ダンテ先生概念   作:3ご

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最近忙しくて執筆の時間ががが


風雲急を告げる

 発展の裏には、つねに犠牲が横たわる――。

 ミレニアムの生徒である彼女は、その現実を誰より痛感している。派手なネオンの陰で無数の研究者や技術者が身を削り、ときに取り返しのつかない失敗を重ねてきた。

 C&C の任務では、そうした犠牲を埋め合わせるために悪に手を染めた者を粛清し、成果とも呼べない試作品を破壊し、目を覆うような途中経過の産物を押収してきた。自身の正義を疑いもせず歩んできた彼女にとって、いま目の前の光景と男の言葉は、価値観を根底から覆す衝撃だった。

 

 ──人体実験。

 

 窓から差す眩い光が白い壁に反射し、まるで舞台装置のようにきらめく学園。そこでは同じ目標へ一直線に進み、ときに口論してはぶつかり合い、ときに成果が出ず涙を分かち合い、情熱を燃料に夜明けまでディスプレイと向き合う仲間がいた。

 太陽は暖かく、透き通る青空は進むべき道を照らしてくれる……はず、だった。

 

「嘘……いくらミレニアムでも、そんなこと」

「そうだな。君の立場ならそう言うだろう。だが私は、これまで散々戦ってきた」

「でも、カイザーだって酷いことをしてきたでしょ? 今さら正義ぶったって──」

「だからこそ裏切った。もっとも、まだ連中には気づかれていないが」

「……動機は何?」

「彼を見ても、同じ問いを口にできるか?」

 

 言葉が続かない。アスナは視線をベッドへ戻した。

 つい先ほどまで苦悶に歪んでいた顔は、嘘のように穏やかだ。頭を覆う分厚い包帯が痛々しく、サイドテーブルには乱雑に置かれた錠剤のボトルだけが取り残されている。

 

 男の言葉は、アスナにとってあまりにも混乱の連続であった。

 

 ミレニアム生徒会長は、その歪んだ実験に深入りしすぎた結果、身柄を拘束され、いまもどこかへ幽閉されている。

 全容を解明しようと動いたヴェリタスの部長も、真相に迫った直後に帰路を襲撃され、行方を隠すほかなかった。犯人が同一人物であり、背後にカイザーがいることはほぼ確実だが、決定的な証拠がつかめず捜査は難航している。

 その尻尾がいま目の前にいる。この場で仲間を呼び拘束するのが定石だ。ところが、彼女の胸にはわずかな躊躇が芽生えつつあった。

 

「でも、どうして私に話すの? ほかに頼れる生徒はいくらでもいるでしょ?」

「君がC&Cの一員だからだ。そしてなぜC&Cの君なのか。先日の博物館での出来事は覚えているな?」

「もちろん、忘れるわけないよ」

「だろうな。約束された勝利の象徴が敗北し、C&Cが大きな傷を負った事件だ。あの紫紺の影……奴の出現は私にとっても誤算だった。奪われたコインの聖遺物は、本来なら彼らを救う手段の一つになるはずだったのに」

 

 男は剣を淡々と簡易鞘に収め、ベッド脇へ立てかけた。

 

「要するに、誰が裏で糸を引いているのか判然としない。あの影が人体実験に関与している可能性は高い。だからこそ、君の力が要る……もっとも、まだ混乱しているのは理解している」

「うん、まったく訳がわからない。いきなり変なことを言われて、それで私の協力が必要だなんて──辻褄が合わないよ」

「理由を語るのは骨が折れるが……交換条件ではどうだ?」

「交換条件?」

「ああ。君には紫紺の影の対処と、残る聖遺物の奪還をお願いしたい。その代わり──」

 

 ──調月リオの情報を渡す、としたら?

 

 彼の言葉に動揺したアスナは、思わずポケットにあるスマートフォンを握り締める。

 

「待って、質問にひとつ答えてないよ。どうして私なの」

「正直、誰でも良かったといえばそうなる。だが……もし、君達ミレニアムの中に人体実験の一味が紛れ込んでいるとしたら?」

「……そんなの有り得ない」

「かもしれない。が、もしここの存在がばれて彼女達が回収されたら……どうなると思う?」

 

 その先は、想像が及ばない領域であった……いや、想像をしたくない領域だろう。

 彼女は俯き、ポケットにあるスマートフォンを取り出さず、その手で髪を上げ耳に掛けた。

 

ーー

ーー

 

 古びた建物の窓から差し込む月光に照らされた一つの影。亀裂とも言える顔のラインは仄かに輝き、闇の中溶け込むことなく浮遊する。

 その顔に気付いた軍服の男は、手元で吹かしてした煙草を地面に落とすと、まるで虫を踏みつぶすように革靴で揉み消した。

 

「いやぁ、悪辣な方ですね。花を咲かせるのならもっと良い土を選ばれた方が良いのではないでしょうか」 

「貴様こそ、許可も無しに人の花壇に入り込むなど礼儀がなっておらんな。社会では常識だぞ?」

 

 廊下に散らばった砂が隙間風に揺られる事無くその場に佇む。砂塊が椅子の上、そしてパイプベッドの上と法則など微塵も感じられない場所に散らばる。

 

「なるほど……興味深いですね。これがあなたが御主から授かったという寵愛ですか?」

「そうだ。基本的な力に加え、私達はそれぞれ一つずつの権能を与えられている。私は──」

 

 だらりと下がった片方の腕を天井まで付きあげる。散らばった砂がそれぞれ塊の方へと向かい、形を整え立脚し始める。

 一つは松葉杖を両手にこさえた怪我人、そしてもう一人は身体も自由に動かせず、ただ天井を見上げ、全身を包帯で厚く巻いた病人。そしてもう一人は、片方の目を隠すように包帯を巻いた少女の姿。

 それだけでなく、様々な砂が人の姿をした影に変わり果てる。事務作業をする職員の姿、表で草毟りをする職人気質の姿に、医師の服を着た真面目そうな姿。

 それぞれが無機質に、深夜であるのにも関わらず、まるで昼間に活動をする人の営みを始めたかと思うと、一人の職員が飲み物をトレイに載せ、黒服の前へと差し出した。

 

「これはこれはお気遣いなく。にしても……興味深い力ですねぇ。ベアトリーチェは支配、あなたは創造と来ましたか。しかも、力を受け入れる器が小さく全ての恩恵を傍受出来ないそうではないですか。なんとも恐ろしい力です」

「当たり前だ。一部であろうと、御主の寵愛を全て受け入れてしまえば私は崩壊する。今の私では……な」

「ほう? 含んだ言い方をされますね」

「御主がキヴォトスに降臨し、私に力を授けてくださるだろう。その時、私は御主の右腕として奉仕をするつもりだ。だがこの姿ではきっと役に立てぬ。だから──あのトリニティの生徒のように、己を作り替えなければならない」

「ええ、存じていますとも。あの……悪魔のような姿。ベアトリーチェ自身は適合したから姿は変わらないと言っていましたが」

「彼女は理解が及ばなかったのだ。このキヴォトスの器では力を制御出来る筈もない。何せ……生物、いや存在として根本的に在り方が違うのだからな」

 

ーー

ーー

 

 博物館での事件から三日後。

 

「はぁ……」

 ──ねぇねぇ、また溜息吐いてるよ? これで何度目? 40回目だよね!?

 ──さぁ。でもずっとこの調子じゃ、私達も気を使っちゃうよね。

「ぁぁー……くそ」

 ──あ! またくそって言った!

 ──まだ午前中なのにこれで30回目だよ?

 ──そりゃあね、慣れない松葉杖でストレス溜まってるんだよ!

 ──しかも動画も出回ってるもんね。ミレニアムの夜の街に跋扈する新たなヴィラン、その名も──レッドグレイブ! 「約束された勝利の象徴」に初めて敗北を味合わせた謎の人物!

 ──今や世間では大ブームになっちゃったし、しかも街を歩けば溢れるグッズに模した銃まで出回るんだもん。

 ──負けた相手が注目を浴びるってどんな気持ちなのかな? やっぱり悔しいのかな?

 ──いやもうすんごく悔しいんじゃない? だって見て見なよ、今も目を真っ白にして頬を赤らめて拳を握りしめてるじゃん!

 ──いやー怖いねー! こっちに飛び火が来ないといいけ……

「あああああああああ負け負け負け負けうるせぇんだよ!!!!! 噂話なら便所でやりやがれ!!!!」

 

 突然の彼女の怒声にビビり散らかしたクラスメイトの彼女達は、まるで蜘蛛の子散らすようにそそくさと駆け足で教室から抜け出す。

 赤色のショートボブを耳元で編み込み、無造作に跳ねた前髪が快活な表情を縁取っている。鋭い朱の瞳には負けん気が宿り、口元には小さく挑戦的な笑み。白いワイシャツは袖を無造作に折り返し、前を開けて羽織るだけのラフな着こなしだ。その下には黒地に紅梅の刺繍が映えるTシャツを重ね、腰にはチャコールグレーのパーカーを結わえる……いかにもな不良生徒。

 C&C……いや、ミレニアムという土地で最強の称号を持つその名は、美甘ネル。

 

「くそっ、好き勝手言いやがって。今度減らず口叩きやがったらただじゃ──」

 

 拳を振り上げ今まさに机を叩き割ろうとしたその瞬間──ピロン! とスマートフォンの通知が教室の静けさを打ち破った。

 眉間に皺を寄せ画面をタップすると、その目線の先にはニュースアプリの通知。C&Cの部長として、世間のニュースには一通り目を通す事を決めていた彼女は、情報が満遍なく集まるそのアプリを重宝していた。振り上げたその拳を引っ込め両手で食い入るように記事を読み込む。

 今日のわんこ。良妻賢母の極意とは!? 爆破の魔術師……様々なニュースを斜め読みで進める中、お目当ての記事を見つけ躊躇いもなくそのサイトへと飛んだ。

 

 ──レッドグレイブ、またも犯罪者を粛清か。

 

 大きな見出しが掛かれたその記事のトップ画面には、まるで銃弾の雨を降らせるように、天に逆立ち二丁の拳銃で軍用車をハチの巣にする紫紺の影の姿。

 彼は一体何者なのか!? ヒーローなのか、それともミレニアムの敵なのか。

 一際注目を集める見出しと共に、記事を読み進める彼女は、本日41回目の溜息をスマートフォンに浴びせると、画面を閉じ天を仰ぐように背もたれに背中を預けた。

 

「んだよ、それ」

 

 瞳を閉じると浮かぶのはいつもの夢。

 ビルの屋上で、まるで赤子の手をひねるが如く翻弄された彼女は、最後に蹴りを喰らい、地面をのたうち回る。

 二丁のサブマシンガンから放たれる弾丸を拳銃で全て弾かれ、攪乱するはずだった接近戦は一撃も当てられず。

 

「今すぐやり返してぇが……こんな足じゃ碌に動けねえのが難点だ」

 

 ギブスが巻かれた彼女の足。これまで靭帯を切ったり激しい打撲を負ったりと、粗方怪我と言う怪我をしてきたネルにとって、ここまで長い期間足が不自由になるのは初めての経験であった。

 

「はぁ、何も出来ないし暇だ。退屈しのぎにゲーセンにでも顔を出すか」

 

 

 

 

 




ちなみに、私のブルアカの最推し生徒はネルなんだな。
ネル可愛くないですか? 可愛いですよね! しかもかっこいいなんて一石二鳥ですよ。
舐m(ここで文は途切れている
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