ダンテ先生概念   作:3ご

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Legacy

 落ちていく。

 どこまでも、どこまでも、果てしなく。

 まるで底のない奈落に飲み込まれるように、意識は暗闇の奥へと沈んでいった。

 

 冷たい。

 

 体の感覚が消えていく。

 息を吸うことさえ、無意味なものに思えた。

 ここはどこなのか、どうしてこうなったのか。そんなことさえ、どうでもよくなっていく。

 

 ──それももう、終わる。

 先生に出会った。

 きっと、彼なら止めてくれる。私を……殺してくれる。

 

 心が、空っぽになっていく。

 かつての眩しい日常の光は、すべて指の隙間から零れ落ちてしまった。

 信じていたものも、大切にしていた人達も。

 すべて失った。

 

 「もういい……」

 

 誰に向けた言葉でもない。

 ただ、諦めることが正しいような気がして、そう呟いただけだった。

 このまま沈み続ければ、いずれ何も感じなくなる。

 それでいい。

 もう、何も考えたくない。

 

 ──ん。

 

 音が聞こえた。

 

 微かな、けれど確かに耳を打つ旋律。

 歌声のような、祈りのような、不思議な響きが闇の中に溶け込んでいた。

 

 ──誰の声?

 

 思考が止まったはずの頭の奥に、小さな疑問が浮かぶ。

 こんな場所で、どうして声が聞こえる?

 

 耳を澄ませると、その旋律の中に、一つの声が混ざっていた。

 

 「アズサちゃん!!」

 

 脳が揺れる。

 自分を呼ぶ声が、遠くから響いている。

 この声は……。

 

 「ヒフミ……?」

 

 ありえない。

 ここは闇の底。

 もう誰も自分を見つけられない場所のはずだ。

 

 なのに。

 

 その光は確かに、闇の向こう側で、私を呼んでいた。

 

 ──違う。

 

 もう遅い。

 私はもう戻れない。

 それが決まっていた運命なんだ。

 

 光に手を伸ばしても、どうせ届かない。

 私はもう、人ではないのだから。

 

 「苦しくて、辛かったですよね。……私は、アズサちゃんのこと、まだまだ知らない事ばかりでした。どうして変な姿になったのとか、よくよく分からないことばかりですが……」

 

 ヒフミの声が、さらに強く響いた。

 それは絶望に沈む私の胸を、まるで揺さぶるような声だった。

 

 「忘れないでください、アズサちゃんは……一人じゃありません!」

 

 視界の先、遥か遠くの暗闇の中に、一筋の光が差していた。

 そこに、彼女がいた。

 

 真っ直ぐに立つ、阿慈谷ヒフミ。

 光を浴びたその姿は、まるで神話の天使のようで。

 けれど、その瞳に宿る想いは、確かな彼女のものだった。

 

 「……どうして、ここに?」

 

 私は問う。

 ヒフミは微笑む。

 そして、手を伸ばす。

 

 「迎えに来たからに決まってるじゃないですか!」

 

 優しくて、温かくて──私がずっと求めていた言葉。

 それなのに、私は、震える声で返してしまう。

 

 「私はもう……戻れない」

 「そんなことはありません」

 

 ヒフミは即座に否定する。

 まるで、そんな選択肢など初めからなかったかのように。

 

 「一緒に帰りましょう?」

 

 手を取れば、帰れるのだろうか。

 私は、またあの頃のように戻れるのだろうか。

 

 ──でも。

 

 「……無理だ。見ただろう? 私はもう──」

 

 背中に広がる黒い翼。

 血に染まった両手。

 私の中に広がる闇が、もう人のものではなくなったことを、何より私自身が知っている。

 

 「私は、悪魔になったんだ」

 

 今さら戻ったところで、私に居場所はない。

 もう、私は、誰の元にも戻れない。

 

 ヒフミの瞳が、揺らぐ。

 

 でも、その手は、決して離れなかった。

 

 「違います」

 

 静かに、けれどはっきりと。

 

 「アズサちゃんは、アズサちゃんです」

 「でも……」

 「私はあなたの隣にいたい!!!」

 

 ヒフミの声は、揺るぎない。

 まるで、どれだけ深い闇の中でも、決して消えない光のように。

 

 「私は、アズサちゃんが何者かになったとしても、あなたの手を握ります。どんなに悪い事をしても、また赤点を取って補習になっても、正義実現委員会に連行されても。……また、思い出を作っていく」

 

 ──私たちの物語は──まだ終わっていません!

 

 その瞬間、ヒフミの背に、光の翼が広がった。

 眩い光が闇を裂くように輝き、私の体を包み込んでいく。

 まるで、暗闇の奥深くに沈んだ魂に、救いの手が差し伸べられるように。

 

 ──手を、伸ばしてもいいの?

 

 私は、まだ、人に戻れるの?

 

 「アズサちゃん!」

 

 ヒフミが叫ぶ。

 その声は、どこまでも澄んでいた。

 

 ──私の物語綴るその声。

 

 震える指先を、彼女の手へと伸ばす。

 

 その瞬間、光が世界を塗り替えた。

 

 眩い輝きが全身を包み込み、闇が弾けるように霧散していく。

 その暖かさに、思わず涙がこぼれた。

 

 「アズサちゃんは人間です。だって……私は知ってます! アズサちゃんはまだ観てないと思いますのでネタバレは控えますが、強大な悪魔に立ち向かったペロロ様のアニメ。あの物語に出てくる悪魔は、血も涙もない非情な存在として描かれています!」

「……こんな所でペロロ様のアニメか」

「い、いいじゃないですか!?」

「ふむ……続きは?」

「ペロロ様は、劇中で一人の悪魔を助け出します! 味方だと思っていたその悪魔は一度は裏切り、ペロロ様に牙を剥いたのですが……最終的にはペロロ様に味方をして、強大な悪魔を打ち倒すのです!」

「それ、全部喋ってないか?」

「大丈夫です! 勧善懲悪な作品なので、それまでの過程で考察が捗るというかその……要は、言いたい事は!!」

 

 彼女は暖かい手で私の頬を、目元を拭い、真っ直ぐな瞳で言葉を綴る。

 

 ──悪魔は泣かない。

 

 私は、彼女の手を強く握り返した。

 その瞬間、暗闇は消え去り、光の世界が戻ってきた。

 

 「私達のお話は、乗り越えられない壁なんてないんです!どんなに高い山だって、越えていけるはずです!」

 

 まるで、ずっと前から決まっていたように。

 私は、再び光の中へと帰っていく。

 

 

「……ヒフミ?」

 

 大きな翼の中、私は彼女に抱きかかえられていた。

 純白なその世界で。

 夜明けの空が、赤焼けした空の風が、心地よく頬を撫でた。

 

「──アズサちゃん、空を見上げてください。

 こんなに青々とした透き通った空の下、私達は一緒に立っているんです。

 だから、私とアズサちゃんは同じです。世界が違うなんて、一緒にいられないだなんて……そんな事言わないでください!

 アズサちゃんだけ、違う人間なんかじゃありません!」

 

 だって。

 

 ──青空は誰の頭上にも平等に広がってるんですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あの曲をイメージして書いてみました!

さぁもうそろそろ物語も「忘れられた神々のキリエ」に差し掛かって来ましたね。
これまでのストーリーは全部その為、そして最後の「誓い」の場面を描く為と言ってもよいでしょう。
個人的にDMCで一番好きな場面と言っても過言ではない。誓いではないけど、そこは原作ブルアカでの二次創作なので、オマージュという形で表現します。

トリニティ編で描きたかったシーンを全部「忘れられた神々のキリエ」に詰め込みます!


ここまで本当長かった……!

頑張って書くぞ!

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