…長い夢を見ていた。
死んだ先輩後輩と暮らす幸せな夢。
その中に他の後輩たちがいないのが、私も死んでるんじゃないかって少し心配になるけど。
…まあ、それでもいいのかもしれないなって、最近は思い始めた。
だって、現実では貴方達はいなくて。
私は、ただ人の力を振り回すだけの
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「……。」
眩しい。
目を開けて辺りを見回す。──────身に覚えのない風景に、困惑した。
「……ここは」
自分の手元や服装を見ると、総記の階の司書補の服装をしていて。本は外れているようだった。
そして、隣には、全く顔に覚えのない女性がいた。
「……は?」
「……すぅ……」
スーツを着たその人は見た目は巣の人間のようにキッチリとしているのに、巣の人間とは、何か違うような感じがして。
「…。」
その人をずっと見ていると、居心地が悪くなったのだろうか。目元がふるふると震え──────眩しそうに目を開けた。
「……んぅ……?」
「……おはようございます。どちら様ですか」
聞いても返事は帰ってこなかった。
「んぇ…?」
「さっさと喋ってください面倒だな…。聞きたいことがあるんですけど!」
一生寝ぼけているので、もうこの人放置して別の人に聞こうかな…とか思って大きなため息をつくと。後ろの扉から扉を開ける音がした。
「先生、お待たせいたしまし……た…?」
「……あ」
扉を開いた張本人は、私を認識した途端目付きを鋭くして私を睨んでくる。
……確かに、帯剣しているし、「あ……」とか言ってしまっているし怪しさマックスなのは認めるけども。
「……貴方は何者ですか。所属部活と学校名を答えなさい」
「……部活?学校……?ここは巣の何処ですか?そのような概念がある地区は知らないんですけど」
「……巣、とは?」
「……はい?」
だとしても、話が噛み合わない。
とりあえず警戒心丸見えの彼女にいくつか質問してみた。
Q.ここは都市の何処?
A.ここは都市ではなく、学園都市キヴォトスという所のD.U地区である
Q.図書館、ねじれ、白夜と黒昼という単語に聞き覚えは?
A.無し
Q.あなたの主観で、私は何に見える?
A.先生を脅かす可能性のある不明な存在
という事だった。
そうやって質問しているうちに警戒心が少し消えた様で、少し警戒の色を解くと。
「その様子ですと、貴方もキヴォトスの外からやってきたのですね?」
「……みたいですね。……貴方も、ってのは」
「こちらの先生も、キヴォトスの外からやってきていると聞いています。……私は七神リンと申します。キヴォトスに関しては、先生を起こしてから説明させて頂きますので、少々……」
七神さん……リンさん?の、言葉が止まり、私じゃない方に目がいった。
そう、私が見るのを辞めたから再び眠りに落ちているこの人──────先生とかいう人に。
「……まだ寝てますねこのひと」
「…叩き起こしますか」
「この剣の柄でゴンってしません?」
「……それはやめましょう。」
結局、先生はリンさんに耳元で半ギレ気味に怒られて初めて起きた。
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「ご、ごめんねぇ……昨日全然寝てなかったから……」
「いえ、起きて頂けたなら大丈夫です。では、改めて説明させて頂きます。」
リンさんがそう言うと、彼女ら先程話していた内容から詳細、先生の役目などを説明して。
「……凡そ理解出来ましたでしょうか?」
「うん、大体は。」
リンさんがこちらを見てきたので、私はこくりと頷く。それを見て、先生は一段落したと感じたのか、
「……で、貴方の名前は?リンちゃんの名前は聞いたけど、貴方の名前、聞いてなかったよね」
私にそう話しかけてきた。リンさんにも名前を言ってなかったのでこっちを見てくる。
「……ヴァンです。よろしくお願いします」
過去に囚われすぎでしょう、私。
そう自嘲しながら──────
「じゃあヴァンちゃんだね!よろしくね」
「……はい。よろしくお願いします、先生」
ニコニコしながら手を差し出す彼女に、過去を思い出しながら手を握り返すのだった。
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(……羽生えてる人がいる…)
エレベーターをリンさんと先生と降りると、今度は4人、女の子が現れて。
そのままリンさんと話し始めた。
……まあ、私は初めて見るエレベーターとその景色に少しはしゃいでしまったので恥ずかしさのあまり引っ込んでいたのだけど。
……それにしても。ここに住んでいる人は普通の人間だけじゃないらしい。ねじれ……いや、EGOの方が正しいのだろうか?どちらにしても、普通の人間にはないようなものを備えている。
ツーサイドアップの髪型している、一見普通そうな見た目をしている子でさえ、輪のような何かがある訳で。
不思議なところに来てしまったものだなと、そう思った。
「……特務機関シャーレと、先生のことについてはわかりました。…それで、そこの貴方は?先生については説明を受けたけど、この子については何も話されていないけれど?」
凡そ、話が終わったらしい。ハーフアップの女の子──────早瀬ユウカさんがこちらに話題を降ってくる。
「こちらは──────……………………。」
リンさん、完全に沈黙。……確かに私のことはよく分からないだろうし、仕方ないとは思うけど。
「…どうも、先生の巻き添えにされました、ヴァンです。よろしくお願いします」
「私のせいなんだね……」
こんな感じでいいですよね?とリンさんに目配せすると、すごく微妙な顔をされた。
「へぇ……そうなの。よろしくね、ヴァンちゃん」
「……はい。よろしくお願いします」
「……えっと、苗字はなんというのでしょう?」
「苗字……ああ、私には無いです。あまり良い生まれじゃないので。」
ぴしっ、と場が固まる。
「……あー、えっと。……リンさん、この後はどうするんでしたっけ」
「…その話はまたいずれ聞かせてもらうとしましょうか。…シャーレの話に戻ります。シャーレの部室の地下に連邦生徒会長の命令でとあるものを持ち込んでいます。…先生を、そこにお連れしなくてはなりません。」
…どうにかゴリ押しで話をそらしてくれたリンさんに特大の感謝を送る私であった。
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「先生とヴァンちゃんは離れててください!」
そう言って四人は前線に走っていく。
本当はヘリを使うらしかったのだが、周囲に不良達が居るため難しいとの事だったので、この4人に協力してもらったわけだ。
「…私、一応帯剣してるんだけどな……」
そう呟くと、唯一後方に居たリンさんが答えてくれて。
「先生とヴァンさんはヘイローがないですから。」
「ヘイローって言うのは……その輪っかですかね?」
「ええ、そうです。ヘイローがある人間は、体が頑丈にできています。あのように──────」
チナツさんが指さす。その方向を見ると。
「……痛っ!?…これ、禁止されてる違法JHP弾じゃない!!』
『伏せてください、ユウカ。それに、スローポイント弾は違法指定されていませんよ』
あんな軽めの悲鳴で済むのか……と思わず呆れる。外郭に出てからしばらく経って、ある程度暇になってきた最近はローランさん達と手合わせしている事があるのだが……ロジックアトリエとか妖精とかは痛いとかそういうレベルじゃない。……1番はゲブラーさんの攻撃全般だけど。
アレは痛かったな…と思っていると、先生がチナツさんに話しかけた。
「…実は私、指揮取れるんだけど…任せてくれる?」
「……わかりました。お気をつけて」
「私も、先生の補佐を致します。ヴァンさんをお願いしますね」
そう言って、先生とリンさんは前線に行ってしまう。…さて。私は特にやることがない、ということになってしまったが。
「…性に合わないんですよね、一人だけ何もしてないの。」
チナツさんだって、何もしていないわけではない。前線の三人に適切な回復処置を行っているわけで。
それに、私が前に出ればチナツさんも子守の仕事もなくなるから前に出られる。
…それはつまり。
「…あれ?ヴァンさん?どちらへ…」
「すぐ戻ります。ある程度かき乱したら戻ってきます。」
「ヴァンさんっ!?」
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前線で撃ち合っていた三人を追い越し、そのまま前線に突っ込む。
こんなとき、軽装だと逃げ切れて助かる。R社の本を着ているときとかだったらすぐ追いつかれてしまっただろうし。
当然、敵は突っ込んでくる私を見つけた瞬間ぎょっとしていて。……まあ、私が駆け抜けた時のユウカさん達の顔もそんな感じだったけど。
「う、撃てぇっ!!!」
「いや待て!?アイツ、ヘイローが無いぞ!?」
複数の銃がこちらに向けられる。しかし、ヘイローがないと分かった途端、何人かは躊躇したようで。
(『心は熱くても頭は冷たくあれ』…ですよね)
図書館で怒りに身を任せて暴れていたとき、上司から教わった言葉。
どんなに感情が左右したとて、頭だけは冷やせ。
「ふざけんのもいい加減にしろよ、一般人が!!!」
リーダー格のような不良が、見たことも無い銃を撃ち込んでくる。
私は飛んでくる銃弾を、見極めて──────
(今)
致命に至る弾丸を──────全て弾いた。
「……っ」
致命のものだけを弾いたので、当たらないと思っていた弾が何発か掠めてしまっていたが、それは許容範囲内。
「……は?え?what?」
「…リーダーなら、もっと冷静にものを考えた方が良かったですね。」
「えっ、ちょおま──────」
有無を言わせず首元を斬……あれ。斬れてない。嘘。
司書補の剣の切れ味は確かに高い方ではない。……けど、首に傷程度なら出来るはずなのだが……
(打撲痕だけって……頑丈すぎでしょ。馬鹿なの?)
内心動揺しているけど顔に出さずに。
「……次、誰ですか?」
「──────っ撃、撃て」
副リーダー的な人が号令した。今度は、複数人から狙われている。……つまり。……このままでは確実に死ぬ。
……でも、私の目的は単独制圧じゃなくて。
「はびっ!?」
副リーダーが頭から吹っ飛んだ。
「……はっ。そういえばあっちに3人ぐらい……いてっ!?」
重大なことに気づいた不良の頭に、何かが飛んでくる。
「はぁ?なんだよ……って、閃光弾──────!?ぴゃーっ!??」
閃光が周囲を包み込む。もちろん私も例外じゃなかったのだが、いい感じに不良が遮蔽になって目が潰れることはなかった。
「ギャー!!?目がー!???」
「あのヘイローのないアイツだけでもやっちまえ!!!適当にばらまけば当たる──────」
「させないっ!!!」
盲目で恐慌状態の人間を、ユウカさん達がそのまま全員討ち取っていった。
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「何やってるのよ!!!危うく死んじゃうところだったじゃない!!」
「……でも、勝てましたよ。私も死ぬつもりで突っ込んでる訳では無いですし。」
頭は冷えていた、そう言うとユウカさんは「私達が死んじゃわないかヒヤヒヤしてたのよ!??」と怒られる。
「確かに先程の行為はどう見ても自殺行為ですが……素晴らしい剣筋でしたね。どこかで習われていたのですか?」
「……まあ、はい。ある程度は。」
習っていたというか、殺されかけたり、実際に殺されながら学んだというか。どっちにしても答えることは無理なので濁しておく。
「重篤な怪我は負っていない様ですね……ですが一応、包帯を……」
「……えっと。…過保護すぎませんか……?」
「……どんなところで暮らしてきたらこんな自殺行為ができるんですか??」
スズミさんがそう聞いてくる。……多分説明しても理解されないだろうし、いい感じにはぐらかして。
「……チナツさん。怪我の手当、これで終わりですよね?……行きましょう。」
立ち上がる。……安静にしたからか、少し痛んだが、無視する。
「待って、ヴァンちゃん。……どうしてあんなことしたの?」
先生が、さっきとは違った真面目な顔で聞いてくる。
どうして、なんて。だって、何もしてないと──────
「……強くないといけないんです。銃なんかに怯えてたら、大事な人を失うから。」
「──────。」
「……行きますよ。あともう少しなんでしょう?」
「……うん。でも、次からは私の指示に従ってくれると嬉しいな。怪我させないように指示するから……ね?」
「…分かりました。」
先生はそれを聞いて少しだけ安心したようだった。
(……変な人だな。人の命なんて掃き捨てるほどあるだろうに)
特別な人でもないのに。…そう心の中で呟いた。
【パッシブ:受け流す、遠距離体制を取得。】
図書館司書補 ヴァンのコアページ
・受け流す 遠距離ダイスとマッチ時、ダメージ量-2
・遠距離体制 遠距離ダイスとマッチ時、ダイス威力+3
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シャーレ前にて待ち構えていたクルセイダー戦車。
それを見た一番最初の感想は、(こういうの社会科学のところの幻想体にいたな……)だった。
鉄の塊。破壊力抜群。…攻撃してみたけど跳ね返されてしまったので、周りの歩兵を撲殺することに集中した。
「ぎゃーっ!??」
「やっぱり、近接で戦うのは慣れてないみたいです…ねっ!!」
銃を乱射する不良を気絶させ、先生の指示通りにすぐ下がる。…ユウカさんが動きやすいと言っていたけど案外間違いではないようで。
(考えることが減るからいいね。…まあ、暴れられないのが欠点だけど)
先生の指揮下だと、なるべく被弾を避けたりするような動きが多いので、そこはちょっと不満ではあるけど。
「…こっちは制圧出来ました!」
「私達もそろそろ…あ」
ぼがーんっ!!!という音ともにクルセイダー戦車が爆発。
鉄クズと化したそれから不良が飛び出してきたが、しっかり頭をハスミさんに撃たれていた。
「戦闘終了…ですかね。お疲れ様でした」
「これでようやくシャーレに着くわね…疲れた…」
各々が、武器を下ろしていく。私も、得物を下ろして、全滅した不良達を一瞥する。…まあ、多分大丈夫だろう。
「では、シャーレの中に…地下に行きましょう。こちらです」
…地下に向かっていく先生とリンさんを見送って、そのまま何処か彷徨うか…と思ったら、先生に着いてきて欲しいと言われたのでついていくことに。
「…なんで私もなんですか…?」
「…ヴァンちゃん、この後行く当てもないでしょ?それなら一緒にシャーレで働く方がいいのかなって思って。」
あの子達の誰かについて行くとかなら話は別なんだけどね?と言う先生。
…正直、ありがたい。この先、どうすればいいか分からなかったから。
「…じゃあ、これからお世話になります。よろしくお願いします」
あらためてぺこりと一礼する。…多分、仕事は先生の護衛とかになるのだろう。
…なら、私の力も司書補の力だけでは足りないわけで。どうにかして、なにか力を得る方法があればよかったのだが──────
「着きました。…幸い、傷は一つも付いていませんね」
そう思考している私を遮るかのように、地下に到着してすぐにリンさんがそう言う。
「…先生、受け取ってください」
「…たぶれっと?」
「ええ、普通のタブレットに見えますが、実は正体が──────」
…タブレット、とは?と私は疑問に思ったのだが、先生達は話を続けてしまっている。大人しく、辺りの探索でもしていよう。そう思い直し、辺りを見渡すと。
「──────。リンさん」
「はい?なんでしょう」
見覚えのあるものが目に入る。
「…アレ、頂いてもいいですかね」
「え…ああ。あの本ですか。…ええ、大丈夫だと思います。確認したときは特に特徴のない本でしたし」
「…!ありがとうございます!!」
猛烈に感謝して、その一冊の本を手に取る。力が得られる方法を探していたので、本当にありがたい──────
「──────ぁ、っ?」
くらり、と唐突に急にめまいがした。
「…どうしました、ヴァンさん?」
「ゃ、っ──────」
そのままリンさんに対する声も発せず、意識を失った。
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…暗い。…雨も降っているだろうか。
『あんた達に、アイツの本でふざけたことはさせない…そう思ってたのに』
『私は、アイツより弱かったからアイツの剣で殺されたんだ』
暗い影が見えた。フサフサした上着を着た影が、そう語る。
「私も、そんなことはしたくなかった。…でも、あの時は目的があって譲れなかったんです。…お互いにお互いの戦う理由があった。…それなら、ああなることは、予知出来てたじゃないですか…?」
『ああなるなんて予想してなかった…!アイツが死ぬなんて…!』
「…分かります。私も、そんなことをずっと前に思ってきましたから。」
『…アンタに何が分かる…!』
「…私は多分…あなたに力を貸して欲しくてここに来ました。」
『絶対に貸すものか。お前は、アイツの…マスの仇なんだから…!』
影が、姿を現した。街灯事務所フィクサー、ルル。
彼女と、彼女の友達のマスを殺したのは、私だ。だから。
「…分かってます。だから、こうしましょう。」
「今から一体一で戦って、私が勝てば手伝ってもらいます。…負けたら、私を殺すでも何でもしてもらって構いません。」
『…言ったな?』
「はい。…勝ったら言いたいことも、あるので。」
『…お前の首、ぶっ飛ばしてやる…!』
ルルのバットが赤く発熱する。…それを見て、私は剣を抜いた。
ルルの本 完全解放戦 開始
初めまして、作者です。
という訳で、まちまちルイナ要素とロボトミー要素を含んだブルーアーカイブが進行していきます。投稿頻度は激遅なのでご了承ください。
ヴァンの容姿についてですが…次回までにメーカーなどで作成しておくので今回は見送りをお願いします。
では、機会があれば。