ダンテ先生概念   作:3ご

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いいのかな

 どうしよう、どうすればいいのかな。あの選択を取ったリオを、私は断罪なんて出来ない。

 だって、友達を救いたいってことなんだよね? それが間違ってるわけないんだけど……でも、それでも別の誰かが犠牲になるなんて、やっぱりおかしいよ。

 あの子、包帯をいくら巻いても血が滲んで、「痛い痛い」って目を伏せるのに。

 リオを許しちゃダメだって分かってる……でも、彼女の選択を理解できる自分がいて、そのたびに急ブレーキがかかる。もしC&Cのみんなが同じ目にあったら、私だってきっと同じ選択肢を取る。

 

 ……ヒマリの容態、どう表現すればいいか分からない。でもたぶん、ミレニアム最高峰の治療を受けても治らない。あれは病気とかじゃなくて、何かおかしなことが起きて変質したんだ。データベースを漁って同じ症例を探したけど、一つも見つからなかった。リオだってとっくに調べ尽くして、結局なにも分からなかった。それなら私なんかが頑張っても意味ないよね。だって、あのビッグシスターが全力を尽くしても駄目だったんだもん。

 

 そんな時に現れたのが、あのカイザーの軍服を着たジェネラル。

 彼の言葉じゃ、このミレニアム周辺で起こり始めた「変化」が原因なんだって。その変化は、私たちの在り方そのものをねじ曲げて、未知の生物に変えてしまう。私たちの……えっと、表層を書き換える? とか言ってたっけ。だから内側から発生するものじゃなく、外側からの在り方を抑えなきゃ意味が無いんだって。

 

 リオも最初は戸惑ってたみたい。でも、彼の持っていたアルカナの力で症状の進行が抑えられて、ヒマリも少し落ち着いた。それでリオは安心したけど、「長くは持たない」って聞かされた途端、狂ったみたいに研究にのめり込んだ。

 刺激を与えて反応を観察したり、薬を調合して試したりして、どうにか解明しようとしたけど……全部失敗。彼が保護していた患者さんを実験に使って、結果的にリオのせいで彼らはさらに苦しむことになった。薬は副作用が強すぎて、肌が爛れたり、鬱血したり……惨憺たる有様だった。

 

(……アスナ)

 

 ジェネラルは自分の計画を話し始めた。

 外部を書き換える為の強力な力を得るために、「名もなき神々の王女」を探すのが先決だって。過程は上手く理解出来なかったけど、そこにはヒマリや他の患者たちを治す「力」があるのだとか。

 これを聞いた私でも、絶対に欲にかまけて私達を利用しているに違いないって思った。当然、リオも同じことを考えたはずだよ。私と違って思慮深いし。

 でも、そんなリオでも彼の計画に乗るしか選択肢はなかったんだ。それまでのリオは全体合理主義……って言えばいいのかな。多数と少数なら多数を助けるのが合理的とか言うタイプ。それがどうして一人を救うことを選んだの? ……理解し合えるのがヒマリだから? でも確かに、リーダーだってリオを理解してるって言い難いかも。私だって同じ。

 

 そんな感じで、まずはアルカナ集めに精を出してる最中なんだけど……。

 レッドグレイブと名乗る謎の敵が現れて現場はパニック。リーダーも私達も、手も足も出せずに負けちゃった。今まで約束された勝利の象徴と謳われたリーダーはへこんじゃったのか、あまり部活にも顔を出さなくなったし。ま、最終的にはゲーム開発部の子たちとの戦いで何故か現れたレッドグレイブと戦闘になって、少しは自信を取り戻したみたいだけど。それでも最後にはコテンパンにやられちゃったから。

 

(おいアスナ、そろそろ)

 

 結局、まだ何も解決してないの。

 何も分かってないし、あの軍服の掌の上で踊らされているだけ。

 だから、まずは動かなきゃ。少しでも情報を集めて、リオに考えてもらって……。

 本当に大丈夫なのかな。ずっと不安だよ。

 

「ほんとに疲れてやがんのな」

「んん……んうん」

 

 やけに通る声。なのに聞き心地がよくて、安心して眠くなりそうな声。

 ずっと聞いていたい声。どこかきざっぽくて、余裕の風格を帯びた声色は私を更に夢の中へ誘いそう。でも、現実はあの人がいるから、眠るのなんて勿体ない。瞳を開いて、あの輝いた銀色の髪の毛の奥に隠れた瞳に見つめられたい。

 今日のお化粧ばっちりだったっけ? 香水はいつものを習慣的に付けてるからきっと大丈夫。あ、でもネイルし忘れたかも。目の下の隈もちゃんと隠せてるかな? ここ最近ずっと寝不足だったから……メイクって言ってもさすがにバレる。

 

「ん……あ、ご主人様? おはよう」

「よぉ、随分と眠りこけてたな」

「うん、最近いろいろ大変でさ!」

「なんだなんだ、ゲームでもハマってんのか? 確かに、ミレニアムの娯楽は飽きがこねえからな」

「ぶー、違うもん。仕事だもん!」

「そうかい、そりゃ多忙なこって」

 

 ダンテ先生だ。

 うん、やっぱりいつ見ても顔に熱が籠る。額から汗が滲んでるのを感じる。顔も上手く合わせられないかも……。

 先生は、今までどんな人生を送ってきたんだろう? 自信たっぷりな表情の奥にある、更に深い懐。でもその奥にある鋭利な瞳から滲み出る危険な香り。私や他の生徒を見ている瞳にはある種の優しさが籠っているのに、あの時あの上空で見せた大人としての真剣な眼差し。どっちが本当の先生なんだろ? 考えが上手く纏まらないし……もっと知りたい。

 

「先生は最近何をしてるの?」

「俺か? 俺は……ゲーム開発部の奴らとゲームに勤しんでてね。まったく、最近の奴は強いのなんのって驚きが隠せないもんさ」

「それって、先生が弱いだけじゃないの?」

「ぐっ……! 痛いところを突いてきやがる。じゃあ、俺が弱いかどうかゲームで決着を付けようじゃねえか」

 

 急に何を言い出すかと思えば、バッグの中から大きなボードゲーム。どうやら人生ゲームを持ってきたみたいだね。ふふっ、先生は知らないのかな? 私の強運を。

 テーブルの上に広げて自信満々にボードを広げて鼻を鳴らす仕草。子供っぽくて惹かれる。ずるい人だ!

 

「サイコロを振りな」

「その前に、お茶飲んでいい?」

「おら、さっき買っといたぜ。長丁場だからな」

 

 の割には、早速借金マスに止まってマイナス100万なんだけど!? 可哀想、事務所を建てたのに天変地異が起こって瓦礫の山になったみたい。しかも「またかよ」って……経験あるの!?

 

「勝負はここからだぜアスナ」

「めげないんだね!」

 

 コロコロと転がった先に出たのは6の目! ふむふむ、カジノで大当たりしてプラス1000万! 早速豪遊したいところだけど、まずは堅実に貯蓄からしないとね。

 

「ハッ! 金は使ってなんぼだとは思うが、そういう生き方もありかもしれねーな。俺には考え辛いぜ」

「先生は入ったら使うタイプ?」

「後先は考えないタイプだな」

「先生としてどうなの?」

「先生なんてそんなもんさ!」

 

 おっとお次は……? 事故で被害にあった人に善意でお金を振り込む──ねぇ。しかもマイナス50万だって。事務所も立て直さないといけないのにお金がかさむのは辛いところだね!

 

「困った生徒を放っておけないのが先生だからな。これくらいの善意、当たり前なことさ」

「でも50万はでか過ぎじゃないかな」

「50万程度の借金、屁でもねえさ」

「絶対経験者の言葉だね!?」

 

 また6の目が出ちゃった! ええっと、友達をかばい過ぎて……闇落ち!? しかもマイナス2000万って額がでか過ぎない!? なにこの人生ゲーム!?

 

「お前も早々に運が尽きたみたいだな。借金1000万とは恐れ入るぜ」

「まだ始まったばかりだもん!」

 

 お、先生も6の目が出た。えーっと……? 手持ちの武器を売って飢えを凌ぐ? しかも結構思い入れのある品物が優先されて処理されるって、なんてむごい世界。人生って大変なのかな。プラス、思い入れのある品物だから精神がマイナス5だって。

 

「ふ、ここで特殊カード発動だ。俺に精神攻撃は効かないぜ」

「カードの効果は?」

「図太い、だ。このカードを使えばどんな魔具でも売りさばいても平気って訳さ」

「魔具って?」

「おっといけねえこっちの話だ。俺はこれでプラス2000万。まぁあんなのどこ探しても見つからねえからそんなもんだろ。実際はもっと安かったが」

「ねぇ、これ先生の人生ゲームじゃないよね?」

「ん? たまたまだよたまたま。早くサイコロを振ってくれねえか?」

 

 おっと珍しく2の目だ。エージェント職に就いて任務をこなすが、本来介入するべきでない事件に介入して精神的な負債を負う。精神マイナス10!? 待ってこれルールはどうなって──えっと、精神がマイナス5を突破するとフィアー値がたまりビビりやすくなると。で、その状態だとサイコロを二回ふらなくちゃいけなくて、合計が12でなければ次のマスは進めないと。

 

「へぇ、運が悪いな。おっと、だからといって手加減出来る程俺は甘くないぜ」

 

 5の目だ。

 事務所の仕事が少なくなって所持金低下。電気ガス水道代金が払えなくなり、全部停止。怪しい仕事の依頼を受けて散々な目に合うも、その過程で仲違いしてた兄弟と再会して幸福な気分に……? なんか具体的過ぎない!?

 

「くっそ金は貰えないのか。まぁ、幸福なら悪くはない」

「お金無くてもいいの?」

「金なんて無くてもいいだろ? それよりも、悩んでたことや心の中のわだかまりが無い方が大事さ」

「……そうなんだ」

 

 真っ直ぐに私を見つめてきた。それでも私は軽く瞳を合わせるだけで、私は何も言えなかった。

 ……先生に話せば、まるっと全部解決出来るのかな。でもそれだと、きっとリオが裁かれる。

 もし──リーダーだったら……?

 うん、きっと自分の気持ちに真っ直ぐに答えると思う。

 

 ──私達の問題は、私達で解決しなきゃ。

 

「で、一ノ瀬アスナよ。最近何かに悩んでそうだな。今も、悩んでそうな顔だ」

「へ? ううん、いつも通りだよ!」

「本当にそうか? 俺は先生だぜ。遠慮せずに何でも話したらいいさ」

「うーん、うら若き乙女の悩みなんて、そんな大したことないよ」

「そうかよ。んなら、俺の悩みでも答えて欲しいね」

「先生が悩み? うーん、とりあえずお話だけでも」

「困ってそうな生徒が、先生を全く頼ってくれないって悩みさ」

 

 

 

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