「もう、ほんっとに……ちがうんだってばあああーーーー!!!」
──それは、コハルがバッグの中から参考書を取り出したその時だった。赤い背表紙に男女と思わしきシルエットが重なった「R18」と銘打たれた本。過激な内容からトリニティでも禁忌とされてきたその本を何故よりにもよって「正義実現委員会」であるコハルが持っているのか、興奮し切ったハナコは言葉の連打で問い詰める。
あれやこれやとハナコの過激な質問攻めに脳内を埋め尽くされたコハルは、最終的に言葉の処理が出来ず、大きな声で自分の否を現した後、すんすんと鼻を鳴らし目元に涙を浮かべ初めてしまった。思わず「やりすぎてしまった」と謝罪を並べるハナコだったが、「余計な口ばっか開きやがって」とダンテにまたもや片手で口を覆われ、頭部に軽い手刀を受ける。流石に語気がいつもより強めだったのか、大人しくシュンと瞳を伏せるハナコ。
ー
「それ、押収品管理室の物なら返しにいかないといけないんだろ? 俺も一緒に行ってやるよ」
「そうですね。ダンテ先生が一緒でしたら、万が一ハスミさんや他の正義実現委員会にばれても……あ、いや逆に問題がでますでしょうか?」
「どうだかな。ハスミは俺の事を敵視しているかもしれないから、良い顔はされないんじゃないか?」
「あはは、あの時のハスミさんは冷徹な瞳でしたからね。でも大丈夫! コハルちゃんがしっかり弁明してくれますよ! ですよね?」
「ちょっと、ハスミ先輩が敵視してるだなんて聞いてないわよ! でもまぁ、何か聞かれたら正直に答えて上げるわ!」
「そりゃどーも。さ、遅くならない内に出発しようぜ」
ーー
ーー
別館から出ておおよそ30分。歩いて行く先は、トリニティ学園の中央噴水から伸びた道の先にある、ゴシック様式の建物。散らばった装飾を飾り付けられた天に向かって伸びる細長い建造物は、ついつい先端の先に何かないものかと視線を移してしまう程だ。歴史深く、だからといって近代的でモダンな雰囲気。ダンテにとっては嫌いじゃなけど落ち浮かない場所といった印象を抱かせる。
「あそこが部室! 周りは……こんな時間だし皆寮に戻ってるか。今なら誰もいないし、さくっと返しに行こう!」
「あら? その声は……コハルと、あなたですか」
建物の影から出てきたのは、大きな黒翼を膝の前まで折り曲げ、両手に10冊程の本を抱えているハスミの姿。往復でもしていたのだろうか、額には数滴の汗がひたひたと、首筋を伝い彼女の大きな胸部の中心へと滴り落ちている。
そんな彼の視線に気が付いたのか気が付いていないのか、相変わらず瞼を細めた冷たい瞳でダンテを見つめるハスミ。
「コハル、合格するまで正義実現委員会の部室に来てはいけない約束ではありませんでしたか?」
「えっと、それは……」
「歴史の教科書を取りに来ただけだ」
「……では仕方ないですね。中に入ってください。……あなたもどうぞ」
一見、表情は平静を装っているものの、嫌悪感を隠しきれない雰囲気を漂わせるハスミ。その様子を敏感に感じ取ったダンテは、ふと記憶を辿ってみた。彼女に嫌われるような何かをした覚えがあるだろうか――そう考えるが、シャーレに赴任して以来、自身につきまとっている悪評を思い出す。
「戦闘不能になるまで生徒を追い詰めた」「体を触った」「コンビニを強盗した」などなど、どれも真実とは少しズレているが、全く無関係とも言い切れない内容だ。
とはいえ、事情を知らずにこれほど露骨な嫌悪感を見せるのはどうかと思うものの、ダンテは経験上、こういったタイプの女性には何を言っても無駄であることを初めから理解していた。ただため息をつき、これ以上深入りしないよう距離を置くことを心に決める。
部屋の内部は、いわゆる部室とは程遠い雰囲気で、むしろ小規模な応接室を思わせる洗練された空間だった。
クラシカルなインテリアは暖色の光を柔らかく反射し、どこか懐かしさと気品を漂わせる。微かに香るムスクの香りが、空間全体にエレガントな余韻を与えていた。丁寧に磨き上げられた木目の床は、見事な光沢を放っている。
アロナが以前渡してくれた資料の中に「トリニティ学園は所謂お嬢様学校」との一文を思い出すダンテ。壁面から植木鉢、果ては筆記用具に至るまでとにかく金が掛かってるという印象だ。こんな所でピザを注文しようものなら一体どれだけの代物が来るか。淡い期待を抱くが、ピザを頼んでくれとも言える雰囲気ではない。
「コハル、この本でいいのか?」
「え? あ、うん! それでいいわよ!」
「よし、じゃあ目的達成だな」
さっさと別館に戻る──そう言い書けた瞬間、二人の動きを静止したのはハスミだった。
片方の手にはボルトアクションライフルを持ち、もう片方の手にはストップウォッチが持たれている。それの意味する所はハスミ以外でコハルしか知り得ない情報だ。そして、その眼差しがダンテに向けられていると言うのもコハルからすれば奇妙な感覚だった。
それもそのはず、コハルはダンテ、もといシャーレの先生の事は噂程度には聞いていたくらいで、皆が知っている知識よりも浅い情報しか持ち合わせていなかったのだった。だからこそ、ハスミはコハルがダンテを牢屋に入れたという事実には心底驚いていた。しかも、大人しくそこで一泊するとは到底想像出来なかったのだ。今もダンテと打ち解けているコハルの姿を見ると、もしかしてあの噂は真実では無かったのか。そう疑問符が出てくる。
──確かめる。
正義を愛するハスミにとって、正義を蹂躙するなど許す事は出来ない。それに、「コハルが補習授業部にいるという危険な状況から」本当に守れるのか。彼女は確認をしなければならなかった。
「ダンテ先生、ちょっとお時間よろしいですか?」
「いいぜ。あと、俺はもう先生を辞めようと思ってんだ。普通にダンテでいい」
「……先生を辞める?」
「少なくとも、エデン条約の締結までの期間までは先生の立場ではいるけどな」
「そうですか。あなたの事情はよく知りませんが、結果的には変わりません。ダンテ、今から私と勝負をしませんか?」
「勝負?」
「ええ、純粋で真剣な勝負です。あなたがキヴォトス外から来ているのは百も承知。ですが、初日であの戦闘能力を見せられてはその外と言うのがどういった環境だったのか……想像が難しい部分。だからこそ、判断基準が必要なのです」
「別にいいが、ワカモを黙らせた、ではダメなのか?」
「もしかしたら──不意の一撃だった事も考えられます」
内蔵のマガジンに一発一発と弾を込めていくハスミの横で、コハルが必死に止めようとしている。それはハスミの実力を知っての行動だ。彼女は副委員長という立場であると同時に一人の強者。己が正義を執行する為に相当な訓練を積んでおり、まず普通の生徒じゃ太刀打ち出来ない。
「止めないでくださいコハル。私は、私は……彼を見た時から、一種の淡い希望を抱いていました。この混沌としたキヴォトスに圧倒的な調停者が現れたと。ですが蓋を開けてみれば出てくるのは悪い噂ばかり。今の世の中どのような形でも悪逆は隠せないものです。それが今度はトリニティにやってきた。あろうことか入るや否や、いきなり生徒に手を出そうとして……今度は、補習授業部の顧問と来ました。コハル、私はね、自分の正義を折られようが砕かれようが、欲に駆られた獣に蹂躙されようが、委員会の皆とコハルだけは守り抜くつもりです」
弾を装填し終えたハスミは、今度は臨戦態勢を整えるように長く美しいロングヘア―を頭頂部で結び始める。今この場で感じる事ではないだろうが、その仕草はまるで天使を連想させる美しさを兼ね備えていた。
真っ白な透き通った肌の中に在る、真逆の特性を感じる真っ赤な深紅の瞳。すらりとした細目の体系とは対極的な、似つかわしくない大きく膨らんだ胸部。スカートには大きめのスリットがあり、そこから伸びるレース調のタイツと臀部の間に見え隠れするガーターベルト。
見れば見る程、目のやり場に困る恰好をしている──まだキヴォトスに来て間もない彼から出る一つの感想。男の好きを詰め込んだ福袋みたいな人物、それがまさか勝負を仕掛けてきたのだ。当然、断る理由も無い。
そもそも彼女の喋る内容はどれも真実からかけ離れている。
「誰が欲に駆られた獣だ。まぁいい」
「殆ど正解じゃない!」
「そんな訳あるか!」
「正解……? どういうことか説明して貰いましょうか!!」
「勝負」は一発の銃声から唐突に始まりを告げた。
ハスミの放つ銃弾は確かにダンテを捉えていたが、それを目視してから避けるという余裕の間で攻撃を退けると、今度はホルスターからハンドガンを抜き数発発砲。普通の生徒ならその銃弾に撃たれて地面に伏すが、ハスミは既に動いている最中だ。前転の飛び込みで噴水の影に隠れ、そのまま上体を起こしてさらに一発。飛び込んでいる最中にボルトレバーを引いていたおかげで間髪入れずに攻撃を重ねており、こちらも普通の生徒が相手なら既に倒れている。が、相手はダンテだ。
ハスミの放った弾丸は空を裂き、目標へと迫る。しかし、ダンテは首を僅かに動かすだけでその軌道を読み切り、弾丸を紙一重で避ける。その余裕すら見せる動きに、僅かな焦りと共に額から汗を数滴垂らしたハスミは次なる一手を模索する。
「やるねぇ」
ダンテの口元に、段々とニヒルな笑みが込み始める。生憎、これだけで彼を満足させることなど到底出来はしない。どんな攻撃、それこそ戦車の砲撃や業物の一太刀、手榴弾を足元に転がした所で避けられるのが関の山。いや、そもそもそのくらいでは避けるまでも無いのだ。いくらキヴォトスに来て魔力の大部分が機能しないといっても、そもそも魔帝の力でさえ優に超える彼からすれば多少魔力が無くとも身体能力で十分戦える。
「これならどうでしょうか!!!」
足元に転がった手榴弾を、ダンテは素早く側転で避けた。しかし、爆風までは完全に逃れられず、巻き上がる風がその髪を激しく揺らす。
噴水の向かい側で轟音が鳴り響き、空気を震わせる中、ハスミはすかさず上体を起こし、一発の銃弾を放つ。
だが、彼女の冷静な瞳は、先ほどの二発をダンテが難なく避けたという事実をしっかりと捉えていた。ただ同じ手は通じない――そう判断した彼女は、即座に地を蹴って高く跳躍する。噴水の天辺を一気に超え、そのままさらに勢いをつけて宙を舞った。その動きは、まるで夜空のお月様にはしゃいだ天使の踊り。
空中で体を半回転させるたびに、長い髪が乱れ、舞うように広がる。その瞬間、スカートの深いスリットからわずかに覗く黒い装いが、闇よりも深い色合いを放ち、ダンテの視線を自然と釘付けにした。しかし、その一瞬の彼の事情に気づくことなく、ハスミは地面に軽やかに着地すると同時にライフルを構える。息をつく間もなく、照準をダンテに定め、躊躇なくトリガーを引いた。
トリガーを引くと同時に、彼女の手はすでにボルトレバーを引いており、次の攻撃への準備が完了している。すべてが無駄のない動き――その鋭さと冷静さ、先を読む頭の回転の速さが副委員長という立場が如何に天上の存在かを伺わせる。
誰も彼もが、この戦闘を見ればハスミの勝利だと確信するだろう。
突然の宙からの奇襲、正確な射撃。相手の力量を測る心眼、油断を見せない冷静沈着さ。
しかし、その戦闘は急な終わりを告げることになった。理由は簡単だ──既に、ハスミの側頭部にはダンテの銃口ががっちりと当てられているのと、もう片方の手でハスミのライフルを抑えているからだ。
当然、傍から見ているコハルも、当事者であるハスミにも何が起こったのか理解が追い付いていない。
「あ……れ?」
「そういえばこの勝負のルールを決めて無かったな? どうすれば俺の勝ちなんだ?」
「……あ、ありえません。そんな、だって」
頭が追い付かないハスミの中にあるのは、眼前の理解よりも内側にぐつぐつ煮え始めた悔しさの気持ち。
SNSで広がってるあの映像を見れば、勝てないなんて事は初めから理解していた。それと同時に、噂で広がっているシャーレの悪名も放って置く事なんて自分には出来る筈が無いと、自身で理解していた。いつか、いつかきっと正義の鉄槌を下してやると。
彼がトリニティで早速騒ぎを起こした時、気持ちが確信と覚悟に変わった。そして密かに準備を始め、射撃場で精度を高める。
だが……現実はこんなにも残酷だ。服、いや髪の毛一本も傷を付けられず、頭部に銃口を突きつけられ、剰え決着の後に勝負のルールの確認ときた。
受け入れられない現実を何とか変えようと、無理やり体を動かそうとするが、ライフルはピクリとも動こうとしない。両手を使っているのにも関わらず、まるで石で固定されているみたいに身動きが取れなかった。
重なる無力な現実が悔しさを加速させる。このままで終わる訳にはいかない。
最後の力を振り絞り、上体ごと思いっきり捻りライフルを持っている腕を曲げ、なんとか空間を作り反撃の隙を探す。
「まだ勝負は──」
ハスミが振り返ろうとした瞬間、一発の銃声が学園内に響き渡った。反射音は逆に静寂を奏で、無情にも敗北者は地面に横たわる。
「……きゅぅ」
側頭部を打ち抜かれたハスミは事切れた人形の様に気絶してしまっていた。ダンテは思わず「やりすぎた」と口ずさみ容態を確認するが、そこはキヴォトス人、外的な損傷は限りなく0に近く、少し腫れているだけである。その様子に思わず安堵の息を吐きだす。
「ちょっと!? ハスミ先輩に何する訳!?
「いや……あの展開で暴れられるとは思わなかったんだよ」
「もう、他の委員会を呼んで運んで──」
「いや、俺が保健室まで運ぶよ。コハルは先に帰っててくれ」
「な!? どうせエッチなことするんでしょ!? けだもの!! 死刑! 死ーーー刑!!」
「変な言い掛かりするなよ……。少し話したい事があるだけだ。それにコハルは別館に戻らなきゃルール違反なんだろ?」
「むむむ……! 仕方ないわね。でもハスミ先輩に何かしたら私が許さないんだからね!」
かといって、だらりと力なく倒れているハスミの姿はどこか官能的だ。
スリットからはみ出た脚を覆うタイツは所々破れ、盛り上がった上服はへその上までめくりあがり、その原因となっている胸部は左右に服を引っ張る綱引きのように張を出す。
──キヴォトスにはいい女しかいねえのかよ。
加虐心が内側から見え隠れするのを抑えつつ、なるべく視界に入れ無いように持ち上げ、校舎内まで歩き出すのであった。
ーー
ーー
青白い柔らかな明かりが窓から差し込む時間帯。静寂が辺りを包む中、こつりこつりと鈍い足音だけが校内にこだまする。
その音でぱちりと瞼を広げ、天井を眺める人物が一人。
ベッドの上から見る風景は同じ匂いがする場所だが、普段お目にかからない分新鮮味を感じる。間違いなくここはトリニティ校舎の保健室であり、自分は今ベッドの上で寝かされているんだと瞬時に頭を回らせ、上体を起こして外の景色に目を配る。
「あれ、私……」
時刻は夜の九時を回っていた。時間帯で言えば数時間眠っていたという事になる。何故そうなったかを必死に思い出すと、出てきたのは撃たれる前の光景。
「そっか、私……負けたのですね。しかも何もさせて貰えなく」
思わず、自身の身体を再確認するハスミ。もし、あの噂が本当であれば衣服に激しい乱れや異変があるはずだった。だが、自分を慎重に見つめても、そのような形跡は見当たらない。乱れたシャツもなければ、肌に痛みを伴う痕跡もなかった。
安心と安堵が胸をよぎるが、それと同時にわずかな疑念も浮かぶ。結局のところ、自分はただ運ばれ、寝かされただけなのだろうか? その事実に彼女は息を吐きつつも、警戒心を完全に捨てることはできなかった。
「結局、ただの噂ということでしょうか?」
こつりこつりとした鈍い足音は扉の前で止まり、スライドが開くと、そこにはさっきまで対峙していた銀色の髪の大人。
手元には濡れたタオルとバケツ、そしてペットボトルの水が数本。
「起きたのか? ……痛みは無いか?」
「ええ。……その、ありがとうございます」
特に返事をせず、ダンテはベッドの腋にある椅子に座り、テーブルの上にバケツを置き、真っ白なタオルを絞りハスミの側頭部に添えるように当てる。そこは銃弾が直撃した場所。僅かな腫れが膨らんでいるだけで大事には至らないが、可愛らしい乙女を傷つけてしまった事実が彼の心に深い情けなさを産んでいる。
「ダンテ、あなたは勝負に勝ちました。なんでも良いです。何か一つお願い事を言ってみてください」
「急にどうした?」
「私の勝手な我儘で勝負をし、そしてこうして介抱している。所謂御礼です」
「そっか……んん、なんでも?」
「……はい、なんでも構いませんよ」
「じゃあ、お前は俺の言う事を一つだけ素直に受け止める。ってのはどうだ?」
「受け止める? ええ、分かりました」
──最後まで油断ならない。ハスミは心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
ここで変なお願いをされれば、それこそ──いや、敗者は自分だ。それに、どれだけ逆立ちしても勝てない相手。何れ同じ運命を辿るだろうと半ば諦める。
「ハスミ」
「──はい」
「お前……スタイル抜群でびっくりしたぜ」
「……はい?」
「それだけだ。受け止めたか?」
「えっと、えっと? ええ、はい、受け止めました?」
真意が分からないが、とりあえず先生の台詞としては最悪だと認識するハスミ。いや、もう先生では無くなるのか。いやだとしても補習授業部の監査役だ。まだ立場上は先生。その先生である人物が一人の生徒を見て「スタイルが抜群」と評価をした。聖職者としてあるまじき発言だが、彼女はこれを受け止めなければならない。
思わず両腕で胸元を抑え、身を守るようにダンテから顔を背けるハスミ。上体は自然と彼とは反対側へと傾き、頬には薄い紅が浮かぶ。その仕草には無意識の警戒心が滲み出ていた。
しかし、その空気を断ち切るように、保健室の出入り口から軽やかなノック音が数回響いた。緊張の糸が一瞬弛み、ハスミは視線をそちらに向ける。
「お、来た来た」
「やっほーダンテ。夜遅くにこんにちは……お邪魔します」
「来ましたよダンテ! チョコミントはまだ届いてないのが残念ですが……」
「アイリは買いすぎなのよ!」
「今宵の月も銀色の君を彩る。呼ばれて参上、放課後スイーツ部」
「あなた達は……! それに、杏山カズサまで。え? でもあなたは……!」
動揺の色が隠せないハスミは、瞬時に頭が回り、己の過ちに気が付いた。
思わず彼の顔を見ようとするが、彼の視線は放課後スイーツ部に向いている。
「んもぅ、最初の皆と同じ反応しますね。ま、それはこれからゆっくり話すとしますか!」
「じゃ、後は頼んでいいか? 俺は戻らなきゃならねーからよ」
ハスミの頭からタオルを離した後、アディオスと言葉を残し、その場を去る男の背中を視線で追う。
それを遮る形で彼女達は座り、目の前にはトリニティでの最初の犠牲者と噂されていた杏山カズサが座り込んだ。
「不思議な人ですよね。最初は私も怖くてビビっちゃったけど……まぁ、1から話します」
「大丈夫ですよ。私達も最初はハスミさんと同じことしそうになっちゃいましたから!」
「見た目と中身の差がありすぎるあの先生が悪いのよ! 気にしなくていいわ!」
「ヨシミが一番暴れてたけどね。悔しくて泣いてたのにはびっくりしたなぁ。うぇーんうぇーん、私のカズサに何してくれるのよってさ」
「それは言わなくていいでしょ!?」