失恋して彼女を寝取られてしまいましたが、学校一のおひいさまに溺愛されています 作:瓜生史郎
和也視点
放課後、ホームルームが終わり、俺は昇降口へと降りる。
あの後、昼休憩が終わってもピリついた空気は変わらず、授業中でさえも俺に鋭い視線が向けられていた。
今日はいつも以上に疲れた……。早く家へ帰って、お昼寝をしたい。
そう思って、足早に昇降口を出ようとする。
「和也君!」
後方から、凛とした美しい声が響く。
振り向くと、凛華が急いでこちらに駆け寄って来ていた。
「……凛華? どうしたの?」
「一緒に帰りましょう」
「えっ?」
周りにいた生徒達の視線が一斉にこちらへと集まる。
そりゃそうだ。校内のおひいさまと地味で陰キャな俺が一緒に登下校することになればこうなる。
俺も予想していなかったから、そんな目で見つめないでほしいのだ。
「今日は、和也君の家へ夕食作りに行くって言ったよね?もう忘れたの?」
そういえば、そんなこと言ってましたね。
誰にも聞こえないように、リリィモードの凛華に小声で言われ、俺はあーと言いながら思い出す。
「ごめん、忘れてた……」
「もう……。早く帰りますよ」
不貞腐れた表情で、おひいさまモードに戻した凛華は歩き出す。
おひいさまモードで不貞腐れてるのも、すごく可愛いな……。
学校を出て、しばらく沈黙が続いた後、俺は昼休みにあった出来事を思い出し、彼女に声をかけた。
「……あの、昼休み……ありがとう」
「え?」
凛華は少し驚いた表情を見せたが、すぐに「気にしないで」と、あっさりと返す。
「……でもさ、橘のこと、ああやって言い返すなんて、すごいな」
同じ学年の生徒ですら、橘に言い返すことのできる奴は少ない。
皆、橘の事が怖くて何も言い返せないのだ。
俺に褒められた凛華は少し顔を曇らせ、冷静な声で言い放った。
「私、橘君の事が嫌いだから」
「え、そうなの?」
あまりにもきっぱりとした発言に、思わず足が止まる。
「アイツの態度や言葉が不愉快。絶対世界は俺のために回ってるとか思ってそう、後、顔が無理」
めっちゃ言うやん……この人……。
最後は偏見が混ざってるけど……、何故か納得してしまった。
「……なんか、意外だな」
「そうかな?」
「うん。凛華って、いつも誰にでも優しいっていうか……。誰かを嫌いになんてならないって思ってた」
今まで見てきた凛華は、誰とも分け隔てなく優しく接する完璧なおひいさまだった。
なので、凛華は誰かを嫌いになる事はないのかと、勝手に思ってしまっていたのだ。
「私だって、普通の女の子だよ? 誰かを嫌いになる事くらいあるよ? 私の本性を知ってる和也君ならわかると思うけどなぁ……」
確かにそうだ。おひいさまは周りから、勝手に作られたに過ぎない。
本当の凛華は、普通の女の子で、ゲーム内で馬鹿みたいに騒ぐような女の子だから当然である。
それにしても、意外と口が悪いんだな。
「それもそうか。というか、学校のおひいさまが実はこんなんだって知ったら驚くだろうなぁ」
冗談ぽくそう言うと、凛華は妖艶に微笑みながら、こちらを振り返る。
「大丈夫だよ。本当の私は和也君にしか見せないから!」
その言葉に思わずドキッとしてしまった。
今のは流石に、反則過ぎるだろ……。