数日の間、ゲームの世界へ行ったり戻ったりして人生ゲームも十分に満足できるまで遊び、楽しみつくした俺たちは、次なるゲームを遊ぶべく再びゲームを選んでいた。
しかし、人生ゲームをたっぷりと遊んだ俺たちは、やはり長いゲームを遊ぶ方が面白いのでは? という話になり、次なるゲームは相当長い時間遊ぶ事が出来そうな『国家運営大戦略』を遊ぶ事に決めたのである。
このゲームはプレイ想定時間が非常に膨大であり、時間を決めてちょっとずつ遊んでいけば、冬ごもりはもうこれ一本で余裕そうであった。
という訳で、早速ゲームを起動させ、俺たちはいつもの様にゲームの世界へと飛び込んでゆく。
今度のゲームは人生ゲームとは違い、赤ん坊の時代から始まるという様な事は無かった。
だが、やはりスタートは子供時代である為、まだ少年であった俺は、政治の勉強をしながら神刀を振る毎日である。
「リョウ様は武道に興味があるご様子。私が相手をさせていただいても?」
「喜んで。よろしくお願いいたします。騎士団長」
「えぇ、こちらこそよろしくお願いいたします」
俺は騎士団長と毎日の様に訓練をしながら、ついでに騎士も育てるかと、子供の間でも出来る、訓練場の建設と騎士の募集、そして、騎士の訓練を行う事にした。
力。大切なのは力である。
国家という物を守っていく為にはとにもかくにも力こそ正義だ。
武力が無いと、戦争を仕掛けられた時に負けてしまうからね。
という訳で、俺はひたすらに国内の戦力を増やし続けた。
そして、増えた騎士たちのイメージアップと、実戦訓練をかねて、各地方に現れた魔物を退治し、その肉を地方に配り、騎士に配り、栄養面を整えて、更なる国力強化を図る
「はっ! 思いついた」
「何かありましたか? リョウ様」
「いや、地方にも騎士を派遣すれば、地方の安全と魔物の肉の供給が安定するんじゃないかと思ったんだが」
「貴族からの反発が予想されますね。中央からの圧力を考える場合もあります」
「そうか」
「はい」
「では説得するか」
「なるほど。リョウ様らしい。善き案かと思います」
俺は騎士団と共に各地方を巡り、貴族と直接話をする事にした。
表向きは王子という事もあり歓迎してくれるが、それがそのまま彼らの本心ではない。というのがこのゲームの難しさだと思う。
王の意向に従っていた貴族が反乱起こした事もあるし、何度か。
制圧したけど。
「リョウ様。よくぞいらっしゃいました」
「少し邪魔する」
「えぇ、えぇ、いくらでもどうぞ」
「あー」
「……何か?」
「あ、いや。俺は基本的に貰った言葉はそのまま受け取るからな。何日でもと言われると、本当に何日でも居座るので、嫌な時はさっさと言ってくれると助かる」
「……なるほど」
「あぁ」
「ちなみに、リョウ様はいずれ王となられる御方」
「まぁ、俺に兄弟は居ないからそうなるな」
「その場合、その正直さで他国との交流が出来ますかな?」
「国交はあんまり得意じゃなくてな。知恵のある者に任せようと思っている」
「……しかし、それでは国が裏から操られる可能性もあります」
「その時は、お前たちが教えてくれるんだろう? 俺に」
俺は出された茶を、毒見を通さずに飲み、笑った。
意味としては、俺はお前の事を信じてるぜ。というパフォーマンスだ。
まぁ、正直なところ、体を鍛えている過程で、毒に対する耐性も付けた為、どんな毒も効かないのだけれど。
知らなければパフォーマンスも十分に活きるという訳だ。
「なるほど。リョウ様はその様にお考えですか」
「あぁ。俺は国の内政のは強くない。だから皆が案を出し合って、より善き道を選んでくれればと思う」
「しかし、そうなるとリョウ様のいる意味が見えなくなりそうですな」
「何を言ってるんだ。俺にはコレがあるだろ?」
俺は笑いながら左手に持っていた神刀を持ち上げる。
何故かこの国の宝みたいになってたが、まぁ俺の神刀だ。
「……これは愚問でしたな」
「まぁ心配になる気持ちは分かる。だから、俺は内政で力になれない分、どの様な敵が迫ってこようと全て滅ぼすとここに誓おう。魔物だろうが、国だろうが、関係なくな」
「承知いたしました。そういう事であれば、私もリョウ様にどこまでも付いてゆきましょう」
「助かる」
軽やかな雰囲気となり、俺たちは笑いながら茶を飲む。
そして、あ、と気づいた様に彼は声を上げた。
「では本日こちらに来たのは、その件ですか?」
「いや、実は各地方に地方騎士団を作ろうと思ってな」
「ほぅ。しかし荒れそうな話ですな」
「そうか?」
「えぇ。何せリョウ様は人気がある。最前線で国民の為に戦うあなたに感謝している民は多い。そんなあなたの下で共に戦えると騎士を目指した者も多いでしょう。そんな彼らが地方へと言われるのは」
「気に入らないか」
「そこまで直接的な言葉にはならないと思いますがね」
「しかし、気持ちはそういう事だろう」
「まぁ……そうですな」
「なら、どうするかな」
俺は腕を組みながらうーんと悩み、一つの名案を思い付く。
「それならば、全てを力で決めるか」
「と言いますと?」
「武道大会を開く。基本的には各地方の出身者はその地方で働いてもらう事になるが、地方ごとに武道大会を開き、その上位何名かが中央で働ける事にすれば良い」
「なるほど。リョウ様らしい決定ですね」
「まぁ、正直なところ、俺は中央に居る時間よりも地方に居る時間の方が長いから、あまり中央に行く意味も薄いのだがな」
「それでは不満が集まりそうですねぇ。今度は中央で」
「なら中央でも武道大会を開くさ。その上位が俺と共に地方を巡る激務だな」
「……」
「どうだ? 駄目そうか?」
「あー、いえ。違います。その武道大会で観光業を盛り上げる事が出来そうだなと考えまして」
「ほぅ。面白そうな話だな」
俺はそれから、彼や他の貴族とも話をして、武道大会を開き、諸外国に我が国の力を見せつけると共に、観光として儲ける作戦を考えた。
地方の騎士を増やし、魔物を狩る事で魔物被害が減り、さらに魔物を多く狩る事で食料が安定した。
そして、武道大会を開いたことで騎士たちが強さを求めてより訓練をする様になり、国内の戦力が増強。
そして、武道大会で観光と威圧も成功し、国内の財政も安定。
国として非常に安定した状態となった。
ここまで、ゲーム内で自動発生している国との国交しか動いていないが、そろそろ動き出すかなと、俺は玉座に座って考える。
とは言っても、基本的に俺が外交内政を考える事は無いのだけれど……。
「リョウ様! 大変です! 大変でございますっ!」
「どうした?」
「神聖桜花聖国から使者が来ております!」
「神聖桜花聖国ぅ?」
知らない名前だ。
この周辺の国じゃないと思うんだけど、どこの国だろうか。
「陛下。東の果てにある国ですな」
「あぁ、ありがとう。……しかし、その神聖桜花聖国の使者が来て、何が大変なんだ」
「それが、神聖桜花聖国から来た使者にはかの国の女王もおりまして」
「ふんふん」
「陛下とのご結婚を望まれていると……」
「あー。そういう事か。なるほど」
普通に考えれば初対面の国で、しかも隣国でも無くて、何の関係性も無い国との結婚などあり得ない。
まぁメリットも無いわけじゃないんだろうが、こんな、突然押しかけて結婚だ! なんて、普通はやらないだろう。
少なくともゲームが生み出した国じゃない。
そして、こういう突拍子もない事をやりそうな子を俺は一人知っている。
「あー、状況はだいたい理解したから女王をここに通してくれ」
「よ、よろしいのですか?」
「問題ない。俺が誰かに負けるわけがないだろ?」
「それもそうですね……! では少々お待ち下さい」
そして、少し待ってから再び扉が開き、現れたのは煌びやかな服を着た一人の少女であった。
美しいドレスで、一歩一歩玉座へ向けて歩く。
その少女は……。
「お兄ちゃん! ようやく見つけたよ! さ! 私と結婚しよ!」
俺の愛する妹。桜であった。