ダンテ先生概念   作:3ご

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まさかの……!?

1/27 追記
沢山の高評価やお気に入り、誠にありがとうございます!
非常に励みになります!
まだまだ書きたいお話いっぱい.....!!
レッドグレイブと名乗ってミレニアムの夜の街を駆け巡るダークヒーローのお話だったり、アリウスの生徒会長に推されたり(少し残酷描写多め)、ゲーム開発部と一緒に「キヴォトスメイクライ」をプレイしたり.....。

ダンテのキャラクターとしての汎用性が高すぎるので発想が止まりませんね!








ゲヘナの風紀委員長

 斜張橋の奥に広がるのは、地上に輝く無数のビル群。風も無く、夜の静けさも相まって、まるで映画のワンシーンを思わせる幻想的な雰囲気を醸し出している。

 その中心に無造作に停められている車の影が2台。運転席を進行方向側に向け、カーウィンドウの中から合図を出すと、もう一台の方から一人の少女がドアを開き、車から降りる。

 相手の姿を確認したダンテは、背後にいる美食研究会とその他一名に声を掛け、車から降りるよう指示。嫌々ながらも言われた通りにするしかない状況の彼女達は、溜息を吐きながらそれぞれ車のドアを開け道路に出る。

 

 全員が降りるのを確認すると、ダンテもエンジンを切り道路へと降りた。目の前の少女は挨拶と言わんばかりに「死体はどこですか」と口を開く。

 

「生きてるけどいいのか?」

「おっと、間違えました。たまに負傷者と言い間違えてしまうもので。えーと、新鮮な負傷者3名と人質1名ですか」

 

 目の前の、頭に角が生えた看護師風の装いの生徒は片手に持ったリストを見ながら、引き渡す人物のそれぞれの顔を確認する。「1名足りないみたいですが」とリスト以外の人物を把握している理由は、これまで何度も同じことを経験しているからだろう。

 キヴォトスきってのテロリスト集団──美食研究会。その探求心の高さには目を見張るものがあるが、あまりにもやり方が直線的すぎる。ハスミから聞いた情報に間違いは無いみたいだと、納得する。

 

「ところで、あなたは一体どこの誰なのでしょうか? 正義実現委員会の人には見えませんし……」

「まず、そもそもお前こそ誰なんだ?」

「おっと、まずはこちらから名乗るのが礼儀でしたね。私はセナと言います。ゲヘナで救急医学部に所属しており、主に死体……じゃなくてピチピチの怪我人を治療しています」

「怪我人はピチピチしてねぇだろ……。まぁいい、俺は──」

「いえ、言わなくても分かりますよ?」

「何?」

「その風貌、甘いマスクの下に隠れている闇。恐らくは──トリニティが雇った殺し屋、若しくはマフィアと言った所でしょうか」

「言い掛かりに点数付けるとしたら100点満点を上げたい所だぜ」

「おや? 違うのですか? でしたら一体どこの誰──」

 

 そうセナが言いかけた所に、割り込む声が一つ。

 まるで軍服のような漆黒の装いは、威厳と高貴さを醸し出し、その姿はまるで物語の中から抜け出した魔王そのものだった。

 月光を纏いながらゆらゆらと揺れる長い白髪は、夜風に舞い、銀の糸のように煌めいていた。その輝きは月夜の静寂をも奪うかのような優雅さ。

 小柄な体型でありながら、背中に広がる大きな翼を広げ、その圧倒的な存在感をさらに際立たせている。そして頭に生えた黒いツノは、紫の刺繍のような光が縁取り、見る者の心に不安と畏敬を刻み込むようだった。

 

 ──明らかに、異質。

 

 キヴォトスに来たダンテにとって、ここまで桁違いな人物と会うのは初めてのことだった。

 

「セナ、その方はシャーレのダンテ先生よ。最近噂を耳にしないかしら?」

「生憎、私は毎日死体の処理で忙しいので」

「……死体なんてみたことないでしょう」

 

 自身の噂がどこまで広がっているか気になったが、今それを聞く雰囲気でないことは明らか。

 

「……初めまして。ゲヘナ風紀委員長の空﨑ヒナ。まさかこんな所でシャーレのダンテ先生に出会うなんて光栄だわ。……そして、その位置に立っているということも」

「どういう意味だ?」

「……意味? ふぅん、天然なのか揶揄っているのか。私の口から言わないとダメかしら?」

「俺も、キヴォトスに来てそこまで時間は経ってないものでね」

「そう。じゃあ……あ、セナ。その間にあいつらを回収してきてくれる?」

「了解です。……車内で待機しておきます。車は移動しておきますね」

 

 そう言うと、セナは一人一人がっしりと腰を掴んでは、車の中に放り投げるように生徒を押し詰めていった。そして速足で運転席へと移動すると、急いで発進させ気持ち遠目に車を停める。まるで、ここでこれから何かが始まると。自然災害を予兆し、被害を受けない様にと逃げ惑う鳥の様に。

 

「シャーレは中立的な存在と聞いていたけど、あなたは今そこにいる。トリニティとゲヘナの関係はご存知?」

「ああ、詳しくは知らねーが要は敵同士なんだろ?」

「ええ、その認識で間違いはないわ。それならエデン条約も当然知ってると思うから概要は省かせてもらうわね」

 

 ヒナはダンテの全身を一瞥すると、「この人が」と吐息と共に声を漏らす。

 

「……エデン条約は、均衡があるのが大前提。それは軍事力や経済力だけじゃない。生徒の士気や思想も含まれるの。で、例えば天秤を想像してみて。その均衡が保たれてた天秤の片方に大きな岩の塊が乗ったら、もう一方はどうなると思う?」

「言うまでもないだろう」

「ええ、正解よ。答えは”言うまでもない”の」

「何が言いたい?」

「ダンテ先生、あなたはどっちの味方なの? それともどっちの味方でもないの? あなたはどんな存在なの?」

「俺か? 俺は──今の所は補習授業部の味方だ」

「……はっきりと言い放ったわね。明確な声明として受け取っておくわ」

 

 ヒナはそう言いながら、懐に仕舞い込んでいたハンドガンを一丁取り出し、ダンテに向けて差し出す。

 

「なんの真似だ」

「行動通りの意味よ。あなたが噂通りの人間かどうか、これで確かめられる」

「確かめる?」

「私は……エデン条約推進派なの。色々あってね。もし条約が破棄にでもなろうものなら落胆どころではないの」

 

 中々受け取らないダンテに痺れを切らしたのか、道路に無造作に放り投げる。背中を見せ距離を取ると、持っていた機関銃を腋に添え、彼に銃口を向けた。

 

「へっ、キヴォトスは血の気がある奴が多くて退屈しねぇな。まぁいいさ」

 

 落ちてある銃を拾い、彼女と同じように構える。

 彼は気付いていた、空﨑ヒナが持つ、彼女固有の異質性を。明らかに今まで出会った他の生徒とは纏う雰囲気が違う。歴戦の猛者を漂わせる風格と、経験からなる自身。その根拠となり得るのは、立ち姿に他ならない。銃の反動の癖を熟知した足の体重の乗せ方と、体感をぶれさせない重心の位置。確実に照準を合わせる為の呼吸と、相手がどこに逃げても追尾して攻撃する為の視界の確保。

 手持ちの武器は機関銃。それも背丈を優に超える大型タイプ。とても少女が持てる重量ではない物体だが、まるで使い慣れたペンを持つ勤勉なお嬢様を思わせる佇まいに、違和感など感じない。

 

 空﨑ヒナも気付いていた。

 ダンテが持つ異質さ。それは構えを構えと見せず、面と向き合っただけで暴風に巻き込まれたと錯覚する程の圧力。戦闘に手慣れれば手慣れる程彼の印象は変わるだろう。彼女程の猛者でも、彼の奥底にある何千本の糸が絡み合った難解で複雑な未曾有の読み合いの選択肢に頭は熱で千切れ、倒れそうになる。キングとキングを競り合わせるチェスの駒はいつの間にか全てを飛び越え、ナイトの一手は盤上全ての敵の駒を破壊尽くさんとするだろう。

 顎を上向けて舐めた態度の姿勢も、片方の手をポケットに突っ込み余裕の体勢であろうとも、己が導き出す戦術も何もかもが弾かれそうで、思わず額に汗が滲む。

 

 ──何より。戦いの火蓋を切る選択肢を、彼女に任せられている現状が、実力の差をはっきりと付けていた。

 

 言い出した自分が引き下がる訳にはいかない。まずは適当に銃弾を放ち相手の様子を見るのが吉。とにかく情報収集が先だ──トリガーを引くまで3・2・1──。

 肺一杯に空気を吸い込み、息を止め背中を力を入れ、全力でトリガーを引く。

 出てくる弾丸は彼女の神秘を纏いし紫紺の弾。ゲヘナという混沌極まりない荒くれ者の学園を一瞬で静まり返させる、力の一手。アスファルトは砕け、鉄格子はひしゃげ、背後にあるトリニティの軍用車は銃弾の勢いで宙に浮き、粉々に爆発。

 

 そう、放った弾丸は全て空を切り、背景を破壊尽くさんとしたのだ。

 つまり、弾が切れるまで圧倒的に放ち続けた弾丸は、たった目の前にいる一人に一発も当たらなかったという事になる。

 はっきりと見えていた。撃ち続ける時間、糸を縫うように弾の中で宙に向かって回転する姿を。

 渡したハンドガンから放たれる弾は、避けきれない弾を弾く為に放ち、それで身を守る。

 その時、ヒナは初めての光景を目にすることになった。銃弾から身を守る為に銃弾に向かって弾を放つという異次元の戦法を。動体視力なんてものじゃない。目の前にあるのはテニスボールでもなく、卓球の玉でもなく、的の小さい銃の弾なのだ。銃の雨を位置で避けると言うのならまだ理解出来るが、その波に突っ込むように回転し、そして撃ち落すなど狂気の沙汰。

 

「これが……シャーレの先生?」

「ぼけっとすんなよ……今度はこっちからいくぜ!!」

 

 ハンドガンの持ってる手を勢いよく突き出すと、まるで銃に引っ張られるみたいに体ごとスライドさせるように突進。微かに右足を加速装置として蹴った瞬間は捉えていたが、その僅かなバネでありえない程の物理速度を生み出せるものなのか。にわかには信じがたい光景が目前へと迫りくる。

 

「──くっ!!!」

 

 上体を逸らし、間一髪でそれを避けると、遅れてきた風圧が彼女の全身を覆い足元をぐらつかせた。その反動を利用し体を回転させ、右足を思いっきり地面に突き刺し、膝のバネを使って大きく飛翔。

 天に向かって羽ばたくように舞い、地面に視線を送ると、そこにはニヒルに笑う彼の姿がまだ突進の構えを崩さず、顔だけを彼女に向けていた。

 

「へぇ、これを避けるか。合格点をやるよ」

「ふぅん、ありがと。じゃあお礼にこれをあげるわ」

 

 飛翔している間に装弾の準備を終えたヒナは、機関銃にマガジンを取りつけ、地面に向かって一気に放つ。

 その力を巧みに扱う技術と、反動を利用すると宙に静止する程の破壊力を出すが、当然当たらなければ意味がない。ダンテの四方八方飛び回るその姿は、まるで暴れ回る雷のようにしなり、アスファルトに雪国のような足跡を付けて行く。

 轟音と銃声の音が鳴り響く展開に危機感を感じたのか、ヒナの背後にあった軍用車はさらに距離を作り、中にいる美食研究会やセナはまさかと思える展開に呆然とするしか選択肢を取ることが出来なかった。

 

 その反応も当然だ。

 空﨑ヒナと言えば、キヴォトス中に名を轟かすゲヘナ屈指の実力者である。

 そのヒナと互角……それ以上に戦闘を繰り広げている者がいる。それはアビドスのホシノでもなく、ミレニアムのネルでもない。トリニティのツルギでもなければミカでもない。最近新しく赴任してきたシャーレの先生なのだから。

 

 いつの間にか同じ位置まで飛び上がっていたダンテに足を掴まれ、二度三度と振り回され天に向かって投げ込まれると、流石にバランスが取れなくなったヒナは全身を大きく広げ状況を俯瞰する。

 既に現状出来るだけの戦力は出した。が、それでも一ミリも届いてない事実に落胆する。が、これで挫けてはゲヘナの風紀委員長は務まらない。

 

「このやり方じゃだめみたいね。弾ももう無い……それなら、最後まで足掻く。──これならどうかしら」

 

 頭から急降下。勢いを殺さず、一気に地面に足を着ける。その瞬間、膝を深く折り曲げ、片手を地面に添えるようにして視線を低く構える。

 呼吸を止め、集中力を極限まで研ぎ澄ますと、ダンテの着地点を見極める。狙うのは地面に降り立ったその瞬間だ。意識が下へと向かい、視界が一瞬でも狭まる一瞬。場の状況を確認しようと観察に移るその隙を逃さない。

 必要なのはたった一撃。その一撃に全てを込め、この鉄塊を突き刺すだけだ。

 方法はあるものか。

 弾切れを起こした彼女に取れる選択肢はただ一つ、それまで経験したことのない先程の一振りを、再現するだけだった。

 

「これで決める……!!」

 

 宙から舞い降りたダンテの膝が曲がり、片方の手が地面に接触しようとするその瞬間──! ヒナはバネの勢いで全身を弾くように突進。

 左腕と左足は前へ伸ばし、地面を蹴り飛ばした右足は後に置き、銃を持った右腕を最後の勢いを出す為に肩と一緒に限界まで引く。

 最初にダンテが魅せた技。極限の戦いにおいても瞬時に勝率の高い方法を計算し、疑うことなく実行する彼女の胆力はまさに本物。だからこそダンテも驚きを隠せなく、静かにそれを見守る。

 放つ速度は音速に等しく、穿つ獲物は武器を超え兵器の一手。世の理と物理法則を無視した座標移動の技術を瞬時に習得した彼女は、これからも己の可能性を広げていくだろう。これは、空﨑ヒナが持つ天性の才能と神秘と度胸が織り交ざり、キヴォトスに存在しない概念に好奇心を抱いた結果の出来事である。

 

 ──スティンガー。

 

 紛れもない己の技を、まさか兄以外に放たれるとは。

 ニヒルは歓喜に変わり、遊びは消え、そこに宿ったのは純粋なる誠意。

 才能のある若い子の芽を摘むわけにはいかない。彼は握ってるハンドガンを離し、掌一極に魔力を集中させる。

 

「ぐっ!!!」

 

 突進してきたヒナの一撃を、魔力で硬化させた手で正面から受け止める。その衝撃が足元をくぼませ、空気を震わせる中、力の拮抗が一瞬途切れる刹那を見逃さない。隙を突き、力を込めて機関銃を上空へと弾き飛ばす。

 その影響か、それとも初めての一撃を放って体がきしんでいるのか、足元がふらつき大きく後退し片方の腕で放った方の腕を抑える。そのまま地面に跪くと、止めていた肺の空気が一気に口から外へ流れ込み、緊張した体の筋肉は更に強張り嗚咽を催す。

 

「コツは掴んだか? じゃあお手本を見せてやるよ」

 

 彼は手元に落ちてきた機関銃のグリップを握り込むと、天に向かって伸びた銃口はそのままに、ノーモーションで一気に体を弾く。

 ブレも迷いも一切ない。これが一撃。必ず殺す技と書いて必殺技。自分を真っ直ぐに信じられる者だけが放てる、暴虐の一手。

 どうせ真っ直ぐにしか来ない。だとしたら反応だって──。

 

 体の反応よりも思考が先に動く。これは戦いに置いて、更に接近戦に置いては命がいくつあっても足りない愚行だ。そんなの、これまでの訓練で幾度となく下級生に教えてきたヒナ。理屈では分かってる。けど、今は圧倒的に経験が足りない。

 

「……降参」

 

 目前で留められた最上の突きの前で、正座し両手を小さく耳元まで上げる。

 

「お前……すげぇ奴だな。気に入ったぜ」

「本当かしら? それならゲヘナに来ない? 歓迎する」

「魅力的な申し出だが、俺は生徒をエデン条約が締結するまで守るって約束をしててな。試験を合格するまで面倒見なきゃいけねぇんだ」

「それは残念……って、エデン条約の締結って、じゃあ基本的に邪魔をする気はないという理解でいいのかしら?」

「勿論。まぁとにかく立てよ。道路で正座は足を痛めるぜ」

 

 ダンテの手を差し出す行為に、若干の驚きを返すヒナ。

 それは、彼女がゲヘナでも殆ど体験することのない、戦いあった者同士の礼節。常に一方的に蹂躙する展開に飽き飽きしていた彼女にとって、振り返ればダンテとの闘いは楽しいものであった。

 

「ありがと。ま、私は今回は7割の実力しか出さなかったけどね。言い訳じゃない、本当よ」

「へいへい。俺は今出せる5割程度だけどな」

「ふぅん。待って、実は私まだ2割しか出してなかったかも」

「ほぉ、俺なんて実は1割も出してなかったぜ? 戦ったから分かるんじゃないのか?」

「全然分かんないわ。うん……あれ? 0.3割だったかもしれない。困ったわ」

「あー思い返せば俺実力そのものを出してなかったぜ。やれやれ」

「この大人何を言ってるのかしら。まぁいいわ」

 

 しょうもない意地の張り合いが続いたあと、ヒナは深い溜息を二度つき、そっぽを向く。悔しさを滲ませないよう努めていたが、その内心を見透かされるのは癪だった。

 「じゃあまたね」とだけ言い残し、颯爽と歩いて車に乗り込む。アクセルを強く踏み込み、タイヤが地面を蹴る音とともに街へと消えていった。

 その背中を見送ったダンテも、「さっさと戻るか」と呟いて振り返る。だが、目の前にあったのは、ボコボコに破壊された車両が一台。

 

 「……弁償代はシャーレ経由でゲヘナに請求しておくか」

 

 肩を落としながら、その残骸をしばらく見つめて立ち尽くすダンテ。結局、歩いて帰るしかない現実に、溜息をつくしかなかった。

 

 

 

 




まさかヒナちゃんがスティンガーを撃つことになるなんて……!
まずます先の展開が盛り上がって来ますね!


次回の更新は二月になります!

アディオス!
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