異界冒険譚   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第110話『もう一人の魔法使い(まじょ)

 意外。

 という事も無いのだけれど、巨大な魔物と俺たちの戦いは、まぁ、かなり一方的な物であった。

 

「ジーナちゃん!」

 

 俺はこの世界の力を使い空中に足場を作って、巨人の顔を目掛けて飛び込みながら神刀を振るう。

 そして、その飛び込んだ勢いのまま巨人の背後に回り込み、再び足場を作りながらジーナちゃんの名を呼んだ。

 

 ジーナちゃんは待ってましたとばかりに空から巨人に向かって舞い降りた。

 

「ジーナちゃん……!! きぃぃぃいいいいっく!!」

 

 空中に飛びながら、爆発のエネルギーと自由落下の速度を足した超加速で突っ込んできたジーナちゃんは、右足を突き出した状態で、巨人の体を穿ちながら落ちてゆく。

 だが、上手い事地面に触れるよりも前に転移をして、再び空中へと帰るのだった。

 

 巨人は俺とジーナちゃんの攻撃に対処が間に合わず、腕を振り回す。が……。

 

「無駄です」

 

 どれほど強力な攻撃であってもリリィちゃんが全て弾いてしまう為、俺やジーナちゃんに攻撃が届く事は無いのだった。

 そして、派手な事はそこまでないが、確実な攻防を俺たちは繰り返し、やがて限界を迎えた巨人は光の中に消えてゆくのだった。

 

「勝った……のかな」

「そうみたいだね」

「……やりましたね」

 

 ジーナちゃんとリリィちゃんと戦闘が終わったことを確認し合いながら、俺は周囲を見渡した。

 が、特に変化は見えない。

 

 ミクちゃんに関係する事を願った所、アレが出てきた。

 という事はあれがミクちゃんに関係する何かだったと思ったのだけれど、勘違いだったのだろうか。

 うーん。

 

「む? むむむ」

「どうしたの。ジーナちゃん」

「なんか、おチビちゃんの魔力を感じる!」

「場所は分かる?」

「こっち!」

 

 ジーナちゃんは俺とリリィちゃんを連れて転移し、森の中に再び戻った。

 とは言っても、場所は先ほど歩いていた場所とだいぶ違う様子である。

 

 周囲に生えている木はそこまで密集しておらず、木々の間から降りてくる木漏れ日が緑に溢れた地面を照らしている。

 森の中だというのに、どこか解放感のあるこの場所ではそこまで強くない風が通り過ぎていた。

 

 とても心地よい場所だ。

 ずっと居たいと思えるほどに。

 

 しかし、そんな穏やかな空間に似合わない鋭い雰囲気を持った少女が一人、木漏れ日の森の中、シンプルな木造の家を背後に置いて俺たちを睨みつけていた。

 少女は森によく似合う動きやすい服に、茶色の髪を長く伸ばした少し地味な雰囲気の少女だ。

 前髪で元まで隠しているからか、顔立ちは分かりにくいが、会ったことはないと思う。

 

 なんて考えていたら、少女はジーナちゃんを睨みつけて口を開いた。

 

「まさか、貴女が来るなんて思わなかったわ。女王」

「んー? じょーおー?」

「少し見ない間に、人間と一緒に居る様になったのね。知らなかったわ」

「だれ? あなた」

「……私はカーラ。切断の魔女カーラ」

 

 怯える様に、自らの左腕を右手で押さえながらミクちゃんと話す少女は、地味な恰好をしているが隠し切れない雰囲気、というか空気があった。

 おそらくは長く伸ばされた茶色の前髪から僅かに見える金色の瞳が原因の様にも思う。

 

 ジーナちゃんやミクちゃんと同じ、金色の瞳。

 そして、『切断の魔女』という名前。

 おそらくは彼女もジーナちゃんと同じ魔法使いなのだろう。

 

「んー。んー? 切断の魔女。どこかで聞いた様な気がするんだけど……! 誰だっけー?」

「覚えてないのも無理は無いわ。私がその名で呼ばれていた頃には、もう貴女は森の奥に引きこもっていたもの」

「そうなんだー」

「それでも、私は魔法使いとして同じ森に住んでいた頃もあるし、覚えていて欲しかったけれどね」

「誰が居たかーなんて、イチイチ覚えてないよ。ホントに居たの?」

「はぁ。いつもいつも、アメリア様に甘えて、ゴロゴロしてばかりだった貴女に多くを求めた私がバカだったわ」

「……フーン。お姉ちゃんの事、知ってるんだ」

「当たり前でしょう? 私たちを導く光。忘れるわけが無いわ」

「そ。じゃあ貴女は本当に魔法使いなんだね」

「力を見れば分かるでしょう?」

「分かんないよ! おチビさんみたいな子も居るしさ! って、そうかぁ。貴女がおチビさんに力を渡したんだ」

 

 何ともトゲトゲした会話だな、と外から聞いていた俺は思っていたワケだが。

 不意にジーナちゃんが投げた言葉で、二人の間を流れる空気にピリピリとした物が混ざる。

 緊張が高まり、今にも戦いが始まってしまいそうだ。

 

 そんな中、隣に立っていたリリィちゃんが、空気に反応してか……左手に持った神刀の鯉口を切るのが見えた。

 流石にこっちから手を出すワケにはいかないと俺は焦ってリリィちゃんに声をかける。

 

「リリィちゃん。抑えて。まだお話し中だから」

「っ! ご、ごめんなさい……! つい!」

「まぁ、しょうがないよ。とにかく抑えてね」

「はい……!」

 

 リリィちゃんは右手を神刀から外してくれたけど、左手はいつでも抜ける体勢のままになっており、イマイチ抑える気があるのか分からない感じだ。

 どうしてこんなにも好戦的なのか。

 魔術師をやっている時のリリィちゃんは戦闘から一歩引いた感じで、大人しい印象なのに。

 

 神刀を抜くと、それが完全に逆転して好戦的になってしまう。

 先ほどの巨人も、前に出たがるリリィちゃんを抑えながら戦う感じだったし。

 女の子というのは難しいものだなと、俺は心の中で呟くのだった。

 

「リョウ君!」

「ん? あぁ、うん!? どうした?」

「原因が分かったよ」

「そうなのか!」

「うん。原因はこの魔女ちゃんで、ミクちゃんだよ」

「は……? どういう?」

「んー。なんて説明すれば良いかなぁ。今ね。おチビちゃんはちょっと暴走してる感じなんだよ」

「暴走」

「そ。ぼーそー」

 

 俺は周囲に視線を走らせながら、なるほどと呟いた。

 が、正直ジーナちゃんの言う暴走という言葉を正しく受け止められた訳じゃない。

 ただ、暴走しているという言葉だけ素直に受け取っただけだ。

 

「んでー。とりあえずおチビちゃんの事は心配いらないかなー。私たちが脱出出来たらおチビちゃんも目を覚ますし、そうすればこの世界も消えるよ」

「……なるほど」

 

 色々と都合が良いなと思いながら頷いていると、隣に立っているリリィちゃんが高速で神刀を抜き、俺たちに迫る黒色の空気を払った。

 リリィちゃんの動きは巨人と戦った時よりは遅い動きだったが、それでもかなり早い。

 

 おっと、今大事な事はそっちじゃなかったな。

 と、俺は気持ちを切り替えてこちらに攻撃を仕掛けてきた少女を見据える。

 

「やっぱり、こうなるか」

「……ジーナさん。一つ確認します」

「何かな? リリィちゃん」

「コレは、私たちの敵ですか?」

「そうだよ。この子。切断の魔女カーラを倒さないと、私たちはここから脱出出来ない」

 

 ジーナちゃんの言葉に、切断の魔女は一切否定せず、俺もため息と共に神刀を抜くのだった。

 言葉が通じる人間なのだから、出来れば話し合いで解決したい気持ちもあるのだが。

 向こうがやる気な以上、戦いは避けられないだろう。

 

 しかし、それはそれとして、一応言葉は向けてみる。

 

「こんな事言っても無駄かもしれないけどさ。話し合いとかで解決する道は無いのかな」

「ここはミクの楽園。ここを荒らすあなた達を放置する事は出来ない」

「俺たちもミクちゃんを助けに来たんだよ。ほら、眠ったままだから」

「外の世界はミクを傷つけるばかりだ……! あなた達もミクが大切なら、ここでずっとミクと共にいれば良い!」

「そういう訳にもいかないんだけど……」

「リョウ君。無駄だよ。向こうは人の様に見えて人じゃないから。言葉は無駄。言葉だけじゃ届かない」

「え?」

「とにかく。戦うしかないってコト!」

「はぁ……しょうがないか」

 

 俺はあまりやる気の出ないまま神刀を構え、少女に向かって走るのだった。

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