人生ゲームというゲームを始めて、二十年ほどの月日が経った。
とは言っても、あんまり俺の中で二十年過ぎた様な意識はない。
一応記憶はあるんだけど、うっすらとぼやけていて、言われたら、あーあったなぁ。くらいのモノだ。
なんだろうね。これも魔導具の力なのか。
どこまでいっても、この世界がゲームの世界なんだって認識できる。
面白いものだな。
「さてー。じゃあ俺たちはこれからドラゴン退治に行く訳だけど、準備は大丈夫かな?」
「うん。大丈夫だよ! ご飯と飲み物も持ってるしね」
「じゅんび、できてる」
「ゲームの序盤は長いって言ってたもんね!」
「今がゲームの序盤なのかと聞かれると非常に疑問なんだけど、まぁ、良いか」
俺は一瞬、このゲームがあまりにも早く進行しすぎているのではないか。
という疑問を持ったが、気にしてもしょうがない事だしと、流す事にした。
それに、そうだ。
ここから凄い時間が掛かるかもしれないものな。
「……なんて考えていたんだけどな」
「おー! ここがドラゴンの出る山かー!」
「ドラゴンの皮膚は非常に固く、通常の攻撃は通らないでしょう。何か特殊な武器が必要なのではないですか?」
「そこは私とココちゃんの魔術でバーンと倒しちゃうよ!」
「ココ、がんばる」
やる気いっぱいのみんなを見ながら、まぁ良いかと俺は頷く。
そして、俺達よりも早く街を出て、旅に出ていたフィオナちゃん、リリィちゃんと話をするのだった。
「こんにちはー」
「えぇ、こんにちは。今日もいい天気ですね」
「まぁ、そうですね。曇ってますけど」
「……」
「……」
「まぁ、ちょうど良い過ごしやすい心地という事です」
「そうですね。火山が近くにあるからか、他の街よりも熱いですけど」
「……」
「……」
「こんな心地の時は、山登りも良いかもしれないですね」
「そうですね。まぁ、一般人の方は立ち入り禁止されてますけどね」
「……! もー!! さっきから何なのー!? 私! お姫様を守る格好いい守護騎士なんだけどっ!!」
「あー。そっかリリィちゃんはお姫様って設定だったのか」
「いや、お恥ずかしながら」
「良いんじゃない? 可愛いよ」
長い旅路……でも無かったけれど、一応記憶では十日くらい歩いて問題の村へ来た俺たちは、問題となっているドラゴンについて聞こうと村人に声をかけたのだが。
現在、ドラゴン退治について王都からも人が来ているという事でお姫様とその護衛騎士に謁見する事となった、
そして、そこに現れたのがこの国のお姫様である事が判明したリリィちゃんと、その護衛騎士のフィオナちゃんである。
それから二人と色々な話をして、共にドラゴン退治に向かう事となった……訳だが。
「想像よりもずっと大きいな」
話には聞いていた。
ドラゴンライダーの夢を捨て切れなかったから調べもした。
しかし、資料で見るのと、実際の大きさを見るのは大違いだなと俺は空へ飛び立とうとしているドラゴンを見ながら思う。
そして、ドラゴンの羽ばたきは俺達よりもドラゴンの近くにあった木々を遠くへと吹き飛ばしてゆく。
勿論、根っこから引っこ抜けて、だ。
「こりゃマズいな! 一度距離を取ろう!」
「そうだね! 私は雷の魔術を準備するね!」
「分かった! 頼むよフィオナちゃん!」
「はい!」
俺は咄嗟に桜たちへとそう声をかけて、俺自身はドラゴンへ向けて走り出した。
「お兄ちゃん!?」
「俺はこのままドラゴンの頭を抑える。飛ぶのは止めないと!」
「なら、私も行くよ!」
「ココも!」
ココちゃんは風の魔術を使って自分と桜を浮かし、俺のすぐ傍まで飛んできた。
自信満々の二人の顔に、まぁゲームだし良いか。と考えながら俺は再度声を上げる。
「じゃあ、俺の肩を掴んで離さないでな!」
「分かった!」
「うん!」
そして、俺は山肌を滑る様に走り、そのまままだ地面に四つ足を付いているドラゴンの体を駆け上がった。
サイズの違いから考えれば、ドラゴンにとって俺たちは羽虫同然。
ならば、何をしていようとまだ気にも留めない筈だ。
その隙に戦える場所へと移動する。
「リョウさん。ドラゴンの体はどこも固い。通常の攻撃は通りませんよ」
「しかもこんなに大きいからね」
ドラゴンの体を駆けあがっていた俺の傍に、空を飛んでミクちゃんとジーナちゃんも来た。
いや、みんな空飛べるのか。
俺も空飛ぶ魔術覚えれば良かったな……。安直に炎が格好いいとかで決めるべきじゃなかったか。
まぁ、いいや。空が飛べなくても走る事は出来るし、世界のどこだろうと行って見せるさ。
それに、ここはゲームの世界だ。
やれる事、やりたい事。なんでもやってみるのが一番ってね!
「じゃ、まぁ何が有効か分からないから、色々やってみようか! 桜! ココちゃん! 手を離してくれ、突っ込む!!」
俺は全員にそう声をかけて、何故か街で普通に売っていた神刀を手に取る。
そして、現実で何度も繰り返した動きで鞘から刀を抜き、それを持ってドラゴンの頭頂部に向けて走り始めた。
どれだけデカかろうと、生き物である以上、どうやっても鍛えられない場所というのは存在する。
例えば、目とかもその一つだ!
「まずは、ここから始めるか!」
俺はドラゴンの目に向かって刀を突き出して、確かな感触に口元で笑みを作った。
どうやら俺の行動は当たりだったらしく、ドラゴンは飛翔を止め、耳を塞ぎたくなるような大声を上げながら地面に落ちた。
だが、それで終わらず、落ちてすぐに右手を俺に向かって振り上げて、俺を攻撃しようとした。
しかし、俺は一人ではない。
「ジーナちゃん! きぃっぃっく!」
ドラゴンの右手は空から落ちてきたジーナちゃんによって弾き飛ばされ、俺自身はココちゃんの力で別の場所へと飛んで行く。
そして、ドラゴンの意識が俺に集中している事に気づいたミクちゃんと桜が魔術でドラゴンの妨害をしながら、生身の部分を狙うのだった。
「助かるよ! ココちゃん!」
「うん」
「あぁん、威力が足りないよぅ! 魔術師じゃ限界があるね!」
「まぁ良いんじゃない? たまにはさ。魔法使いじゃない魔術師の気持ちも分かるし」
「まぁーねっ!」
ジーナちゃんは嘆き、悲しみながらも、ドラゴンが周囲の邪魔ものをどかしたいとばかりに振り回している両手をかわす。
「目を潰すのは正解だったね。こっちが認識できなくなっている!」
俺は神刀を握り、さらにもろそうな場所を攻撃し、訓練様に持ってきた直剣を抜き、切っ先をドラゴンに向けて、構えた。
「ココちゃん! 桜!」
「分かったよ!」
「あい!」
そして俺は、風と水の魔術を背に受けて、全力で加速しながら剣に炎を宿す。
技名は……! 技名! えーっと、えっと!
あぁ、もう!
「ファイナルファイアーブレード!!」
俺の突き刺した剣は、ドラゴンの眉間に刺さり、そのままドラゴンは体が引き裂かれたかの様な悲鳴を上げて、地面に全身を預けた。
もはや命は失われていくだけなのだろう。
そのままピクリも動かない。
「これで、終わりか」
割とアッサリと終わったなぁと思いながら、俺は地面に降り立って、少し離れた所にいたフィオナちゃんとリリィちゃんの元へ向かう。
「怪我は無かったかな」
「大丈夫ですよ」
「はい! って! そうじゃなくて! そうじゃないよ!」
「どうしたの。フィオナちゃん」
「いや、私が雷の魔術を準備するね! って言って、リョウさんが頷いたじゃないですか!」
「あぁ、そうだね」
「なのに、なんで待ってくれないの!? もう倒しちゃってるけど!」
「まぁ、早い方が良いかなって思ってさ」
「もぅー! 私の活躍! 私がすっごい頑張ろうと思ったのにぃ!」
「いやー悪かったね。つい」
「もう! ついじゃないですよぅ!」
護衛騎士として格好いい所を見せたかったとはしゃぐフィオナちゃんの言葉を流しつつ、俺は面白い経験だったなと倒れたドラゴンを見て思うのだった。