「…なるほどね。」
先生がノノミさんたちの説明を聞いて頷く。
「GPSは…充電が切れてるのか。定時に店を出てるから、寄り道ってことも無い、か…。…多分、誘拐かな。」
「まさか、ヘルメット団の連中?」
「その確率が高いかな…。…ちょっと待っててね。」
先生がタブレット端末を取り出して操作し始める。…多分、場所を特定するのだろう。
「私、準備してますね」
「ん、私達も出る準備しよう」
そこの仕事は先生に任せ、私は武器を──────黒剣を取り出す。
本当は、司書補の武器は警棒なのだけれど。前に、ゲブラーさんやホクマーさんのそれが異質だったのを見たローランさんがアンジェラ様に抗議に行った事があって。
『普通の警棒と変わらないわよ?』
『そうなのか!??』
『当たり前でしょう。…でも、他の司書補も使いやすい武器の方が良いかもしれないわね。』
まあ、司書補の状態で接待することはもう無いでしょうけど。と言いながらも、アンジェラ様はそれを承諾した。
結果、私たちの武器は、鎌だったり短剣だったりにそれぞれ多様になっていったわけなんだけれど。
(…ロボトミーの時の武器とは違うけど、安心するんですよね)
愛剣に傷などがないかを眺めて、そっと仕舞う。
(次ですね。…ルル)
『分かってるわよ、準備は出来てるから。』
(了解です。何時でも変われるようにお願いします)
『そっちこそ、へなちょこな死に方するんじゃないわよ。』
そう言いながらもセリカさんを気に入っていたようで、気合いを入れている様子のルル。
これで私は準備完了。後は先生が場所を特定するのを待つだけ。
「お待たせ!特定完了したよ!みんなに共有する!」
…いつの間にシロコさんたちの連絡先を知ってるんですか、とジト目を送ろうかと考えたが、今はそれどころではないと思い、自分のスマホを取り出す。
「…砂漠地帯…ですね。アジトに移送している最中なんですかね?」
「すぐ向かわないと。先生、ご指示をお願いします。」
「任せて。ヴァンちゃん」
「はい、護衛ですよね。分かってます」
「ありがとね。…よし!それじゃあセリカちゃんを助けに行こう!」
「「「おー!」」」
「うへぇ…」
「…あ、言った方が良かったですか。すみません」
「…締まらないなぁ…」
…今の私がそれに乗ってもちょっとなぁ。とか思ったのは内緒だ。
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「…ぅ、うぅ……頭が…。」
ガタン、ガタンと揺れる衝撃で私は目を覚ました。
「…ここ、トラックの荷台の中…?」
誘拐された、それは記憶にはあって。どうにか脱出しようと、周りを見渡してみる。
「ぁ…扉から、外が見え…」
「…線路…?ってことは、ここ、アビドス郊外…っ!??」
「どうしよう、ここじゃ皆に連絡が取れない…脱出しても、どこに行けばいいか…。」
そうだ。…逃げても、行先が分からずに倒れてしまうかもしれないし。このままここに居ても──────
「…私…誰にも気づかれないように埋められちゃうのかな…」
きっと、皆にはアビドスを去ったって思われて。
挨拶もできないまま、死んでしまう。
「そんなの…やだよ…っ」
そう、零した瞬間。
爆発音と共に、体が後ろに吹き飛んだ。そのまま衝撃で空いた荷台から外に──────吹き飛び方が、少し上向きだったようで。空中に放り出された。
「う、うわああああああっ!??」
地面がすごい勢いで近づいてくる。
ぎゅっ、と目をつぶって痛みに備えて──────
「よっ…いしょ。…危なかった。」
抱き留められた。…一体誰に?
「……ヴァ、ン…?」
「はい、ヴァンです。…無事でよかった。…先生!」
『皆!全力攻撃開始ぃぃぃぃ!!!!』
通信機越しに聞こえた声の後に、銃弾とミサイルが殺到して。私が乗っていたトラックが鉄クズになった。
「…立てますか?無理そうなら、先生の方に送りますけど…」
「ううん。もう大丈夫!」
「…そうですか。じゃ、残党狩りと行きましょう。アヤネさんが見てくれてますし、私も行きます。」
少し奥の方から、バタバタとヘルメット団が来ているのが見えて。…でも、ヴァンには、ヘイローがない普通の人間で。
「でも、アンタ…」
「伊達に、先生の護衛してませんよ。だから──────大丈夫。」
カンカンカンッ!!!と自分に飛んできた弾を叩き落としたヴァンを見て、
「…ね?」
「…うそぉ。」
実は、ヘイローを持ってない方が特出して強くなるのかな。とか思ったりした。
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「うわああああああっ!??やめろぉ!!!突っ込んでくるなっ、あぢゃいいいいっ!???」
「逃げ…いや駄目だ、でも…っ!!!」
「死にたくない…!!!」
「こっちに手を出すのが悪いでしょ。くたばってください」
前に出て、ヘルメット団の頭をバットで思いっきり振り抜く。
そうすると、こっちに向けて銃を乱射してくるので、切り倒したヘルメット団を盾にして防いで。
「てめっ、汚ぇ──────」
「汚いも何も無いですよ。…セリカさん」
「了解!」
「ぴいっ!??」
そのまま、私に気を取られている間にセリカさんに頭を撃ち抜かれてパタっ、と動かなくなった。
「お疲れ様です。カバー、助かりました」
「別にあんなの普通よ!…早く私も先輩達の方に行かないと…!」
奥の方を見ると、ホシノさんたちが戦車を相手に走り回っていた。
「分かりました。セリカさんが合流するって先生に伝えておきます。」
「ありがと!…あれ、でもヴァンは?」
「アレに私の刃は弾かれちゃうので。こっちで目的とかを吐かせておきます。」
「りょーかい!じゃ、行ってくる!」
走っていくセリカさんを見送り、先生に声を掛けて。
…さて。あんな風にキメてみてはいいものの。あの銃弾、かなり危なかった。
少しでも気づくのが遅れたら頭に直撃してそのまま即死していただろう。
流石にあの台詞の後に死ぬのは懲戒チームに居た、「赤い霧なんぞ、俺が倒してしまってもいいのだろう?」といった三秒後に黄昏の突撃で細切れにされたあのアホを思い出しそうになるから嫌だ。
「本当に、私達に優しくない世界しか無いんですね…。」
…今更か。
「さ、起きてる奴は…と。」
軽く辺りの気絶しているであろうヘルメット団達を見回して。
「…居た。…ね、そこのあなた、起きてますよね。」
起きているであろうヘルメット団に声を掛ける。びくんっ、肩が跳ねたから当たりだろう。…でも、そのまま微動だにせずに動かないのは…自分では無いと思っているのかな。
「ルル。」
『…分かったわよ』
焼けたバットをヘルメット団の首筋にちょんっ、と当てると、軽くジュッ、と焼ける音がして。
「〜〜〜〜〜〜ッ!????」
とヘルメット団が飛び起きた。
「ほら、起きてるじゃないですか。学校を襲う理由、多分依頼とかですよね?とりあえず…依頼主と、目的…あと、この武器の出処とか。全部吐いてください。」
話すのを渋ったらまた焼きますけど。とバットを軽く振りながら言うと、慌てて話し始めた。
私が聞いた情報のいくつかは、ルルが提案したものだった。
『一応全部憶測だから、仮定の話になるけど。
このカタカタヘルメット団、という集団には、戦車を買えるほどの財力とかがあるとは考えづらいのよ。
というか、金があるならアビドスを襲わないだろうし、もっと他の方法があったでしょ?』
とのこと。そして、それは合っていたようだけど聞いた人間が悪かったようで。ブラックマーケットから仕入れた、依頼人と目的は何も聞かされていない、知っているのはリーダーだけ…という感じだった。
「で、そのリーダーは?」
「戦車で私たちの護衛してたと思うんだけど…」
「アレですか?」
指さした方には、ホシノさん達に囲まれている戦車があって。
ぼかーんっ!
「り、りーだーっ!???!?」
「あー…」
戦車が大爆発したのを見て、尋問中だったヘルメット団の団員はそっちに走っていった。…あれは、無事で居れるのだろうか。流石に死にそうだけれど。
その後、私が先生の方に合流した時にはヘルメット団達は退散していて。
セリカさん渾身のデレを頂戴した。…うん。やっぱりルルに似てるな、とか思っていたんだけど──────
「ていうかセリカちゃん。ヴァンちゃん、セリカちゃんより年上だよ?」
「えぇ!?」
「ん、私たちと同学年」
「え、先輩だったの!?てっきり──────」
…貧相な体で、悪かったなっ。
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アビドスの路地裏。カタカタヘルメット団達が屯している場所。
「くそ…また失敗した…」
「どうしようリーダー…このままだと…」
「うっさい、今考えて──────っ」
次の作戦が思いつかず、頭を搔いて。そして、
ふと前を向くと──────
「ぁ」
何かが居た。…前だけじゃない。後ろ、左右、建物の上──────
「──────!!!!!」
それは、ヘルメット団達の悲鳴なのか、襲いかかる物の音なのか。
少なくとも、分かることがあるとしたら。
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「さあ皆、仕事の時間よ─────って、あら?」
依頼を得た、便利屋を名乗る4人組が向かう頃にはその場所にはヘルメットだけが残されていた、ということだけだった。
黒剣の件は警棒のミスをどうにかした感じの話…と思っていただければ幸いです。
ホシノとセリカのふたりと仲良くなれたヴァンちゃんな訳ですが、この先いい感じに絡めさせるエピがない。ということで便利屋襲撃の後ぐらいに閑話を挟む可能性があります。
ではまた次回。