全員の意見が一致したため、俺達は『ふしぎ探検隊』というゲームで遊ぶことになった。
そして、当然と言えば当然の話であるが、ココちゃんが最初に開き、ゲームの中身を確認する事になる。
「さ、ココちゃん。開けてみてよ」
「う、うん。でも、いいのかな?」
「もちろんだよ。ね? リョウさん!」
「うん。フィオナちゃんの言う通りだよ。ココちゃんが選んだゲームなんだから、まずはココちゃんが開けてみて」
「わ、わかった」
ココちゃんは緊張しながら、箱をテーブルの上に置いて、深呼吸をしながら開く。
あんまり注目しても可哀想かと俺はジーナちゃんと共に大量のゲーム箱を邪魔にならない所へ置きながらココちゃんの開封を待った。
そして……。
「いきます!」
「おぉー」
開かれた箱に入っていたのは、おそらく説明書と思われる冊子が一つと、小さな筒状の魔導具が一つだけだった。
箱に描かれていた様な探検セット的な物は見当たらない。
その事実に、ココちゃんは僅かに震えながら助けを求める様に俺を見た。
「え、えと、ココ……?」
「どうやら、このゲームは魔導具を使って遊ぶものみたいだね。ちょっと説明書を見せて貰っても良いかな?」
「うん……」
俺は分からないなりに適当な事を言い、ココちゃんから渡された説明書に目を通す。
頼む! 俺の推理よ当たってくれ!!
祈りだ。
この世界に神が居るのか、それは分からないが、俺は神なる存在に祈った。
どうか、このゲームがココちゃんを楽しませる物であってくれ! と。
そして、その祈りは……確かに通じた様だった。
「う、うん! やっぱり俺の言った通りみたいだ! ちょっと魔導具も借りて良いかな?」
「うん」
「えーっと説明書によるとだね……この筒を立てて、根本にあるスイッチを入れると……っ!? な、なんだ!?」
スイッチを入れた瞬間、魔導具から光が溢れ、次の瞬間には見知らぬ場所に立っていた。
服装も、先ほどまで着ていた部屋着ではなく、ゲームの外箱に描かれていた探検隊の服装になっている。
「お、おぉ……すごい。これは転移魔法?」
「違うよー。筒の中に圧縮された空間があって、それを解放したの。それで、周りにいた私たちが拡張空間に入り込んで、全部終わったら外に出られるって感じ」
「詳しいことはよく分からないけど、何か凄い事が起きてるって事は分かったよ」
「うん。そんな感じで良いと思うよ。でも……」
「でも?」
「いや。凄い綺麗な空間だなって思って。これを作った人はかなり凄腕の魔術師なんだね」
「なるほど」
俺は分からないなりに、納得し、頷いた。
そして、一番重要であるココちゃんの様子を確認したのである。
ココちゃんはキラキラとした笑顔で探検隊の服装になった自分の格好を見ている。
とても素晴らしい。
良いゲームを買ったな。
来年もいっぱい働いてお金を稼いでみんなに喜んで貰おう。
「じゃあゲームで遊ぼうか」
「うん!」
「えーっとこのゲームは……説明があるから読むね」
俺はコホンと咳ばらいをしてから声を真剣な物に変えて説明書に書かれた文を読む。
「諸君。ここは諸君もご存知の通り、禁断の森である」
「きんだんの、もり……!」
「そうだ。神話の時代より人々が足を踏み入れる事が出来なかった神々が住まうとされる場所だ」
「お、おぉ……!」
「無論我々はこの森を荒らす為に来た訳ではない。あくまでこの森に住まう生物を発見、観察する為に来たのだ」
「……!」
「どうか諸君の手で神秘の森に住まう多くの生き物を発見してくれ!」
「はい!」
ココちゃんはもう完全に気持ちが入り込んでいて、元気よく手を挙げながら俺に応えてくれた。
そして、俺はそんなココちゃんに笑いかけてから続きの機能を解放する。
「ありがとう。では諸君に探検図鑑を渡しておこう。見た事がない生き物を見つけたら探検図鑑で撮影してくれ。頼んだぞ」
「わかりましたー!」
ココちゃんはやる気いっぱいという顔で、手に持った図鑑を開く。
そこにはまだ何も描かれていないが、これから新種を見つける度に描かれていくという事なのだろう。
うーん。凄いな。
とんでもないハイテクゲームだ。
本当に買って良かった。
と、フィオナちゃんやリリィちゃん、ジーナちゃんと作戦会議をしているココちゃんを見ながら思うのだった。
「ふふ。お兄ちゃん嬉しそうだね」
「まぁね。桜はどう?」
「私も嬉しいよ。それに、面白そうなゲームだなって思った。お兄ちゃんの演技が凄かったからかな」
「そう言って貰えると頑張った甲斐があるよ」
桜に笑い返し、俺達もココちゃんの所に向かう。
「あ、リョウお兄ちゃん。えっと、これからどうしようかなって」
「んー。俺は特に決めて無いから、ココちゃんが決めてくれると嬉しいな」
「ココが!?」
「嫌なら、俺達の誰かがやるけど……ココちゃんは、嫌?」
「い、嫌じゃない」
「それなら、はい」
俺は魔導具の機能で作った隊長帽子をココちゃんの頭に乗せる。
それで気づいたのだが、どうやらこのゲーム。相当に頭が良いらしく帽子の上にぴょこんとココちゃんの耳が出ている。
まさかの獣人にも対応しているゲームであった。
「ココ隊長! ご指示をお願いします!」
「~~! じゃ、じゃあ! たんけん! 開始します!」
「はい!」
俺は昔、知り合いのお爺さんに教えてもらった敬礼をココちゃんに返し、桜たちも見様見真似で敬礼をしてくれる。
まぁ、見た感じ格好いい感じに見えるもんな。
と、そんなこんなで俺達は深い森の奥へと探検に向かうのだった。
一番先頭をココちゃんが歩き、隣をふわふわと浮いているジーナちゃん。
そのすぐ後ろにフィオナちゃんとリリィちゃんが続き。
俺は桜と共に、説明書を読みながら歩いていた。
「うーん。見る限り危険は無さそうだね。小さなお子様でも安全に遊べますって書いてあるし」
「じゃあお兄ちゃんは見守り係?」
「まぁ、そうだね。何かあれば俺も手伝うけど、基本的にはココちゃんが楽しんでもらうのが優先かな」
「そうだねぇ。じゃあ私はお兄ちゃんのサポート係やります!」
「助かるよ。桜」
「えへへ。これはこれで役得だからね」
楽しそうに歩く桜の隣で説明書を視つつ、俺はそこに書かれた全部で一万種類以上生物が居ますという言葉に内心で驚いていた。
口には出さないけど、思わず誰かに情報を共有したくなる様な衝撃的な説明だ。
どんだけ遊べるんだ。このゲーム。
もはや驚くを通り越して怖さすら感じてきたなと思いながら、俺は先を行くココちゃんの背中を見つめる。
ココちゃんはおっかなびっくりという感じに森を歩きながら、ジーっと色々な所を観察していた。
探検隊になりきっているのだろう。
そして、生き物を見つけると大喜びで写真を撮り、図鑑に書かれた説明を読み上げる。
どうやらこのゲームには知育的な要素もあるらしい。
という事に震えながら、森の中を散歩するのだった。
それから。
俺達はどれだけ探検をしていたか分からないが、かなりの数の生き物を見つけ、ココ隊長のそろそろ終わろうと言う言葉を合図としてゲームを終了した。
戻って来た俺達が時計を見た時、既に時刻は夜になっており、フィオナちゃんとリリィちゃん、桜は急いで夕食を作りにキッチンへ走り。
ジーナちゃんは疲れたー! と言いながら椅子にその身を投げ出していた。
俺はと言えば、ゲームの機能を使い、手帳を作り出してココちゃんの手に渡す。
「はい。ココちゃん。これがココちゃんの頑張った結果だよ」
「これ……っ! これ!」
「うん。探検図鑑だね。ページを開くと、ココちゃんが見つけた生き物がいっぱい写ってるんだ」
「すごい……!」
「では、これは次の探検までココ隊長に預ける! 大事にしてくれ!」
「はい!」
ココちゃんは俺がやった敬礼を見様見真似で行い、手帳を大事に抱きしめて笑うのだった。