鴉の妖狩り~妖怪が人を襲う危険な日本に転移したけど、妖力が身体能力に影響するこの世界で妖力MAXの俺はどうやら最強らしい~   作:白波 鷹

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第5話 沙羅神だって!?

「―んん? おっ、兄ちゃん。その格好、もしかして、『神隠し』にでもあったか?」

 

 夜波と別れ、ひとまず俺が門の近くへと歩いていた時だった。

 突然、俺のことを目にした門番らしきおっさんが珍しいものを見るような目でそう声を掛けてきたのだ。というか、門番っていつの時代だよ……。

 

「……改めて、ここって俺の居た日本じゃないんだな」

「あん? その様子だと、やっぱり兄ちゃんは向こうの日本人ってことか」

「まあな―っていうか、見た目だけで分かるって、そんなに俺の格好変なのか?」

 

「ん? まあ、そっちの日本は知らねぇけど、俺らからしたら変だわな。見ろよ、この服! うちの家内が縫ってくれたんだよ」

「お~、和服って感じがして良いな」

 

 門番のおっさんが着ていた服は江戸時代くらいの服装だ。日本の時代劇でよく見掛けるような感じだな。まあ、俺は全然時代劇とか見ないから、なんとなくそんな感じってくらいしか表現できないが。

 

 ただ、よく似合っていたから素直に褒めると、おっさんは上機嫌な様子で鼻息を荒く話してくれた。

 

「だろ~? ま、ここに住んでる連中は『神隠し』についてはみんな知ってるよ。ついこの間も『神隠し』にあったっていう兄ちゃんの服と似たような色の服を着た嬢ちゃんを里に通したばっかりだしな」

 

「本当か!? どんな見た目か覚えてるか?」

「ん~、確か髪は長くて茶色い髪だったかなぁ」

 

 茶色の髪か……天羽も茶髪だけど、最近は茶髪も多いからな。

 髪型だけだと天羽だと確定はできないが、どっちにしろコンタクトを取る必要はあるよな。

 

「そいつがどこに行ったかは分かるか?」

「さすがにそりゃ分からねぇけど、『神隠し』にあった人間は『帝様』に謁見した後、専用の区画で生活を保障してもらえるはずだ。だから、その嬢ちゃんもその区画に居るんじゃねぇかな」

 

「帝様? 誰だそりゃ? 偉い人なのか?」

「おっと、こっちに来たばっかりの兄ちゃんには分からねぇか。まあ、簡単に言っちまえば、この里で一番偉い人だよ」

「一番偉い人ねぇ……」

 

「帝様はすげぇんだよ。『妖』のことは知ってるか?」

「ああ、軽く聞いた。人間を襲うバケモンらしいな」

「そうそう! んで、俺らみたいな一般人の代わりに『妖』と戦う連中のことを『妖狩り』つーんだが、帝様の家系はその中で一番強いお家なんだよ」

 

「一番強い?」

「ああ。その昔、この都が『妖』に襲われた時に退治してくれたのが、その帝様のご先祖様―『朱天寺様』よ」

「『妖』が都に来たのか? 都は安全だって聞いてたが」

 

「はは! もう何十年も前の話だって! ま、ともかく、俺らがこうして安全に暮らせているのも帝様のおかげだってことだ。今の『妖狩り』は帝様に仕える組織でな、俺らみたいに『妖』と戦えない一般人にとっちゃ、『妖狩り』の長である帝様には頭が上がらねぇよ」

「なるほどねぇ……なら、その朱天寺って人に聞けば、『神隠し』にあった奴らのことが分かるかもしれないってことだよな?」

 

「朱天寺様を呼び捨てちゃ駄目だって……ま、さっきも言った通り『神隠し』にあった人間は『帝様』が謁見されておられるはずだからな。誰か探してるなら、一度訪ねても良いかもしれねぇな」

「そうするか。サンキューな、おっさん」

「サンキュー? 三と九がなんだって?」

 

「あー……そういや、ここ異世界だったな。ありがとうって言いたかっただけだ」

「ん? そうなのか? この間の嬢ちゃんもたまに変な言葉使ってたけど、俺らにゃさっぱりだわ」

「それはそうと、その帝様には簡単に会えるのか? 聞いた感じお偉いさんだし、そうそう会えそうには思えないんだが……」

 

「ん? ああ、兄ちゃんの場合は『神隠し』にあった人間だし、住むところもねぇだろ? だから、帝様と一度お会いすることになると思うからすぐに会えるだろうさ」

「そういや、確かに住む場所とか全く考えてなかったな……」

 

 言われてみれば、帰る手段が見つからない以上は当面この世界で生活しなくちゃいけないもんな。どっちにしろ、その帝様ってのに会って今後のことを考える必要があるってわけだ。

 

「にしても、よく里の場所が分かったな。『妖』のことも知ってるみたいだし。誰かに案内でもしてもらったのか?」

「ん? ああ。おっさんの言う通り、ここまで道案内してくれた奴が居たんだ。沙羅神って奴なんだけど……」

「な―! 沙羅神だって!?」

「え? いきなりどうしたんだよ?」

 

 沙羅神という名前を出した途端、大袈裟な様子で驚く門番のおっさんに思わずそう声を掛けると、おっさんは周りをキョロキョロと見渡した後、人に聞かれないように配慮した様子で声を返してきた。

 

「……兄ちゃん、大丈夫だったか?」

「はあ? 何が?」

「……兄ちゃんを案内したっていうその沙羅神なんだけどな……その昔、この都の『帝』だった家なんだ」

「『帝』? ああ、さっき言ってた『神隠し』にあった奴らを保護してくれてるって奴か。なんだよ、ってことはあいつ偉い奴だったのか」

 

 っていうか、さっきは敬称を付けて「帝様って呼ばないと駄目だ」とか言ってたのに今度は呼び捨てか。そんなことを俺が思った矢先、おっさんは呆れた様子で首を横へと振り返してきた。

 

「―ちげーよ、逆だ逆」

「逆?」

 

 おっさんの言っている意味が分からず、首を傾げた俺はその意図を探るべく言葉を返した。

 

「逆ってどういうことだ? さっき帝様ってのが都で一番偉いって言ってただろ。沙羅神も同じ帝ってやつじゃないのか?」

「確かに昔はそうだったんだ……けど、今はちげーよ。昔、この都が『妖』に襲われたってことは話したよな?」

「ああ」

 

「奴らはその時の『帝』だったんだが……『妖(あやかし)』が襲撃してきた時、俺ら一般人を置いて何もせず逃げやがったんだ」

「逃げた……?」

「そうだ。そんで、その時に里を守ってくれたのが今の帝様―朱天寺家のお方達だ。それに対して、沙羅神の連中は散々俺達から金を奪っておいて、いざとなったら他の人間を捨てて生き延びようとする最低な奴らだ……悪いことは言わねぇ、連中とは関わらない方が身の為だぜ」

 

 壁に寄りかかりながらそう口にするおっさんには侮蔑の色が見て取れた。

 

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