、後でこの前のケーキ屋さん行く?」
「行く」
即答した。しかもいつにも増して真剣な顔をして。
その後、俺達は2人でケーキを食べに行ったのだが、お支払いが俺だったのは言うまでもない。
テストが終わり、ついに運命の日がやってきた。順位表が掲示される日だ。俺の努力がどれだけ実ったのかが数字で証明される日だ。正直、怖い。全力で頑張ったつもりだけど、それでも結果が伴わなかったらどうしようという不安が頭をよぎる。
「おい、和也! もう貼り出されてるぞ!」
「お、おう!今行く!」
啓介に肩を叩かれ、俺は重い足取りで掲示板に向かった。
掲示板前には学年の生徒たちがざわざわと集まっていて、みんなそれぞれ自分の順位を探している。
「おー、やっぱり予想通りおひいさまは1位だな」
1位には白崎凛華の文字あった。
今回は俺の勉強を見てもらいながらだったのに、流石おひいさまだな。
さて……俺の名前は……どこだ?
「お、おい!和也あれ見ろよ!」
啓介の指さす方を見た瞬間、俺は目を疑った。
『2位 宮原和也』
「えっ……」
声が漏れる。信じられない。でも、確かにそこに俺の名前が書かれている。
「2位だと!? お前、まじでやったのか!」
「お……おう」
隣で啓介が大声を上げる。彼の驚きのリアクションに、周囲の生徒たちも俺の名前を確認し始め、ざわめきが広がっていく。
「宮原、2位ってマジで?」
「やばくね? あの宮原が2位とか!」
周りの声が耳に入ってくる。俺の胸の中には、じんわりと達成感が広がっていく。確かに俺は頑張った。そしてその結果が、ここにある。
「頑張って、良かったな和也ー。これでちょっとは皆に示せたんじゃないか?」
「そうだな……」
本当に頑張って良かった……。これで少しはおひいさまに相応しい人になれたかな?
ふと視線を遠くにやると、凛華が女子たちに囲まれて祝福を受けているのが見えた。彼女は俺に気づくと、優しく微笑んで軽く手を振ってきた。俺はその仕草に救われるような気持ちで、ぎこちなく手を振り返した。