失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています   作:瓜生史郎

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34話

橘視点

 

 掲示板に貼り出された順位表を見た瞬間、俺は言葉を失った。

 

『2位 宮原和也』

『4位 橘翔太』

 

 信じられない。いや、信じたくない。

 

 宮原に……負けた……?喉の奥が詰まるような感覚。脳がその事実を拒絶しようとする。だけど、どれだけ見つめても数字は変わらない。

 

 宮原が2位、俺が4位。

 

「なんで……」

 

 小さく呟いた言葉が虚空に消える。

 

 周囲のざわめきが耳に届く。宮原を称賛する声、まさかの躍進に驚く声、そして誰もが口を揃えて「すごい」と宮原の事を賞賛している。俺はそれを聞くたびに胸の中に黒い感情が渦巻いていくのを感じた。

 

 おひいさまがついてたからだろ。心の中でそう吐き捨てる。そうだ、宮原は一人でこれを成し遂げたわけじゃない。おひいさまがそばにいて、あれこれ助けてくれたからだ。だからこそ……。

 

 いや、違う。

 

 俺の胸の中に冷たい事実が突き刺さる。仮に俺がおひいさまに支えられていたとして、同じ結果を出せたのか?和也が結果を出したのは、確かにおひいさまの存在があったかもしれない。でも、それを受け止めて努力し続けたのは宮原自身だ。

 

 そんなの、わかってる。だけど――。

 

「くそっ……!」

 

 拳を握りしめて、悔しさを噛み殺す。次だ。次のテストで必ず……必ず宮原を超える。そう決意しながら、俺は掲示板を背に静かにその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

美咲視点

 

 掲示板の前で、紙にびっしりと書かれた名前と順位を眺めていると、ふと2位の欄に見覚えのある名前が飛び込んできた。

 

 宮原和也。間違いなく、あの和也の名前だ。

 

「え……和也が2位?」

 

 信じられない。勉強が苦手で、成績なんて気にするタイプじゃなかった彼が、こんなに上位にいるなんて。

 

 一瞬、目を疑ったけれど、何度見直してもその事実は変わらない。

 

 どうして……?

 

 首をかしげ、考え込む。だけど、その答えにたどり着くのに、時間はかからなかった。

 

 白崎凛華だ。きっと一緒に頑張ったに違いない。思えば、和也が変わり始めたのは、彼女が傍にいるようになってからだった。

 

 胸の奥に、軽い痛みが広がる。

 

「私と付き合ってた時は……あんなに頑張る姿を見せてくれなかったのに……」

 

 ぽつりと、誰に聞かせるでもなく呟いた言葉が、自分の耳に痛く響いた。

 

 和也を見下していた自分。そんな自分を少しだけ恥じた。彼が変わろうと努力したのは、きっと彼自身の意志だ。それを認められず、勝手に「どうせ無理だ」と決めつけていたのは私のほうだった。

 

 だけど、胸に残る寂しさと嫉妬を完全に消し去ることはできなかった。

 

 もう、私の知っている和也じゃないんだ。

 

 そう自分にそう言い聞かせる。彼の隣にはもう私が入り込む余地なんてない。

 

 遠くから、和也を称賛する声が私の耳に鋭く刺さる。同時に、彼の横で笑顔を見せる白崎さんの姿を思い浮かべてしまい、胸がざわつく。

 

 掲示板を背に、私はその場を離れる。これ以上、ここに立ち続けるのは苦しかった。

 

 私はもう、彼に何も言える立場じゃない。

 

 そう自分に言い聞かせるたびに、胸がきゅっと締め付けられる感覚があった。でも、その気持ちを認めるわけにはいかなかった。

 

 彼が新しい世界で輝いているのなら、私はそれを遠くから見ているしかないんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

凛華視点

 

 順位発表の掲示板に近づき、1位に「白崎凛華」と書かれている事を確認すると、心の中で「やっぱりね」と呟きながら、微笑を浮かべる。

 

「流石白崎さん!」

「今回も安定の1位だね!」

 

 周りにいたクラスメイトたちから、次々と祝福の声が飛び込んでくる。

 

「ありがとうございます。いつもの事ですよ」

 

 そんな言葉を受け流すように、私は完璧なおひいさまスマイルを作ってお礼を言う。

 

 そんな中、私はふと掲示板の別の場所に目を向けた。

 

 和也君の名前を探し始める。いつもなら、中盤から下あたりで見つけるのが常だったけど、今回は違うはずだという確信があった。

 

 そして、探すこと数分ようやく2位に宮原和也の文字を見つける。その瞬間、思わず手をぎゅっと握りしめてしまう。

 

 やった……!

 

 口には出さないけれど、心の中でガッツポーズをする自分がいた。

 

 周りからは、賞賛の声や驚きの声が聞こえてきて、なぜか私まで誇らしい気持ちになっていた。

 

 和也の努力を知っている私だけが、この結果の裏にあるものを本当に理解している。そんな優越感に包まれながら、ふっと彼の顔を思い浮かべた。きっと照れくさそうに笑っているんだろうな、と。

 

 ふと和也君の方を見ると、掲示板を見ながら嬉しそうな表情を浮かべており、私の視線を感じたのか不意に目が合って、手を振りあった。

 

 そんな事をしていると、私の頭の中にひとつの記憶がよみがえる。

 

「学年順位10位以内に入ったら、何でも言うこと聞いてあげるよ。」

 

 あの時、自分でそう約束してしまったことを思い出して、途端に顔が熱くなった。

 

「どうしよう……どんなことを言われるんだろう?」

 

 まだ何も言われていないのに、勝手に想像してしまう自分が恥ずかしい。

 

 でも約束した以上、ご褒美はちゃんとあげないといけないよね。

 

 自分にそう言い聞かせながらも、胸の鼓動が少しずつ速くなっていくのを感じる。

 

 どんな命令をされるか、ちょっと楽しみかも……。

 

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