ダンテ先生概念   作:3ご

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出会い

 時折、常識では計り知れない状況に遭遇することがある。

 常識という言葉が誰にとって何を意味するものなのかは、正直人によるだろう。飲食店で大人しく料理を楽しんでいる最中に、隣で手榴弾が爆発すれば身を伏せ驚嘆に打ちひしがれるのは当然だ。まさしく形に則った形式的な反応。あらあらまぁ近いわねと、どうする、逃げる? と友人に相談する姿はこの場においては非常識だ。だが、キヴォトスにおいては話は別。団子屋で茶を啜り、甘味に風情を感じているその目の前で店が爆破されたとしても、きっと食べ終わるまで逃げようとはしない。それがこの世界の日常風景である。

 

 だからであろう。

 ダンテは目の前の光景に疑問を持つのに躊躇ってしまうのだった。これもきっとキヴォトスにおいての日常なのだろうと、きっとそうなのだろうと無理やり納得させる。ここは場末の酒屋でも、ストリップショーの場でもない、神聖なる学び舎である。その神聖な場に似つかわしくない、かといって満点の否定文が出るかと言うと、さりとて根拠が薄い。何故かと言うと、常識と思い込みは人それぞれだからである。学校という概念とルールをどう捉えるかも、人それぞれだ。

 それに加え、言葉を詰まらせる要因はもう一つ。

 ぴたりと締まった伸縮性のあるナイロン素材が、細目で、でも肉厚のある曲線に段差を作り、魅惑的な色を醸し出す。憂いを帯びた翡翠の瞳は涼しげな目元を奏でるが、絡まりそうな睫毛は宝石に彩を加え、見透かした艶めき作り出し、心を絡めとられそうになるほど妖艶だ。眼下にある仄かに湿った花びらのような薄紅の唇。首筋を辿ると、そこには視線を外そうとも、きっと抗いきれないずっしりとした弧を描いた曲線。

 

「あら? あらあら? うふふ、あなたはまさか──先生?」

「監視役兼護衛だ。先生じゃない」

 

 危うく意識を乗っ取られる所だったと冷や汗を掻く。開口一番自身を指名されるとは想像しておらず、その後の言葉が真っ白になるダンテ。

 彼はその破壊力に圧倒されたのだ!

 

「出て来るなこの公共破廉恥罪!! 先輩たちも来るの! 早く戻って!! 大人も困惑しているでしょ!!」

 

 コハルのその言葉に我に返る。やはりいくらキヴォトスとも言えども彼女の恰好は常識外れであると、自分の感覚は間違っていないと安心するダンテ。

 あらあらあらと歩を進める度に遠くなっていく声を視線で追い、扉が閉まると同時に、ほっと一息付く。これ以上あの恰好で居られたらいくら最強の悪魔狩人の彼とて無事では済まない。そう自覚しているからこその安堵であり、視界に入れない様にするのが彼が持つ男性的な部分を抑える唯一の方法だった。

 

「あはは……過激な方でしたね。所で、牢屋に入れられてるという事は、この後ハナコさんはどうなる予定なのですか?」

「勿論死刑よ。死罪に決まってるでしょ。破廉恥促進委員会なんて私が潰してやるんだから!」

「罪が重すぎじゃないか?」

「下江さん? 私そんな委員会なんて作った覚えはありませんが、とりあえず入会したいと思います。受付はどこで?」

「うるさい勝手に会話に入ってくるな! そんな委員会なんてないの! 牢屋で大人しくしてなさい!!」

 

 コハルがそう叫んだ瞬間、銃弾の音とガラスの割れる音、そして爆発音が部屋中に響いた。部屋の照明を数個打ち抜き、明かりが散漫になっている状況の中、窓から差し込んだ月明りの中から影が一つ入り込んでくる。

 宙を舞う黒を基調としたスカートはまるで羽の様に軽やかに揺れ、背中から生えている本物の羽から散羽された残骸は天使の降臨を想起させた。

 どんな目的かは判別出来ないが、片手に構えてあるライフルに装弾を始めた為、少なくともこちらに対して攻撃の意思があると判断したダンテは宙に舞っている影まで飛び上がり、足首を掴んで着地する。猫でも掴んで持ち上げるように、軽々持ち上げるダンテの姿に掴まれた人物のガスマスクが地面に落ちると、そこには表情を変えずただ黙って彼に視線を送る一人の少女の顔があった。

 

「流石は悪名高いシャーレの先生だ。反応速度が桁違い。これは予想してなかった」

「可愛らしいコウモリが舞い込んだもんだ」

 

 アズサは地面に落ちている銃を拾い上げようとしたが、そうはさせないのがダンテである。片手を一番上に上げると、アズサは為す術も無く宙ぶらりんの状態だ。入場の時とは打って変わって借りてきた猫の様に大人しくなるアズサ。その後直ぐダンテの背後にある扉が開かれると、二人の生徒が険しい顔で勢いよく部屋に入り込んでくる。

 

「白洲アズサ、大人しく観念しな──先生!?」

「あー、警護班聞こえますか? 白洲アズサの確保が完了しました。このまま別室の堅牢な牢屋へと移動させますので、援護をお願いします」

 

 羽川ハスミと静山マシロ。

 急に現れたものだからと反応に困ったダンテだが、羽川ハスミは彼がこのキヴォトスに来た時に出会っている数少ない人物。久しぶりに顔を見たものだからと、気さくに挨拶をかましたが、ハスミの反応はまるで下水を覗くような瞳でダンテを捉えていた。

 それもそのはず。羽川ハスミは正義実現委員会の副委員長。だからではないが、誰よりも正義感が非常に強く、悪をゲヘナと同様に憎む存在として定義しているのだ。勿論、ダンテのシャーレでの噂は耳にしており、初期の面子として関わりを持ってしまったことを後悔していた。

 決定打として、今朝がた発生した杏山カズサの一件は、ハスミの正義を執行する動機を得るのに十分な材料だ。いつしか鉄槌を食らわせんと画策していた彼女にとって、この出会いは運命とも感じ取れる。しかも問題児とは言え、白洲アズサを片手で、尚且つスカートが丸見えになるくらいまで持ち上げるその様は、人間を人間として見ていない証拠だとハスミの中で確固たるダンテ像が出来上がったのだ。

 

「うおっ」

 

 片手でダンテから無理やりアズサを奪い取ったハスミは、また後程と言い、扉の外側へと消える。そこまで冷たくしなくてもいいのにといじけるダンテだが、いつの間にかその手には手錠が掛けられており、手綱はコハルが握り込んでいた。

 

「なんの真似だ?」

「あなたはえっち暴行罪として、翌朝まで牢屋にて収監されるの。スカートの中をじろじろ見たでしょ?」

「あはは、えっとあれはきっと不可抗力で」

 

 ヒフミが助け舟を出そうとするが、片手で静止させる。

 

「言い訳は牢屋の中で懺悔しなさい! ここはトリニティ領内よ! こっちの規則が絶対なの!」

 

 無理やり手錠を引っ張るコハルの後を重い足取りで付いていくダンテだが、そこには諦めの表情しか浮かばず、抵抗する気力は当に失せていた。

 一人残されたヒフミは彼ならなんとかするだろうと、こんな時刻でも、近所にある小規模なブラックマーケットに足を運ばせ、夜を過ごすことになる。

 

ーー

ーー

 

 牢屋の中は、金属製のパイプベッドが一つ、扉付きのトイレが一つ。床には飲料用のペットボトルが数本だけ置かれてあった。丁度今日の宿に困っていた彼にとって、寝床に在りつけたのは不幸中の幸い。なのだが、今回に限っては隣人に頭を悩ませることになる。

 

「ダンテ先生!女子生徒を茂みに連れ込みまず○○を服の下から弄り、その手で○○に入れたと言うのは本当なのでしょうか!? 私がSNSで読んだ投稿では○○を拘束して○○を○○で吸い付くした後○○に○○を突っ込んで○○してひたすらに腰を○○して○○したというのも本当なのでしょうか!? 今朝コンビニで起きた事件もそうです! 入店するや否や銃で女子生徒を無力化し○○を○○して自らの○○を下ろし○○を掴んで○○して○○を口内に○○したというのは本当なのでしょうか!? 先生! 先生!!」

 

 激しいマシンガンのような卑猥トークに寝返りを打つのも億劫になる時間帯。

 

 運ばれた夕食を無機質に胃袋に放り込むと、隣の牢屋から自分を呼ぶ声が聞こえたと、壁に首を振り向かせる。

 浦和ハナコ。

 ハナコは他の生徒とは違い、ダンテに非常に強い興味を持っていた。そこには沢山の意味があるが、目下の話題はSNSやインターネットの投稿についてである。彼女にとって、窮屈なトリニティ内での唯一の娯楽、もといストレス発散方法は露出をするのと、世間を賑わせているダンテの悪評であった。全てを破壊し悪逆の限りを尽くす彼の記事に爽快感と開放感を覚えるハナコ。いつしか、会って話がしたいと思っていた矢先の出会いに興奮が隠し切れずにいる。

 

「被害に遭った杏山カズサは、原因はまだ特定していませんが腰に力が入らない容態だったそうです。これを解明する為、私も自身の叡智とえいちを掛け合わせ、推論を行った所、恐らくですが先生が自分の○○を被害者の○○に○○して何時間にも及ぶ○○をしてしまったのが原因だと結論が出たのですが……!!」

「○○すぎやしないか俺」

「はーー!? ○○ってワードがすんなり出る辺り信憑性が増してきたかもしれません! うふふ、私の読み通りなんて○○な大人なのでしょう。最初のファーストコンタクトもまるで飢えた獣のような瞳でしたし。きっと先生の脳内ではまず私の水着が○○されてその隙間から○○を○○して、敏感な○○を○○のように○○して私の反応を楽しんでいることでしょう。その後にシャワー室に無理やり引っ張られ○○をずらして○○を入れ、引き締まった私の○○を容赦なく○○する。当然、力及ばない私は先生の○○を受け入れるしか術が無く、その後二回戦三回戦と私が気絶するまで○○を○○するのでしょうね。恐ろしい話です」

「お前の妄想の方が恐ろしすぎだ!!! まだ何も言ってねぇよ何にもしてねぇし!? たった一言でぽんぽん出過ぎだろ……狂ってやがる」

 

 そもそも今朝のコンビニ事件がそんな展開になっているなんて思いもしなかったダンテは、クレームをどこに投げ飛ばせばいいのだろうと思考を巡らせたが、どこに飛ばしても信じて貰えない今の状況に溜息しか漏らせない。

 

「あの、知っていますか? コンビニの事件、事件として処理されなかったんです。ただの事故として扱われていました」

「ああ知ってる。ティーパーティーが手を回してくれたみたいだな。まぁそもそも俺は無実なんだからそんな事しなくてもよかったのにな」

「つまり、先生はこれから先トリニティ領内で同じ事件を起こしても罪にはならないというわけですね?」

「ん? 俺の話聞いてたか?」

「恐らく次のターゲットは正義実現委員会なのでしょう?」

「展開進むの早ぇよ……」

「私の見立てではハスミさん辺りでしょうか。あの胸部に瞳を奪われてましたよね?」

「なんで知っ……そんな訳あるか!」

 

 あまりにも的確な指摘に思わず咳き込むダンテ。

 

「うふふ、ハスミさんは正義感が強いでしょうから、きっと先生は人質を利用する形でハスミさんをおびき寄せるのでしょうね。展開は知っていますよ? ハスミさんの前で人質を傷つけるだけ傷つけて存分に怒らせた後、戦闘にはなりますが先生はその圧倒的な腕力で彼女を地面に屈服させ、体に跨り服の上から○○を○○。その後暴れ回るハスミさんの両手を拘束して杭を打ちまずは○○から○○をして○○を存分に○○した後、悔しがる彼女の表情に恍惚の笑みを浮かべてさらに○○が○○になって、でもまだ○○は続いて○○して○○を○○させた後、○○して彼女を怯えさせますが、○○は○○になっています。それを確認した先生は○○を○○して○○な音を奏でリズムよく○○して○○○○○○○○○○○○○○○○○○を○○○○○○○○○○○○○○○○○○に○○○○○○○○○が○○○○○○○○○。ふぅ、恐ろしいですね。トリニティの秩序は崩壊したと言っていいでしょう」

「悪魔だなお前」

 

 まるで、水を得た魚の如く、ハナコの話はその後数時間続く事となった。

 

 

ーー

ーー

 

「では、ここに揃っているのが補習授業部のメンバーということですか?」

「みたいだな」

「……嘘」

「はい、えっと……これで全員揃った形になりますね。あはは……」

「服を着ろハナコ」

 

 だだっ広い教室の中心に集まる5つの影。

 ブラックマーケットに出入りし、一部界隈からファウストの異名で呼ばれる阿慈谷ヒフミ。

 一トンの催涙弾を爆破させ、たった一人で正義実現委員会に楯突いた戦闘狂の白洲アズサ。

 歩く公然猥褻と恐れられた浦和ハナコ。

 エッチだと即死刑を宣告する下江コハル。

 そしてキヴォトスに舞い降りた悪魔と呼ばれ、様々な噂の尾ひれを付けられた恐怖の対象であるシャーレの先生、ダンテ。

 

 

 この物語が、後に彼女達の生き方を大きく変える事になるとは、まだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いつも誤字修正ありがとうございます……!

私、いつも自前で打ち込んで執筆しているのですが、誤字などはAIなど使って見つけて修正しているんですよね(それでもまだ誤字はでますが)。
今回も同じように修正をしようとしたところ、センシティブ判定されて速攻で削除されたんですよ。
調べるとどうもハナコの台詞が引っかかってるぽいです。
まじかよ……

デビルメイクライ2の小説版を読んでいる。

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