ダンテ先生概念   作:3ご

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策略

「皆さん、今日は試験結果の発表日です!! ハナコちゃんはなんだかすごくて勉強の教え方が上手でしたし、アズサちゃんは学習意欲たっぷり! コハルちゃんは真の実力を発揮すると言っていたので安心ですね! ……そういえばダンテ先生も試験を受けてたみたいですが、どうしてですか?」

「俺か? 俺はほら、キヴォトスに来て日が浅いからよ。勉強ってのもずっとやってなかったし、良い機会だからたまにはなって」

「あはは……教職員がたまには勉強ですか……。ま、まぁいいです! 試験結果は返って来ているんですよね!? 早く発表しちゃって皆で打ち上げしましょう!」

「うふふ」

「ふふっ!」

「ふっ」

 

 余裕の笑みを浮かべる四人のテスト結果を読み上げるダンテの声に、一々大袈裟な反応を上げるヒフミ。「惜しかったな」とさも僅差のように振る舞うアズサ。「難しかったから」と素直に吐露するコハルに、「勉強と授業は別ですから」とよく分からない設定を持ち込むハナコ。

 

「そもそも先生がどうしてコハルちゃんよりも点数が低いんですか!?」

「勉強なんてもう何十年もやってねぇから仕方ないだろ?」

「ふふんっ!」

「コハル、威張ってる所悪いが俺と一点しか変わらねぇからな? オーケー、今回はずっとドヤ顔しててもいいぜ」

「ふっ……!」

「アズサ、お前には完敗だよ。でも絶対に追い付いて見せるから覚悟しておけ。そもそも俺に勝ち誇った顔してどうする」

「うふふ♪」

「ハナコ、お前はしばらく下ネタ禁止だ」 

 

 ヒフミは思わず目の前が真っ暗になり、半回転しながらその場に倒れ込むのであった。

 

「ヒフミ!? おい大丈夫か!?」

 

 床に頭を打ち付ける寸前の所でキャッチ。

 片腕で上半身を、もう片方の腕を膝に回し、お嬢様抱っこの状態で教室の隅に移動させる。

 

「今変なとこ触ってない!? 死刑?!」

 

ーー

ーー

 

 ──トリニティに裏切り者がいます。

 

 「私はその為に補習授業部を作り、シャーレの先生であるあなたをお呼びしました。通常の公的手続きではいくつもの段階を踏まなければなりませんが、シャーレの権限を合わせることにより、簡素化の成功に至ったのです」

 

 夜、突然の訪問に戸惑うものかと予想していたダンテだが、意外にも反応は緩やかに、盤上のチェスに再び視線を移し、口を開く。 

 ダンテの問いただしたい事、それは彼女達補習授業部の子達の事だ。

 第一次試験が終わり、あえなく全員撃沈した後、不安を吐露するヒフミの言葉の中に合宿という文字が出てきた。

 このゲームのルールは簡単だ。ただ第三次試験までに全員合格するだけ。だが、もしそれでも全員不合格ならどうなるのか。ナギサから出てきた言葉は「退学」という二文字。

 このキヴォトスにおいて、学生の内に学園の加護が無くなるということは、真っ当な道を歩めない事に直結する。それこそ路上でたむろし、ブラックマーケットに出入りするようになり、裏社会へと身を投じる者が殆どだ。

 

「そもそもエデン条約は、連邦生徒会長が提示した解決策。ですが、彼女はどこにもおらず行方不明。一度空中分解しかけましたが、私の元でどうにかここまで立て直したのです」

「それとヒフミ達を退学にすることの何の関係がある」

「……とある筋から、ある情報を聞きました。この念願でもある条約を疎ましく思い、妨害しようとしている輩がいると」

「それは一体誰だ。面倒なら全部俺がぶちのめしてきてやるよ。名前と場所を言え、あと銃も用意しな」

 

 何か可笑しかったのか、ナギサは口元を隠しながら笑う。それはダンテの考え方があまりにも直線的で、しかも本当にやってのけてしまう自身をちらつかせるからだ。

 こういう人間にもっと早く出会っていれば。後悔のような願いを抱えたまま、彼の返答に答える。

 

「それが、補習授業部達です」

「嘘だろ? あいつらが?」

「あくまで嫌疑。ですが、確実に裏切者はそこにいます。であれば一つの箱にまとめてしまうのが合理的ですよね。まとめて捨てられるように」

「まるでゴミみたいな言い方しやがるな」

「その、ゴミ箱の制作にご協力頂いたのですよ? シャーレのダンテ先生」

 

 ナギサの冷たい物言いに、久しぶりに舌打ちをしそうになるダンテ。

 だがそれでは当然だが物事は解決しない。とりあえず話はと、許可も取らずにナギサの横の椅子に腰かける。

 

「きっと、今は嫌な感情が溢れていることでしょう。ごめんなさい。先生をこんな政治の争いに巻き込んでしまって」

「そこじゃねぇよ。それに、俺をもっと利用する気だったのならこんな展開で白状したりしないよね? 本当の目的はなんだ」

「……流石です、先生なだけありますね。……ダンテ、あなたには補習授業部にいる裏切り者を探し出して欲しいのです。これが私の目的」

「……まだ会って日は浅いが、俺にはあいつらが普通の生徒に見えるぜ?」

「当然でしょう。テロリストというのは、得てして狡猾ですから。その時が来るまで本性など出すはずがありません。だからこそ先手を打たなければならない。これはトリニティだけでなく、このキヴォトスの平和を守る行為でもあります」

「……俺は俺のやり方で模索する。変に介入してくるなよ?」

「ええ、理解しております。そもそも、悪名高いシャーレの先生が来た時点でテロリストは慌てふためいているに違いありません。その時点で先手は打てていますが、たったそれだけの事で諦める筈もありませんから」

 

 盤上のチェスに飽きたのか、紅茶の入ったティーカップを持ち上げ、優雅に口に含む。

 ダンテに視線を移し、一杯誘ったが、断られるのは目に見えていた。あくまでも親密さのアピール。露骨な。

 

「ダンテ、あなたの動きがトリニティに利することを……願っております」

 

 

ーー

ーー

 

 合宿初日。

 トリニティ総合学園の別館。

 

「むぅ、こんな良い所を使わないなんて勿体ない」

「ですね~。ではまずお掃除からいかがでしょう。一週間の期間ですが、環境というのは勉学には必要な要素ですから。うふふ、勉学に精通している私からの助言です」

「2点の癖に何言ってんだお前」

「あんたも10点でしょ!? やーいやーい!」

「ぐっ……何も言い返せねぇ」

「皆さん、もっと仲良くしましょ……」

 

 大窓から差し込む光が捉えたのは、簡素なベッドの上に散らばっている埃。その部屋に所狭しと少女たちは並び、年相応なはしゃぎを見せる。ある者は不安ながらも前向きに、ある者は初めての経験に戸惑いを感じ、ある者は合宿と言えば情事だと、色々な意味で積極的な姿勢を見せていた。そして、アズサはたまに見せる瞳を落とした表情になりながらも、今いる補習授業部との時間に集中する為に、両頬を叩き我を返させる。

 とにかくまずは掃除だと、意気揚々と更衣室を探す生徒に声を掛けた後、ダンテは通路越しの自室の中に入り、スマートフォンに視線を集中させた。

 そう、散々時間を使わせ、必死になって勉強を教えてくれた放課後スイーツ部のグループトークにメッセージを投下するのを躊躇っていた。何故か、それは10点だからである。

 

ーダンテ、試験頑張ってね。合格出来たらもうすっごく美味しいストロベリーサンデーがあるお店に連れてってあげます。

ー応援しています! もし受からなかったらチョコミントに挑戦する約束忘れないでくださいね!

ーちょっと、流石に大丈夫じゃないの!? もう先生は名乗らないって言ってたけど、仮にも大人なんだしさ。皆心配しすぎ。

ー銀色の髪の君よ、吉報を……待っておる。

 

 彼らしくもない言い訳に頭をフル回転させるが、もうはっきりと10点という事実が眼前にあるので、逃げられそうにない。そもそも既に合宿所にいる時点で大まかな任務としては失敗しているのだ。

 

ーそれか、この前行ったお店でもいいんじゃない? ね。

 

 様々な悪魔と対峙してきた彼でも、抗えない人種というのが存在する。それは彼の生き方や信条でもあるし、常に小さく守って来たものだ。だが、今回は流石に恥を感じる部分があった。

 それはカズサとの約束だ。これくらいすぐに結果が出るだろうと高を括っていたのが仇になった。

 

「チョコミント……ね」

 

 これを機に、新しい味に挑戦してもいいかと半ば諦めの状態である。約束は約束だと、スマートフォンのモモトークアプリを再タップし、文字を打ち込んだ。

 

ー聞いてくれ、不合格だった。

ーはぃ!? 

ーカズサ返信早いわよ。

ー吉報……。

ー皆返信早いよ!?

 

 想像通りの返信に、思わず笑みを浮かべてしまうダンテ。まだ時間はあるので、返信を続ける。

 

ー銀色の君よ、ちなみに点数は?

ー10点だ。

ー大量のチョコミント仕入れておきますね。

ー悪魔だろお前。

ーうそぉ……先生まじ?

ー先生じゃないからいいだろ?

ーまだ先生じゃないだけでしょ!

ーチョコミント10キロ仕入れ完了です!

ーやっぱり悪魔だろお前。

ーアイリ! 部費も多くないんだからその辺に……いや多かったか。

ーなぁ、また勉強教えてくれないか? どや顔してくる奴がいるんだ。

ーいいですよ。……もぉ、仕方ない。

ーカズサは、モモトークでも湿度が高いのである。

ー何よそれ!?

ー何よそれ!?

ーヨシミ真似した? 今度部室で会ったらただじゃおかないからね。

ーキャー! ダンテ守ってー! キャスパリーグに襲われるー!

ー喧嘩すんなよ。ぶっとばすぞ。

ー深紅の君よ、次の試験はどうだい?

ーこのままじゃ多分無理だな。後、別館にいるから今までみたいに気軽にいけないぜ。

ー……じゃあ通話で。

ーにやにや。

ーにやにや。

ーにやにや。

ー文章でにやにやするのやめてくれない?

ーおっとすまねぇ時間だ。また連絡する。

 

 チョコミントの刑が執行される事実に溜息が出る。その背後から彼を呼ぶ声が聞こえた。

 

「ダンテ先生? 着替え終わりましたよ! 庭園に行きましょう」

「ヒフミか。ああ、すぐいくよ」

「……ダンテ先生。このタイミングが良いかもしれません。少しだけ話を聞いてくれませんか?」

「ん? なんだ?」

「もしかしたら聞いてるかもしれませんが……トリニティの裏切者についてです」

 

 

 

 







書き溜め分が無くなっちゃった。
もう書き溜めなくていいや。ノリで書くか。
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