ダンテ先生概念   作:3ご

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ゲーム開発部!

二千年前──。

 

キヴォトスの均衡した平和は、ゲヘナの侵略によって砕かれた。

だが、一人のゲヘナ生徒が正義に目覚め──闇の軍勢に立ち向かった。

魔剣士──パパーダ。

 

……カットカットカーーーット!!

お姉ちゃん!? どうしてそうゲヘナを悪者にしたい訳!? ネットで結構叩かれた内容じゃん!! あれクレームの処理大変だったんだからね!? ミレニアムはゲヘナに恨みでもあるのかって問い合わせが酷いってユウカも言ってたでしょ!? 私がユーザーだったら「あ、こいつら反省してねえ」ってなるよ!! はいダメ、もう一回!

 

う、うーん。

じゃあ改めて。

 

……かつて──。

 

セミナーがこの地上を覆い尽くしていた暗黒の時代。

人々は為す術もなく、ただセミナー(ユウカ)に蹂躙されるのみであった。

だが人々の祈りを受けて、一人のゲーム開発部が立ち上がった。

そのゲーム開発部員──パパーダは、自らと同じ名の剣を振るい。

魔性(主にC&C)の者を斬り伏せていった。

そして今、パパーダの伝説が──その後輩によって受け継がれる。

 

その者の名は──。

 

ーー

ーー

 

「あ、あなたが”あの”ダンテ先生なの!?」

 

 薄暗い開発室に差し込む午後の光は、ピンクとクリーム色で切り替えられたカーテン越しにやわらかな反射を落としている。カーテンには小さなブタと爆弾柄が散りばめられ、室内のレトロガジェットだらけの光景に場違いなくらいの愛嬌を添えていた。

 床とローテーブルは、ケーブルと基板で埋め尽くされている。灰色のファミコン互換機、曲線フォルムの携帯ゲーム機試作機、カセットの山積み。中央のブラウン管テレビは分厚いガラスとツマミ式のチャンネルダイヤルを備え、画面には「GAME DEVELOPMENT DEPARTMENT」のタイトルと猫のドットアイコンが揺れる。横にはアンテナが二本、不安定に首を振っている。

 

 左手のスチールラックには分厚い技術書と5インチフロッピーのケース、旧式テープドライブ、ライター。

 右壁のホワイトボードはポストイットで埋め尽くされ、真ん中にウサギの落書きと爆発マーク。隅には発売予定カレンダーが掛かるが、ほとんどの日付が赤ペンで塗りつぶされている。足元には大きなピンク色のクマのぬいぐるみ。正面をぼんやりと見つめ、コードと書類の山を背もたれ代わりにしていた。

 

 その中央のブラウン管テレビの前で、身体を震えさせながら互いに身を寄せ合う姉妹。

 感情に呼応するがように、桃色と緑色の尻尾は逆立ちながらお互いを絡め合い、今にも泣きだしそうな顔を彼に向ける少女達。

 才羽モモイと才羽ミドリ。

 確かにユウカから聞いた通り、桃色と緑色だと、思わず口角を上げる。

 

「つ、ついに生徒会は強硬手段に出たって訳!? ぐぬぬ……ま、負けないんだから!」

「お、お姉ちゃん!? 一体何をする気!? プライステーションなんか持って!」

 

 勇ましくも悟った表情のモモイに、ミドリは眉を上げながら地面に片手を付け、もう片方の手を彼女に向けるしか選択肢はなかった。

 その行動の先──見えない暗闇の未来を、姉は突き進もうとしている──。

 

「ミドリ、戦う時が来たんだよ。……後は任せたからね」

 

 プライステーションを両手に持ち、腰を深く落とす。

 ゆらりと揺れる琥珀色の髪が風に乗ったその瞬間──。確かな勢いと瞬足を見せた彼女の足は地を蹴り、両手に持たれたプライステーションを振り子の如く彼のお腹目掛けて(身長が足りない)振りかぶる。

 ペションっという確かな打撃音が室内に響いたが、ターゲットは傷一つはおろか、眉の一つも動かしていない。

 彼は片手で彼女のプライステーションを取り上げ、もう片方の手で寄りかかっているモモイの頭を後頭部から抑え、身動きを取れないように固定する。

 お腹に縺れ込んだ頭を必死に動かし、顔を見上げると、そこには真顔の大男。

 

「ミドリ……お姉ちゃんはここでおしまい。後は……頼んだね」

「お、お姉ちゃん……!」

 

 双子の名残惜しいやり取りを背に、彼は一歩踏み込んで部室のドアを閉めた。噂には聞いていたが、想像を超える散らかりようだ。コードの塊やゲーム基板が床を覆い、椅子は書類の山と化している。

 「……居心地は悪くないな」などと呟きつつ、座れそうな場所を探した末、とりあえずソファへ腰を下ろす。その腕には、さっきまで暴れ回っていたモモイを抱えたまま。

 

「で、お前たちがゲーム開発部ってわけか?」

 

「う、うぅ……はい。そうです」

 

 ミドリは姿勢を正し、素直に答えるしかなかった。小脇に捕らえられたモモイも、さすがに観念したのか──借りてきた猫のようにおとなしくしている。

 彼は腕の中の少女をちらりと見下ろし、そっと揺さぶった。

 

 「おい、もう殴りかかったりするなよ」

 

 モモイの頬がぷくりと膨れたが、反撃の気配はない。納得したらしいと判断すると、彼は静かに腕を解き、二人と真正面から向き合った。

 調子が戻ったのか、再び互いに身を寄せ合う二人は、このままでは埒が明かないと小声で作戦を練るが、「駄々洩れだ」の一言で鎮静化。静まり返った室内の中、とりあえずはと、モモイが声を上げる。

 

「私はゲーム開発部、シナリオライターのモモイ!」

「私はミドリ。イラストレーター兼3Dモデラ―で、ゲームのビジュアル全般を担当してます」

「あと今はここにいないけど、企画周りを担当してる私達の部長、ユズを含めて……私達が、ミレニアムのゲーム開発部だよ!」

「ああ、ユウカから聞いてるぜ。確か……廃部寸前だとかなんとか言ってたな」

 

 廃部。という単語に顔を見合わせた二人は互いにこくりと顔をうなずかせると、彼の身体を挟むように陣取り、顔を近づけた。

 

「お願い先生! 私達を助けて! このままじゃ冷酷な算術使いに部を滅ぼされてしまうの!」

「先生お願いします! 私達に猶予をください! うぅ……ここが無くなったら私達はどこにいけば……」

 

 さっきまでの怯えは嘘のように消え、顔の近さに思わず顎を上げる。

 切羽詰まった彼女達の表情に嘘は見られない。恐怖を乗り超える程の状況が彼女達に迫っているのは事実っぽそうだ。

 

「そもそも、どうして先生はここにいらしたのですか?」

「俺か? 俺は……ああー、顧問って奴だな。ミレニアムで用事があって、その空いた時間を利用して顧問をすることになったんだよ。ユウカが、どうせなら廃部寸前の所が後腐れもなくていいだろって言うからな」

「そんな酷い!! ねぇ先生、先生って強いんでしょ!? 私達にだって秘策があるんだから!」

「秘策?」

「そう! 廃虚にいけば──そこにG.BIBLEってのがあって、それを読めば最高のゲームが作れるんだよ!」

「……話が見えねえな。そもそもどうして廃部の危機に陥ってんだよ」

 

 ──そこからは、私が説明しましょう。

 

 出入口の扉が開かれる。

 後光が差し込むその影の正体──それは!

 

「出たな! 生徒会四天王の一人「冷酷な算術使い」の異名を持つ生徒会の会計……ユウカ!」

「ちょっと! 先生の前で変な名前で呼ばないでくれる!?」

「ユウカ、冷酷なのか」

「ち、違います!? ってそんな事はどうでもよくて……二人共、こちらの方がシャーレの先生よ。あなた達が廃部で追い出されるまでの顧問って形になるわ」

「ひぃ! じゃあやっぱり先生は生徒会の刺客……! うわーん、ミドリどうしよう!」

 

 中央にあるブラウンテレビの前で再び身を寄せ合い震える姉妹。

 

「逆に、どうすれば廃部から免れるんだ?」

「部員が規定人数に達するか、ミレニアムの部活として見合う成果を出すか。私、一応何度も忠告しているんです。なのにこの子達と来たら……」

「で、でも私達だって全力で部活動を……」

 

 もごもごとモモイは口を開こうとするものの声にならず、やがて自信のなさから言葉を飲み込んでミドリの胸元に顔を埋める。「大丈夫、お姉ちゃん。もっと自信を持って!」と妹はやさしく励ますが、実際のところ部として大した実績を残せていないのが現実だった。

 

「大体、資料だとか言って他の部活に迷惑を掛けるのが部活動なの? 趣旨が違うでしょう!?」

「わ、私達だってきちんとゲームを開発しているんです! ただ成果が出てないだけで……」

「へぇ、言うじゃない。なんて題名だったかしら?」

「き、Kivotos May Cryだよ……」

 

 思わず咳き込んだ彼に視線が集まったが、その瞬間も束の間、彼女達は再び互いに見合う。が、ユウカのあまりにの圧に気圧された姉妹は、じりじりとブラウン管テレビの方へと後退していくのであった。

 

「Kivotos May Cry……だと?」

「ええ、とても有名なゲームです。私もその”一作目”は知っていますよ。そして、その二作目をこの子達が作ったのですが……」

「なにさなにさ! 私達が作ったキヴォメイだってマニアックな人たちには受けてるもん! ラスボス戦に至っては評価が高いんだから!!」

「そ、そうです! 確かに、バンバンゴロゴロとかモッサリッシュとかネットで書かれていたけど……一応は受賞したんですから!」

「ええ、その年のクソゲーランキングにね。それがあなた達が出せる最大限の成果ってことかしら?」

「うぐぐ……! 私達はネットの悪辣な意見なんかには屈しな──」

 

 ユウカが両手をパンと打ち鳴らすと、「ひぃっ!」と姉妹が同時に悲鳴を上げ、部屋には再び静寂が落ちた。

 

「私が言うまでもないわね。あなたたちのような部活がこのまま活動しても、かえって学校の名誉を傷つけるだけよ」

「ユウカ……何もそこまで言わなくていいんじゃないか?」

 

 いつもの可愛らしい姿とは裏腹に、完全に仕事モードに切り替えた彼女にはどこか迫力を感じる。

 そんな彼の言葉に僅かに眉を下げた彼女は、すぐに表情を整え、才羽姉妹へ向き直ろうとした──が、目に入ったのは思いがけない光景だった。

 姉妹はいつの間にかダンテを挟むようにソファへ陣取り、両脇にぴったり寄り添って甘え声を上げている。ユウカは一瞬だけ唖然とし、次いで盛大なため息をついた。

 

「ねぇ先生! 先生はシャーレの先生なんでしょ!? それなら私達の味方くらいしてくれてもいいじゃない! ねぇ!」

「そうですそうです! 顧問になってくださるのでしたら、その間だけでもいいので私達の味方になってくださいよ!」

「あ、ちょ……! 私でもまだその距離は詰めたこと──」

 

 何かを言いかけた彼女は、ぐっと言葉を飲み込むと、二度三度と深く深呼吸。

 

「証明してみなさい」

「証明……?」

「自分達の部活に意義があるかどうかをよ。ゲームならコンテストとかあるでしょ? それで受賞するなりなんなり、方法はある」

 

 モモイは勢いよく立ち上がり、ユウカの真正面に躍り出た。自信に満ちたその瞳を向けられたユウカは、思わずのけ反る。

 

「分かった。結果で示す……。その為の準備だってもう出来てるんだから!」

「そうなの!?」

「なんでミドリが驚いてるのさ!?」

 

 モモイの宣言につられるように、ミドリも立ち上がる。ついでにダンテも腕を組んで立ち上がり、同じポーズでふたりを見守った。

 

「今回のミレニアムプライスに、私達の新作”KMC3”……Kivotos May Cry3を出すんだから!!」

 

 

 

 

 

 

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