失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています 作:瓜生史郎
学校から帰ってくると、玄関の前に1つの小包が置かれていた。
「ん? なんだこれ?」
部屋に入り、差出人を見ると、どこかで見覚えのあるゲーム会社のロゴ。まさか、と思いながら箱を開けると、中から出てきたのは、ゲームの女の子キャラのコスプレ衣装と当選おめでとうございますと書かれた紙が一枚。
マジか、これ当選してたのか……。
思わず頭を抱える。そうだ。数ヶ月前、深夜テンションで美咲にいつかこれを着てもらおうという不純な動機で応募した景品だったんだ。
その頃の俺には、こんなことが起きる未来なんて想像もしていなかった。美咲とはもう既に別れているし。今さらこの衣装、どうしろっていうんだよ……。
まぁただの記念品ってことで、押し入れにでも入れておくか……。
そう思って押し入れに仕舞おうとした瞬間、玄関の扉が開く音がした。
「ただいま、和也くん。」
紙袋を片手に、凛華が軽やかに帰ってくる。
「おかえり。何それ?」
「ああ、これ? 期末テスト2位おめでとうのケーキだよ」
涼やかな笑顔でそう言いながら、凛華はキッチンへと向かう。袋の中から華やかなケーキが取り出されるのを横目で見ながら、俺はコスプレ衣装を凛華の目の見えない位置に隠そうとする。
「せっかくだし、お祝いしないとね。ほら和也くん、座ってて。」
「う……うん」
そう言って椅子に座ろうとした瞬間、ふとある事を思い出した。
「何でも言うこと聞いてあげるよ」
あの約束。今なら、何をお願いしても凛華は断らないはず。
でも……この衣装を着てほしいとお願いするのか?本当に?
しかもこの衣装、肌の露出がすごく多い衣装だ。
流石の凛華でもドン引きするんじゃないか……?
「和也くん?」
凛とした凛華の声が俺を現実に引き戻した。
「そういえば、何でも言うこと聞くって、約束だったよね? 私に何をしてほしいの?」
その言葉に背中を押されたような気がした。俺は小さく息をつき、手に持っていたコスプレ衣装を彼女に向けて差し出す。
「じゃあ、これ……着てくれる?」
「……え?」
受け取った凛華の顔が一瞬固まる。困惑したような表情で手に取ると、コスプレ衣装を目の前に広げた。
「なんでこんなものが、ここに……?」
「あ、いや、それはちょっと前に応募して……その、たまたま当たっただけで……」
必死で言い訳をする俺を見つめる凛華の表情が困惑から、何とも言えない不思議な笑みに徐々に変わっていく。
「……ふふ、分かった。ちょっと着替えてくるね。」
「え、いいのか?」
「だって、約束したもんね」
そう言って、凛華は衣装を持ったまま別の部屋へと消えていった。
「マジかよ……」
1人リビングに残された俺は、思わず頭を抱える。ここまで順調に進むとは思わなかったけど……。この先どうなるんだ?
時計の針の音が、やけに大きく聞こえる。次に凛華が現れるとき、俺はどんな顔をしていればいいのか。考えれば考えるほど、頭の中が混乱していくのだった。
凛華視点
和也くんから手渡されたコスプレ衣装を持ったまま、私は脱衣所に入った。
私は呆れたような、それでいて少し可笑しい気持ちで袋を開封する。中から出てきたのは、ふわっと広がるスカートと、細かい装飾のついたトップス。魔法使いの女の子の衣装だとすぐにわかった。
鏡に映してみると、確かに可愛らしい衣装だ。でもスカートがやたらと短くて、トップスも露出が多い。こんなもの、どんな気持ちで着てほしいと思ったんだろう……。
「……和也くんってば、ほんとにもう。」
そう呟きながら制服を脱ぎ、コスプレ衣装に袖を通す。鏡の前で軽くくるっと回ってみると、スカートがふわっと広がり、さらに恥ずかしさが増した。
「これ、動くたびに……大丈夫かな?」
布の面積の少なさに羞恥心がじわじわと上がっていく。でも、この服を着てあげれば少しでも和也くんが喜んでくれるだろうか。そんなことを考えたら、胸の奥が少しだけ温かくなった。
和也くん、あんなにテスト頑張ったもんね……。
彼が勉強をする姿をずっと近くで見てきた私だからこそ、彼の努力がどれだけ大きなものだったか分かる。だから、恥ずかしいけれど、その努力に応えるべきだと思った。
「……よし」
深呼吸をして、私は和也君の待つリビングに向かうのだった。
和也視点
「お待たせ、和也くん」
リビングの扉が開き、凛華が姿を現した瞬間、まるで時間が止まったようだった。
普段は清楚そのもの、上品で整った制服姿が当たり前の凛華。その彼女が、今は魔法使いの女の子のコスプレ衣装に身を包んでいる。しかもその衣装には布の面積は驚くほど少なく、可愛らしいデザインが強調されていて肩や鎖骨がむき出しで、短すぎるスカートの下からは眩しいくらいの白い肌がちらりと見えている。
心臓が跳ね上がる。いや、跳ね上がるどころじゃない。暴走しそうな勢いだ。
凛華はというと、顔を真っ赤にしていて、恥ずかしそうに視線を泳がせながら、こちらを見ている。
「ど、どう? に、似合ってる……かな?」
その声は震えていたけれど、可愛らしさと勇気が混じっていて、思わず息を呑んだ。言葉を返すこともできず、俺は無意識に親指を立ててサムズアップしていた。
「無言でそれは……少しずるいよ……」
凛華が小さく笑う。でもその表情はまだ真っ赤で、明らかにドキドキしているのが伝わる。
「和也くん……。タイツを履いてもいい? 普段こんな短いスカート履かないから落ち着かなくて……」
スカートの裾をぎゅっと掴みながら、訴えるようにこちらを見てきた。
どう見ても耐え切れなくなった様子だ。
だが、俺は心を鬼にして、首を横に振る。
「それじゃ、ゲームのキャラと違っちゃうだろ?」
あくまで俺はキャラクターになりきってほしい。という強い思いで拒否する。
このキャラクターが黒タイツなんて履いてるところなんて見た事ないしな。
「……いじわる」
凛華は小さく囁きながら、今にも泣き出しそうな瞳でこちらを見てくる。
その表情を見て、俺の中で何かが弾ける音がした。平常心なんてとうの昔に消え去っていた。気づけばスマホを取り出し、カメラを向けていた。
「ちょっと撮らせてもらってもいいかな?」
凛華は驚きながらも、「はっ?!」と声を上げた。
「ほら、そんな表情じゃなくて、もっとキャラっぽく! ポーズとか、やってみて」
口が勝手に動いて、次々と要求している。
「……な、何言ってるの!」
凛華は明らかに動揺している。でも、俺の勢いに押されたのか、しぶしぶスカートを直しながら、魔法使いっぽいポーズを決めてみせた。
「いいね! 次はもっと笑顔で!」
「これで……いいの?」
「もう少し明るく! あと、スカート抑えないで!」
恥ずかしそうにしながらも、凛華は次々と俺のリクエストに応えてくれる。そのたびに顔が赤くなっていくのが可愛くて仕方ない。
流石にやりすぎだな、俺。
でも、凛華が応じてくれるのが嬉しくて、どうしても写真を撮るのを止められなかったが、この後凛華に「もっと加減してよね」と可愛く怒られたのは言うまでもなかった。